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「FIFA World Cup QATAR 2022 チーム別まとめ」~チュニジア代表編~

目次

第1節 デンマーク戦

■保持の安定≠効果的な前進

 本命のフランスを追いかける両チームの対戦。混戦となる予想がされるグループステージ突破争いで主導権を握るべく、まずは勝利で優位に立ちたいところである。

 積極的にプレスをかけていったのはデンマークの方。チュニジアのバックラインに高い位置からプレスをかけていく。しかしながらバックラインがGKを交えてのビルドアップを行うチュニジアに対して、プレスはかけきれないデンマーク。ハイラインだけど相手を捕まえきれない状態に苦しむことになる。

 チュニジアにとっては中盤で体を張れたのも大きかった。特に目立っていたのは14番のライドゥニ。序盤から闘志むき出しでプレーしていた彼と同サイドのシャドーのユセフ・ムサクニの2人を軸に左サイドでボールの落ち着きどころを作っていた。

 アンカー役となっていた17番のエリス・スキリが最終ラインに下がりながらCB2枚とGKと菱形を作ることが多かったことからも分かるように、ショートパスで繋ぎたがっていたチュニジア。中盤から抜けるところまではボールを運びながらデンマークに対抗できていたと言っていいだろう。

 デンマークに比べれば、チュニジアは明らかにバックラインに対してプレッシャーをかけてこなかった。チュニジアのトップのケアはアンカーのデラニー付近が起点に。デンマークは3バック+アンカーの3-1でボールを運ぼうとするが、中央に明確な預けどころを見つけることができない。

 デンマークの保持のメインルートとなったのはサイドの方。左サイドは大外を回るメーレが敵陣を抉るようにアタックをかけていたし、右サイドはFW陣がサイドに流れることで起点に。右サイドは逆にインサイドにはR.クリステンセンが入り込むことで、FW陣が作り出したスペースを有効活用していた印象だ。

 立ち上がりは中盤同士のデュエルが頻発し、ややチュニジアが優勢となっていたが、25分過ぎからはデンマークがボールを持つ機会がグンと増える。きっかけとなったのはIHの降りる動き。エリクセンやホイビュアなどは積極的に列を落ちる動きを行うことでポゼッションを安定させていた。

 しかしながら、保持の安定とボールを前に進めるかどうかはまた別の話。後ろに重いポゼッションは前進の手助けにはならず、ボールを持ちながらもゴールに進めない状況が続くことになるデンマークだった。ボールを持てる機会が減ったチュニジアはややロングボールに頼る傾向が強くなる。デュエルで負け始めたチュニジアは自陣に押し込まれる機会が増えることとなった。

 均衡した状態で迎えた後半も同じくデンマークがボールを持つ展開に。アクセントになったのは前半途中のデラニーの負傷交代によって投入されたダムスゴー。低い位置に降りてから前を向くと、馬力のあるドリブルで前線までボールをキャリー。降りても自分で運べればよし!のルールに乗っ取って、高い位置までボールを運ぶことで降りる動きを正当化していた。

 右サイドはインサイドに入るR.クリステンセンがアクセントになっていたデンマーク。左サイドもダムスゴーの登場でデンマークはサイドで崩すための動きが増えることとなった。左サイドは交代でWGにイェンセンが入ると、ビルドアップに献身的に参加。同サイドのメーレは前半から高い位置のクロスで収支はプラスになっており、後半もビルドアップに絡ませることはほとんどなかった。けども、割と終盤は割と移動がバレていた節があるので、効果的だったかは微妙なところである。

 左右できっかけを見つけることができたデンマークは後半も押し込みながらの攻撃に専念。チュニジアはロングカウンターを軸に一発でひっくり返す形を継続して狙っていく形になっていた。

 大きな展開よりも、エリクセンがライン間に入り込むような動きにパスを
重ねることができたりする方が得点の匂いがしたデンマーク。前半から優位を取っているセットプレーも含めて敵陣深くまで攻め込むが、最後まで解決策を見つけることができないまま試合は終了。

 デンマークが終盤にかけて押し込む展開を続けることになったが、決定的なゴールを生み出すことができず試合はスコアレスドローに。両チームとも勝ち点1を分け合う発進になった。

試合結果
2022.11.22
FIFA World Cup QATAR 2022
Group D 第1節
デンマーク 0-0 チュニジア
エデュケーション・シティ・スタジアム
主審:セサル・アルトゥール・ラモス

第2節 オーストラリア戦

■王道前進パターンで繋いだ突破の可能性

 初戦でフランスに逆転負けを喫したオーストラリア。チュニジアとの一戦は負ければ敗退が決まる背水の陣となる。オーストラリアが選んだフォーメーションは4-4-2。フランス戦の4-1-4-1から変更したプランでチュニジアに挑む。

 いずれのチームもバックラインにはプレッシングを積極的には行わなかったため、ボールを持つ側は能動的にボールを動かすことのハードルが低かった。より前進のルートが整理されていたのはオーストラリアの方。やり方としてはロングボール主体の前進である。2トップにボールを当ててCHがそれを拾う。拾ったCHがサイドにボールを展開すると、SHもしくはオーバーラップをしてきたSBがクロスを上げてCFがフィニッシュをするというとてもオーソドックスな形である。

