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「Catch FIFA World Cup QATAR 2022」~Day 10 ハイライト~ 2022.11.29

目次

【グループA 第3節】エクアドル×セネガル

■高い身体能力×組織力の掛け合わせで20年ぶりの決勝Tへ

 グループステージ突破をかけた直接対決。エクアドルは目の前のセネガルを上回ることができれば突破が確定。引き分け以上というのが突破の要件となる。一方のセネガルは引き分けでも突破の可能性は数字上は残るが、オランダが複数失点でカタールに敗れるという実現見込みが低い他力が絡む必要がある。こちらも実質目の前のセネガルを上回る勝利を手にすることが突破要件と言えるだろう。

 より厳しい突破要件を持っているチームの方が吹っ切れたパフォーマンスを見せることができるというのはサッカー界のあるあるである。この試合もこのあるあるに則り、のびのびとパフォーマンスをしていたのはセネガルの方だった。

 セネガルはボールを奪うと素早く縦に。左サイドはハーフスペースの裏抜けからパブ・ゲイェが飛び出してエリア内に侵入。折り返しからチャンスメイクを作っていく。右サイドはシンプルに大外の裏抜けを重ねる形で突破していく形である。

 前節のカタール戦でもそうだったが、セネガルは理屈の上では突破できない状況でも運動能力の高さで解決してしまう場面が多い。この試合でも右サイドでは大外に縦に並んだSB→SHのパスで抜け出してエクアドルのサイドをエグるという現代サッカーのポゼッションにおける攻略としてはあまり見ないルートでチャンスを作り出していた。

 セネガルのゴリゴリにエクアドルは対応しきれなかった。メンデス不在による4-3-3へのシフトも裏目でセネガルはカットインからアンカー脇のスペースに侵入を繰り返すことができていた。

 一方のエクアドルは攻め手が見つからない。セネガルのプレスはマンマークともゾーンともつかないものだが、IHとWGが前向きの矢印を気まぐれに出してくるスタンスに手を焼いていた。4-3-3で後方の人数不足による引っ掛けが多発していたため、途中からカイセドが低い位置に降りてプレスの脱出をサポートするように。これによりミドルゾーンまでボールを運ぶ頻度が増えたエクアドル。しかしながらアタッキングサードに繋ぐ段階でパスミスが出てしまい、セネガル陣内の広大なスペースを打ち壊すまでには至らない。

 セネガルのバックラインは組み立ての危うさはあった。だが、エクアドルがそもそも前に出ていけない状況だったことに加え、セネガルが迷いなく前に放り込むことができていたため、彼らの足元の組み立てはアキレス腱にはならなかった。

 そうした中で先手を奪ったのはセネガル。エリア内で倒されたサールが自ら決めて突破に必要なリードを奪う。PK判定自体はやや微妙な印象を受けたが、アバウトなボールでも前に出ることができるセネガルの強みが出た場面とも言えるだろう。

 後がなくなったエクアドル。後半にシステムを4-4-2に変更。セネガル相手にリスク勝利で間延びしつつもダイレクトに2トップに当てる形で前進を狙っていく。

 しかしながら、セネガルはしたたか。前半とは異なり、前に出ていくことを抑制した4-1-4-1で中央を封鎖し、エクアドルの攻撃の動線をサイドに限定。右サイドからのプレシアードのオーバーラップもヤコブスが封じており、うまく丸め込むことができていたと言えるだろう。

 苦しいエクアドルだが、セットプレーの好機を活かして先制する。決めたのはカイセド。ニアでのフリックをファーで待ち構える形で同点を奪う。これにより、再び2位はエクアドルのものになった。

 しかしながら、すぐにセネガルはやり返す。こちらも負けじとセットプレーでの反撃。FW顔負けのボレーを決めたクリバリにより、セネガルは再び前に出ることに成功する。

 以降はエクアドルがうまくセネガルに丸め込まれてしまった。セネガルは前に出て行ける時と構える時のメリハリが見事。正直、ここまでの戦いは大味な印象が先行していたセネガルだったが、この試合の後半は出ていくところと控えるところのさじ加減が絶妙。これまでには感じられなかった組織的な意思統一の強固さを感じさせる試合運びだった。

 CFからサイドに配置を変えたディアは対面のエストゥピニャンを簡単に手玉に取っており、背負ってはターンを決めまくる。セネガルがリード後にも受け身一辺倒にならなかったのは彼の功績が大きい。

