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「展開に逆らう名手のミドル」~2023.5.9 UEFAチャンピオンズリーグ Semi-final 1st leg レアル・マドリー×マンチェスター・シティ マッチレビュー~

目次

カマヴィンガとロドリがスーパーゴールの助演男優賞

 国内外で充実のシーズンを送るシティ。シーズン終盤にもギアを一段上げており、ビッグイヤー獲得という悲願達成に向けて満を持してレアル・マドリーとのセミファイナルに臨む。

 立ち上がりからボールを持ったのはシティの方だった。前から来るマドリーのプレッシングに対して余っていたのはアカンジ。左の大外レーンからボールを持ち上がっていく。序盤に迷いがあったのはロドリゴ。インサイドに立つ2ボランチのロドリとストーンズの片方のヘルプに行くべきか、あるいは外に開くアカンジをチェックに行くかである。

 マドリーのIHとWGはプレスにおいてこの選択に悩まされていた感がある。順当にいけばロドリとストーンズにはバルベルデとモドリッチが出ていけばいいのだが、彼らが出ていけばその背後のスペースをデ・ブライネやハーランドに使われることになる。

 降りるハーランドに対してはリュディガーが厳しくチェックに行っていたように、マドリーはMF後方におけるデ・ブライネとハーランドに自由を与えないことには明らかにプライオリティをおいていた。よって、モドリッチもバルベルデも無理には出て行かない。

 その代償としてロドリとストーンズのどちらかは余りやすい状況が発生。WGは絞って彼らのケアに行くか、外のレーンを警戒するかの選択をし続けるし、そのWGの悩みを軽減するためにモドリッチやバルベルデはいかに前に出ていけるかを探りながらプレスを行うこととなった。

 結果的に左サイドからはアカンジ。インサイドからはストーンズが持ち上がることでシティはマドリーのミドルゾーンに侵入していく。インサイドにはスペースを与えなかったマドリーなので、ここからはサイドの攻撃を探るように。左サイドのグリーリッシュにはシンプルにボールを預ける形。

 グリーリッシュにボールを渡せばマドリーの守備陣が2人出ていくような決まりになっていたので、グリーリッシュにボールを預けて2人引きつけてはマイナス方向の折り返しで空いたバイタルからギュンドアンやロドリがミドルを狙うという形はシティのテンプレと化していた。

 逆に右サイドのベルナルドにはサポートの動きを早めにすることで縦方向のギャップを作るアクション。ストーンズやウォーカーが追い越す動きを見せることでマドリーのDF陣を揺さぶる。シティは後方のキャリーが安定していたことで、定期的にクルトワを脅かすシュートを打てていたと言えるだろう。

 マドリーの保持に対してはシティは高い位置からプレッシャーをかけていく。特に同サイドに追い込めた時は自信を持ってバックラインから時間を奪いにかかる。

 マドリーはバックラインから左右に揺さぶりながらシティのプレスのベクトルを外すようなアプローチを試みる。だが、前線のプレスを外すことができてもなかなか中盤でフリーで運ぶポイントを作れずに苦戦。結果的にはシティの予測がハマる形でハイプレスからカウンターに出ていく形が発生していく。

 マドリーは前線のレーン移動とモドリッチの位置調整によって縦パスの預けどころを探る。ベンゼマやロドリゴがもちろん、大外が定位置になることが多いヴィニシウスですらインサイドのレーンでヘルプを行っていたことは非常に印象的だった。だが、単発でうまくいくことはあっても、十分に脱出ルートを見つけることができたとは言い難い状況。

 むしろ、マドリーの狙い目はトランジッション。ボールを奪った後に素早く駆け上がることでシティがプレスのベクトルを決める前に敵陣に侵入してしまおうという算段。特に左のSBであるカマヴィンガの推進力は活用できそうな気配があった。

 しかし、攻守の切り替えが頻発する方向性はマドリーがうまく眠らせているハーランドやデ・ブライネを起こしてしまう危険性もある。よって、これもマドリーにとってはリスクがある解決策といった風情があった。

 どの道も険しい様子のマドリー。だが、そんな中でもビルドアップからのプレス回避で先制点を奪うのだからレアル・マドリーは伊達ではない。モドリッチの降りるアクションに合わせるように高い位置を取ったのはカマヴィンガ。この縦方向のレーンの入れ替えによって、マドリーはギャップを作ってボールを前に運ぶことに成功すると、ボールを受けたヴィニシウスが迷いなく右足を振ってゴール。ワンチャンスを生かしたマドリーが前に出る。すげー。

 以降はラインを下げながら後方にボールを持たせることを優先したマドリー。シティはサイドにうまく時間を送りながらグリーリッシュやベルナルドから危うい場面を作るが、ゴールネットを揺らせるシーンは作れないままハーフタイムを迎えることとなった。

 後半、まず目についたのは両チームともプレスの強度がやや低下したことである。特にマンチェスター・シティの方はプレスのスイッチが入らずに受け身がちの4-4-2。ボールの奪いどころが見つからない状況になる。

 こうなるとイキイキするのはモドリッチ。前半は必死に解決策を探っていたようだったが、後半は相手を動かす余裕が出てきたように見えた。ライン間のドリブラーに縦パスを入れて仕掛ける場面も目立つなど、ミドルゾーンからの加速も十分にできていた。

 一方のシティは前半なかなかボールを受けられなかったデ・ブライネが右サイドに流れながらボールを受ける機会を増やしていく。ベルナルドとのワンツーはオフサイド気味ではあったが、前半には余りなかったシンプルなエリア内への侵入だった。

 どちらかといえば後半優勢に進めていたのはマドリーに見えた。デ・ブライネどうするの問題はありつつ、きっちりとラインを下げながら攻守のバランスの落とし所を見つけられている感触があった。

 しかし、そうした状況をひっくり返したのがロドリ。マドリーの自陣からの縦パスを鋭いインターセプトで断ち切ると、素早く前線にボールを当てる。このボールの落としを受けたのはデ・ブライネ。刺さるようなミドルで試合を振り出しに戻す。後半のシティではあまり見られなかった守備の鋭さをロドリが刹那で見せたことで同点に追いつく。

 それ以降はまったりとした展開で試合は進行。どちらも展開を強引に打開するよりも2nd legに向けて下手を打たないことを優先しているように見えた。

 試合はそのままスコアが動かずに終了。ジリジリとして展開をクラックがミドルで打開するという構図で1点ずつを分け合った両チーム。決着はマンチェスターでのリターンレグに持ち越されることになった。

ひとこと

 保持でシティのプレスを凌いで得点まで持っていけるマドリーはガチ。

試合結果

2023.5.9
UEFAチャンピオンズリーグ
Semi-final 1st leg
レアル・マドリー 1-1 マンチェスター・シティ
エスタディオ・サンチャゴ・ベルナベウ
【得点者】
RMA:36′ ヴィニシウス
Man City:67′ デ・ブライネ
主審:アルトゥール・ディアス

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