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「Catch FIFA World Cup QATAR 2022」~Day 12 ハイライト~ 2022.12.1

目次

【グループF 第3節】クロアチア×ベルギー

■ルカクの日ではなかった

 立ち上がり数十秒のペリシッチのシュートからの幕開けはこの試合の激闘を予感させるものだと言えるだろう。序盤にテンポを握ったのはクロアチア。中盤からの鋭い縦パスと高い位置からのプレスでプレーエリアを高く維持することに成功するスタートとなった。

 15分過ぎにはPKを獲得したクロアチア。内容良好!あとはリードを奪うだけ!という状況まで漕ぎ着けることに成功するが、VAR側からのサポートはこれはオフサイド判定に。飛び出し方の際どさを見ればクロアチア側がテクノロジーの存在を恨んでも仕方がないくらい厳密な判定であった。

 このPK以降は落ち着きを持って試合を進めることに成功したベルギー。ボール保持においてはムニエを一列前にあげる3バックを採用する。これまでのグループステージにおけるベルギーはどこか前後分断感が否めなかったが、この試合では比較的バックラインとDFラインから全体を押し上げる意識を持ってボールを進める一体感があったと言えるだろう。

 特に右サイドの崩しはなかなか。大外をとるムニエにインサイドのサポート役にデ・ブライネ、トロサール、メルテンスが代わる代わる出たり入ったりするローテーションにはクロアチアはやや混乱気味。CBの能力の割に、出足を思い切りよくいけないというクロアチアの今大会のウィークポイントをうまくつくことができていた。

 逆サイドではカラスコが躍動。カットインと縦への進撃を使い分けながら1人でエリアまでボールを運んでいく。ただし、この日のベルギーのインサイドには高さがない。よって、入れるクロスの質にはこだわる必要がある。鋭いグラウンダーのクロスを入れることができれば、クロアチアがブロックを組んでいてもベルギーには十分なチャンスがあった。

 一方のクロアチアにも保持からの前進のルートは存在していた。ベルギーは非保持では4バック気味だが、4-3-2-1なのか4-4-2なのか判然とし難い。デ・ブライネの守備のタスクが甘い分、やや全体の陣形の維持は甘くなっているようにも見える。

 中盤の守備のタスク管理が甘い分、ベルギーはクロアチアの中盤を捕まえきれず。フリーでボールを持つことができれば、大きなサイドの展開ができるクロアチアの中盤。ピッチを綺麗に横切り、WGにボールを届けることができればチャンスになる。

 どちらもエリアに迫る手段はあったが、プレスがうまくハマらなかったり、そもそも控えめだったりなどで機会の差が生まれず。このあとどちらに試合が転ぶかが読みにくい前半だった。

 後半、ベルギーはルカクを投入。ターゲットマンを入れることで、前半は許容することができなかったハイクロスを入れることができるようになった。メルテンスがいなくなった分、右サイドの流動性の減少が気になるところではあったが、早々にクロスを上げて見せたことでその部分も問題ないことはすぐにわかった。

 だが、後半のクロアチアの左サイドの守備ブロックは強力。グバルディオルはクロスをニアで跳ね返しまくるマシーンとなっていたし、ソサも粘り強い対応を見せていた。

 この両者は保持面でも素晴らしいパフォーマンス。特にグバルディオルは最終ラインからのボールの運び出しでも別格な出来を見せていた。クロアチアの後半の攻め手は左サイドに集約。左のハーフスペース付近でフリーでもった選手がエリア内のクロスと大外のソサの2択で揺さぶりながらベルギーの陣内に迫っていく。サイドチェンジも自由自在。大きな展開に振り回されるベルギーにとってはヴィツェルのカバーリングとクルトワの安定したキャッチングが命綱になっていた。

 しかし、ベルギーも攻撃的なタレントを投入し総攻撃を仕掛ける。ドク、アザール兄弟、ティーレマンスなど中盤よりも前の選手を入れて決勝進出に必要な1点を取りに行く。

 だが、ことごとく訪れるチャンスをルカクが決めることができない。明らかにフリーな決定機が2,3回ほどあったが、いずれのシュートもミートできず。明らかに彼の日ではなかった。

 ビックチャンスを作りつつ、最後まで仕留めることができなかったベルギー。前回3位に入ったグループFの本命は最終節で勝利をあげることができず、早すぎる敗退を喫することとなった。

試合結果
2022.12.1
FIFA World Cup QATAR 2022
Group F 第3節
クロアチア 0-0 ベルギー
アフメド・ビン=アリー・スタジアム
主審:アンソニー・テイラー

【グループF 第3節】カナダ×モロッコ

■序盤の勢いと手札の豊富さを見せたモロッコ

 2位と3位は直接対決の潰し合い、目の前の対戦相手はすでに敗退が決まっているカナダ。明らかにグループFのポールポジションに立っているモロッコは非常に立ち回りが難しい立場である。グループ首位という立場に慣れている国ではないという経験値的な側面でも尚更舵取りがデリケートである。

