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「Catch FIFA World Cup QATAR 2022」~Day 13 ハイライト~ 2022.12.2

目次

【グループH 第3節】韓国×ポルトガル

■プレミアコンビが最下位から韓国を救い出す

 グループステージ1試合を残し、すでに突破を決めているポルトガル。最終節は大幅なターンオーバー+まだまだ頑張りたいロナウドの組み合わせの先発である。一方の韓国は非常に厳しい状況。勝利は最低限で後は裏のカードの結果次第という形である。

 得点が絶対に欲しいのは韓国なのだが、立ち上がりは非常に慎重だった。ポルトガルのバックラインに対しては自由にボールを持たせており、我慢しながらの序盤戦を想定していたのだろう。

 ポルトガルはボールを持ちながらこのブロックを攻略できるか?が問われることになる。その答えを出すのにかかったのはわずか5分。最終ラインからのフィードで右サイドからのダロトの抜け出しを誘発。インサイドでオルタが待ち構えてシュートを叩き込む。一発でラインを破られてしまい、幸先が悪いスタートとなった韓国だった。

 ビハインドになった韓国はまずはロングボールで様子見しつつ、どこから前進をできるか伺っていく。非保持では4-4-2にシフトしたポルトガル。プレッシングは前から行きたい前線と、ステイして守りたい中盤より後ろで意識が分断する場面があった。よって、韓国はギャップができた中盤からボールを進めることができる。

 前進の基本線は長いボールを前線に背負う形で受けてもらい、その選手を追い越す形で奥を取ること。この動きの組み合わせで敵陣に進撃していく。

 敵陣進撃以降の韓国にとって、大きな武器になったのはセットプレー。ショートコーナーからのデザインなど工夫が見られる形でポルトガルの守備陣を追い詰める。同点ゴールもセットプレー。ニアで潰れる形から中央に流れたボールをヨングォンが押し込んで追いついてみせる。

 押し込まれた時間はポルトガルにとっては苦しいものだった。ベルナルドとブルーノ不在の中盤はボールの預けどころがなく、ロナウドが直線的な抜け出しを狙う以外はあまり陣地回復の手立てはなかった。

 前半の終盤はボールを持てるようになったポルトガル。右サイドから裏を取る形を作り、エリア内にボールを入れるようになる。先制ゴールを決めたオルタはクロスの入り方がうまくマイナス方向で待てる。ポジショニングが巧みな選手である。

 ポルトガルにはゴールを奪うチャンスがあったが、ことごとくロナウドが決めることができず。韓国を突き放せる時間帯をフイにしてしまう。

 後半、再び韓国は4-5-1でのブロック守備で我慢のスタート。ボールを持つポルトガルはサイドの攻撃を意識しつつもそんなに急がない。崩せない状況が続いても悪くないという考え方で時計の針が進めていく流れとなった。

 意外だったのは非保持時のポルトガルの振る舞い。高い位置からのプレッシングを強化し、相手を捕まえにいく形を前半よりも多く作っていた。保持のまったりとした感じとは異なり、アグレッシブな非保持で韓国から時間をとりあげにいく。

 だが、得点が欲しい韓国にとってはポルトガルのプレスは自分たちが縦に急ぐ絶好の好機と言える。スピードある前線に素早くボールを渡し、韓国は前半よりも早いテンポの攻撃を増やしていく。点が欲しい韓国が、突破を決めているポルトガルにテンポアップを促されるという結構不思議な展開となった後半だった。

 韓国はファン・ヒチャンの投入を合図にプレッシングを強化。非保持の局面でも勝負に出ていく。あとから出てきたウィジョによって4-4-2にシフトしたことも含め、勝てなければおしまいなので理解できる振る舞いと言えるだろう。裏の会場はウルグアイが2点リード。韓国はこの試合に勝てば逆転で突破を決めることができる。ベルナルドなどの主力を投入したポルトガルの選手交代も含め、試合は徐々にクライマックスを迎える。

 しかし、交代から少し時間が経つと、両チームともにだらっと間延びした時間を迎えることに。中盤はボールを運ぶことができるけども、敵陣では固めた相手に攻めあぐねるという状況が続き、どちらも決め手を欠いている展開だった。

 どちらにもチャンスが訪れないまま試合は後半追加タイムに。そんななかで終盤に絶好機を作り出したのは韓国。CKのカウンターから3人に囲まれたソンがヒチャンに股抜きでラストパス。これをヒチャンが決めてリードを奪う。

 韓国のゴールとソンのアシストは見事だったが、ポルトガルがそもそもなんでそんなにズルズルと一発で自陣まで下げられるようなリスク管理をしていたのかは不思議。自分がウルグアイ人ならばポルトガルに恨み言の一つでも言いたくなるだろう。

