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「Catch up Premier League」~トッテナム編~ 2021-22 season

 トッテナム、21-22シーズンの歩み。

目次

第1節 マンチェスター・シティ戦(H)

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■試運転の機能不全を見逃さない

 開幕節随一のビックマッチが第1節の最後を飾ることになった。ケインがまだスカッドに戻ってこない中でヌーノを新監督として迎えたトッテナムは前年のチャンピオンと相まみえることになった。

 基本的にはシティの保持を受け止めるトッテナムという構図で90分間、この試合は進むことになる。シティのビルドアップはコミュニティ・シールドのレスター戦で見せたものと同じ。4バックがPA幅にとどまり狭い間隔を維持しながらビルドアップをする。あらゆるチームがGKを使い、CBが左右に大きく開きながらビルドアップをする時代においてトレンドに逆行する動きである。

 スパーズはこれに対して4-3-3で構える。3センターは3トップと連携し、六角形の中にアンカーのフェルナンジーニョを閉じ込め、中央からの前進を阻害する。昨年の対戦では4-4-2だったので形は違ったけど、トッテナム的には六角形の中に中盤中央のプレイヤーを閉じ込めながら、中央でボールを受けさせないというコンセプトは同じ。3トップはボールがサイドに出た時も、内側にボールを入れさせないような角度で相手のパスコースを切っていた。

 シティの攻め手は左サイドから。大外に張るWGのスターリングを噛ませて、インサイドハーフのグリーリッシュがエリア内に突撃していくスタイルである。突撃したIHがもともといたスペースには後方からメンディが登場。スターリング、メンディ、グリーリッシュのトライアングルでエリア内に進むスタイルだ。

 シティがさすがなのはこの3人の関係を立ち位置を変えながら機能させる部分まで昇華させていたこと。原則に沿った仕込みをするからこそなのだろう。

 しかし、シティはトッテナムを崩し切ることはできなかった。理由はいくつかある。1つはシティが大外で優位を取れなかったから。特にスターリングと対面するタンガンガがマッチアップをかなり優勢に進めたことが大きかった。そのため、グリーリッシュが深い位置に入っていくことからしかチャンスを作れない。

 さらに、ネガトラにおける脆弱性も大きな課題だ。インサイドハーフのグリーリッシュが高い位置をとるため、アンカー周辺のスペースは空いてしまう。逆サイドのIHのギュンドアンも特にバランスをとってアンカー脇まで下がるなどもしなかったので、フェルナンジーニョは広い範囲を一人でカバーしなければいけなかった。

 そのためにSBがナローに構えたのでは?とも思うけど、説明したように結局メンディは高い位置に出ていくため、アンカー脇のプロテクトはできない。どうしてナローに構えてビルドアップするのかはまだあまりピンとこない。

したがって、いちいちスパーズのカウンターは致死性のもの。ルーカスやベルフワインは中央のスペースからドリブルで容易にボールを運ぶことが出来ていた。

 スパーズはそのカウンターから先制点。たびたび脆さを見せていたシティの左サイドをソンが破壊。シティはアケとメンディの連携がうまくいかず、ソンにシュートコースを与えてしまった。

 シティは後半、スパーズの中央のプロテクトが甘くなる分フェルナンジーニョを使える場面は増えたが、IHがサイドへのチェックを強化したため、シティはサイドからの打開がなかなか難しくなる。特にこういう泥臭い仕事はあまりやりたがらなさそうなアリが黙々とプレスバックとチェックを繰り返していたのが印象的だった。

 徐々にスパーズを混乱させていた旋回も鳴りを潜め、シティは単調な攻撃を繰り返すように。最後はデ・ブライネの力に頼りやや息を吹き返した感があったが、ゴールをこじ開けることはできなかった。

 新システムの試運転感が否めないシティに対して、不具合をカウンターから90分間つき続けたスパーズ。ケインの去就や保持時の崩しのバリエーションなどの課題はあるが、まずは上々の滑り出しといっていいだろう。

試合結果
2021.8.15
プレミアリーグ 第1節
トッテナム 1-0 マンチェスター・シティ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:55‘ ソン
主審:アンソニー・テイラー

第2節 ウォルバーハンプトン戦(A)

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■エースの帰還で劣勢を覆す

 マンチェスター・シティを撃破し、最高の開幕を飾ったトッテナム。この日はそのメンバーとシステムを焼き直してのスタメンとなった。あの日のシティが不思議だったのはビルドアップで低い位置のサイドを使わなかったこと。頑なにその部分を使わなかった分、トッテナムのナローな前線の空けたワイドなスペースをあまりうまく使うことができなかった。

 一方でウルブスは保持時にそういったこだわりはない上に、基本的にはシンプルにワイドを使える配置。ということでトッテナムの守備の『効いてる』感は前節よりも薄かった。

 そんな中で先制点を取ったのはトッテナム。やや幸運な判定でのPKだったが、ウルブスの失い方が悪かったのは確か。裏を取られてしまったところも含めて緩慢な対応を見せたツケを払うことになった。

 リードを奪われてもウルブスは攻め手が十分。トッテナムはプレスに強くあたったわけではないけど、ラインは高かったので、ウルブスはサイドの裏から攻めることができていた。トラオレの馬力でぶち抜くのはもちろん、トラオレにタンガンガが気を取られているとおもったら、ヒメネスがそちらに流れるなど工夫もバッチリ。

 押し込んだ局面でも静止状態からチャンスを作り出せるトラオレ。昨シーズンはイマイチだったけど、今シーズンは好調のようである。しかしながらフィニッシュが定まらないウルブス。トッテナムも撤退した相手を崩せるわけではないが、ロングカウンターからはやり返す匂いはしていた。

 ウルブス優位の試合のバランスが覆ったのはトッテナムの大エースがモリニューに降り立ってから。ここからスコアこそ動かなかったが、速攻も遅攻もワンランク整った感じ。どうやら今夏の残留は確定したようだが、トッテナムファンにとってはこの日の勝利と同じか、それ以上の朗報と言えるだろう。

試合結果
2021.8.22
プレミアリーグ 第2節
ウォルバーハンプトン 0-1 トッテナム
モリニュー・スタジアム
【得点者】
TOT:10′(PK) アリ
主審:スチュアート・アットウィル

第3節 ワトフォード戦(H)

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■お得意の『1-0』が炸裂

 2試合連続1-0と手堅い戦いを続けているトッテナム。この試合からはエースのケインが先発復帰。更なるパフォーマンスの向上を狙っていく。

 トッテナムは攻撃面において、長いボールを多用。ワトフォードの前線があまり強くプレスに来ないことを利用して、プレッシャーのないDFラインからサイドを変えるボールを多用する。狙っていたのは高い位置を取るSB。これで相手のSBを釣り出すことである。この動きに合わせてシャドーがSBの空けたスペースに走り込む。このランに対するワトフォードの対応は冷静で、ずらされたところをCB、アンカーと一つずつずれながら解決。1つくらいの乱数では混乱させられることはなかった。

 ワトフォードに対するトッテナムの守り方ははっきりしていた。ケインがアンカーを消し、WGのソンとベルフワインはCBを中心に監視。SBにはIHがスライドする。アンカーのスキップもその際に左右にスライド。非常に多くの運動量を強いられていた。従って、ワトフォードはこのスキップのスライドよりも早い動きで相手を左右に動かせるかどうか?がポイントになる。

 中盤を使ったスムーズなサイドチェンジや、サイドチェンジの最中で縦パスを入れるなどの攻撃における工夫がワトフォードに見られればよかったけども、そこまでのクオリティではなかった。唯一のアクセントになっていたのはサールのドリブルくらいだろうか。

 解決策を見出せないワトフォードに対して、トッテナムは攻勢に。ワトフォードの右サイドに狙いを定め、右のソンのダイアゴナルランが左サイドに流れ込むことでワトフォードにとって乱数を増やしていた。

 押し込む中で先制したのはセットプレーから。ソンの際どいコースからの直接FKは誰にも触れられることなく、得点に結びついた。

 後半も攻勢に出られないワトフォード。プレスも撤退気味のトッテナム守備陣攻略にも活路を見出せないまま時計の針は進む。結局、試合はそのまま決着。トッテナムは開幕3戦連続1-0。唯一の3連勝でリーグ首位に立つこととなった。

試合結果
2021.8.29
プレミアリーグ 第3節
トッテナム 1-0 ワトフォード
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:42′ ソン
主審:アンドレ・マリナー

第4節 クリスタル・パレス戦(A)

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■ヒートアップでババを引いたのは…

 開幕3連戦を全て1-0で片付け、上々の滑り出しを見せたトッテナム。ケインがようやくここから調子を上げていこうという矢先に今節はソン・フンミンが離脱。ソンの離脱をどうやって補うかがこの試合の最大のポイント。結果はなかなかついてこないが、ヴィエラの元で堅実さを増しているクリスタル・パレスは厄介な相手になりそうである。

 ソンが不在の2列目のポジションに入ったのはアリとルーカス。この2人は攻守に極端に内寄りのポジションを取るのが特徴。守備の時に彼らが監視するのは、クリスタルパレスのSBではなくCHである。

 顕著なのはトッテナムの左サイド側。完全に大外をレギロンに任せている。その分、ウォードは非常にゆったりとボールを持てる。アイェウの下がる動きに合わせて、ギャラガーが裏のスペースに走る動きを見せていたので、ここにボールが通ればパレスは簡単に好機を作ることができそう。それが通らないということはトッテナム的にはウォードはあえて捨てていたのかもしれないけども。

 左サイドに比べれば、トッテナムの右サイドはホイビュアがフォローに回る分、まともに機能していたように思う。しかし、このサイドはクリスタル・パレスのキャストも異なる。ミッチェルはウォードよりもボールを動かせるし、大外には預ければ突破できるザハがいる。エメルソンはこのサイドの守備には苦戦。前半終了間際にはパレスは左サイドからあわや得点という場面までいくが、これはロリスが好セーブ。事なきを得る。

 守備と同じくらい深刻だったのはトッテナムの攻撃。ルーカスが序盤に見せた単騎突破以外活路が見えず、中央で偶発的にボールを引っ掛けた時のショートカウンターくらいしか、攻撃のプランが見えない。保持も変に失うよりはちゃんと遠くに捨てることをむしろ優先しているかのよう。そのボールをチャンスにできるソンがいないとなれば、前半にシュートがなかったのもうなづける結果である。

 後半は前半と陸続き、それどころかパレスがより押し込んでいるといっていいくらい。前半は距離が遠かったウォードもハーフスペースのギャラガーにパスを通せるくらい高い位置でプレーをできていた。

 試合を大きく動かしたのはザハとタンガンガの乱闘。これで試合のテンションが上がったことで、ババを引いたのはトッテナム。タンガンガが2枚目の警告かどうかは見解が分かれるプレーではあるが、そもそもわざわざあそこまで追いかけてファウルすること自体が安易。決していい評価ができるプレーではない。

 これで一層押し込むクリスタル・パレス。本職CBがいなくなったスパーズはベン・デイビスをCBに入れて4-3-2で迎え撃つ。だが、そのベン・デイビスがハンドでPKを献上。ゴール前のぎこちなさが目立ち、得点だけが遠かったパレスがついに先制点を手にする。

 長年スパーズに苦戦したパレスに勝利を決定づける働きをしたのは新加入のエドゥアール。1stプレーで見事な身のこなしから、先制点をもぎ取ると試合終了間際には追加点。盛大にサポーターにご挨拶をすることになった。

 90分間の沈黙を続けたスパーズの攻撃陣とは対照的にワンプレーでセルハーストパークに火をつけたエドゥアール。内容も結果も全てがくっきり明暗が分かれた一戦となった。

試合結果
2021.9.11
プレミアリーグ 第4節
クリスタル・パレス 3-0 トッテナム
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:76′(PK) ザハ, 84′ 90+2′ エドゥアール
主審:ジョナサン・モス

第5節 チェルシー戦(H)

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■当たらなかった先制パンチからの横綱相撲

  アルゼンチン派遣組やソン・フンミン、ダイアーなどの負傷組も戻り、ある程度の主力のメンバーを揃えることに成功したトッテナム。ロメロはリーグ戦のスタメンデビューの一戦となる。

 トッテナムがチェルシー相手に準備してきたやり方は強烈な先制パンチを浴びせようというもの。基本的には高い位置から人を基準にひたすらハメて時間を奪い取る。多分、ここまで見てきたプレミアの試合の中で一番圧力をかけた立ち上がりだったのではないだろうか。まるで敵陣から絶対ボールを出してはいけない縛りでサッカーをしているかのように見えた。

 普段と異なり、ソンを中央に移してGKまで積極的なプレスを行うトッテナム。GKにケパが入ったこともあり、連携面に不安があるチェルシーはやや圧に屈しかけるような危ういビルドアップになる場面もあった。中盤では水漏れしそうになるところをアンカーのホイビュアがカバー。トッテナムのハイプレスが生じる歪みのツケを払っており、ハイプレスはそれなりに機能していたと言っていいだろう。

 カウンターに移行しても攻撃は脅威となるものを披露できていたトッテナム。20分の場面のレギロンのオーバーラップなど、チェルシーは最終ラインで水際の対応を迫られる場面も。ややカウンターで不発感のあるチェルシー相手に優勢に試合を進めた。

 だが、この時間帯を境にトッテナムは徐々にトーンダウン。プレスを緩めて自陣深くまで撤退する場面も出てくるようになり、チェルシーは保持で時間を作れるようになった。押し込んだ後の攻撃のクオリティは両チームに差があった感じ。こなれているチェルシーに対して、トッテナムはやや手詰まり感が出るようになった。

 ハーフタイムに動いたのはチェルシー。カンテを入れて5-3-2にシフト。攻守にいろんな改善を狙える交代のように思えるが、その効果が炸裂する前に先制点がチェルシーに入った印象。チアゴ・シウバのCKからの得点で一歩前に出る。

 先制した後のチェルシーの布陣変更の効果はえぐかった。5-3-2の守備陣が相手だと、トッテナムの保持は前半以上に停滞感を伴うものに。ボールを左右に回しながら、打開を図るもほぼ手はなかったといっていいだろう。

 プレスに関しても後ろの人数を増やしたチェルシー相手には体力を使ってしまったトッテナムは相手を捕まえ切ることができず。得点前から中盤のボール奪取で効果の片鱗を見せていたチェルシーのHTの交代策はリードを奪ってからより凄みを増すようになった印象だ。

 そのきっかけとなったカンテのミドルで追加点をあげると、ここからはチームの格の違いを見せつける感じ。試合終了間際にはリュディガーが叩き込み3点目で試合を一気に決めた。

 トッテナムの強烈なプレス攻勢による奇襲は、裏を返せば真っ向から組み合っても差があることを認める故とも取れる。そのチーム力の差をまざまざと見せつけたチェルシー。ここまでアウェイはアーセナル、リバプール、トッテナムと続いているが、未だに無敗。リーグ制覇に向けて上々の滑り出しと言えるだろう。