 突破を十中八九手にしたモロッコが選んだプランは非常にアグレッシブなものだった。カナダの4バックに対して、立ち上がりから思いっきりプレスをかけていく。いきなりエネルギーを燃やすプレスを仕掛けてくるチームが少ない大会だけにカナダは面食らったのだろう。バックラインにCBが少ない4バックを採用したこともあり、モロッコのプレッシングはかなりカナダに刺さる。

 そして、生み出されたのは先制点だ。カナダの連携ミスからあっさりと先制したモロッコ。時間がないバックパスを受けたGKのボージャンが貧乏くじをひき、パスミスしたところをツィエクが無人のゴールに押し込んでみせた。

 先制後もモロッコはプレスの手を緩めない。カナダはプレスに対してたじたじな状況が続きミスを連発。右サイドに追い込まれて苦しいパスの選択から相手にボールを渡してしまったり、中央のパスを刺すことを誘発させられ、モロッコのカウンターの餌食になるなどカナダにとってはどうしようもない時間帯が続く。

 モロッコがカウンターに転じた際にもカナダは間合いの合わないタックルを連発。ボール保持における混乱は最終的にボールを奪われた後にも伝播してしまったようなカナダのパフォーマンスだった。

 カナダは中盤を最終ラインに落とすことで徐々に保持の落ち着きを取り戻していく。モロッコもリードを奪ったことにより、プレッシングのテンポは徐々に落としていく。

 そうなればカナダにも十分に攻め手はある。サイドでのスピード感は手応え十分でモロッコの最終ラインの裏をとり、ゴールに迫っていくこともしばしばだった。プレッシングも敵陣深くから前線が追いかけ回す積極策を披露。今大会の初勝利のために、カナダはアグレッシブなスタンスでモロッコに対峙する。

 そうしたカナダの姿勢をモロッコは利用。高い位置からのプレッシングをひっくり返すように長いボールから抜け出して追加点をゲット。エン=ネシリのゴールでリードはさらに広がることになった。

 プレッシングでカナダのポゼッションの心を折り、ロングカウンターでカナダのプレッシングの心を折る。前半のモロッコは面白いようにプランがハマり、完全に主導権を握る。カナダが左サイドから幸運なオウンゴールで追い上げるが、全体的にモロッコが試合を支配していることに疑いの余地はないだろう。

 後半、カナダは攻めに打って出る。敵陣深い位置まで攻め込むことに加えて、インサイドへのパスのチャレンジを積極的に行っていく。大外のスピード以外の武器も積極的に使っていこう!というのがカナダのプランである。

 しかしながら、モロッコは落ち着きながら対応。引き締まった撤退守備でカナダの攻勢を許さない。インサイドへのパスはカウンターの起点するような前半の流れは見られなかったが、本当に通されたら嫌なところには通させないというスタンスだった。

 そんなモロッコにとって面倒だったのはセットプレー。CKからカナダは決定機を生み出し、モロッコはあわや追いつかれてしまいそうな場面が出てくるように。3枚替えでさらに勢いに乗るカナダ。一方的に攻め続けて同点とするチャンスも十分にあった展開と言えるだろう。

 だが、モロッコはカナダに同点ゴールを許すことはなかった。高い位置からのプレス、ロングカウンター、そして後半の撤退守備。90分であらゆる戦い方とプランへのコミットを見せつけたモロッコが順当な勝利でグループFの首位通過を決めてみせた。

試合結果
2022.12.1
FIFA World Cup QATAR 2022
Group F 第3節
カナダ 1-2 モロッコ
アル・トゥマーマ・スタジアム
【得点者】
CAN:40′ アゲルド(OG)
MOR:4′ ツィエク, 23′ エン=ネシリ
主審:ラファエル・クラウス

【グループE 第3節】日本×スペイン

【グループE 第3節】コスタリカ×ドイツ

■共にオープンであれば力の差は明瞭

 他会場次第で突破条件がかなり複雑になっているグループE。明快なのはコスタリカ。勝てばOK、引き分けならば日本が負ければOK、敗れればノーチャンスである。一方のドイツは勝っても敗退の可能性がある状況。勝利は最低条件で、場合によっては勝ち点が並ぶ日本とスペインを得失点差で越えなければいけない可能性が出てくる。ドイツは大量得点を狙いにいくのか?いくならどのタイミングで?というのは難しい舵取りになる。

 コスタリカのプランは日本戦とほぼ同じ。5-4-1でのミドルブロックで相手のバックラインにはボールを持たせてOK。ラインを上げつつ、陣形はコンパクトにしつつも人数的な重心は後ろにあるという状況だった。

 そうしたコスタリカ相手にドイツは序盤から容赦なく襲いかかっていく。ラインを上げるということは裏へのスペースがあるということ。ワンツーからの抜け出しで積極的に背後を狙っていたのはグナブリー。左サイドを切り裂いて、エリア内に危険なボールを入れていく。