 試合はそのまま終了。他会場の結果を持って韓国は逆転でのノックアウトラウンド進出が決定。頼りになるプレミアコンビが後半追加タイムに引き寄せた勝利で最下位から生還することに成功した。

試合結果
2022.12.2
FIFA World Cup QATAR 2022
Group H 第3節
韓国 2-1 ポルトガル
エデュケーション・シティ・スタジアム
【得点者】
KOR:27′ ヨングォン, 90+1′ ヒチャン
POR:5′ オルタ
主審:ファクンド・テージョ

【グループH 第3節】ガーナ×ウルグアイ

■割り切れば負けたって喜べる

 ウルグアイの突破要件として挙げられる最低条件は勝利。その上でポルトガルと戦う韓国よりも優れた得失点差でガーナを倒さなければいけない。自力でできることはあるけども、他会場も絡んでくるというややこしい状況である。

 高い位置からプレッシングに行く両チーム。とりわけおりていく前線の選手たちに守備陣がついていってプレッシャーをかけていく姿が印象的だった。勝利と多くの得点が欲しいウルグアイはもちろん、引き分けでも突破の目があるガーナもこのハイテンポな戦いに付き合うようになる。

 この試合の前半の特徴はこの互いのハイラインを破った先にはかなり高い確率でチャンスが待っているということである。皮切りとなったのはヌニェスの抜け出しだったが、コントロールに手間取っている間にこのチャンスを逃す。

 すると、左右にボールを動かしながら敵陣に迫ることに成功したガーナがミドルの跳ね返りにつめたクドゥスが倒されてPKを獲得。オフサイドも絡んだややこしい判定だったが、OFRの結果ガーナがPKのチャンスを得る。ポルトガル戦でも見られたOFR帰りの主審を邪魔するスアレスとPKスポット荒らしのせめぎ合いはもはやグループHのお馴染みの光景と言っていいだろう。

 ウルグアイの妨害工作に屈したか、アンドレ・アイェウはこのPKを止められてしまうことに。ガーナは先手を奪う最大のチャンスを逃してしまう。

 するとここからペースはウルグアイに傾く。右サイドに抜け出したヌニェスからファーに折り返すと、スアレスのシュート性のボールを最後はデ・アラスカエタが押し込んで先制。32カ国のうち、ここまで唯一ゴールがなかったウルグアイがついに得点を奪う。

 押し込まれてしまったガーナはやや散漫な時間を過ごしてしまう。ライン間に縦パスを通される場面が目立つなど、この時間帯はソリッドな守備を構築するのに苦しんでいた印象だ。

 そんなガーナを尻目にウルグアイは追加点をゲット。ライン間のペリストリに縦パスを通すと、思わず目を奪われるような華麗な繋ぎで追加点をゲット。再びデ・アラスカエタが豪快なボレーでネットを揺らして見せる。

 ガーナはクドゥスのライン間での収めからシュートを狙っていくが、こちらはゴールまで辿り着くことができず。さらに得点が欲しいウルグアイにあわや3点目が入りそうな前半終了間際という流れになった。

  後半、ボールを持ちながらチャンスを迎えたのはガーナ。左サイドに交代で入ったスレマナがアクセントになり、ウルグアイの陣内で攻勢を強めていく。ボール保持の意識も高めたのか、後半のガーナは低い位置にトーマスを下ろすことで前半よりもきっちりとゲームメイクし、ウルグアイの2トップを丁寧に超えるシーンが目立つようになった。

 このままいけば突破となるウルグアイは無理にプレスに出ていかず、自陣をきっちり固めていく。ガーナはそれでも危険なシュートを放つが、わずかに枠をとらえないシーンにウルグアイが救われることも多かった。

 ウルグアイはロングカウンターからバルベルデが存在感を示すなど自陣深い位置からでも得点を狙えるポテンシャルを見せつける。ただ、基本的には後半のプライオリティは自陣できっちりとゴールを固めること。バルベルデがアンカーのトーマスにマークに付けるために中盤をダイヤモンド型にするなどの工夫を施した時間もあった。

 突破の状況を維持しながら時計の針を進めるウルグアイ。そんな状況を変えたのは他会場の韓国勝ち越しの一報だ。これにより試合は一気に活性化する。ウルグアイ、ガーナ共にゴールが必要な状況は非常に前がかりな状況を生み出し、攻撃は常に保持側が数的優位な状況でカウンターを撃ち続けるという展開が続く。

 そうした中で運命を分けたのはPK判定。前半のガーナにPKを与えられた判定も含めて、この試合のPK絡みの判定はことごとくウルグアイに不利な側に流れるものになっていた。