 オーストラリアは主に左サイドをメインとしてボールの動かし方としては確立されていたが、チュニジアの守備ブロックは強固。サイドからのクロスはニアのCBに引っかかることが多くオーストラリアのCFにボールが届かず。クリティカルな攻撃にはならなかった。

 一方のチュニジアは3CBを軸にボールを動かしていく。3-2-5が基本だがビルドアップに関わらない側のCHが高い位置を取るパターンもある。主な形としては左のIHであるライドゥニが前に入ると、左シャドーのムサクニがトップ下にスライドする形で待ち構える。

 だが、チュニジアの前進はフィジカル的な劣位によってなかなかスムーズに実現しない。ロングボールの競り合いではオーストラリアが優位。チュニジアの前線はそもそも長いボールを収めることができない。トランジッションにおいても一本目のパスが刺さらず、なかなか前進に苦労するように。

 なかなかシュートに至らない中、結果を出したのは前進することができていたオーストラリアの方だった。バックラインのフィードからCFのデュークに当てると、落としをサイドに展開。このクロスを再びエリア内に飛び込んだデュークが決めてみせた。

 オーストラリアからするとこの試合ずっと狙っていたバックラインからのボールの動かし方で結果を出した形。チュニジアはスキリが審判と交錯したせいで中盤で相手をスローダウンさせられなかったのが痛かった。これまでのクロスと少し違ったのはチュニジアのDFラインが下がりながらの対応を余儀なくされてしまったこと。クロスがニアで引っかかって軌道が変わったこともオーストラリアにとっては幸運だったと言えるだろう。

 この得点以降はチュニジアが徐々にチャンスを作るようになる。中央だけでなく左右に流れながらボールを収めることができるジェバリに徐々にボールを預けることができるようになったチュニジア。CFが開けたスペースには左右からシャドーとWBが入り込みながらシュートを放つ。だが、いずれもゴールには結び付かず。最も惜しかったドレーガーのシュートはCBのサウターに阻まれてしまう。

 ビハインドで後半を迎えたチュニジア。選手交代でシステムは4-3-3に変更する。ただ、ボール保持の陣形としてはアンカーのスキリが最終ラインに落ちて3バック化していたので3-2-5という全体的な陣形はあまり変わらなかった。

 その中で変わった点はボール保持において左サイドという明確なポイントができたことである。左シャドーのムサクニのところにサッシが入ることでチュニジアはこのサイドで安定してボールを持つことができるように。SBのアブディのオーバーラップの機会も増加し、このサイドからクロスで勝負することができていた。

 チュニジアは4バックになったことでオーストラリアの攻め手も増えた印象。サイドを変えることで逆サイドの大外はだいぶ使いやすくなり、サイドから鋭いクロスでチュニジアのゴールを脅かすことができていた。

 終盤はボールを持たれる機会が増えたオーストラリア。自陣の深い位置まで押し込まれる状況に苦しむが、徐々に全体の重心を後ろに下げてなんとか対処する。最後まで跳ね返しに徹して、チュニジアにゴールを許さなかったオーストラリア。あらゆる形でPA内に侵入したチュニジアを退け、グループステージ突破に望みを繋いだ。

試合結果
2022.11.26
FIFA World Cup QATAR 2022
Group D 第2節
チュニジア 0-1 オーストラリア
アル・ジャヌーブ・スタジアム
【得点者】
AUS:23′ デューク
主審:ダニエル・シーベルト

第3節 フランス戦

■金星と敗退が同時にやってきたチュニジア

 すでにグループステージの突破を決めているフランス。首位の座から落ちるにはオーストラリアが得失点差6を埋める形で両試合の結果が終わらなくてはならない。実際問題不可能に近いミッションであり、フランスは首位が確定している状態でこの試合を迎えたと言っていいだろう。

 一方のチュニジアは勝利が最低条件。自らが人事を尽くした上で天命を待つ必要があるという状況だ。

 首位通過が確定しているフランスは明らかにプレータイム管理優先の選手起用を披露。マルセイユでシャドーをやっている姿をCLで見かけたゲンドゥージは百歩譲ってSH起用を受け入れるとしても、リュカの離脱が原因とはいえカマヴィンカのSB起用はなかなかである。そんなことをやるくらいなら守田と組んでスペイン戦に出てほしい。

 ボール保持は4-3-3だったフランスだが、非保持においては4-4-2。ワイドのコマンが2トップにシフトし、フォファナがSHに移動する。チュニジアは3-4-2-1であり、特に噛み合わせを意識したシフトにはなっていない。

 それでもうまく持ち場を守ることができれば問題はないが、実際フランスのSHはかなりチュニジアのWBに外に引っ張られていた。そのため、フランスはチュアメニとヴェレトゥの負荷が増加。特に、ヴェレトゥは同サイドのSBがカマヴィンガだったこともありかなりハードなタスクだったはずだ。フランスは深い位置でのファウルが増えてしまいチュニジアはセットプレーのチャンスを得る。

