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「ブラジルの尾を踏むと」~2022.12.5 FIFA World Cup 2022 Round 16 ブラジル×韓国 マッチレビュー~

■韓国のプレスがブラジルに火をつける

 カメルーンに意地の一発は喰らったものの、依然として優勝候補の最有力と言っていいブラジル。ジェズス、テレスとメンバーの離脱が出てきたのは気がかりではあるが、ネイマールの復帰は彼らにとっては何よりも朗報だろう。

 一方の韓国は後半追加タイムの勝ち越し弾でラスト1枠を最後の最後で強奪に成功。劇的な初勝利で逆転でグループステージの突破を決めてみせた。

 韓国のプランは4-4-2。ソンを中央に移し、左サイドでは逆転突破の立役者になったファン・ヒチャンが今大会初先発を飾った。韓国のプランは良くも悪くも普通だった。2トップは中盤のパケタ、カゼミーロを後方に受け渡しながらバックラインにプレスにいく形を採用した。

 ブラジルはこれに対してミリトンがCBとフラットに立つ片上げ型の3バックで後方に人数を確保しつつ韓国のプレスをいなしていく。この試合のブラジルは立ち上がりから行くぞ!という雰囲気はそこまで感じなかったのだけど、韓国のスタンスが前プレも捨てない4-4-2だったことがブラジルがプレス回避を伴いながら加速していく流れを誘発したように見えた。

 バックラインは後方のプレスを引きつけつつサイドに大きく展開。ヴィニシウス、ラフィーニャの両翼にボールを預けることができればそこを前進の起点にすることができる。中央にはネイマールもおり盤石。韓国のプレッシングがハマる気配は皆無だったと言えるだろう。

 そうした状況で先制点の起点となったのはラフィーニャ。右サイドに引き寄せた韓国の選手を一網打尽に切り裂いて、逆サイドで待ち受けていたヴィニシウスにラストパス。コースが開くのを待っていたかのように狙い澄ましたコントロールショットで先制点を奪い取る。

 2点目はPKから。チョン・ウヨンの大きなキックモーションに入り込むように入り込んだリシャルリソンがファウルを獲得。個人的には取る必要はなかったように思えたが、審判はペナルティスポットを指差した。これをネイマールが決めてブラジルは追加点。直前に日本のPKを見ていただけに、キム・スンギュを完全に上回っていたネイマールの駆け引きは非常に印象に残るものだった。

 正面からぶつかった結果、実質10分強で試合の決着はついてしまったと言えるだろう。韓国はグループHでどのチーム相手にも結構互角に組みながらやれていたことで、極端なプランをグループステージで敷いてこなかったのは痛かったかもしれない。ともすれば、ポルトガル戦よりも前がかりな姿勢であっという間に終戦してしまった印象だ。

 精神的に余裕ができてくるとイキイキしてくるのはリシャルリソン。敵陣でのリフティングから時間を作ると、自らPA内に侵入しゴールを決めてみせる。相手をおちょくる余裕がある時のリシャルリソンは有能である。

 韓国の前進はここまで見たように背負う選手+落としを拾う選手の連携で設計されている。しかしながら、ブラジルの後方の押し上げを前にあっという間に囲まれてしまう。前進のメカニズムはほとんと機能せず、韓国のアタッカーはブラジルにことごとく潰されてしまう。裏を狙ってはブラジルのラインコントロールにひっかかりことごとくオフサイドになってしまう。

 意地を見せたと言えるのはファン・ヒチャン。左サイドからの強引なカットインでなんとかフィニッシュまで持っていく動きを見せていた。とはいえ、ブラジルのゴールに届くには遥か遠く、韓国は得点の匂いがしなかった。前半のうちにブラジルはパケタのゴールで4点差に。試合を完全決着させた状態でハーフタイムを迎える。

 後半、韓国はプレッシングからテンポを掴み直そうとするが、ブラジルのプレス回避は後半もサビつかず。ここまで追い込めばいけるのでは?というところからひっくり返すスキルは流石である。

 60分も過ぎればブラジルはプレッシングのテンポを下げてリズムを調節。韓国はボールを持ちながら敵陣に攻め込むことを許される。アタッキングサードにおけるポストで前を向かせる状況も作れるように。ソンが徐々に存在感を取り戻してきた後半だった。韓国はセットプレーからのミドルシュートで意地の一撃。一矢報いて見せる。

 緩んだまま試合を終わらせることを嫌がったのか、チッチは交代選手で再度プレスを敢行する。次のラウンドを見据えた引き締めで再び韓国から主導権を取り上げてみせた。

 更なる追加点を奪う事は敵わなかったがペースを落としてのベスト8は悪くないだろう。ブラジルが韓国を一蹴し、クロアチアが待つ準々決勝に駒を進めた。

あとがき

 ブラジルは圧倒的だった。そちらがテンポをあげるならあげますけど?と言った形でエンジンを入れると韓国を粉砕。遊び心あるキープに当たり前のプレーを高速で繋げながら具現化させる形は唯一無二である。底を見せるのはまだ先。強豪ぞろいのベスト8でもブラジルはやはり本命と言える存在だ。

 本文中でも述べたが韓国は正面衝突しすぎてしまった感がある。とはいえ、引いて受けても完全粉砕の可能性もあったので、この敗戦をどのように納得感を持って受け止められたかは気になるところ。それでもグループステージの戦い方は胸を張れるもの。このラウンドで敗れたのは残念ではあるが、顔を上げて帰国して欲しいところだ。

試合結果
2022.12.5
FIFA World Cup QATAR 2022
Round 16
ブラジル 4-1 韓国
スタジアム974
【得点者】
BRA:7′ ヴィニシウス, 13′(PK) ネイマール, 29′ リシャルリソン, 36′ パケタ
KOR:76′ スンホ
主審:クレマン・トゥルパン

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