試合結果
2021.9.19
プレミアリーグ 第5節
トッテナム 0-3 チェルシー
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
CHE:49′ チアゴ・シウバ, 57′ カンテ, 90+2′ リュディガー
主審:ポール・ティアニー

第6節 アーセナル戦(A)

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■揺らぐ余地なく真っ赤に染まるノースロンドン

   レビューはこちら。

 9月の頭には首位から高みで最下位のアーセナルを見下していたトッテナム。だが、そこからの連敗で立場は大きく変化。この一戦で敗れてしまうと連勝を重ねてきたアーセナルに順位をひっくり返されてしまう可能性すらある。

 試合は立ち上がりからアーセナルの保持が中心の展開に。トッテナムは今季おなじみの3トップ+3センターで中央を封鎖する六角形システムを焼き直してこの試合に臨む。

 アーセナルはシティも苦しんだこのシステムを非常に機能的に破壊した。左の大外のティアニー、右の大外のサカとウーデゴールをまんべんなく使い、まずはトッテナムのIHを広げる。アーセナルはトッテナムの六角形の内部にトーマスとジャカを残しているのがミソで、彼らが気になるトッテナムはこれまでほどスムーズにサイドに六角形をスライドさせることができない。

 中盤の3枚の距離が広がると今度はIH-アンカーの間にアーセナルは縦パスを入れるようになる。これが攻撃のスイッチングになる。配球センスが非常に優れていたのがガブリエウ。内に入れるか、外に散らすか、奥を狙うかの判断が素晴らしかった。

    中でもジャカとの関係性はピカイチ。自陣低い位置まで引いてホイビュアを背負いながらワンタッチで奥に送る流れはこの日のアーセナルの攻撃のスイッチが入る肝だった。これにより、前半から得点を重ねていくアーセナル。ウーデゴール、サカ、スミス・ロウは絶好調でスピーディなアタックを演出。

   近年はさえないパフォーマンスに終始しがちなオーバメヤンもポストと守備に奔走し、自らの得点だけでなく最前線からチームを引っ張る活躍を見せた。

 対するトッテナムは苦戦。アーセナルのプレスに対して中央にボールを入れることはできず、ケインとソンに丸投げのやり方では厳しい。アーセナルもこの放り込みを予期していたようでCHとDFラインは非常にコンパクト。ケインを逃がさないホワイトの守備の意地も見えた。

 ホイビュアの負荷を軽減するスキップの投入と、レギロンのパートナーとなったブライアン・ヒルの活躍で後半は多少は盛り返したトッテナム。だがそれも慰め程度にしかならない。

 シーソーゲームがトレードマークのノースロンドンダービーだったが、この試合に関してはそれは当てはまらない。熱狂するエミレーツのファンの声援を背に攻守に圧倒したアーセナルが順位表でもトッテナムを交わして今季初めてのトップハーフ入りを果たして見せた。

試合結果
2021.9.26
プレミアリーグ 第6節
アーセナル 3-1 トッテナム
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:12′ スミス・ロウ, 27′ オーバメヤン, 34′ サカ
TOT:79′ ソン
主審:クレイグ・ポーソン

第7節 アストンビラ戦(H)

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■パワーバランスの変化の兆し

 ノースロンドンダービーの完敗からリカバリーの一戦となるトッテナム。3連敗という苦しい状況で迎えるのは前節オールド・トラフォードで勝利を挙げたアストンビラである。

 トッテナムはメンバーこそ大幅に入れ替えなかったものの、フォーメーションを4-2-3-1に変更。極端な中央偏重から中央とサイドにバランスよく人員を配置する形に変更した。フォーメーションの変更が効いたのか、それとも単にホイビュアとスキップの併用が効いたのかは微妙なところだが、守備が前節よりも落ち着いたのは確かだろう。

 しかしながら、攻撃における手詰まり感は相変わらず。アストンビラは5-3-2だが、この日は前から必死にプレッシングするスタイル。アストンビラのWBが前に出ていき、SBから時間を奪うことで、トッテナムの後方は出しどころがなくなってしまう。

 苦し紛れのケインもこの日は全く背負えず。カンファレンスリーグでは得点を決めたようだが、プレミアで劣勢時の攻撃の起点となれるほどは復調していないようだ。アストンビラのCBの出足の良さもトッテナムの前線を苦しめ続けた。

 そんなときに頼りになったのはソン。裏抜けとPA内の斜めの走りこみの組み合わせでアストンビラの守備網に風穴を空ける。アストンビラのプレスが不十分で、トッテナムが高い位置までボールを持つことが出来、敵陣まで押し込むことが出来た際は、ソンの動き出しに合わせてPA内に侵入する。

 先制点はそのソンの裏抜けで奥行きを作る形からスペースの空いたバイタルからホイビュアがミドルを打ち抜き、トッテナムが先制する。

 一方のアストンビラはプレスまではハマるものの、そこから先の一手でゴールに迫るところの詰めの甘さが目立つ。時間と共に背負ってヨシ、裏に抜けて良しのマッギンの存在感が増えてくる。

 フォーメーションを変えたとはいえ、トッテナムの4-2-3-1は中央もサイドもバランスよく賄える形のはずなのだが、ケインとエンドンベレの1stDF部隊がろくに制限をかけないので、ホイビュアとスキップの負担は時間を追うごとに増えていった。

 真ん中に起点を作ることで徐々に攻撃の機会を得るアストンビラ。得点はワトキンスとラムジーが中央でねばったところから。ラムジーのケアにロメロが出ていった分、中央で空いたスペースに入り込んだワトキンスが同点ゴールを決める。

 だが、この試合を決めたのはソン。左サイドからドリブルで裏をとり、再度ラインを押し下げると最後はターゲットのオウンゴールを誘発するクロス。後ろでルーカスでいたこともあり、ターゲットはイチかバチかでクリアするしか手段がなかったシーンである。今のトッテナムの中心はケインではなくソンかもしれない。

 中盤戦以降はCHも含めた6人で必死にビラの攻撃を押し返したトッテナム。PAの人垣で最後の最後までアストンビラの攻撃を体を張ってしのぎ、連敗を3で止めることに成功した。

試合結果
2021.10.3
プレミアリーグ 第7節
トッテナム 2-1 アストンビラ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:27’ ホイビュア, 71‘ ターゲット(OG)
AVL:67’ ワトキンス
主審:クリス・カバナフ

第8節 ニューカッスル戦(A)

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■高揚ムードで迎えた1000試合目は尻すぼみ

 憎きマイク・アシュリーという暗黒期にサウジアラビア資本の到来というウルトラCでピリオドを打ったニューカッスル。少なくともニューカッスルファンの多くはアシュリーの手からクラブが離れるというただ一点においてだけでも諸手を挙げて歓迎しているといった状況だ。

 そのため、この日のセント・ジェームズ・パークの雰囲気は異様だった。試合開始前から観客のボルテージは最高潮。客席にはサウジアラビアの王族のようなコスプレをしているサポーターまでいる始末だった。

 異様だったのはファンだけではない。ニューカッスルの選手たちもやる気満々。おそらく、ここから大きく手が入るであろうチームに対するアピールという側面が大きいのだろう。立ち上がりからシャカリキにプレスに行ってトッテナムを追いつめる。

 ニューカッスルが得た1点目はこの日の彼らの勢いにトッテナムが気圧されたかのようだった。怯んだトッテナムの守備はニューカッスルの自陣に迫ってくる勢いに耐えることが出来ず、最後はエリア内でウィルソンが叩き込みあっという間に開始から2分で早々に先制点を得る。

 しかし、落ち着いてしまえば現段階でどちらに力があるのかというのは明白である。トッテナムがニューカッスルのプレスを1つ外し、前に運ぶことさえできれば何の問題もなし。特にライン間のエンドンベレまでボールを運びさえすれば攻略ルートは選び放題。

 トッテナムのバックスは特に足元に長けた選手はいないが、ニューカッスルの中盤が展開が落ち着いている時に誰をどう守ればいいのかという点を整理できていなかったため、ダイアーやロメロは縦にパスを入れる勇気さえ出せばチャンスを作れる状況だった。

 大外を使って奥行きを作りエンドンベレの技ありシュートでまずは同点。そして、ケインの裏抜けであっさりラインブレイクをして追加点。トッテナムは目の前の状況に向き合って黙々とやるべきことをやっていた。CBは徐々にフィードに慣れてきたようで対角へのエメルソンへのパスなど、問題なく前進できるポイントを見つけて、ニューカッスルのプレスの心を折っていった。

 一気に厳しい状況になったニューカッスル。サン=マクシマンのカウンター、エメルソンを狙い撃ちしたロングボール、交代選手が入るたびに勢いが蘇生する前プレ。彼らの持っている武器はこんなところだろうか。

    プレスの効力の持続性を考えると交代選手が機能したとは言い難い。展開力を買われたであろうシェルビーはあっさりと退場。2枚目のファウルは確かに致し方なかったが、カウンターの打ち合いで警告で相手を止める機会が増えるであろう状況で1枚目のような不用意なラフプレーで警告をもらったのは、交代選手として試合の展開を読む力に欠けていたといわざるを得ない。

 というわけでトッテナムがやることは、交代するたびに蘇生する彼らのプレスに向き合うことくらい。難易度の高いわけではないミッションを淡々とこなしたスパーズ。最後の最後で1点差に追い込まれるオウンゴールを喫したのはご愛敬だが、試合のはじめ15分以外は彼らが支配したといって差し支えのない流れ。歓迎ムードに冷や水をぶっかけたトッテナムが連勝を飾った。監督として1000試合目の指揮となったブルースにとってはニューカッスルの監督として最後のゲームになってしまった。

 この試合は観客の中で急病人が発生するトラブルがあった。ひとまずはサポーターの方は容態が安定したようでなにより。レギロン、ダイアー、ヘイデンをはじめ、勇気をもって適切で迅速な処置に当たった両軍の選手、スタッフには大きな敬意を表したい。

試合結果
2021.10.17
プレミアリーグ 第8節
ニューカッスル 2-3 トッテナム
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:2′ ウィルソン, 89′ ダイアー(OG)
TOT:17′ エンドンベレ, 22′ ケイン, 45+3′ ソン
主審:アンドレ・マリナー

第9節 ウェストハム戦(A)

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■崩しきれなかった籠城作戦

 上位対決となったロンドンダービー。CL出場権を狙いトップ4争いの主導権を握るために負けられない一戦である。

 試合は互いに深いDFラインから入る慎重な立ち上がりとなった。特に深いDFラインが顕著だったのはウェストハムの方。トッテナムのCBには持たせて良し、1stプレスラインは相手のCHと深めに設定する。そして相手のラインが前進するたびに素直にラインを下げる。

 トッテナムはCHがDFラインに入り、トップ下のエンドンベレが中盤に入ることで相手を引き出そうと試みるが、ウェストハムの守備陣はほぼその誘導には乗らない。その分、レギロンは高い位置を取るがそれでも相手のDFの裏を取るまではいかず。深い位置からボールを運ぶルーカスや、ソンとケインに早めに当てたりもしてみるが、結局はウェストハムがラインを下げる速度より早く、相手を下げさせる場面が見当たらない。

 一方のウェストハムの保持においては2列目が絞りながら中央からスムーズに進むルートを消す。六角形を使いながら相手を閉じ込める感じまではいかなかったけど、今季トッテナムが意識している中央を締める指針にそぐうやり方である。

 だけども、ウェストハムはトッテナムほどは困らない。裏への攻撃からゴールに迫ったり、大外からボールを進めることで動線を確保。ウェストハムはソーチェクがエリア内に突撃する時間を作れるか、スキップがハーフスペースを埋めるのをが間に合わなかったときの逆サイドの大外などからクロスでチャンスを作っていく。

 劣勢をスコアレスでしのいだトッテナムは後半徐々に盛り返していく。スキップ、エンドンベレあたりがエリア内に出ていけるようになり攻撃に厚みが出てくる。

 しかし、先制したのはウェストハム。いける!と思った矢先にレギロンのパスミスから得たCKで先制するウェストハムはしたたかである。

 ここからは彼らの得意な籠城作戦。トッテナムはエメルソンも含めてSBに高い位置を取らせることで反撃を試みる。SBがとる高い位置をベースに考えれば、レギロンに代えてブライアン・ヒルというのはファイアーでもなんでもなく、役割にあった選手交代といってもいいくらいだった。

 しかし、結局追いつくことはできなかったトッテナム。したたかなウェストハムにからめとられ、上位追撃のチャンスを逃すこととなった。

試合結果
2021.10.24
プレミアリーグ 第9節
ウェストハム 1-0 トッテナム
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:72′ アントニオ
主審:ポール・ティアニー

第10節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)

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■より悪い方が負けた

 リバプールに歴史的な大敗を喫し、窮地に追い込まれたスールシャール。ひとまずは様子見と言った様相だが、次の代表ウィークまでの成績次第では再度進退の危機に晒されることになる。一方のトッテナムもインパクトとしては地味ながらウェストハムになかなか厳しい内容の敗戦を喫している。こちらも連敗は避けたいところである。

 ユナイテッドは5-3-2のフォーメーションでトッテナムを迎え撃つ。フレッジとブルーノ・フェルナンデスを同じ高さで並べるというちょっと変わった形で守っていることからもわかるとおり、相手の守備位置に合わせて人にぶつける形でこの試合に臨む。ぐちゃぐちゃにされた前節のリカバリーとしてまずは人への意識を強くシンプルにというユナイテッドの守備であった。

 トッテナムはこれに対してCHが低い位置に下がったりサイドに流れたりなどどこまでついてくるかを試すように。2列目で言えばソンも同じような動きを行う。ただ、今のトッテナムはケインに全体を押し上げることが期待できないため、後ろに重たい動きをした時に陣地回復が厳しくなる。そうなると、結局ソンへの裏狙いの一発が主流に。どうしてもこれだとチャンスがニッチになってしまう。トッテナムは前半からまともに敵陣を脅かすことができなかった。

 トッテナムは守備でも苦戦。今までは中央を固めた結果、サイドが薄くなった!という感じだったけど、今節はただ4-2-3-1に並んだままホルダーを放置しつつ、ズルズル下がるという流れの連続でそもそもどう守りたいのかがよくわからなかった。決してユナイテッドの保持が良かったわけではないけども、サイドに流れる仕事を増やしたIHと対角のパスを駆使し、幅方向を使いながら前に進んでいく。

 トッテナムはソンを軸とした縦のギャップ、ユナイテッドは対角パスを駆使した幅を使いながら前進を狙う。この形で先制できたのはユナイテッド。ファーに流れるような形から仕留めたロナウドの見事なフィニッシュで前に出た。

 後半もスピードが上がらないままの攻撃を行い続けるトッテナム。縦横無尽に動き続けるソンへの依存度が下がらず、交代選手も攻撃の核になれず。孤立する前線とそれを支えられない中盤のボール回しでただただ時間が過ぎていく。