 ただ、ウルグアイはそうした外的な要因以外に、カウンターがやや焦りすぎていたことも指摘しておきたいところ。7対4みたいなカウンター時の明らかに数的有利な状況をろくに活かすことができず、やや淡白なフィニッシュに終始したことも事実。主審に頼ることなく何かを決めるチャンスを作り出すことができなかったのは紛れもなく彼らの責任である。

 突破の可能性が絶たれたことを先に悟ったガーナが12年前の恨みからかウルグアイの敗退に歓喜するという異様な状況になったスタジアム。共に敗退となったはずのスタジアムに広がった奇妙な光景もまたW杯が紡いできた歴史ということなのだろう。

試合結果
2022.12.2
FIFA World Cup QATAR 2022
Group H 第3節
ガーナ 0-2 ウルグアイ
アル・ジャヌーブ・スタジアム
【得点者】
URU:26′ 32′ デ・アラスカエタ
主審:ダニエル・シーベルト

【グループG 第3節】セルビア×スイス

■プランの持続力が突破の潮目

 ここまで2試合で勝利がないセルビア。しかしながら、裏のカードがカメルーンと突破を決めたブラジルということで勝利すれば突破の可能性が見えてくる。スイスは引き分け以上で無条件で突破が決まる状態だ。

 いきなり畳み掛けるような攻撃を繰り出したのはスイス。エンボロ、ジャカといきなりミリンコビッチ=サビッチに襲いかかるようにシュートを打ちまくる。セルビアは縦パスが入れられてしまうなど、ややコンパクトさに欠けた対応の序盤戦だった。

 その分、セルビアは高い位置からの迎撃に力を入れているように見えた。アンカーのフロイラーをタディッチで抑えるのに代表されるように、マンマーク気味に相手を追い回す形を優先。同数でバックラインが受けること自体にはあまり躊躇がある様子ではなかった。

 マンマークに対してスイスは王道対応。移動を増やしながら相手がどこまでついてくるかを探る動きを見せていく。最もクリティカルな解決策となったのはエンボロ。縦パスを受けて反転し、独力で運ぶところまでの推進力を見せていた。

 より高い位置でボールを受けることができるのはシャキリ。インサイドに絞る形で縦パスを引き出す。マンマーク色が強い分、コンパクトさに欠けているセルビアの守備の陣形を利用して侵入していく。ジャカもアンカー的な振る舞いが多かったフロイラーにサポートに入る形でビルドアップを助けていた。

 一方のセルビアの前進は布陣のズレを活用したものだった。スイスは非保持において4-4-2の布陣。セルビアのバックライン3枚は数的優位を生かしながら落ち着いてビルドアップを行う。

 両ワイドCBの攻撃参加は非常に積極的にボール保持に関与。スイスとしては放っておくとめんどくさいことになる。セルビアのWBの攻撃性能にもスイスは手を焼いていた。左サイドのコスティッチはタディッチ、パヴロビッチの連携で敵陣に入り込んでいたし、逆サイドのジヴコビッチもカットインのシュートでポストを叩くなど得点の匂いをさせていた。

 しかし、スイスのSBも攻撃性能では負けていない。撃ち合いの様相が強いカードで先制点の起点になったのはスイスのリカルド・ロドリゲス。左サイドのオーバーラップから最後はシャキリがゴールを決めてみせた。

 セルビアもすぐに反撃。左サイドのコスティッチからのクロスをミトロビッチが合わせて追いつく。エースのゴールで勢いに乗ったのは相棒のヴラホビッチ。スイスのDFを惑わせる斜めの動きだしからフィニッシュの間合いを作り出し、一気に逆転まで持っていく。配置のズレからFWのスキルで勝負できるのがセルビアの強みである。

 だが、セルビアがリードを維持できたのは一瞬のことだった。前半のうちにエンボロがゴールをゲット。中央でタメて最終ラインの足を止めたソウの動きが秀逸だった。

 前半で見られた傾向として、盤面で言えばズレをうまく作っていたのはセルビアだったが、スイスはハメた状況からの脱出がうまい。もしくはセルビアが逃げられたマーカー相手の対応をどうするかに悩みまくっている。後半もこの傾向は変わらず、互いに攻め手を持ちながら敵陣に攻め込む展開が続く。

 スイスは敵陣攻略のデザインが美しい。2点目もそうだが、3点目も華麗。シャキリを起点とした流れからバルガスの動き出しで裏をとると落としをフロイラーがゲット。後半早々に勝ち越しゴールを挙げる。