 最後のエクアドルのパワープレーもクリバリとメンディを中心に跳ね返してみせたセネガル。終了のホイッスルは20年ぶりの決勝トーナメント進出を決める合図となった。

試合結果
2022.11.29
FIFA World Cup QATAR 2022
Group A 第3節
エクアドル 1-2 セネガル
ハリファ・インターナショナル・スタジアム
【得点者】
ECU:67′ カイセド
SEN:44′(PK)’ サール, 70′ クリバリ
主審:クレマン・トゥルパン

【グループA 第3節】オランダ×カタール

■世界との差を痛感させられるほろ苦い3連敗

 史上初の開催国未勝利敗退という危機に立たされているカタール。そうなることだけは防ぎたいところではあるが、目の前に立ちはだかるのはよりによってグループAの首位を走るオランダという厳しい状況である。

 1点差までの負けならば逆転敗退の目はないオランダからすると、すでに敗退の決まっているカタールとの一戦はそこまで難しいものではない。だが、メンバーとしては比較的これまでのスターターに近い並びに。カタールからすると容赦ないな!という感じだろうか。

 試合の流れとしてはオランダが基本的にボール保持でリズムを作っていく。カタールはミドルゾーンから5-3-2ブロックを敷き、高い位置に単発で捕まえにいく形を狙うが、いかんせん成功率は低い。

 オランダはサイドから持ち上がり、ある程度高い位置まで運ぶと斜めにパスを入れていく。ここから先は中央のコンビネーションでの打開にシフト。ガクポ、クラーセン、デパイの3人を主体に細かいコンビネーションでカタールの最終ラインを壊していく。

 最終ラインへの突撃自体は比較的危ない形でのロストが多いプランだとは思うけども、それを補っていたのは即時奪回。敵陣の中できっちり奪い切る形を体現したオランダは「ずっと俺のターン」を実現し続ける。

 カタールからすると、またしてもフィフティーのボールに全部負けてしまう問題が立ちはだかってしまうことが立ち塞がる。セネガルはともかく、エクアドルに苦しんでしまうのならば、オランダに苦しむのは当然なのである意味自然な流れなのだけども。

 保持でいい流れを作ったオランダはいい流れで先制。左サイドからの斜めのパスが刺さると、例の3人のコンビネーションからガクポが右足を振り抜きゴール。グループステージでは毎試合コンスタントに1ゴールを決めているガクポがこの日も義理堅くゴールをゲット。スタンドのカタールサポーターは「またこんな感じか・・・」と虚ろになっていたのが印象的だった。

 ボール保持で何とかしたいカタール。オランダの前線は2枚であり、トップ下のクラーセンはアンカーのケアに注力していたので、カタールのバックラインは枚数自体は余っていた。しかしながら、横パスやGKを絡めたビルドアップでそうした数的優位を活かすためのボールの動かし方はできず。何となくだけど、やはりフィフティーのデュエルで負けるという部分は自分たちのスタイルを活かす上で足枷になっているように思う。

 降りずに我慢することもあったアフィーフからのカウンターもオランダを脅かすことはできず。カタールの選手がPA内に誰もいない状況で放り込んだクロスをファン・ダイクが跳ね返したシーンはなかなかに哀愁を誘うものだった。

 ガクポを軸とした中央のパス交換は相変わらず好調。カタールのカウンターを問題なく受け切っていたオランダが終始主導権を握って前半を折り返す。

 迎えた後半、セットプレーから先にチャンスを得たカタールだったが、これを凌ぐと追加点はオランダに。右サイドからのクロスに対して、カタールは何度か処理するチャンスがあったが、これがうまくいかずにフレンキー・デ・ヨングが最後に叩き込んでみせる。自陣のPA内でのボール処理がうまくいかないのも大会を通してのカタールの課題と言っていいだろう。

 オランダが首位突破を確信できるスコアになったため、これ以降はボールを持つチームは比較的流動的に。保持で敵陣まで進む機会も出てきたカタールはアフィーフを中心としたパスワークと左サイドの大外を駆け上がるアフメドのオーバーラップを活かす形でオランダ陣内の攻略に挑んでいく。

 カタールは「オランダ相手に何とか一点を!」という気概を感じることができたが、一度ボールを持たれるとポゼッションによる陣地回復と即時奪回のコンボを決めることができるオランダに対しては、なかなか継続的な攻撃の機会を維持することができない。ガクポのハンドにより取り消された3点目やバーを叩くシュートなどカタールにとっては、得点のチャンスと同等かそれ以上に失点の脅威を感じる後半だった。