 ユナイテッドは後半はやや急ぎすぎ感もあったが、どちらかといえばカウンター型のトッテナムに対してはボールを持たせたかったのかもしれないし、そもそもちょっと急げば崩せそうなカウンターチャンスが多かったことも否めない。

 結局そこからはFWがカウンターを二発で加点したユナイテッド。トッテナムは文字通り何もできずに完敗。前節は決して見られなかったニヤリとした表情を見せたスールシャール。ひとまずは肩を撫で下ろしたことだろう。

試合結果
2021.10.30
プレミアリーグ 第10節
トッテナム 0-3 マンチェスター・ユナイテッド
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
Man Utd:39′ ロナウド, 64′ カバーニ, 86′ ラッシュフォード
主審:スチュアート・アットウィル

第11節 エバートン戦(A)

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■続く試行錯誤の苦労

 コンテを迎えて初めてのリーグ戦となったトッテナム。ミッドウィークのカンファレンスリーグでは就任後の初陣を勝利したが、リーグ戦でも同じように結果を残せるか。

 エバートンは中盤の間伸びが目立っていることで失点が嵩んでいるチーム。この試合では4-3-3を採用しつつ、間伸びの主要因になりやすいIHの飛び出しを抑制しつつ戦っている。必死に手綱を握りしめながら間伸びしないように慎重に慎重に戦っているように見えた。

 そんな試行錯誤中のエバートンを相手に回して、3バックのトッテナムは保持に時間をかけるとどうしても前進が難しい。特に中盤と前線のライン間での選択肢が非常に気になった。トッテナムが保持、エバートンが非保持の局面においてはうまく試合を落ち着かせていたと言っていい部分である。

 早い攻撃においてもトッテナムはなかなか光を見いだせない。特にケインはちょっと周りを使う余裕がなくなっていたように見える。前線がタメながら、周りを使う!みたいなシーンはチーム全体で少なく、カウンターから得た時間の貯蓄を浪費しながらゴールに向かい、使い切ってしまったらどん詰まりというのがトッテナムの攻撃の主なパターン。トッテナムはエバートンをずらしながら前進していく、時間の貯蓄を作り出していくようなポゼッションはまだできていない。

 トランジッション局面においても、ファウルによって止めるシーンが目立つトッテナム。ただ、エバートンも遅攻になると解決策が見いだせない。リトリート時は5-4-1になるトッテナムの守備陣に対してサイドを回してのクロスしか選択肢がなく、簡単に跳ね返されるシーンもしばしば。カットインできるグレイが唯一試合を動かせる可能性がある選手だった。

 トッテナムの攻撃で効いていたのは両WBがオーバーラップする場面。時間のタメを両WBに送り込むことができたシーンはチャンスになっている。オーバーラップに関してはレギロンは比較的脅威になっていたが、エメルソンはまだ上がるタイミングが遅く、高い位置を取る前に時間の貯金を使い切ってしまう場面が多かった。それプラスチームとしてWBに時間を送り込める場面が少なかったという問題も乗ってくる形。

 後半になっても両チームはゴールに迫る場面を作れず。トッテナムはアタッカーを下げる慎重な判断になった分、前への推進力が削がれてしまい前半以上にゴールに迫れるシーンは減った。終盤のポストにミドルが直撃したシーンくらいだろうか。

 エバートンはアランをアンカーに据える交代が功を奏し、裏へのパスからあわやPKという場面を作り出すが、これはOFRでの判定変更でノーファウルに。その後はこちらも比較的守備的な交代カードに終始し、その上交代で入ったホルゲイトが一発退場というあまりいい終盤を過ごすことはできなかった。

 監督交代の有無によらず試行錯誤中の両チーム。その苦悩を感じることができるスコアレスドローだった。

試合結果
2021.11.7
プレミアリーグ 第11節
エバートン 0-0 トッテナム
グディソン・パーク
主審:クリス・カバナフ

第12節 リーズ戦(H)

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■息切れをしとめた逆転勝ち

  前半の主導権を握ったのはアウェイのリーズ。最終ラインは基本はクーパー、フィリップス、ジョレンテの3枚だったが、この試合では1列前の左サイドに入ったストライクの存在が上下動しながらビルドアップを手助け。トッテナムのプレス隊を回避するためのキーマンとなる。

 攻撃もその左サイドを中心に大外を回すような闘い方がメインだった。ストライク、ハリソンを中心に内側のゲルハルトなどの中央の選手との壁パスでエリア内に侵入しながらクロスをラストパスとして上げる形がお決まりのパターン。ブロックの外から抉るような形でトッテナムを攻め立てる。

 一方のトッテナムはやはりこの試合でも早い展開でないと得点の匂いはしなかった。WBの大外での抜け出しを基準にする形はコンテになってから押し出している部分。それだけに最終ラインからのフィードはもう少し磨きたいところ。マンマーク志向の強いリーズにこれだけCBが持たされてしまうというのは少し考えものである。

 遅い攻撃になると一気にこじ開けられなくなるトッテナム。ルーカスがボールの引き出しに奮闘してはいたが、早い展開からWBの抜け出しを使う形以外はいまひとつだった。

 前半終了間際のリーズの先制点は狙い通り左サイドを大外から崩したもの。ハーフタイムを迎える直前にノルマとなる先制点を手にする。

 後半はホームのトッテナムが徐々に盛り返していく。リーズは前線だけでなく中盤より後ろのところのマンマークが効かなくなってしまい、トッテナムに押し込まれる時間が増えていく。加えて、トッテナムはケインとソンに背負わせれば個人で勝てることを思い出したようで、中央で長いボールを起点として前進していく。前半よりも重心は高く保つことができている。

 中央での高い起点で押し込むと、レギロンのクロスでPA内の陣形を乱したところでホイビュアのシュートで同点。PA内であまりにも守備陣がパスを簡単に通しすぎてしまったリーズであった。

 攻守に運動量が落ちたリーズはこの後も厳しい状況に。ルーカスのドリブルに思わずファウルを犯すと、FKからこぼれ球をレギロンが押し込んで勝ち越し。レギロンは嬉しい初ゴールとなった。

 リーズにとって救いだったのはトッテナムに試合をコントロールする術がなかったこと。スキルの面でもそうだけど、セセニョンのようなWBの攻撃的な控え選手を積極的に使っているところとかを見ると、コンテはそもそも落ち着かせる気がなかったように思う。リーズにもチャンスはある終盤戦だった。

 カウンターでの優位性は動かさせなかったトッテナムがなんとか逃げ切りを決めてコンテ体制初勝利。終盤にバテたリーズをきっちり仕留め、再始動となる白星を掴んだ。

試合結果
2021.11.21
プレミアリーグ 第12節
トッテナム 2-1 リーズ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:58′ ホイビュア, 69′ レギロン
LEE:44′ ジェームズ
主審:アンドレ・マリナー

第14節 ブレントフォード戦(H)

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■見え始めた良化の兆し

 前節のバーンリー戦は豪雪のために中止。他のプレミアのチームと異なりゲーム間隔があいているため、コンディション的には優位が予想されるトッテナム。今節は昇格組のダークホースとのロンドンダービーとなった。

 試合はトッテナムの進歩が見られる内容といっていいだろう。共に3バックだが、前線の噛み合わせは微妙に違う。トッテナムが意識していたのは左サイドからの前進。ムベウモの横、オンエカの手前から前進することでオンエカを自陣側に引き寄せるトッテナム。

 おそらく、トッテナムが用意した対ブレントフォードの崩しのノッチはこのIHの移動から始まるギャップのところだろう。オンエカが動けばそのスペースに前線から降りてくるソンか、デイビスによって押し上げられたレギロンが入り込む。CB起用のデイビスが1列目を越えるドリブルが出来るのもいい感じ。そうなった場合はホイビュアが低い位置に下がってバランスを取る。

 この左サイドの柔軟な動きにブレントフォードは自慢のハイプレスがあまり効かない状況に。保持においても3CB+WBがかみ合わされながら外に外に誘導されて前進が難しい。高い位置を取るトッテナムのWBの裏を取れた状況はあまり多くない。セットプレー絡みで早々に点をとったトッテナムが内容もスコアもリードする展開だ。

 後半のトッテナムは速攻から追加点。ケインへの長いボールの収めからサイドから裏を取り、最後はソンがゲット。速攻にはかなり屈しやすいブレントフォードの面々をアッサリ打ち破ってしまった。

 全体的にみてもこの日はトッテナムの完勝だろう。まだ途上ではあるが保持における相手のプレスの動かし方や、サイドのCBの高い位置を取っての攻撃参加など、今までの路線とは違うアプローチも徐々に浸透してきている。

 コンテ流が馴染みだしてきたトッテナム。欧州カップ戦後には現状の出来に不満を漏らした指揮官だったが、少しずつ兆しは見えてきている。

試合結果
2021.12.2
プレミアリーグ 第14節
トッテナム 2-0 ブレントフォード
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:12′ カノス(OG), 65′ ソン
主審:ジョナサン・モス

第15節 ノリッジ戦(H)

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■異なるソリューションで同じ課題に立ち向かう

 両チームとも3バックのフォーメーション。それに対して前線から厳しくチェックをかけていくという立ち上がりとなった。ともに内側を閉じながら相手を外にプレッシングをかけていくのが特徴的な試合だった。

 ノリッジはそれに対して純粋に従うようにボールを迂回させて攻撃を行う。狙いは外からボールを循環させて、高さを維持する最終ラインの裏への抜け出し。プッキとアイダの2トップをWB-CBの間から抜けさせる形でチャンスを狙っていく。

 一方のトッテナムは相手の守り方に逆らうアプローチ。5-3-2のノリッジは3-4-3のトッテナムよりも内側をより固める形なのだが、インサイドのルーカス、ソンにパスを入れるトライをすることで固めている中を純粋に破壊するというやり方でゴールに向かう。

 互いに異なるやり方の中で先にゴールに辿り着いたのはトッテナム。反転からのワンツーによる前進で一気にシュートまでこじ開けてしまう。やや強引ではあったが、狙い通りの形で先制点を得たのはスパーズの方だった。

 その後も愚直に外から裏を狙うアプローチを続けるノリッジ。内側にボールを入れるトライは失敗してしまうと被カウンターのリスクがあるため回避するのは理解できる。とはいえ、できれば大外で戦えるマッチアップは欲しかったところ。そこで勝負できないとなると流石にトッテナムは守りやすい。

 この日の守備で際立っていたのはサンチェス。後半のノリッジは徹底的に左サイドから裏を狙っていたが、早めに潰してくるサンチェスを越えるのにかなり苦労。数回無事に越えることができてはいたがアイダやサージェントといったアタッカー陣がガッカリなシュートで台無しにしてしまう。

 そんな守備での貢献が光ったサンチェスが2点目を取ると試合はほぼ決着。内を固めていたノリッジに脆さが出るようになり、最後はそのインサイドをソンにきっちり破壊されて試合を仕上げられてしまう。

 3バックに対して外に押し出すように守るという同じアプローチに対して、異なるルートで解決策を見出した両チーム。相手の狙いに逆らうような形での解決を目指したトッテナムが3ポイントを獲得した。

試合結果
2021.12.5
プレミアリーグ 第15節
トッテナム 3-0 ノリッジ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:10′ ルーカス, 67′ サンチェス, 77′ ソン
主審:ジャレット・ジレット

第18節 リバプール戦(H)

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■構えて刺すことで優位を得る

 乱暴な分類でいえばコンテのサッカーは比較的保持に主眼を置いた攻撃的なものにラベリングされるものと思っていた。だけども、この試合ではトッテナムはリバプールに対して完全に迎撃姿勢。3バックというよりは5バックで自陣を埋めながらリバプールを自陣で待ち受ける形となった。

 5バックはなるべく動かさずにリバプールのSBに対してはIHが出ていって前で止める。エンドンベレには過酷な仕事のように思えるが、最近のリバプールの攻撃は右サイドによっており、エンドンベレのサイドはストロングサイドではない。逆サイドのアリはこうしたタスクワークが出来るタイプの選手。なるべく5バックを動かさないというオーダーに応える動きを見せていた。

 ただし、エンドンベレは守備ではアリほど貢献できなくとも、先制点の起点にはなることができた。ウィンクスの素晴らしいボール奪取からエンドンベレに渡り、最後は縦のケインへの綺麗なラストパスになった。縦を塞げなかったミルナーとケインの動き直しが光った場面であった。

 だが、リバプールは前半のうちに追いつく。ベン・デイビスのボールロストはちょっと攻めにくいが、マネに裏を取られて中の陣形を乱した挙句、クロスでジョッタと競り合えなかったサンチェスにはもう少しやりようがあったのでは?と思ってしまう。

 後半もリバプールの勝ち越しゴールはサンチェスのサイドから。1on1をジョッタに振り切られてしまい、左右をピンボールのように行きかった流れから最後はロバートソンが押し込んで見せた。

 しかし、直後にアリソンが決定的なミスから失点の献上。飛び出しのタイミングを誤ったアリソンをかわしたソンは無人のゴールにボールを押し込むためのボーナスステージだった。

 こう書くとリバプールはもったいないミスで勝ち点を落としたように映るかもしれない。だが、迎え撃ってカウンターの流れでむしろこの日はスパーズの方が試合を優勢に進めていたともいえる。リバプールのカウンター迎撃が怪しい場合は大体3センターがキャパオーバーになっていることが多い。

    ミルナー、ケイタ、そしてモーガンの3センターでは強度の高いゲームではこれだけスカスカになってしまうのも当然といえば当然。それを尻ぬぐいできるファン・ダイクがいないとなれば多少リスクを犯してもアリソンが飛び出したくなる理由もわからなくはない。ロバートソンの退場と許されたケインにスポットが当たりがちな結末となったが、内容的にもリバプールには勝てなかった理由が十分にあった。

 劣勢が引き金になったミスから勝ち点を落としたリバプール。逆にトッテナムはコンディションが懸念される中、久しぶりに元気なパフォーマンスをファンに届けられた上に勝ち点1を得ることが出来た上々の結果といえるだろう。

試合結果
2021.12.19
プレミアリーグ 第18節
トッテナム 2-2 リバプール
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:13′ ケイン, 74′ ソン
LIV:35′ ジョッタ, 69′ ロバートソン
主審:ポール・ティアニー

第19節 クリスタル・パレス戦(H)

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■決着は5分間で

 プレミアの中でもいち早くコロナ禍見舞われてしまい、前節からようやく復帰したトッテナム。内容としては上々で、コンテらしさが浸透してきた様子が見てとれた。

 この試合でも非常に積極的なスタンスを見せたトッテナム。パレスはいつも通り3-2-5型のビルドアップを行おうとしたが、トッテナムのトップの素早いチェイスに苦戦。アンデルセン以外のバックスはそこまでボール保持のプレス耐性が強いわけではないのでパレスは苦しむこととなった。