 このゴールで勝利が必要なセルビアの出足はやや鈍ってしまった印象だ。前半ほどのプレスにはいけなくなったし、スイスは大きな展開でより丁寧にボールを逃すことを行っていた印象。

 セルビアは徐々にそうした展開にダレてしまったように見えた。先に挙げたバックラインの面々は後半も保持で効いてはいたのだけど、自分たちが守備で開ける穴を突かれる頻度が徐々に増えてきてしまうように。

 どちらも見どころのあるパフォーマンスではあったが、90分間のプランの持続度という意味ではスイスに軍配。セルビアはようやく波に乗ってきたストライカーのゴールを守り切ることができなかった。

試合結果
2022.12.2
FIFA World Cup QATAR 2022
Group G 第3節
セルビア 2-3 スイス
スタジアム974
【得点者】
SER:26′ ミトロビッチ, 35′ ヴラホビッチ
SWI:20′ シャキリ, 44′ エンボロ, 48′ フロイラー
主審:ダニエル・シーベルト

【グループG 第3節】カメルーン×ブラジル

■記録と記憶両面に残る金星

 グループステージの大トリで登場するのはすでに突破を決めているブラジル。首位通過がかかっているのはもちろん、勝てば32カ国の中で唯一の3連勝を達成することができる。

 だが、ブラジルはそうしたことはどこ吹く風。メンバーをほとんどそう入れ替えする形でギリギリ突破の可能性を残すカメルーンを迎え撃つ。いや、それでも普通に強そうだけども。

 勝利が最低条件のカメルーンは非常にはっきりしていた。高い位置から相手を噛み合わせる形を見せるプレスを行うカメルーン。2トップは中盤を受け渡しつつ、交互にファビーニョをケアしていく。サイドはSBがSHを追い回す形である。カメルーンはサイドでも枚数を嵌める形でプレスを行なっていく。

 しかし、徐々にペースはブラジルに。マンマーク気味の相手に対しては動きながらどこまでついてくるかを探るという王道パターンで解決を図る。動き回る前線をカメルーンが捕まえられるかどうか?はこのプランの肝である。結論としてはギリギリだろう。カメルーンの中盤から後ろは1on1の対応が後手になってしまい、警告を受けること必須のファウルを連発。30分までに3枚のイエローカードが提示されることとなった。

 ブラジルの保持において特に活性化したのは右サイド。横のレーン入れ替えだけでなく、奥を取る縦の動きなどバリエーションを見せながらカメルーンの守備ブロックを壊す。しかし、ブラジルはフィニッシャーが不在。マルティネッリ、アントニー、ミリトンなどチャンスをことごとくものにできない。

 とはいえ、カメルーンの積極策も得点に繋がったわけではない。前半の終盤までほとんどチャンスがない状態で推移する。だが、前半終了間際に左サイドからのクロスをフリーのファーの選手に届けた形から決定機を迎えたカメルーン。しかし、そこはエデルソン。世界最強の第2GKが立ちはだかり前半でリードを許さない。

 後半もテンポは同じ。カメルーンは前半以上にDFを交わして早い攻撃をシュートに持っていくことは彼らにとっては朗報と言えるだろう。しかし、ブラジルが高い位置から守備をセットしたこともあり、前半よりもオープンな展開が増えていく両チームだった。

 そうした状況を活かしたいのはカメルーン。左サイドにトコ・エカンビの登場をアクセントに前半以上に攻め込むブラジルに対してサイドから牽制をかけていく。

 ブラジルは後半も決定機でシュートが枠外に飛んでいく機会が目についた。枠内に飛んだシュートはことごとくエパシのファイルセーブに咎められてしまい苦しい戦いが続く。エパシはファインセーブでカメルーンの突破の可能性を繋いでみせた。

 ブラジルは得点を得ることができない焦りからか徐々にプレッシングの位置を高めていく。カメルーンもこれに合わせてテンポをあげることでだんだんと両軍の中盤には間延びが発生するようになる。

 終盤まで攻撃の手を緩めなかったブラジルだったが、得点の歓喜が訪れたのはカメルーン。90分過ぎにゴールを決めたのはアブバカル。抜け出しから決勝点を生み出す。

 興奮のあまりすでに警告を受けている状態でシャツを脱ぐというパフォーマンスで退場するというのはなかなかの名場面。本人、全然気にしてなさそうで笑った。審判も思わず苦笑い。カメルーンはブラジル戦勝利とアブバカルの退場という記録と記憶の両面でインパクトのある試合となった。

試合結果
2022.12.2
FIFA World Cup QATAR 2022
Group G 第3節
カメルーン 1-0 ブラジル
ルサイル・スタジアム
【得点者】
CAM:90+1′ アブバカル
主審:イスマイル・エルファス

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