 結局試合はそのまま終了。初のW杯出場を自国開催で飾ったカタールだったが、蓋を開けてみれば3戦全敗という厳しい結果で終了。世界との差をまざまざと感じさせられるグループステージとなってしまった。

試合結果
2022.11.29
FIFA World Cup QATAR 2022
Group A 第3節
オランダ 2-0 カタール
アル・バイト・スタジアム
【得点者】
NED:26′ ガクポ, 49′ フレンキー・デ・ヨング
主審:バカリ・ガサマ

【グループB 第3節】イラン×アメリカ

■タスクをきっちりこなした先制点で逆転突破のミッション達成

 アメリカの逆転突破の前に立ちはだかるのは史上初のグループステージ突破を狙うイラン。地理的にも後押しを受けられるチームとの対戦はアメリカにとってはやりにくさを感じる部分もあるだろう。自力突破のためにはイランに勝利を挙げる必要がある。

 立ち上がりにボールを持つことができたのはアメリカ。イランはアンカーのアダムスをトップと中盤で受け渡しながらCBには時間を比較的与える形。その分、中盤を捕まえるのはマスト。フリーの選手を作らせない。

 中盤を消してくるイランに対してつっかけてくるのはアメリカのサイドの選手たち。絞ってくるロビンソン、降りてくるプリシッチ。左サイドの選手たちを軸にアメリカはイランの中盤封鎖に反撃していく。2トップ脇に選手を立たせて、相手を左サイドに寄せた後、対角の右サイドに大きく蹴ってアタッキングサードを攻略。アメリカのプランはざっくりとこんな感じだったと言えるだろう。

 アメリカの右サイドの攻略の精度はなかなか。積極的に絡んでいくデストとムサに押し出されるように裏抜けするウェアのコンビネーションはアメリカがゴールに迫るための武器となっていたといえるだろう。

 立ち上がりは中盤で踏ん張っていたイランだったが、アメリカの中盤にサイドの選手が登場してからズルズルとラインを下げるように。自陣の深い位置で何とかアメリカの攻撃を跳ね返す時間が続いていく。

 イランにとっては押し込まれるとカウンターで辛いという副作用もある。ウェールズ戦で前線の起点となったアズムンはこの日は沈黙。ウェールズ戦と異なり、この日はワントップという布陣も影響したのか、比較的孤立する機会が多かった。

 序盤のボールを持てる時間帯においてもなかなかイランは苦戦。アメリカはウェアがインサイドに絞り、ムサがサイドに出ていく4-4-2への変更を頻発。イランが数的不利になる中盤を使おうとしたら、アメリカの2トップの片方が下がりアンカーをケアする。バックラインへのケアと中盤の数的不利解消を根性で両立するアメリカの守備プランの前にイランは前進に苦しむ。

 すると、試合を動かしたのは前進のパターンを明確に持っていたアメリカ。マケニーの対角パスからデストが右サイドを抜け出すと、折り返しを決めたのはプリシッチ。それぞれに課されたタスクをきっちりとこなしてみせたアメリカが先制してみせる。アメリカはアダムスがひっかけてからのロングカウンターなど前半のうちに更なる追加点を生むチャンスがあった。

 後半、動いたのはビハインドのイラン。スコア以上に困った内容を改善すべく、トップで孤立していたアズムンを早々に諦め、サイドにゴドスを投入する。

 プレッシングからのテンポアップという部分はそこまで狙いとしては見えなかったが、ボールを奪ってからのカウンターの出足は明確に良くなったイラン。ゴドスのランからアメリカのポゼッションをひっくり返す機会が徐々に出てくるようになる。アメリカもハーフタイムにアーロンソンを入れており、前線で体を張るサージェントと共にアクセントにはなってはいたが、選手交代の効果がより出たのはイランの方だと言えるだろう。

 サイドからの抜け出しからのクロスというパターンは単調ではあるが、確実にアメリカは自陣に釘付けになる時間帯が増えていく。アメリカはサイドでタフな対応を見せていたこともあり、ファウルをしなければバックラインは比較的跳ね返すことができているが、FKへの対応にやや甘さも。同点なら勝ち抜けはイランというプレッシャーもあってかセットプレーではナーバスさもみせる場面もあった。

 最後はDFを投入し5バックにシフトするアメリカ。ラストプレーではイランの選手たちがPKを猛アピールする場面もあったが、試合をひっくり返すための材料としてはいささか弱すぎると言えるだろう。