 パレスは3-2-5型を解除して、4バックにシフトするなどの変化をつけて見せたが、トッテナムは3トップが同サイドにスライドしながらプレッシングをかけることができていたので、噛み合わせを外される形になってもビルドアップのルートを制限しながらプレッシングをかけることができていた。

 トッテナムのビルドアップはホイビュアが落ちたところから最終ラインを押し上げる形。この試合で言うとタンガンガが持ち運ぶシーンが目立っていた。最終ラインの人数は割と過剰気味で、その分対角のパスを多用することで幅を使いながらの攻撃を駆使することができていた。幅を広げることができるならば、当然空くのは内側。スキップが反転することで前進をしたりなど、攻撃のバリエーションを増やした姿を見せることができていた。

 コンテのトッテナムの旗印となっているWBのオーバーラップも好調。サウサンプトンに対して、トッテナムが優位な状況で試合が推移した。そんな状況が決定的になったのは32分のこと。カウンターから一気にゴールを陥れたトッテナム。パレスはトムキンスのボールロストが痛恨。懸念のバックラインの保持のスキルが完全に仇になってしまった形である。

 このケインが決めた先制点は試合を決定づける流れが始まる合図となった。直後にルーカスが追加点を決めると、その3分後にザハが2枚目の警告を受けて退場することになってしまった。ケインの先制点からザハの退場まではわずか5分。パレスは5分間で1人の数的不利と、2点のビハインドをあっという間に背負うことになってしまった。

 パレスは4-4-1で構えるも前半から状況は変わらず。これまで何度も指摘しているが、仕組みでうまくいかない時にこのチームが頼りたいのはザハ。10人で仕組みがうまくいかなくなってしまった状況で、頼りたい人がすでに退場していると言うのはなんとも皮肉である。

 後半はソンの得点で仕上げを決めたトッテナム。3得点の完勝でロンドンダービーを制した。

試合結果
2021.12.26
プレミアリーグ 第19節
トッテナム 3-0 クリスタル・パレス
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:32′ ケイン, 34′ ルーカス, 74′ ソン
主審:ジョナサン・モス

第20節 サウサンプトン戦(A)

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■単調なスタンスと固定メンバーが呼んだ取りこぼし

 過密日程に挑む両チームのスタンスは対照的。サウサンプトンは大幅にメンバーを入れ替える一方で、トッテナムは固定したメンバーをリピート。慣れたメンバーでの継続を選んだコンテに対して、ハーゼンヒュットルはフレッシュなメンバーで戦うことを選んだ。

 サウサンプトンが変えたものはメンバー選考だけではなく戦い方も。5バックをベースに相手の3トップ+WBに噛み合わせる形で守りやすく戦うやり方を採用。

 サウサンプトンのプレスは出足が良好。決して足元が得意というわけではないトッテナムのバックス相手を苦しめる。フレッシュなメンバーを採用したことにより、組み合った状態でのフィジカルはサウサンプトンが優位に。サウサンプトンはプレスで捕まえさえすれば有利な状況で試合を進める。

 その一方で、プレスを脱出した際にはトッテナムに一気に展開が傾く。トッテナムの3トップにサウサンプトンの3バックが対峙した時は圧倒的にトッテナムが優位に立つことに。ただ、トッテナムはややこの3トップの裏狙いへの単調さが目立つ。彼らのいい時は対角にパスを通しながらWBを絡めた攻撃ができる時。そのような幅を使った攻撃はできていなかった。

 そうした展開の中で先手を取ったのはサウサンプトン。プレスで押し込む時間帯を増やすと、スローインからウォード=プラウズがダイナミックなシュートを叩き込んで先制する。

 だが、トッテナムもすぐに反撃。最終ラインの裏に抜け出したソンをサリスが倒して一発退場+PK献上という憂き目にあう。追いつかれた上に数的不利という苦境に陥ったサウサンプトン。5-3-1という形で守ることになる。

 初めはサウサンプトンがホルダーを放置しながら、ラインをむやみに上げるためトッテナムに有利な時間帯が続いていたが、時間の経過につれて徐々にサウサンプトンが割り切るようになると展開は急変。

 裏一辺倒しかなかったこの日のトッテナムは工夫がなく、ラインを下げられてしまってはできることがない。プレスに至っては全然かける余裕がなく、ここにきてメンバーをリピートしたことが足枷になってきている感じ。

 トッテナムは右の奥のスペースからクロスを上げることにフォーカスして攻め込もうとするが、サウサンプトンはニアを引っ掛けながら対応し籠城。トッテナムは守備を動かせない状況で沈黙する。

 結局試合はそのまま終了。前半だけ見れば余裕で逆転が可能だったトッテナムだが、割り切れられた相手を壊す手段はなし。10人相手に手痛い引き分けを喫することになった。

試合結果
2021.12.28
プレミアリーグ 第20節
サウサンプトン 1−1 トッテナム
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:25′ ウォード=プラウズ
TOT:41′(PK) ケイン
主審:シモン・フーパー

第21節 ワトフォード戦(A)

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■両者なりの均衡によるモノトーン

 まず、この試合で目についたのはワトフォードの割り切りである。2トップを前に残してSHは低い位置をカバーしながら時には6バック化しながら守りに行くのがこの試合のワトフォードである。

 ワトフォードのこのやり方は明らかにこれはトッテナム対策。トッテナムの戦い方がうまくいくのはピッチの幅を使いながら3トップ+WBで攻めることができている時。ラニエリは『ならトッテナムが使いたい幅に初めから人を置いたらどうするの?』と考えてこのやり方を敷いたのだろう。10人のサウサンプトン相手でも崩しきれなかった前節のトッテナムの保持の拙さもこのやり方の追い風になったかもしれない。

 ラニエリの4-4-2というとミラクルレスターを思い出す人も多いと思うけども、ワトフォードにはオルブライトンのように4-4-2のSHとして堅実な役割をこなすことができる選手がいない。クツカがこの試合でSHとして起用されていたのは、その部分を強引に補おうという発想からであろう。

 というわけで試合は非常にモノトーン。6バック型のワトフォードに対して、愚直にトッテナムが大外からラインを押し下げながらクロスを上げる形を繰り返す。左サイドのレギロンとデイビスのタンデムはいつもよりもさらに積極的。ワトフォードは攻撃を跳ね返しながらロングカウンターに備える。それを90分間延々と見続ける。そんな感じの試合である。

 どちらかといえばこの均衡の中で優位を見出していたのはトッテナムの方。トッテナムがサイドに相手を引っ張り出すことで、徐々に中央のプロテクトが怪しくなるワトフォード。危ない!と思ったら最後の最後のぎりぎりのところでシソコが最終ラインに入ってボールを跳ね返し緊急避難をすることもあった。

 そうなるとよりワトフォードの最終ラインはさらに深くなる。トッテナムにとってはセカンドボールも大きなチャンス。空いたバイタルからミドルを放つことで、大きなチャンスを得ることができていた。

 それに比べるとワトフォードは物足りない。まぁ、6バックの完成度は正直こんなもんだろうなという感じだけども、2トップ主体のロングカウンターは絶対もっとできた。トッテナムに牙を剥くことができないところには不満があったはずだ。

 スコアが動かなかったこともあり、想像通りこの均衡は90分続いた。そして、試合を決めたのはセットプレー。96分に試合を決めたのはソン・フンミンの美しい軌道のFK。これに合わせたダビンソン・サンチェスが決勝となるヘディングをゲット。彼らなりの均衡の中でも優位を見出していたトッテナムが勝ち点にそれを反映する先制点を手にして見せた。

試合結果
2022.1.1
プレミアリーグ 第21節
ワトフォード 0-1 トッテナム
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
TOT:90+6′ サンチェス
主審:ロベルト・ジョーンズ

第17節 レスター戦(A)

■最後の最後で結果が内容に追いつく

 バックラインにチョーダリーを入れてまで3バックを採用したレスター、ソンの不在で中盤を増やすシステム変更に舵を切ったトッテナム。どちらのチームも緊急対応感があり、年末年始を越えてなおバタバタしていることを感じ取れるスカッドだった。

 レスターのビルドアップはそこそこ安定はしていた。GKを活用できる際はヴェスターゴーア、ソユンクがシュマイケルを挟むように立つ。ケインが無理にプレスをかけてくることはしなかったので、レスターは落ち着いてボールを運べてはいた。前に進み、GKを活用するのが難しくなったらチョーダリーが最終ラインに加わり3枚に。トッテナムの2トップに対して数的有利で後方からボールを運ぶ。

 彼らの問題はこうして落ち着いてボールを運ぶ機会をうまく確保できなかったことである。撤退時の守備が非常に不安定で、深い位置まで押し込まれる上にPA内の対応が非常に危うかった。自陣の深い位置からのカウンターを強いられてしまい、落ち着いてポゼッションする機会があまりなかった。

    ダカの先制点はタンガンガを引っ張り出して得たワンチャンス。ダカとルックマンの2トップのエキセントリックなつなぎで得点に結びつけた展開とは逆らうもの。余談だけど、この試合のレスターの崩しはこの得点のようにボールから極端に近いプレイヤーが細かくパスをつなぐことを狙うものが多かった。

 レスターが押し込まれた展開に関してはトッテナムの保持がうまくいっていたという見方もできる。5-3-2にフォーメーションを変えたトッテナムはケイン、ルーカス、ホイビュア、スキップの行動範囲を広く設定。前のブロックを3-2で構えて中央封鎖を狙うレスターに対して、上下動や左右にポジションを動かしながら相手がどこまでついてくるかという駆け引きをトッテナムは見事に行っていた。

 WBを活用できなければ始まらない!というこれまでのトッテナムの攻撃からはだいぶテイストが変わった感じ。ケインはもともと裁量が多いほど輝くタイプではあるけど、ホイビュア、ルーカスあたりがマディソンとチョーダリーというレスターの守備が怪しい右のハーフスペース付近をきっちり破壊できたのは上出来。コンテ就任後とは異なるカラーでソンの不在を補ってあまりあるおつりがくる内容といっていいだろう。

 こちらはむしろ、ケインの同点ゴールまでたどり着くまでにやたら時間がかかったなという印象である。このシーンのようにレスターはハイラインになったらなったで、後方のスピード不足がさらされてしまうという苦しい展開。ルーカスとケインにスピードに乗られたらもう詰みであった。撤退しても出ていっても守備は怪しかった。

 後半もトッテナムの優勢は変わらず、相変わらずシュマイケルは忙しい展開。ホイビュアのシュートを止めた選手(多分トーマス)がチームを救ったりなど、シュマイケル以外にもファインセーブを見せる選手が出て来たくらいである。レスターは途中から2トップのルックマンを2列目に落とし、守備にさらに人数を割く修正を施さなくてはいけなかった。

 だが、そんな劣勢でも得点をするのはレスター。1点目と同じく細かいパス交換からマディソンが決めて勝ち越す。しかし、試合はここで終わらず。トッテナムは後半追加タイムに右サイドのドハーティの抜け出しからベルフワインが押し込むと、直後のリスタートから再びベルフワインが加点し、劇的な大逆転。

   ベルフワイン、1点目の直前のプレーでブチギレイエローもらっていたので冷静にシュート決めてるのはなんかおもしろかった。ごセレブレーションでめっちゃ観客席に入ろうとしたのを止められてたのを見る限り冷静ではなかったのかもだけど。誰か知らんが2枚目の警告が出るのを防いだチームメイトに感謝すべきである。

 幕切れは劇的だったが、試合を通してみると97分にようやく内容に結果が追いついたという印象。レスターは試合を通じて見られた脆さが最後の最後で悪い方に傾いてしまった。

試合結果
2022.1.19
プレミアリーグ 第17節
レスター 2-3 トッテナム
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:24′ ダカ, 76′ マディソン
TOT:38′ ケイン, 90+5′ 90+7′ ベルフワイン
主審:ジョナサン・モス

第23節 チェルシー戦(A)

■3強の影は踏めず

 シティの首位叩きのチャンスも逃し、直近4試合のリーグ戦で得た勝ち点は3。首位の背中よりも、後方から迫りくるロンドン勢とユナイテッドの足音が気になってきたチェルシー。今節の対戦相手はその追ってくる足音を形成する1チーム。ヌーノ時代の借金をコンテになり着々と返し、CL返り咲きを狙うトッテナムである。

チェルシーにとっては影を断ち切りたいし、トッテナムにとっては争いに引きずり込みたい。互いの思惑が交錯するロンドンダービーは腹の探り合いの立ち上がりになった。

両チームともフォーメーションは模索中。前節から4バックも試し始めたチェルシーは今節は4-1-4-1でのスタートに。一方のトッテナムはソンの不在での試行錯誤。今節はセセニョンとドハーティをSHに置く形での4-4-2での対戦となった。

 互いの守備の陣形から読み取れたのは『そっちの攻撃はボールを好きに持てばいいよ!固めれば崩されないでしょ!』という思惑。ボールを持っているときはCBには過度にプレッシャーにいかずに見守りながら撤退を優先する。

 その分、攻撃の際の狙いどころははっきりしていた。チェルシーの場合、トッテナムのサイドの守備は中央に比べてずれやすいことを利用していた。特に狙い目としたのは左のSBのデイビスのところ。WGのツィエクがファジーな動きでデイビスを引き寄せると、その空いたスペースにマウントが流れて裏を取る。ここからサンチェスを引っ張り出しエリア内のルカクを狙うという動き。かなり再現性が高く見られた動きだったが、トッテナムは対応できずに非常に苦しんだ。

 トッテナムの反撃はカウンターから。チェルシーはコバチッチとマウントという両IHが高い位置を取ることが多く、ボールをロストした瞬間はアンカーのジョルジーニョとの距離が遠い。トッテナムはとりあえずこのアンカー脇に突撃をすること。1枚剥がすでもよし、縦パスを入れるでも良し。アンカーの脇で前を向いて直線的に攻め立てることができれば、自陣からでもチェルシーに反撃をすることができる。

 どちらのチームも限られた手段、限られた機会でのクリティカルな攻撃。先にパンチを入れるのがどちらか?という戦いに決着をつけたのはツィエク。芸術的な放物線を描いた。ミドルはロリスを越えてゴールネットに吸い込まれる。前節はほぼ喜ばなかったツィエクも控えめながら笑顔を見せたのが印象的だった。

 後半にはセットプレーからチアゴ・シウバが追加点。トッテナムを一気に突き放し勝負を決める。トッテナムは後半にプレスを強化したものの、エンジンがかかるのが少し遅かった印象。メンバー的にはドハーティ、ベルフワインなど前節のご褒美の意味合いもありそうだったトッテナムだったが、この日は完敗に。

 行けると思ったCL争い兼クラスのチームが、勢いに乗れていない3強に負けるのは今季のプレミアのあるあるでもある。近づいても影は踏ませない。ひとまずはチェルシーはCL出場権争いに巻き込まれることを回避したようだ。

試合結果
2022.1.23
プレミアリーグ 第23節
チェルシー 2-0 トッテナム
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:47′ ツィエク, 55′ シウバ
主審:ポール・ティアニー