 チュニジアは左のシャドーがムサクニからロムダンに入れ替わっていたが、降りてからのプレーが持ち味なのは同じ様子。低い位置でボールを引き取ってのターンからチュアメニからファウルを奪っていた。このファウルから得たFKでチュニジアはネットを揺らす。だが、これはオフサイド。チュニジアのゴールは認められなかった。

 それでもボール保持で主導権を握ったのはチュニジア。細かくパスを受ける位置を変えながらショートパスを繋ぎつつ、フランス陣内まで攻め込んでみせた。

 フランスの保持の局面は個々のスキルは流石ではあるが、チームとして機能するということに関しては無理があるだろう。前線でコロ・ムアニがボールを収めることができればもう少し勝手が違ったとは思うが、そもそもこのメンツで保持をなんとか機能させようという方が難題なミッションという話だ。

 後半、フランスはややテンポアップ。高い位置からのプレッシングを仕掛けながらチュニジア相手に自分達のペースを引き戻そうとする。

 しかしながらチュニジアはこのフランスのテンポアップに上手く付き合うことができた。中盤のライドゥニを軸に小気味いいテンポのパスワークでフランスのプレスを脱出し、敵陣に迫っていく。

 そんなチュニジアは高い位置からのプレスでついに念願の先制点をゲット。フォファナをプレスで捕まえたハズリが独走し、敵陣の深い位置まで侵入。自らシュートまで持って行き得点を奪ってみせる。フランスからするとややヴァランの対応がやや甘かったように思う。

 裏でオーストラリアが先制してしまったため、この時点では他会場の結果はチュニジアに不利な状況に。しかも、フランスは続々と主力を投入してくる。プレータイムをある程度与えてコンディションを維持したかったのかもしれないが、デンベレが右からガンガン仕掛けて、ムバッペがエリア内で待ち構えている状況を「コンディション維持」という名目で作られてしまうチュニジアはたまったものではない。

 それでもチュニジアはGKを中心にフランスの攻撃をシャットアウト。ハズリの先制点を守り切ってみせた。だが、裏のカードの結果は思うようには動かず。ベンチが目の前のフランス戦そっちのけで観戦していたオーストラリア×デンマークの結果が思うように動かず。フランスへの金星と同時にチュニジアは敗退が決定してしまった。

 ちなみに終了間際のグリーズマンのゴールが取り消された解説については以下のスレッドを参照。

試合結果
2022.11.30
FIFA World Cup QATAR 2022
Group D 第3節
チュニジア 1-0 フランス
エデュケーション・シティ・スタジアム
【得点者】
TUN:58′ ハズリ
主審:マシュー・コンガー

総括

■攻守に組織力を発揮する好チームが泣いた不運

 初戦はデンマーク相手にドローに持ち込んだことで驚きを提供し、最終節ではフランス相手に金星をゲット。FIFAランキング的には2強2弱と目されたグループDにおいてポジティブな印象を残したのはチュニジアだった。

 今大会はアフリカ勢のソリッドさが目立つ大会でもあるが、チュニジアはその代表格のような存在と言ってもいいだろう。ボール扱いがうまく、身体能力任せの前進ではなく、ショートパスを繋ぎながら相手のプレスを掻い潜ってみせる。

 非保持においてもブロックは強固。コンパクトでソリッドな3-4-3は保持側のチームに自由を許さず。グループステージ3試合を通してわずかに1失点というのは彼らの守備が優れていた証拠でもある。

 ユニットとして推すことができるのは左サイド。強力なフィジカルで高い位置でも起点になれるライドゥニはこの3試合で最も目立った選手と言っていい。初戦でみせた咆哮は多くのファンの脳裏に焼き付く彼のトレードマーク。ボールを預けられる彼によって、トップ下に押し出されるムサクニとトップのジェバリのコンビネーションはより生きる。攻撃においては強力なユニットになった。

 だが、そこから先のアタッキングサードにおいてはややジリ貧感があったのも事実。オーストラリアが高さがあり、デンマークもチュニジア同様に強固だったという外的要因もあることはあるが、PA内でのクオリティで勝負をかけるチームではないということだろう。ファウルが嵩んでしまい、悪い意味で試合の流れを途切れさせる悪癖も気になった。

 グループステージ突破においての壁になったのはやはりオーストラリア戦。素早い前進を許したのはわずかな機会だっただけに、失点シーンにおいてはスキリが審判と交錯して倒れてしまい、中盤の対応が後手に回ったことは悔いが残る。ロースコア勝負のグループDにおいては1点が大きくのしかかってしまうという観点からも不運な失点だった。

 ビルドアップの局面においては確かなクオリティを見せた前線は軒並み30歳位周辺。このセクションで4年後を見据えた世代交代ができるかどうかが次回のW杯の出場の可否を分けるだろう。

pick up player:ハンニバル・メイブリ
貢献度で言えばライドゥニなんだけど、倒れている相手にボールをぶつけたり、目の前の試合そっちのけで突破に絡む裏のカードを熱心に見ていたりなど、今大会随一のベンチから目立ったプレイヤーだったので選出。

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