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「EURO2020ハイライト」~Round-16 イタリア×オーストリア~ 2021.6.26

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■持たざる者のイタリア対策で水際に追い詰める

 第1節に不在だったヴェラッティが先発復帰した以外はいつものメンバーに戻したイタリア。おそらくこちらはグループステージと似たスタイル。

 それに対してオーストリアはシステムと人員配置で比較的スタイルが変わりやすいチーム。オーストリアのポイントはまずはバックスの枚数、そしてアラバをどこに置くかの2点となる。オーストリアの選択は4-3-3、そしてアラバは左サイドバックに置くという形である。

 アラバをサイドバックに置くというのはオーストリアにとっては『ガンガン攻めよう!』のサイン。左サイドに起点を作り、彼のクロスからチャンスを作りたいという意志である。

 オーストリアはこの試合で非常によくイタリア対策を練っていたと思う。グループステージで見せたイタリアの強みは中盤のプレッシングである。このプレッシングを地道に外すことをオーストリアは選んだ。オーストリアはSBをWG裏に配置する。そしてIHのザビッツァーとシュラーガーの2人を左右に動かしながらヴェラッティとバレッラの2人を横に揺さぶる。イタリアのWGを越えた位置に立つSB、内外に大きく動くIHをイタリアのIHにすべて押し付けることによって、イタリアのプレッシングを回避することに成功した。

 もっともイタリアの守備視点で本来気になるのは、高い位置を取るSBのところとCBのスピード不足である。だが、オーストリアサイドの立ち位置で見れば、SBの裏を取れるアタッカーもイタリアのCBをぶっちぎれるCFもいない。オーストリアが取ったやり方は、イタリアの弱みを突くのではなく強みを歪ませること。イタリアの弱みを突くアタッカーを持たざる者の対策といえるだろう。

 それでもCBを2枚に設定したこと、そして配球役からアラバを外し、より敵陣深い位置でプレーさせる選択をしたのは勇敢といえるだろう。その分、グリーリッチュがアンカーとして最終ラインの枚数調整に入ることでなんとかアラバを押し上げた。

 対するイタリアはカウンタージャンキー。3トップに加えて、両SBが後ろから素早く攻撃のフォローに入ることで厚みを持たせていた。オーストリアの4バックというやり方が悪い方に出たのはこのイタリアの大外攻撃に対抗する部分。スピナッツォーラが大外アタックを仕掛けてくることで、ラインを下げられるうえに全体の重心を右側に引っ張られる状況が発生する。

 その結果、スピナッツォーラと逆サイドのバレッラが攻めあがる位置のバイタルでミドルを打つ隙ができるようになる。アラバがここをケアするようになり、徐々に対応できるようになったけど。

 後半、イタリアはWGのプレスバックを課すこと、そしてIHがより待ち構えて守備をする変更を加える。これにより徐々にイタリアにペースが流れるように。ただ、60分を過ぎると試合はどちらの手からも離れた展開の中で偶発的に互いにチャンスを迎えるようになった。その中でオーストリアが先制点に手をかけた。惜しくもオフサイド判定となったが、これはアラバを高い位置を置くという選択が呼んだものといえそうである。

 スコアレスのまま延長に入った試合で得点を手にしたのはイタリア。先制点の形は先に示した左の大外でオーストリアを引っ張っておきながらの逆サイドの動き。絞るアラバに対して、さらに大外で構えたキエーザがもう1枚構えていたのが重要。ライマーの戻りが間に合わなかったオーストリアを破り、貴重な先制点を奪った。内側でアラバを釣るように走ったペッシーナが黒子として優秀だった。

 追い上げるオーストリアは終盤に盛り返すも、決定的な2点目を得たイタリアに追いつくことはできず。水際まで追い込まれたイタリアだったがなんとか苦戦の末にオーストリアを撃破。敗れはしたが、グループステージから上積みを見せたオーストリアの健闘が光った。

試合結果
イタリア 2-1(EX) オーストリア
ウェンブリー・スタジアム
【得点者】
ITA:95′ キエーザ, 105′ ペッシーナ
AUT:114′ カライジッチ
主審:アンソニー・テイラー

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