第24節 サウサンプトン戦(H)

■狙った形から得点が重なる撃ち合いに

 立ち上がりにいい入りをしたのはサウサンプトン。ボールを握りつつ、ライン間のトッテナムのアタッカーに対して厳しいプレッシングをかけながら前を向かせることを許さない。

 前回対戦のこのカードは10人のセインツがトッテナム相手に撤退守備でドローで凌ぎ切った試合だった。5レーンさえ埋めてしまえば、たとえボールを握られようと押し込まれようと致命的なダメージを負うことはない。それがサウサンプトンの前回対戦での学びである。

 というわけでこの試合のセインツの守備のポイントとなるのはSHである。プレス時にはCBにまでプレッシャーをかけたい。だけども、5レーンを埋めることは優先。ラインを下げられることを予知するとどちらかのSHが最終ラインに入り、トッテナムの使いたいスペースを埋める。

 SHが戻ることでトッテナムが得意な大外→大外のパターンは制限できるけども、戻りが間に合わなければ当然サウサンプトンは危険に晒される。15分のレギロンの決定機はその典型と言えるだろう。従って、トッテナムとしてはサウサンプトンがSHのプレスバックを間に合わせる前に攻撃を完結させたい。これができたときは少なくともファウルを得るところまでは行けることが多かった。

 それに加えて、最近のトッテナムは徐々にチームとしての攻撃の幅は広がっている。今までは横幅一辺倒だったが、この試合ではルーカスの降りる動きに合わせて右サイドの選手が続々と追い越す形で縦に揺さぶりをかける。幅を守りたがる5バックにはかなり効くやり方である。先制点はルーカスのタメからホイビュアが追い越す形でベドナレクのオウンゴールを誘発する。

 サウサンプトンは左サイドから反撃。トライアングルから左サイドを抜け出すと最後はブロヤが同点ゴールを仕留める。セインツは内外を行き来するエルユヌシのポジションが秀逸でエメルソンは終始振り回されていた。

 押し込まれることで増えるセットプレーもトッテナムの悩みの種。正確無比なウォード=プラウズのプレースキックにトッテナムはぎりぎりの対応を強いられる。ピンチ続きのハーフタイムまでのラスト10分はトッテナムファンには非常に長く感じたはずだ。

 後半は互いにプレスをかけながらの主導権の奪い合い。そんな中でも前半と同じく崩しのバリエーションを見せたトッテナムが優勢。ライン間、裏抜け、そして速攻とルーカスの貢献度は高かった。そして、そのルーカスの抜け出しから勝ち越し点をゲット。この試合で繰り返された崩しにおけるフリーランが実ることとなった。

 しかし、試合はまだ終わらず。サウサンプトンは右サイドからウォード=プラウズのクロスでエルユヌシの同点弾を呼ぶと、直後には全く同じ形からアダムスが逆転弾。前半にトッテナムを苦しめた彼の右足が後半も輝きを放つこととなった。

 終盤はレギロンに代えてベルフワインを投入し、ファイヤー気味に追撃を仕掛けるトッテナム。一旦はベルフワインの劇的な同点弾が決まったかと思ったが、これはオフサイドで取り消しに。前回対戦とは打って変わって火力の高い試合でトッテナムを制圧したサウサンプトン。前回対戦に続き、コンテに一杯食わせたハーゼンヒュットルだった。

試合結果
2022.2.9
プレミアリーグ 第24節
トッテナム 2-3 サウサンプトン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:18′ ベトナレク(OG), 70′ ソン
SOU:23′ ブロヤ, 79′ エルユヌシ, 82′ アダムス
主審:デビッド・クーテ

第25節 ウォルバーハンプトン戦(H)

■ミスに付け込まれて乗せられた重石

 やや普段と異なるメンバー構成を敷いたトッテナム。おそらく、ウルブスという相手を意識したスタメン選びをしたのだろう。前節のアーセナル戦でのウルブスを見る限り、裏に抜ける動きを駆使しなければ彼らの5バックを壊すのは難しい。なので、裏に抜けながら壊すことができるということに軸足をおいたメンバーを選んだのだろう。

 新加入のベンタンクールとパートナーを組んだウィンクスのCHコンビはまずは裏を視野に入れて、前線の動き出しに合わせたパスを供給する。左のWBのセセニョンという人選もレギロンに比べてスピードに特化したもの。鋭い抜け出しについていくためのものだろう。守備での軽さはトレードオフにはなるが、狙いとしては十分わかるスタメン選びといえる。

 というわけでトッテナムの狙いはあくまで縦方向のギャップ。ウルブスの守備陣が降りてくるケインにどこまでついてくるかなどを探りながら、最終ラインに穴をあけたスペースにソンやルーカスが走り込む。ソンが迎えた決定機はその日のトッテナムのスタメンの狙いが詰まったもの。ソンと同じ高さで攻撃に参加したセセニョンも含めて、理想的な攻撃の形であった。決められなかったけども。

 だが、狙いの攻撃が見られたからといってトッテナムの試合運びがうまくいったかというとそれはまた別の話になる。前半のうちにウルブスはあっさり先制。右サイドのネベスのミドルの処理からの混戦で最後はヒメネスが押し込む。前節、ウォード=プラウズが演出した逆転劇がフラッシュバックしたトッテナムファンは多いのではないだろうか。確かに、セットプレーの流れという難しい局面ではあった、それぞれの選手が目の前の状況に懸命に対応していたかは微妙。ネベスへの寄せを怠ったデイビスはその代表例だ。

 同じく前半のうちに入ったウルブスの2点目はトッテナムのバックラインのミスがらみから。自陣深い位置で行われたトッテナムのパスワークだったが、ロリスのパスがマイナス方向に流れてしまったことでウルブスのプレスを誘発。ここからボールを奪ったウルブスが一気に攻め込み、最後はデンドンケルが追加点を奪う。見事なプレッシングからのショートカウンターの完結。お手本のような相手のミスに付け込んだプレスだった。

 トッテナム視点からいうとロリスのミスといえばそれまでなのだが、デイビスのフィードもひどい。よりによって内側にアバウトに蹴り込むという選択は『カウンターをしてくれ』といっているようなもの。大きくタッチライン際に蹴るコースを選択していれば、ここまでひどい形でカウンターを受けることはなかったはず。ロリスからのパスが乱れた時点でつなぐことを諦め、いかに安全にボールを捨てるかを念頭においたプレーを選択すべきだった。

 2点のリードを奪われたトッテナムはクルゼフスキを投入し、4-2-3-1へ移行。ケインとクルゼフスキの2か所を中盤の収めどころとして反撃に挑む。が、中央の起点をつぶすのはウルブスの得意分野。フォーメーション変更のあおりを受けて大外に追いやられたソンがダイレクトにCBを出し抜く機会が減ったこともあり、このトッテナムのアプローチの変更が効いたといえるかは微妙なところである。

 後半は結局裏にボールを蹴る速い展開に終始することを決めたトッテナム。そうなると、スピードに難があるクルゼフスキはついていけなくなっていく。あの手この手を試したトッテナムだったが、ウルブスの守備ブロックを壊せる解決策を得られないまま試合は終了。速い段階で課された2失点という重石を跳ね返すことはできなかった。

試合結果
2022.2.13
プレミアリーグ 第25節
トッテナム 0-2 ウォルバーハンプトン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
WOL:6‘ ヒメネス, 18’ デンドンケル
主審:ケビン・フレンド

第26節 マンチェスター・シティ戦(A)

■少ない機会を見事な仕上げに昇華しダブル達成

 チームとしての陣容の整い方も前年の順位もシティの方が上、だが勝利を挙げたのはエース不在のトッテナム。というのが開幕戦のこのカードの成り行きだった。チーム史上初めてのCLファイナルの切符を鼻先で掠め取られたあの日から、シティにとってはトッテナムはうざったい邪魔者になっている。今節の対戦においても状況は同じ。無敗ロードを突き進むシティはリーグ戦3連敗という下げ潮のトッテナムと相対することになる。

 ヌーノは前の六角形を使いながら彼らの使いたいピッチ中央を封鎖してのショートカウンターの設計に取り組んだ。

 だが、コンテはヌーノとはやや異なるやり方でシティに対することになる。ケインに次いで高い位置を取るのはCHのベンタンクールとホイビュアの2人。SHのソンとクルゼフスキは低い位置まで下がって自陣を埋める役割を託される。

 そうなった時の懸念点は当然敵陣に侵攻できるの?という点である。それが可能であることを証明したのが開始早々のカウンターである。よく見るドラマの再放送くらい既視感のある、ケインのタメからのソンの抜け出しというシティ戦の鉄板パターンで決定機を作ると、最後の仕上げはクルゼフスキ。抜擢された新戦力の初ゴールでいきなりトッテナムが前に出る。

 シティはここからトッテナムの5-4-1のブロック崩しに挑む。立ち上がりはベルナルドを中央、右にスターリング、左にフォーデンという最近では珍しい並びにトライしたが、前半の早い段階で左からスターリング、フォーデン、ベルナルドとしっくりくる並びに戻した。大外からWBのポジションを動かしながら壊していくのがシティの強さだが、この日のトッテナムはWBにSHを重ねる2段構えで大外をプロテクトしていく。それゆえ、大外を1枚ずらしてのニアのスペースを開けるやり方は通用しにくい。やるならば全てを剥がし切るか、大外からピンポイントで放り込むかのイメージである。

 前者の部分で効いていたのはカンセロ。大外からトッテナムの警戒が手薄なエンドライン側からのドリブルで敵陣に迫っていく。そして、同点ゴールを生んだのは後者のパターン。スターリングのクロスにぎりぎり対応したロリスのこぼれ球をギュンドアンが押し込んだ。

 後半、より支配的になったシティ。トッテナムは攻めに出る機会を得ることができない。だが、前半に比べると単調なクロスが増えた感があり、トッテナムは跳ね返しが容易になってしまっている印象だった。

 そして、トッテナムは少ない保持の機会も目一杯生かそうというスタンス。ボールを持てた時はプレスも回避しながら押し上げる場面もあったし、カウンターにも枚数をかけられるように。少ないチャンスから生まれたケインのゴールはいずれも流れながらSBに競りかけるような形でクロスに合わせる状況。自陣深くの守備のタスクをこなしながら敵陣に出ていくことができたホイビュアやクルゼフスキの勤勉さは素晴らしかった。

 後半追加タイムの劇的な同点弾すらひっくり返されて勝ち点に結びつけられなかったシティ。これでトッテナムに対してはシーズンダブル。前半戦は自軍への加入騒動で不在だったケインに2得点を決められるというおまけつきでシティの無敗記録は止まることになった。

試合結果
2022.2.19
プレミアリーグ 第26節
マンチェスター・シティ 2-3 トッテナム
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:33′ ギュンドアン, 90’+2(PK) マフレズ
TOT:4′ クルゼフスキ, 59′ 90’+5 ケイン
主審:アンソニー・テイラー

第13節 バーンリー戦(A)

■誤算が重なり難所で膝をつかされたスパーズ

 シティを撃破し、勢いに乗るトッテナムが乗り込んだのはターフ・ムーア。冬の市場を越えて、一気に難所となったバーンリーのホームスタジアムである。

 バーンリー相手ということで当然トッテナムはボールを握っての前進を狙っていく。バーンリーの4-4-2に対して、初期配置のズレを活かすように3-4-2-1のベースポジションを守りながらボール保持を行う。

ソンを裏抜けに使ってまずはライン間を広げたり、ライン間が広がったら縦パスを入れて逆サイドに多くな展開をしたりなど、固い守備のチームに対してのアプローチとしてはオーソドックスではある。

 だけども、トッテナムには誤算があった。まずはバックラインがプレスに弱かったこと。バーンリーのプレッシングは4-4-2でトッテナムの物に対しては噛みあうものではないのだけど、多少時間を奪ってしまえば、トッテナムのバックラインは落ち着いてボールを動かす余裕は全くなさそうだった。

 トッテナムの誤算はもう1つ。彼らが思ったよりもボールを取り返せないことである。マンチェスター・シティならば撤退型の5-4-1で待ち受けてもいいだろうが、バーンリー相手にそれをやってしまうというのはいささか弱腰すぎる気がする。

プレスをかければ蹴ってくれるバーンリーに対して、その背中を押すようなプレスもできない!となれば待っているのはまったりとした攻守の切り替えが遅い展開。その先にあるのはトッテナムの攻撃回数の機会損失である。

 さらにバーンリーはここから非保持において5-3-2に変形。トッテナムが遅攻において使いたい幅を埋めにかかる。バーンリーとしてはあとは中央をどれだけコンパクトに保てるか。序盤に引き続き、MF-DFライン間の管理が甘くなっていたことはあるので、トッテナムとしては付け入るスキがないわけではなかった。

 スコアレスで折り返した後半。早々の決定機をモノにできなかったトッテナムだったが、交代選手として入ったウィンクスを中心にライン間に縦パスを刺す形でのチャンス創出を狙っていく。

 トッテナムが保持で攻め立てる機会は前半よりは増えたものの、大勢は前半と同じようにざっくりとしたもの。そんな中で試合を動かしたのはセットプレー。セセニョンの軽微なファウルを活かしたバーンリーが先手を取る。決めたのはファーのベン・ミー。トッテナムはこの場面ではロメロが競り負けてしまった。この後のセットプレーにおいてもバーンリーはファーのベン・ミーを活用していたので、割と狙い目にしていた部分かもしれない。

 先制されて大変なことになったトッテナム。大外にクルゼフスキ、ベルフワインを置く超攻撃的な布陣にシフトし、大外から抉りにかかる。だが、猛攻は最後まで実ることはなかった。

大仕事をやってのけて勢いに乗りたかった矢先に足元をすくわれたトッテナム。ターフ・ムーアで膝をつかされ、CL出場権争いからは一歩後退してしまった。

試合結果
2022.2.23
プレミアリーグ 第13節
バーンリー 1-0 トッテナム
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:71′ ミー
主審:ピーター・バンクス

第27節 リーズ戦(A)

■悩みの深さが段違い

 ここ5試合のリーグ戦で4敗と黒星が溜まり、CL出場権が少し霞んできたトッテナム。対するは大量失点を繰り返し、ついに失点がリーグ最多になってしまったリーズ。こちらはバーンリーの快進撃によって迫り来る降格ラインの影が怖苦なってきたところである。

 互いに苦しむ同士の一戦だったが、両チームの格の違いというか悩みの深さは歴然だった。リーズのこの試合の難点は特徴であるマンマークであった。ベースポジションである4-1-4-1からトッテナムの3-4-3に噛み合わせるように動くのに時間がかかってしまう。特に、捕まえるのが遅れるのがWB。右のドハーティにはWGのハリソン、左のセセニョンにはIHのダラスがそれぞれマークにいくのだが、保持時のポジションから大きく動かないと相手を捕まえられない。