 左サイドで言うとムシアラも相変わらず強力。狭いスペースを細かいタッチを繰り返しながらスルスル進み、対面する相手の選手に飛び込む隙を与えない。左サイドを拠点とするこの2人に対して、コスタリカはかなり厳しかった。

 ドイツはPA内に人数をかけていたとはいえ、コスタリカの守備陣の方が人は多い。しかしながら、クロスに合わせるドイツの選手にコスタリカはマークをつけられないことが多い。スペースに入り込んでクロスに合わせる動きについていけないのであれば人数など意味がないのだなと言うのがこの試合の学びである。

 ドイツは早い時間に先制点をゲット。左サイドでボールを奪ったドイツが開いたラウムに繋ぎ、仕上げはグナブリー。あっさりとコスタリカの守備ブロックを破ってみせた。

 コスタリカとしては0-0で進めると言うプランが崩れてしまった点でこの失点は重くのしかかる。その上、この失点の起点となったボールロストはキャンベルによるもの。日本戦で低い位置でボールを受けてはぬるっとしたドリブルから突破やファウルを奪い取ったキャンベルがボールの預けどころとしてはちっとも通用しなそう!と言うのもここから先にドイツと戦う上で頭が痛い部分だと言えるだろう。

 コスタリカのボール保持には停滞感があった。ボールを奪い返したらショートパス主体のスタイルに移行するコスタリカだが、キャンベルという預けどころが潰されたままのショートパスは行先不明感が漂っている。下手なパスを中央に刺せば、簡単にカウンターを食らうという恐怖心もあるだろう。ドイツは前に出たコスタリカの攻撃を止めるところから素早く縦に攻撃に打って出ることができるチームである。

 低い位置においてもボールが収まらないことがわかったキャンベルは試合途中で前線に位置を変更。ロングボールを増やしながら押し上げを狙うが、アバウトな選択を早い段階で取る方針はドイツが攻める機会を誘発しているとも言える。オビエドが高い位置でボールを持てるくらいまでいけば、ひとまずショートカウンターの脅威は薄まると言えるが、コスタリカがここまで保持を持っていける機会は数えるほどだった。

 ほぼ、ドイツペースで進んでいる試合の中で前半のコスタリカの唯一のチャンスを生み出したのはフレール。日本戦でワンチャンスをものにしたミラクルボーイがドイツを慌てさせる場面が、コスタリカの前半の最大の見せ場だった。

 後半、ドイツはキミッヒを中盤に移動し、SBにクロスターマンを起用。さらに攻撃を意識し、得点を取りにくるための交代と言えるだろう。中盤でボールの預けどころを増やしたドイツだが、ゴレツカが下がった分中盤のデュエル強度は低下。前半はからっきしだったコスタリカが中盤でもボールを収める機会がだんだんと出てくるようになった。

 徐々にカウンターを受ける機会が増えてきたドイツ。3バック化していた日本戦と異なり、後方はCBが2枚残るという状況もコスタリカのカウンターを潰しにくい要因と言えるだろう。コスタリカの同点弾はまさしくリュディガーとズーレをオーバーフローさせた形での失点だった。

 同点になり明らかに混乱が見られるドイツ。守備陣は広いスペースへの対応を整理できないまま、攻撃陣が前に前にという状況で前後の分断が生まれる。その混乱に乗じて、コスタリカはセットプレーから追加点。エリア内でのデュエルにことごとく勝ち、逆転となるゴールを押し込んで見せた。

 直後にドイツはゴールで落ち着きを取り戻す。ハフェルツの氷のようなフィニッシュは展開と異なり、氷のようにクールなフィニッシュだったと言える。点を決めた後は相手とがっつり喧嘩していたけども。

 後半は裏の会場で日本が逆転というこの2グループにとっては有り難くない状況が発生する。追い落とす対象がスペインに切り替わったことで、コスタリカ、ドイツともに得点が必要な状況になる。

 ともに得点が必要というシチュエーションは明らかドイツに有利なものだった。オープンでの打ち合いになれば両チームの攻撃の威力の差は明らか。コスタリカのPA内での対応の拙さを思い出すようなハフェルツのゴールで逆転すると、最後はサネの抜け出しにフュルクルク。タレントの差であっさり押し切ってみせた。

 得点をとり、後は吉報を待ちたいドイツだったが、他会場からの嬉しい報告はなし。同じ勝ち点4で並んだスペインとはコスタリカをどれだけ叩けたか?という部分で差がつくことになってしまった。

試合結果
2022.12.1
FIFA World Cup QATAR 2022
Group E 第3節
コスタリカ 2-4 ドイツ
アル・バイト・スタジアム
【得点者】
COS:58′ テヘダ, 70′ ノイアー(OG)
GER:10′ グナブリー, 73′ 85′ ハフェルツ, 89′ フュルクルク
主審:ステファニー・フラッパート

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