 イランを退け、勝利一択のミッションに成功したアメリカ。2大会ぶりのグループステージ突破でオランダの待つベスト16に駒を進めた。

試合結果
2022.11.29
FIFA World Cup QATAR 2022
Group B 第3節
イラン 0-1 アメリカ
アフメド・ビン=アリー・スタジアム
【得点者】
USA:38′ プリシッチ
主審:アントニオ・マテウ・ラオス

【グループB 第3節】ウェールズ×イングランド

■入れ替わった両WGが隣国に引導を渡す

 ヘネシーの退場で10人に追い込まれた結果、イランに敗れてしまったウェールズ。ノックアウトラウンド進出に向けてあとがない状況で、目の前に立ちはだかるのは何の因果かイングランドである。W杯史上初の激突が突破の運命を決める一戦となる。

 ウェールズのフォーメーションは4-2-3-1。ここまでは3バック主体の彼らとしては、アタッカーを多めに配置する得点を意識した陣形を採用したと言えるだろう。

 それであるならば高い位置まででていくトライをしたいウェールズ。2トップでアンカーを管理しながらイングランドのボール保持を阻害する。中盤から3枚目が出てこないため、イングランドからすると比較的CBが時間を得る状態になる。

 あまり、イメージじゃないかもしれないが、プレッシングで枚数を割いてこない相手に対しては割とマグワイアは自信満々にキャリーする。自分の前が空いている時にドリブルでボールを運んでの攻撃参加はプレミアリーグにおいてもかなり見られる場面だ。

 よって、ウェールズの高い位置から守っていこうぜ!というスタンスはマグワイアから崩されることになる。相手を引き出すことに成功したら、サイドに配球。マグワイアの保持における役割はイングランドが押し上げながらプレーをする手助けになっていたと言えるだろう。

 ただ、ウェールズも気合が感じられる内容だった。4-4-2のリトリートは非常に素早くPA陣内を埋め尽くす。外を回った時の崩しのアイデアが乏しいイングランドの4-3-3はハイクロスに頼りがちだったが、ウェールズはこれをひたすら跳ね返し続ける。

 しかしながら、攻勢に出た時の出来は物足りない。ムーアへのロングボールを起点に何とか陣地回復を行いたいところだが、前を向いた際のクオリティが足りずにイングランド陣内に侵攻することができない。

 マグワイアが前に出るということはカウンターの際は彼が苦手な広い範囲の守備を行う必要が出てくるはず。だが、そうしたイングランドの弱みをウェールズはボール保持で揺さぶることができなかった。

 イングランドが攻め立てるが、ウェールズが跳ね返す。前半45分はざっくりとこの言葉一つに集約できなくもない内容だった。

 迎えた後半、両チームとも布陣をいじって残りの45分に挑む。大勝負に出たのはウェールズ。ここまで大一番でことごとく結果を出してきたベイルを下げて、運動量を計算できるジョンソンを起用。ゲームのテンポを上げて自分たちの方にペースを引き寄せるために大エースを外すという荒療治を仕掛けてきた。

 一方のイングランドの修正は小規模。左右のWGを入れ替えてフォーデンとラッシュフォードをそれぞれ順足サイドに配置してみせた。

 結果を出したのはイングランドの方だった。左サイドでフォーデンが受けたファウルで得たFKを決めたのはラッシュフォード。GKのウォードは逆を取られてしまい、一歩反応が遅れてしまった。

 先制点のゴールをきっかけにイングランドは一気に畳み掛けていく。高い位置からのラッシュフォードのチェイシングからボールを引っ掛けると右サイドからケインが鋭いグラウンダーのパスを入れる。グループステージのイングランドにおいてはお馴染みになりつつある右に流れたケインの鋭いクロスを左サイドからフォーデンが叩き込んでみせた。配置変更がどこまで効いていたかは微妙なところだが、後半はサイドを入れ替えた両WGが活躍したことは間違いない。

 3点目を決めたのもラッシュフォード。ここまでスターターだったメンバーと入れ替わった選手が結果を出すというのはビックトーナメントにおいては非常に重要な要素と言えるだろう。

 高い位置からプレスに行く勝負に出たウェールズだが、この賭けはイングランドに返り討ちに合うことになる。追い込まれての英雄外しも奏功せずウェールズのW杯はここで終了。順当な首位通過を祝うイングランドとくっきりと明暗が分かれる形となってしまった。

試合結果
2022.11.29
FIFA World Cup QATAR 2022
Group B 第3節
ウェールズ 0-3 イングランド
アフメド・ビン=アリー・スタジアム
【得点者】
ENG:50′ 68′ ラッシュフォード, 51′ フォーデン
主審:スラヴコ・ビンチッチ

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