 このマークの遅れがトッテナムの先制点に繋がることに。セセニョンを捕まえきれなかったリーズはドハーティへのラストパスを許して失点。WB to WBで得点を決めたトッテナムが先手を奪う。

 以降もペースはトッテナム。守備時は思いっきり自陣に引いて、攻撃時はカウンターで一気に攻撃に打って出るという形でメリハリをつける。前線が縦パスを受けるのがうまかったのもトッテナムにとっては非常に大きい。縦パスが一本通ればトッテナムは前進ができる。ケインやクルゼフスキは相手に捕まっていたとしてもあっさりと背負って、最低限ファウルを勝ち取ってくることができていた。ホルダーへのチェックが弱かったこともあり、自陣に押し込まれても陣地回復をすることができていた。

 リーズにチャンスがなかったわけではない。トッテナムの撤退守備には怪しさがあったのは確かで、人数をかけているほどの堅さは感じなかった。だが、リーズはこの好機を生かせずに無得点のまま。

 得点の好機を活かしたのはトッテナムの方。右サイドからのカットインでクルゼフスキが追加点を奪うと、ケインがさらに得点を挙げて30分までに3点目。前半で試合の大勢を決めてしまう。

 迎えた後半、マンチェスター・ユナイテッド戦の成功体験を受けたリーズは2枚替えで勢いを出していく。このやり方は効果てきめん。トッテナムは自陣からのビルドアップをミスって簡単にピンチを招くなど、前半に引き続きリーズの得点が決まってもおかしくない決定的な場面も少なくはなかった。決定機の数だけで言えば、全て決めていればリーズが追いつくのも不可能ではなかった。そういう意味ではトッテナムの苦悩がなかったわけではないだろう。

 しかし、リーズが攻めてくる分、トッテナムにも当然カウンターのチャンスはある。ボールホルダーを捕まえるのが遅いリーズは後半もファウルの山を量産。あっという間に警告を受けまくってしまう。WBへのチェックが遅いのは前半の流れと同じ。早い展開から幅を使った攻撃でリーズを追い詰める。

 すると仕上げは85分。ケインからソンというおなじみのホットラインでの4点目がこの試合のトリを飾る。この試合もなす術なく敗れてしまったリーズ。マン・ユナイテッド、リバプール、トッテナムとタフな1週間であったことは確かだが、内容的にもビエルサの進退が不安になる現状であることは間違いない。

試合結果
2022.2.26
プレミアリーグ 第27節
リーズ 0-4 トッテナム
エランド・ロード
【得点者】
TOT:10′ ドハーティ, 15′ クルゼフスキ, 27′ ケイン, 85′ ソン
主審:クレイグ・ポーソン

第28節 エバートン戦(H)

■シティ戦からの明確な退化

 両チームとも相手のバックラインにプレッシャーをかけずにボールを持たせる立ち上がり。したがって、試合のテンポは過度に上がらなかった。トッテナムはこれまでの試合の通りに、シャドーを下げた位置に置くコンパクトな5-4-1でエバートンを迎え撃つ。

 対するエバートンはコールマンをバックラインに加えた3バックへの可変で後方からの前進を狙う。しかしながら、アランを抑えられたこともあり、エバートンはバックラインから効果的なパスを供給することができない。エバートンのプレスの脱出口はキャルバート=ルーウィンへのロングボールに集中。そのほかの前進の手段として言えば、偶発的に1人でボールを運ぶことができるゴードンの前にボールが転がったときくらいのものだろう。

 守備においてのエバートンは後方から繋ごうとするトッテナムに対しては無理にプレスはかけなかったが、ボールロスト後は即時奪回の気配を見せる。だが、トッテナムは横に揺さぶることであっさりこれを回避する。

 ゲーゲンプレス!といえばエバートンの守り方は聞こえがいいかもしれないが、ボールに近づくだけでホルダーを捕まえるのが遅くなってしまっている。これではトッテナムに大きな展開で脱出されるのは当然。そもそもコンテ就任以降のトッテナムはWBを共に攻撃に参加させることで横幅を駆使するスタイルがベースである。

 加えて、エバートンはプレスに対して遅れて飛び込むという悪い癖がある。1失点目のゴードンのプレスもそうだし、2失点目のバックラインは軒並みそう。SBの遅れたプレスを起点にCBも出ていってさらに傷口を広げるという悪の循環がずーっと繰り返されていた。

 シティ戦では相手の選択肢を消しながら、無理に飛び込まないようなプレスで勝ち点まであと一歩のところまで迫ることはできてはいたが、この試合では勝ち点の可能性をわずかにも感じることができなかったのは残念である。

 ホルダーを捕まえるのが遅れれば、トッテナムに一気に押し下げられるのは当然だし、間に合わないのに後から無理にプレスに出ていけば、そのスペースに走られるのは当たり前。トッテナムの前線の面々にとってはそんなことは朝飯前である。

 ワイドに裏にとうまく使えたトッテナムは見事ではある。でも、この試合ではそれ以上にエバートンの拙さが目立った。シティ戦からは規律の面で明確に後退。監督が代わっても、だらっと人を捕まえにいってしまうという悪癖が邪魔をするというのはエバートンのいつものパターン。アンチェロッティにベニテスという経験豊富な指揮官でも克服できなかったこの悪癖をなんとかできなければ、シーズン終了間際には想像し得なかったまさかの結末が起きることは否定できないだろう。

試合結果
2022.3.7
プレミアリーグ 第28節
トッテナム 5-0 エバートン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:14′ キーン(OG),17′ ソン,37′ 55′ ケイン, 46′ レギロン
主審:スチュアート・アットウェル

第29節 マンチェスター・ユナイテッド戦(A)

■不安定な流れの中で輝き続けたロナウド

 マンチェスター・ダービーにおいて惨敗を喫したユナイテッドと、エバートンに大勝したトッテナム。前節の結果は対照的ではある両チームだが、この試合においてはそこまで前節の勢いの差は感じられず。どちらも明白に狙われてしまいそうなポイントがある試合だった。

 ユナイテッドにとって怪しかったのはソン・フンミンへの対応。なぜかマンマーク役にマティッチをつけて、機動力で振り切られ続ける対応を見せていた。個人のパフォーマンス面で良くなかったのは左サイドのテレス。軽さを見せてしまい、ユナイテッドのサイドに穴を開けていた。

 チームとして気になったのはユナイテッドの守備の指針。全体的にどこに誘導したいのか、どういう形で試合を進めたいのかがはっきりしないように見える。トッテナムの攻撃のスタイルを考えれば、サイドを変えさせて振り回されるのだけはどうしても避けたいはず。

 しかしながら、ユナイテッドはそうした制約をトッテナムにかけることができず、トッテナムは自由なサイドチェンジからWBの攻め上がりを生かしてユナイテッドの薄いサイドを責め続けることができた。奥行きを使うソンと大きく幅を使える攻撃の組み合わせでトッテナムはユナイテッドを攻め立てることができていた。

 特に良かったのが左サイドの関係性。デイビス、レギロンが前線とつながる意識が高く、幅と奥行きをどちらも使いながらユナイテッドの右サイドを壊すことができていた。

 チームとしての穴はユナイテッドほど目立たなかったが、個人のパフォーマンスが失点にダイレクトに直結したのがトッテナムだった。1失点目のシーンがその例である。おなじみとなってきた5-4-1のローブロックを組んでいたトッテナム。どのように動かそうな悩んでいるユナイテッドに対して、フラフラ前に出ていったホイビュア。空いたスペースに入り込んだフレッジのフリックにベンタンクールが釣られ、CH2人がいなくなったバイタルに入り込んだロナウドがミドルを突き刺す。シュートはスーパーだが、5-4-1であれだけあっさりとバイタルを開けてはいけないだろう。スーパーなミドルを呼び込んでしまう下地はトッテナム側にあったといえる。

 トッテナムは右サイドからのカットインで同点となるPKを誘発するが、ユナイテッドは即座にロナウドが勝ち越しゴール。この場面はローラインの意識が強いトッテナムの5-4-1ブロックがホルダーにプレッシャーがかかっていないにも関わらず、無理にラインを上げようとした結果、あっさりと裏を取られてしまうという場面だった。裏を取られたドハーティのサイドは確かに再三狙われてはいたが、そもそもラインを上げたいならば、ホルダーを捕まえにいく人を増やすなどやり方を変えないと難しいのではないかと思った。

 後半、試合の流れとしてはユナイテッドをサイドに振り回し続けるトッテナムが優勢の流れ。ただし、前半に比べるとサイドチェンジの精度がやや落ちているのは気になるところだった。久しぶりにそのサイドチェンジがスムーズにいったところがトッテナムの2点目。左サイドから奥行きを作り、マグワイアのオウンゴールを誘発する。

 しかし、この試合の主役はロナウド。81分にセットプレーからトレードマークの打点の高いヘディングから決勝点をゲット。オウンゴールをしてしまったマグワイアを挑発したロメロもこれには黙るしかないだろう。

 試合の流れは行ったり来たりしてはいたが、90分間ロナウドの主人公感が揺らぐことはなし。1点目のスーパーゴールで豪快に口火を切った圧巻のハットトリックでトッテナムを飲み込んでみせた。

試合結果
2022.3.12
プレミアリーグ 第29節
マンチェスター・ユナイテッド 3-2 トッテナム
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:12′ 38′ 81′ ロナウド
TOT:35′(PK) ケイン, 72′ マグワイア(OG)
主審:ジョナサン・モス

第16節 ブライトン戦(A)

■先導役で関所を突破

 16節の延期分は今現在延期されているカードの中で最も古いもの。前半戦に開催されるはずだったこのカードはようやくこの時期に開催。3月にしてシーズン初めての対戦となるレアケースで顔を合わせることとなったブライトンとトッテナムの一戦である。

 連敗中でなかなか結果が出ないブライトン。この日は高い位置からボールを追いかけまわし、トッテナムの時間を奪いにいく形でプレッシャーをかけていく。序盤はこのプレッシングに苦しんだトッテナム。ブライトンはボールを奪ったところからリズムをつかみ、トッテナムを攻め立てていく。

 だが、ブライトンのプレッシングには徐々にトッテナムは慣れてきた様子。20分もすれば落ち着きながらボールをもてるようになる。攻撃においてトッテナムの打開策となったのは縦方向へのパス。特にケインの降りる動きで列を超えるケースがだんだんと増えていくように。

 ブライトンはビスマを防波堤にしつつ対抗しようと試みる。ここをスムーズに超えれば一気に攻撃の道が開けただけにトッテナムにとってはブライトンの中盤は関所のようなものだった。

 立ち上がりはトッテナムのプレスに屈してあわや失点の場面もあったブライトン。だが、ブライトンの前進も20分を越えると徐々に落ち着く。こちらも相手の中盤という関所をどう超えるか勝負。しかし、関所を越える先導役となるケインの立ち位置の選手が不在。その分、中央からのクリーンな前進は難しい。

 そうした中で先制したのはトッテナム。クルゼフスキのミドルが間に入っていたロメロに当たりゴールイン。前半のうちの先制点確保に成功する。

 後半、ブライトンは立ち上がりから反撃。左サイドのククレジャを軸にサイドからのクロスで攻勢を強める。サイドは人をかけずにシンプルに。その分、中は手厚くという形で一気に反撃に出る。モペイを囮にマック=アリスターが詰めた場面はゴールに迫ったが、シュートは枠をとらえない。

 となるとここから先は我慢比べ。カウンターのトッテナムか、それとも押し込んで崩し切りたいブライトンか。ブライトンはランプティ、ウェルベックと次々に引いた相手に動きを付けられる選手を投入して攻勢を強める。

 だが、試合を決めたのはトッテナムの方。ベンタンクールの持ち上がりから裏に抜けたケインが仕留めて試合を決定づける。

後半は攻め立てる機会を得たブライトンだったが、シュートだけではなく崩しの質ももう一声といった感じ。さすがに降格までは距離はあるが、調子の上がらなさは心配でもある。

試合結果
2022.3.16
プレミアリーグ 第16節
ブライトン 0-2 トッテナム
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
TOT:37′ ロメロ, 57′ ケイン
主審:ロベルト・ジョーンズ

第30節 ウェストハム戦(H)

■間に合わなかったタイムリミット

 ウェストハムのフォーメーションは3-4-2-1。いつもの4-2-3-1とは趣を変えてきた形。おそらくこれはトッテナム対策だろう。5レーンを埋めてきちんとスペースを埋めながら迎撃するために、トッテナム戦においてそうした対策寄りのフォーメーション変更を敷いてくるチームは結構ある。ウェストハムもそのチームの1つということである。

 だが、ウェストハムにとっては想定外の事態が。それはトッテナムが積極的にラインを上げるプレッシングを行ってきたこと。とりあえず撤退を優先させることが多かった彼らが前からかみ合わせる形で追い回してきたのである。

ウェストハムは優秀なチームではあるが、ビルドアップの脱出のルートが多いチームではない。このプレッシングには相当に手を焼いていた。

 そして先制点もこのプレッシングからのショートカウンター。ズマのオウンゴールを誘発したトッテナムは10分も立たないうちに先制点を奪う。

 ウェストハムの守備は噛み合わせは良好ではあるが、後方のレーンを埋めることを優先しているため、マンマークで追いかけまわす形ではない。2列目がホルダーに交互にアタックする形で守備を行っていたが、タイミングが遅く後方に穴をあけてライン間にギャップを作るだけ。トッテナムが追加点を奪うという流れは必然の物だったといっていいだろう。この日効いていたトッテナムの裏を取る動きと降りる動きの組み合わせは得点シーンでも見られたものだった。

 2点リードを奪ったトッテナムは撤退にシフト。だが、セットプレーからウェストハムが追撃弾を奪うと、後半は反撃の姿勢を見せる。

 守備に修正を加えたウェストハム。2CHがライン間をケアすべく縦の関係を作ることで降りてくるケインに積極的にチェックをかける。横幅はシャドーが絞ることで対応。大外が多少空くことを許容する代わりに、2点目の起点になった降りる動きを規制する構えを見せた。

 攻撃面では左のWBに交代で入ったフォルナルスの存在がアクセントに。左サイドから攻め込む形でウェストハムが攻勢に出る。トッテナムはロングカウンターの武器は有しているのだけど、リードしているけどしんどい時に簡単に裏に蹴ってイチかバチかで最短でゴールを狙う選択を続けることが裏目になった時間帯であった。バレても効くかもしれない大技よりも、この時間に欲しかったのは落ち着いた保持での押し返しである。

 しかし、ELで120分を戦ったウェストハムにはいい時間のリミットがあった。徐々に攻め手が止まり、敵陣に迫れないようになると、そこから先はトッテナムの最短でゴールを狙う!という作戦の収支が合うように。ウェストハムの帰陣が遅くなったこともあり、好機を増やしたトッテナムは88分にソンのこの日2点目のゴールで試合を決めて見せた。

 フォルナルスが効いている時間に点を獲れなければ、この日のウェストハムの勝ち点獲得は厳しかっただろう。前半の負債を返し切る前にタイムリミットが来てしまったウェストハム。来季の欧州カップ戦出場権争いからは大きく後退する1敗を喫してしまった。

試合結果
2022.3.20
プレミアリーグ 第30節
トッテナム 3-1 ウェストハム
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:9′ ズマ(OG), 24′ 88′ ソン
WHU:35′ ベンラーマ
主審:アンソニー・テイラー

第31節 ニューカッスル戦(H)

■後半立ち上がりの入りが分かれ目に

 残留争いもそうだが、次の移籍市場のリクルーティングにおいても強豪相手に一旗あげるというのはニューカッスルにとって非常に重要な要素。チェルシー相手には結果を出すことはできなかったが、トッテナムに対しては結果を出してやろうという意気込みは十分である。

 ニューカッスルの守備は4-5-1で構えてやろうという意気込み。ミドルゾーンで我慢しながらトッテナムのビルドアップを退けてやろうという狙いだった。WGの両名は外を切りながら守るようにしてトッテナムの攻め手を狭くさせようとする。

 だが、これがはっきりいってうまくいかなかった。トッテナムにWGの頭の上を通されることが多く、狭く守るという本来の狙いが刺さらなかった。トッテナムの前進の起点になったのは主に右サイド。左から大きな展開をサン=マクシマンの裏でエメルソンが引き取ることで、トッテナムが一気にニューカッスルを押し込むように。

 ニューカッスルはミドルゾーンから押し込まれたものの、撤退が早いためサイドから深さを作られてもなんとか対応が可能。トッテナムのWBのクロスが単調だったため、人数さえ揃っていれば跳ね返すことは難しくなかった。クルゼフスキがカットインする形で上げるクロスは悪くはなかったが、前半はあまり回数を増やすことができなかった。

 トッテナムが良かった点は右のワイドからの前進に固執しなかったこと。裏のソン、ライン間のケインなど縦方向のパスルートも作りながら前進を狙う。特にライン間のケインを活用する形はニューカッスルにとって脅威。ソンの裏抜けによってコンパクトに維持できない陣形のなかでライン間に縦パスを入れられる形はピンチ。ポストから前向かせる形を作られると危うい状況になる。

 しかし、先制点はニューカッスル。攻撃の起点になっていたのは左サイドのサン=マクシマン。明らかに1人では対応できないエメルソンのヘルプにやたらトッテナムはわらわら人が出てくる。これにより、中央のスペースがあく。そこでファウルを犯してしまったソン。ここからのFKをシェアが叩き込み先手を取る。だが、トッテナムも前半のうちに同点に。セットプレーの流れからデイビスが同点弾を決める。

 迎えた後半、ニューカッスルの入りは最悪だった。サン=マクシマンの独善的なボールロスト、シェアの対角フィードで敵にプレゼントパス。攻撃がうまくいかないだけならまだしも、守備に悪影響を及ぼすボールの失い方だった。

 この形からのカウンターでトッテナムはチャンスメイク。前半と異なり、下手な失い方を繰り返すニューカッスルは自陣を固める時間を取れないので、クロス対応の質がグッと低下。これが後半のトッテナムの大量得点につながるように。

 後半早々にドハーティのゴールであっさりとリードを奪うと、そこから前がかりになってくるニューカッスルに裏を取る形でソンが3点目をゲット。シェルビーをバックラインに組み込み、ワイドに攻撃的な選手を入れるシステム変更をしたニューカッスル。それに対して、トッテナムはサイドからぶっ壊す形で4点目が入る。

 そして仕上げはベルフワイン。カウンター祭りで後半だけに大量4得点を決めたトッテナム。ニューカッスルは劣勢の中でなんとか食らいついていたが、ビハインドを背負った段階で許容できるリスクを明らかにオーバー。カウンター対応が崩壊してしまった。

試合結果
2022.4.3
プレミアリーグ 第31節
トッテナム 5-1 ニューカッスル
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:43′ デイビス, 48′ ドハーティ, 54′ ソン, 63′ エメルソン, 83′ ベルフワイン
NEW:39’ シェア
主審:マーティン・アトキンソン

第32節 アストンビラ戦(A)

■許してもらった大量得点

 おそらく、アーセナルファンが自分のフォロワーに多いこともあるんだと思うけども、この試合に関しては『0-4ほどの内容じゃないんじゃないか?』という意見が質問箱にいくつか飛んできた。

 質問者の想定としてはきっとトッテナムはチャンスの山を作っていたわけではないのに!ということなのだろう。確かにその通り。チャンスの量としては両チームに大きな差はないか、もしかするとアストンビラの方が多かったイメージはある。実際枠内シュートはアストンビラの方が多い。

 だけども、この試合のアストンビラはトッテナムと戦う上での足切りに引っかかってしまった感がある。開始直後の先制点に関してもそうである。ロングボールの処理をあやまり、あっさり相手にわたしたところからソンが先制点を挙げた場面である。

 華麗なパスワークを見せたわけでない分、両軍の力の差を明確に感じるゴールではないかもしれない。だが、トッテナムのような縦に速い攻撃を得意とするチームを相手にするときは、ロングボールへの対応は最低限うまくやらなければ対抗できないだろう。単純なロングボールで少ない人数で点が取れるならば、トッテナムにとってこんな楽なことはない。ビラはその形を許してしまったともとれる。

 もっとも、アストンビラにはリカバリーの機会は十分にあった。先制点以降、ペースを握ったのはアストンビラ。エメルソンの対応が怪しかったトッテナムの右サイドを軸に深さを作りながら、敵陣に迫る。

 トッテナムが安易にラインを下げたため、空いたバイタルエリアを使う余裕はビラにあったし、トッテナムのエリア内の対応もタイトとは言えなかったため、クロスにも十分なチャンスを見出すことが出来ていた。シュートがさっぱりだったイングスが本調子ならば、ビラは前半のうちに同点、もしくは逆転までたどり着けた可能性もあった。

 しかし、トッテナムに前半をしのがれると、後半のビラは再びロングボール対応に難を見せる。特に苦しんでいたのはコンサだろう。ケインに出ていった挙句、簡単に背後を使われた3点目や、サイドに流れたソンを潰し切れずに陣地回復を許すと、最後はそのソンをエリア内で離してしまいハットトリックを許してしまった4点目はいずれも直接的に失点に関わってしまった。

 ビラは中盤が前への意識が強い分、バックラインにとっては負荷の高い戦い方であるのは確かだが、さすがにここ数試合の失点への寄与を考えるとコンサには厳しい評価が下ってもおかしくはないように思う。冬の移籍以降、安定したパフォーマンスを見せているチェンバースとの序列が変わったとしても不思議はない。

 いずれにしても大量失点には原因があったということ。試合を完璧に支配したわけではないが、大量得点と勝利を手にしたトッテナムは一番楽な勝ち方を許してもらったのだ。

試合結果
2022.4.9
プレミアリーグ 第32節
アストンビラ 0-4 トッテナム
ビラ・パーク
【得点者】
TOT:3′ 66′ 71′ ソン, 50′ クルゼフスキ
主審:グラハム・スコット

第33節 ブライトン戦(H)

■North London is BHA.

 CL争いのチームは軒並み敗北している中での1人勝ちを決めたのが前節。アーセナル、マンチェスター・ユナイテッド、ウェストハムとライバルたちが続々と調子を落としているという状況でトッテナムにはここで一気に4位争いの主導権が巡ってきている状況に。

 対するはそのアーセナルを前節止めたブライトン。7試合勝ちなしを止めた勢いのまま、同じくノースロンドンに本拠異を構えるトッテナムにチャレンジする。

 ブライトンは前節のアーセナル戦では極端に左サイドに寄せながら右は浮かせるという左右をアンバランスに配置することで局所的な数的優位を作るポゼッションを行っていた。しかしながら、この試合ではそうした振る舞いは見られず。むしろ、WBを両サイドに張らせることで幅を積極的に使うアプローチに切り替えた印象。バックラインから大外への大きな展開を活かし、トッテナムにプレスの的を絞らせない。

 ポイントとなったのはブライトンがトップにCFのキャラクターが濃い人を置かないことで、幅を取りながらもサイドの人数を確保したこと。PA内の迫力が下がったことは否めないが、まずはポゼッションで相手を押し込むことを念頭に置いていた。

 押し込まれてポゼッションを続けられることに業を煮やしたのか、徐々にトッテナムは撤退型5-4-1からプレスに出てくるように。しかし、このプレスの強度はブライトンにとっては余裕をもってかわせるものだった。少なくとも、ボールを取り上げて握るということをブライトンはトッテナムに許さなかった。

 それでもトッテナムにはカウンターがある。前節は支配されながらも4点を奪うことが出来ているチームである。長いボールからのワンチャンスを生かす力は十分。だが、この日のブライトンのバックラインは押し上げがうまくコンパクト。ケインやソンに前を向かせない。クルゼフスキにとってもぴったりくっついたら離れないククレジャとのマッチアップは相性的にも悪かったはずだ。

 ブライトンのプレスに対して、バックラインからのポゼッションも前進に使うことができないトッテナム。CBは数的優位であるはずだが、プレスを受けるとあわあわしてしまい、危険な形でのショートカウンターを食らうことになった。

 前半はブライトンペースだったが、後半はブライトンのバックラインがコンパクトさを保てなかったこともあり、徐々にアタッカーが自由を享受できるようになる。しかしながら、ビスマをはじめとする中盤の防波堤は強力。トッテナムは枠内シュートにすらたどり着くチャンスを得られない。

 一方のブライトンは保持で後半の終盤に再び主導権を回復すると、サイドの3対3の局面から抜け出したトロサールが決定機をモノにして終了間際に先制。彼らしい深い切り返しから一気にフィニッシュまで持って行く形で前節に続いてトッテナムから決勝点をもぎ取った。

 試合はそのまま終了。前節に続きノースロンドンを青く染めたブライトン。2週連続でCL争いに一穴開ける形で連勝を重ねることとなった。

試合結果
2022.4.16
プレミアリーグ 第33節
トッテナム 0-1 ブライトン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
BRI:90′ トロサール
主審:クレイグ・ポーソン

第34節 ブレントフォード戦(A)

■苦手分野に追い込まれたトッテナム

 ここ数試合、相手にボールを渡しつつ、ショートパスを大事にするスタイルを貫いてきたブレントフォード。ボールを持たせられる局面が苦手なトッテナム相手にも同じ策を敷いてくるかと思ったが、ブレントフォードはここ数試合とは異なり、積極的な守備を仕掛けてきた。

 ハイプレスで相手を仕留めきる!という類のものではないが、前線からプレスで相手の攻撃を片側サイドに限定することは非常に強く意識していた様子。中央にも当然網を張りつつ、タイトなスペースの攻略にスパーズを追い込む。

 スパーズの得意分野は前線のスピードを生かした速攻と、WBとクルゼフスキによる幅を使った攻撃の二択。トッテナムはこうしたスモールスペースの攻略に追い込まれるのは得意ではない。ブレントフォードのブロックの組み方は明確で捨てるところと閉じるところの区別がしっかりしており、トッテナムが使いたいところをきっちり封鎖していた。

 よって、トッテナムが狙いたいのは時折高い位置に出てくるブレントフォードのプレッシングを退けての速攻である。それならば狭いところを攻略する必要はない。しかし、ソンとケインにはいつもの精度がなく、速い攻撃に転じた時のカウンターには威力がない。ブレントフォードのバックラインの奮闘も確かではあったが、それ以上にトッテナムの不振さが気になる展開だった。

 ブレントフォードの保持に対しては、とりあえずトッテナムは持たせて対応。ブレントフォードはローアスリウとヘンリーをSBとする4バック変形でトッテナムに挑む。

 ブレントフォードの攻め手はとにかくセットプレー。サイド攻撃主体でセットプレーをもぎ取ると、エリクセンのプレースキックを山のように浴びせかけ続けることで何とかトッテナムのバックラインをこじ開けようとする。サイドの深い位置からのスローインもロングスローが可能なセーレンセンがいれば、実質コーナーキックのようなものである。だが、ここはトッテナムのバックラインがなんとか踏ん張った。

 後半、押し込む機会が増えたトッテナム。だが、機会は増えようともブレントフォードに閉じ込められたスモールスペースを打開する以外にはこじ開ける方策はない。押し込まれてもブレントフォードがやることをブラさなかったのでトッテナムは引き続き苦しむこととなる。頼みのアタッカー陣も動き出しの量と精度が物足りず、トッテナムには決め手がない状況が続く。

 そして後半はカウンターと引き続きセットプレーでトッテナムに反撃するブレントフォード。ケインの水際のクリアや終了間際のトニーのヘディングなどいくつか惜しい場面はあった。だが、こちらもネットを揺らすことは出来ず。

 結果は痛み分け。だが、トッテナムを閉じ込めて自分たちの思い通りに展開を進めたブレントフォードの方がより手ごたえのある内容になったのではないだろうか。

試合結果
2022.4.23
プレミアリーグ 第34節
ブレントフォード 0-0 トッテナム
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
主審:マーティン・アトキンソン

第35節 レスター戦(H)

■ふわふわを終わらせた2点目の行方

 今節の日曜日を飾るのは『CL争いに真っ最中のノースロンドン勢』と『欧州カップ戦のタイトル争いでリーグ戦は二の次やで!勢』の2試合である。そのうち、先に開催されるのはCL出場権争いで一歩遅れをとったトッテナムとECLでのタイトルを目指しているレスターである。

 メンバーからして両チームのこの試合へのフォーカスには差が出ていると言わざるを得ないだろう。お決まりの主力を中心としていたトッテナムに対して、ターンオーバー組を多く起用したレスターの両チームの差は序盤の試合展開に現れていた。

 トッテナム対策だったのか5バックを敷いていたレスターだったが、このシステムでの連携には難がある。とりわけ右のユニットは怪しさが全開。オルブライトンとカスターニュが横並びという非常に珍しい右サイドには序盤は戸惑いがあった。加えて、3センターのスライドも不十分。アンカー脇を開けてしまうことでトッテナムの前線に起点を自由に与えていた。

 トッテナムのアタッカー陣はライン間で受けることが多いものの、そこから無理に反転をすることで相手にカットされることがしばしば。スピードアップが叶わない分、フィニッシュまでは向かえなかったという状況。裏に抜けるオフザボールが少なくなったことも停滞感の一因だった。

 そんな中でトッテナムはさらなるレスターの弱点を狙い撃ちする。セットプレーでの守備ではゆるさが目立つレスター。トッテナムが先制点をとった場面でも簡単にケインという最重要人物をフリーにしてしまい、あっさり失点してしまった感がある。

 しかし、レスターにも攻め手はあった。ダカのポストは収まるため、前がかりなトッテナムのバックラインの裏を狙ったカウンターは仕掛けることができる。ゆったりとボールを持てる場面に関しては、トッテナムはルーカスとエメルソンのサイドでの守り方が怪しく、このサイドは割と深くまで侵入されることがあった。レスターは5バックの守り方にだいぶ慣れてきたこともあり、1点差ながらペースを引き寄せることはできていた。

 試合はどちらにも点が入りうる展開だったのだが、次に点を決めたのも再びトッテナム。ボールを引っ掛けてカウンターから一気に攻め切る。ソンは慣れない左足での反転シュートとなったが、見事なシュート精度を発揮してみせた。

 これでレスターの攻撃は一気に沈黙。勢いに乗るソンは79分に再び左足でミドルを打ち抜き試合を完全に決める。レスターも終盤にイヘアナチョが意地を見せる一発を決めるがそれが精一杯。ふわふわした展開の中で決め手になる2点目を奪ったトッテナムが勝ち点3を手にした。

試合結果
2022.4.30
プレミアリーグ 第35節
トッテナム 3-1 レスター
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:22′ ケイン, 60′ 79′ ソン
LEI:90+1′ イヘアナチョ
主審:ジョナサン・モス

第36節 リバプール戦(A)

■選び取った勝ち点1の持つ意味は

 4冠という快挙に挑むリバプール。残されたタイトルの中で自力でどうにもならない要素が絡んでくるのが現在2位につけているリーグ戦。落としてはいけない試合は残り全部!という超過酷な状況ではあるが、彼らならもしかしたら・・・!と思わせてくれるのが今季のリバプールである。

 そんなリバプールにとって残りのリーグ戦で最大の関門になるのがトッテナム戦である。シティ、リバプールとのリーグ戦で唯一負けていないリーグ屈指の『大物食い』気質のチームはアンフィールドでCL出場権をかけた試合に挑むことになる。

 立ち上がりはわちゃわちゃするところもあったが、試合はすぐに落ち着く。ボールを持つのはリバプール。それに対してトッテナムは5-4-1のローブロックで迎え撃つスタイルである。

 トッテナムのローブロックのスタンスは自分たちのスタイルが出しやすいようにあえてボールを捨てる意味合いもあると思うが、それ以前にサイドのプロテクトとして重要な役割を果たしている感が強い。セセニョンやエメルソンはどうしても1on1の対人では後手に回りやすい。ワイドのCBやシャドーの助太刀を得やすいコンパクトなローブロックの陣形は大外で脆さを露呈しないためという部分もあるだろう。

 リバプールは後ろを守る意識が高いトッテナムに対して、なるべく高い位置でボールを横断させて少しでも横に揺さぶる形を作ることで対抗。立ち上がりにあった決定機など、頻度の問題はともかくとしてゴールに迫る精度はもたらすことができていた。

 トッテナムの狙いはもちろんカウンター。ローブロックだろうと攻撃に打って出ることができるのは彼らの強みでもある。ソン、クルゼフスキだけでなく、ホイビュアもリバプールのSBが空けたスペースに入っていくことができる。リバプール相手でもロングカウンターをやり切れる目があるというのは彼らが大物食いを達成できる所以といってもいいだろう。

 というわけで両チームの攻め方は異なってはいたが、この両チームなりに均衡した状態で推移していた。保持で崩したいリバプールとカウンターで返り討ちにしたいトッテナムの構図は90分間崩れることはなかった。

 先に動いたのはリバプール。後半、試合が動かないことで徐々に前線のアタッカーを内側に入れるやり方にシフト。大外はSBやIHに任せてエリア内に手段を多く準備する方針に切り替える。

 だが、先制点を手にしたのはトッテナム。ロリスのフィードをなぜか左の大外で受けたのはエメルソン。わけわからん立ち位置ではあったが、結果的にこのエメルソンがアウトナンバーになり、トッテナムのカウンターの推進力に。押し出される形で高い位置を取ったセセニョンからアシストを受けたのはこれが今季のリーグ戦20点目となったソンだった。

 ビハインドになったリバプールはジョッタを投入しアタッカーを増員した形で攻勢をかける。そんな中で大仕事をしたのはルイス・ディアス。ミドルシュートがリフレクトしてすっぽりと枠内に入った。ミドルシュートのイレギュラーは撤退型ブロックを組むチームの税金のようなものだと思ってる。ロリスには当然どうしようもないし、撤退して攻撃を受ける決断をした以上、こうした事態が転がり込んでくる可能性はある。

 これで両チームはタイスコア。ここで確認しておきたいのは両チームとも、それぞれの目標に対してはフォロワー側であるということ。上位にいるチームが勝ち点を落とさなければ目的は達成できない。

 そうした中でトッテナムが采配とピッチ上の振る舞いで勝ち点1を守るような振る舞いを見せたのは意外だった。彼らはこの試合に仮に勝つことができれば、ノースロンドンダービーでの逆転が可能になる。逆にここで勝ち点を落とすようなことがあれば、引き分けでも負けでもアーセナルがノースロンドンダービー以外で勝ちを逃さなければトッテナムの逆転はなくなってしまう点では同じである。

だけども、ソンを下げたりサンチェスを入れたりゲームをクローズに走ることでとりあえず勝ち点1を確保しに行ったトッテナム。そうした中でも確かにチャンスがないことはなかったけども。

 リバプールにとっては当然悔しい勝ち点1。だが、勝ち点1を選び取りにいったトッテナムにとってこの引き分けはどのような意味を持つのか。シーズンが終わり、振り返った後にターニングポイントになりそうな振る舞いだった。

試合結果
2022.5.7
プレミアリーグ 第36節
リバプール 1-1 トッテナム
アンフィールド
【得点者】
LIV:74′ ディアス
TOT:56′ ソン
主審:マイケル・オリバー

第22節 アーセナル戦(H)

■超内弁慶型ダービー

レビューはこちら。

 アーセナルにとっては勝てばCL出場権が確定する一戦。その相手となるのは同じくCL出場権を目指しアンフィールドから虎の子の勝ち点1を持ち帰ったトッテナム。両者の勝ち点差は4。CL出場権争いの直線対決となる大事な大事なノースロンドンダービーだ。

 トッテナムの苦手な展開はボールを持たされることというのはすでに自明。そうした中でアーセナルがどれだけ嫌がることをするのか?というのが注目な立ち上がりだった。そういう意味ではアーセナルは比較的自分たちのスタイルを貫く形でトッテナムに向かっていったといっていいだろう。

前線からのハイプレスはいつもより人数をかけたものであり、ジャカは高い位置に常駐する形でトッテナムの最終ラインにプレッシャーをかける。この形は手ごたえとしては悪くなかった。バックラインの3枚はいずれも時間を奪いに来るプレスにあわててしまい、うまく対応ができなかった。

 意外だったのはこれにエメルソンが冷静に対応したこと。低い位置の右の大外でボールを引きとり、クルゼフスキやベンタンクールの手助けを借りながら縦パスのコースを作り、アーセナルのハイプレスを打ち破るシーンがあった。

 アーセナルはハイライン破りに対して冨安やガブリエウが粘り強く対応。トッテナムのアタッカーに走られるシーンもなんとかつぶし切って見せる。

 アーセナルの保持はマルティネッリのいる左サイド偏重。右から左へのボール供給で大外のマルティネッリまでつけて単騎での突破を図る。2枚付くことがありつつも向かっていったマルティネッリだったが、味方との連携が合いきらず得点のチャンスまではたどり着かない。

両チームとも攻撃の形が刺さり切らない中で先手を取ったのはトッテナム。PK判定はアーセナルにとっては厳しいものではあったが、クルゼフスキのカットインからファーへのクロスというのはトッテナムの得意な形。この試合初めて得意な形でゴールに迫った場面が得点を呼んだといってもいいだろう。このPKをケインが決めてトッテナムが先制する。

 もう1つ流れを変えてしまったのはホールディングの退場。ソンへの対応で前半の早い時間に警告を受けていたにも関わらず、ピッチ内でも指揮官でも修正を施すことができないまま退場してしまった。外に釣りだされてのスピード勝負という苦手な土俵で戦うことになったゆえ、こういう状況は予期できた部分ではあったが、アーセナルは対応できなかった。

 セットプレーで追加点を奪ったトッテナムは前半で2点のリードと数的優位を得る。迎えた後半、反撃に出たいアーセナルだったが、PA内の対応で後手を踏んでしまい後半早々に3点目が入り終戦。60分を過ぎれば両チームともトーンダウンし、次を見据えたカードを切ることとなった。

 今年のエミレーツでの対戦は前半終了時にアーセナルが3-0でリード。そしてトッテナムホームではまさに逆転した構図でトッテナムが前半に決着をつけることになった。近年のNLDは内弁慶のイメージが強いが、今年はどちらのカードも前半決着。内弁慶に輪をかけたワンサイドな展開でトッテナムがライバルのCL復帰に待ったをかけた。

試合結果
2022.5.12
プレミアリーグ 第22節
トッテナム 3-0 アーセナル
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:22‘(PK) 37’ ケイン, 47‘ ソン
主審:ポール・ティアニー

第37節 バーンリー戦(H)

気圧される場面もありながらノルマ達成

 ノースロンドンダービーを制し、4位のアーセナルとの勝ち点差は1。ミス待ちではあるが、残りの対戦相手はトッテナムの方が楽である。元来、こういう局面が得意なチームではないことは確かだが、勝ってアーセナルにプレッシャーをかけたいところだろう。

 逆にこういう局面が得意とされているバーンリーだが、今年ばかりは事情が違う。ミーの負傷はコリンズが何とか埋めてきたが、ここに加えてターコウスキも離脱。この2人が同時に抜けたバーンリーがやばいことはすでに過去の実績で立証済み。明らかに例年以上に危機感がただよう終盤戦になっている。

 というわけでバーンリーは撤退第一の5-3-2を採用。ボールを捨てるのはもちろんのこと、序盤はボールを奪ったら相手ゴールのコーナーフラッグ方向にまっしぐらにかけていき、コーナーキックの獲得一直線なのかな?と思わせるくらいの割り切りの潔さだった。

 トッテナムは5-3-2を壊すためのボールの動かし方をすることが求められる展開に。縦パスが入れば一番楽なのだが、もちろんそこはバーンリーも心得ている部分。機会は絞られてしまっている。とはいえ、2トップ脇のデイビスを起点に外循環でのボール回しはそこまで効果はない感じであり、どこかでチャレンジのパスをする必要がある。

 セセニョンが早い段階でエリアに入ったり、ワイドから抉ってマイナスの折り返しにチャレンジしたりなど、割と前半から5バック崩しのジャブを打ち続けることはできていた感のあるトッテナム。ポープがやたらキャッチでセーブするのは誤算だったかもしれないが、比較的流れはよかったように思う。

 25分くらいにようやくバーンリーはボールを持つ機会を得る。トッテナムで余計だったのは非保持におけるルーカス。適当な守備であっさり入れ替わられてしまい、相手の持ち上がりを許したせいでコルネが決定機を迎えるところまでいかせてしまった。バーンリーはこのシーンのルーカスのように『手助け』がなければゴールに向かうことはできなかった。

 そして、前半終了間際。押し込んでいたトッテナムがPKを獲得。バーンズは不用意なハンドだったが、これもアタッカーがPA内で守備をする機会が多いことの弊害ともいえるだろう。ケインは落ち着いてこれを決めて前半のラストプレーで先制する。

 後半、一気にプレスのギアをあげてきたバーンリー。シンプルにトッテナムは勢いに気圧されていた。アーセナルファンからすると負けてはしまったものの、ノースロンドンダービーのプレスに行くスタンスは間違っていなかっただなと再認識させられる慌て方だった。ルーカスの軽さも健在で、下手な飛び込みからバーンリーの望むセットプレーを与えていた。

    トッテナムからするとなんとか15分凌げたのが大きかった。ひとまず落ち着きを取り戻すと徐々にボール保持の時間帯を増やしながらバーンリーを鎮圧する。

    ベグホルストやレノンのようにアタッカーを次々入れるバーンリーを前半ほどはなだめられはしなかったが、前半のPKを守りきり何とか勝利。アーセナルにプレッシャーをかける暫定4位浮上のノルマを達成して見せた。

試合結果
2022.5.15
プレミアリーグ 第37節
トッテナム 1-0 バーンリー
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:45+8′(PK) ケイン
主審:ケビン・フレンド

第38節 ノリッジ戦(A)

■ほしいもの、全部お持ち帰り!

 最終節のトッテナムの目的は2つ。1つはキャロウ・ロードで引き分け以上の成績を手にすること、もう1つは得点王争いをしているソン・フンミンに対して、1つでも多くの得点をおぜん立てすることである。

 2つの目的を背負ったトッテナムは想定通り、5-4-1で組むノリッジのブロック崩しに挑むことになる。普通であれば重心が低い形の究極系ともいえる5-4-1はトッテナムにとってはめんどくさい代物であるはず。オープンな展開からのカウンターで得点を重ねている彼らのスタイルはこうした相手を打ち破るのに適しているものではない。

 しかしながら、この日のノリッジに関しては別である。なにせ、ボールを持ったホルダーが比較的簡単に1枚くらいは剥がしてしまうのである。そうなってしまうと、ズレができにくいという5-4-1のメリットはあまり多くはない。というわけでノリッジは序盤からひやひやの展開だった。

 逆にノリッジがボールを持つ展開においてはあまりボールを取りにいかないトッテナム。ある程度もたせて泳がせることでプッキが抜け出せる背後のスペースを作らないというやり方で失点を回避していた。サンチェスのパスミスのようにトッテナムが決定的なチャンスを与えない限りはノリッジにはチャンスが訪れなかった。プッキにとっても抜けきってシュートまでいかないとチャンスを作り出せないという過酷な状況だった。

 というわけでここまで書けば先制点がどちらに入ったかは想像に難くないはず、前線の引く動きと連動するように高い位置を取ったベンタンクールの抜け出しからトッテナムが先制点を奪う。

 勝敗に関しては実質これで決着であった。ノリッジはボールを取りに行く気力もないことは明白。CL争いは最終節のどのトピックよりも早々にカタがついてといっていい。あと、この試合に残されたトピックはソンの得点王の話だけである。

 結論から言えば、こちらも最終的にはサラーに並び、得点王を手にすることが出来た。クルゼフスキがソンに得点を取らせたいがために、クソみたいなパスミスをしていたのはご愛敬。最終的には多くのチャンスからゴールをつかみ取り、自身のキャリアにとって大きな個人タイトルをつかみ取った。最後のゴールは得点王の名に恥じぬものである。

 最終節の段階でほしいものは全て持ち帰ることに成功したトッテナム。CL復帰とソンの得点王を手土産としたキャロウ・ロードからの帰り道は、さぞ充実感にあふれるものになったことだろう。

試合結果
2022.5.22
プレミアリーグ 第38節
ノリッジ 0-5 トッテナム
キャロウ・ロード
【得点者】
TOT:16′ 64′ クルゼフスキ, 32′ ケイン, 70′ 75′ ソン
主審:クリス・カバナフ

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