MENU
カテゴリー

「2018年モデルの立ち位置」~2019.3.1 J1 第2節 川崎フロンターレ×鹿島アントラーズ レビュー

プレビューはこちら。

前節のレビューはこっち。

スタメンはこちら。

画像1

目次

【前半】
第3レイヤーを締めろ!!

 プレビューで「この試合のキーポイントは鹿島の出方である」と述べた。川崎のボール保持がメインで、鹿島は受けるという形は想像できるが、どこでどう受けるかという部分は鹿島次第の部分が大きいから。前線と最終ラインが連動しないハイプレスを仕掛けてくれば、川崎が有利になる。以下はプレビューより。メンバーは若干違うけど。

画像2

 鹿島のDF-MF間、せんだいしろーさん風にいうといわゆる第3レイヤーが広いかどうかがこの試合のキーポイント。

「5レーン&4レイヤー理論」 – 蹴球仙術はじめに どうも僕です。今回は、サッカーの戦術のお話。というより、理論化の話になります。理論とは、英語でTheoryといっsendaisiro.hatenablog.com

 レイヤー理論、超便利なので今後ガンガン使おうかなと思ってます。

 話を戻す!実際はどうだったか。川崎のボール保持の局面を表現すると以下の図のようになる。

画像3

 川崎の願いはむなしく、前線からプレスには来てくれなかった。伊藤とセルジーニョは最終ライン3枚で組み立てることが多い川崎相手にステイしていた。そして最終ラインから前線までの縦方向の陣形はコンパクト。この試合のキーポイントだった第3レイヤーはとても狭かった。そしてPA前とハーフラインの中間くらいにDFラインをセットするのがベスト!と考えたようだった。低い位置で構えることを選択しなかったのは、川崎の前線中央に裏を取る動きがないからかもしれない。川崎のオフサイドは前節は0。この試合も1回だけだったし、中央にポジションを取ることが多い小林やダミアンは裏に抜ける意識は高くなかった。裏抜け意識を感じたのは小林がスンテにボレーを防がれたシーンくらいだろうか。 

【前半】-(2)
川崎のサイドの崩しのボトルネック

 間は狭く、裏がないとなると攻略すべきは幅である。どうやら鹿島の陣形でいえば、警戒度は川崎の右より左の方が強かったよう。右サイドの馬渡は浮く場面が多かった。ということで川崎としてはそこからガンガンボールを進めることに。とはならなかった。なぜなら序盤に右サイド大外でフリーになる馬渡にボールが来る頻度はそこまで多くなかったから。これは前節にマギーニョがRSBに入ったときも見られた現象。全く蹴らないわけではないんだけど、あそこにシンプルに入れて前進すればいいのにとは第1節と第2節の川崎に共通して言える印象だった。奈良も守田もあんまりあそこ使わないし、谷口もあそこ蹴ろうとしてキャンセルしたりするので何か理由があるのだろう。中村憲剛は結構使う意識はあった気がする。

1.馬渡がプレーを完結する意識が高すぎて、やり直しがないからあまり出したくない。
2. 長いパス通している間に敵に寄せられる。
3. 右から崩そうとすると小林がサイドの崩しに参加してエリア内にフィニッシャーが足りなくなる。

 仮説をいくつか述べてみた。1とかの理由だったら、別にいいんじゃね?って気もするけど。この辺りはまだすり合わせが必要なのかなと思った。実際に馬渡にボールが入ったときは割と前進はできていた。彼個人のプレーとしてはパスの軌道や質に関しては悪くはないものの、もう少しお互いが何をしたいのか通じ合いきれない部分は見受けられた。ただクロスの質とか、FWに斜めに入れるパスとかはとても効いていたと思う。ダミアンをこの試合で効果的に使えた数少ない選手だと思う。ちなみにエリア侵入に関して物足りなさを感じたあなたはエウシーニョ依存症です。お薬もらいに行くしかありません。。

 逆サイドはというと特にすり合わせが必要のないメンバーである。出し手の谷口も優秀だし、第3レイヤーで前は向けずとも家長やダミアンといった背負ってプレーできる選手はいる。崩しの一例としてはこんなのがあった。

画像4

 しかしながら左サイドで問題だったのは車屋のプレー選択とクロスの質。フリーの家長をうまく使えなかったり、クロスを入れても質が伴わなかったりなどでブレーキに。惜しいミドルはあったけど、それ以外の貢献度がついてこなかった。左は質が、右は連携がもう少しということでサイドから前進できても崩しきれない川崎。となると完結できなかった攻撃のセカンドボールをどちらかが拾うかが大事なファクター。後ろに人がいないから、ここを突破されるわけには!という腹のくくりも手伝って、この部分は川崎は比較的できていたと思う。先制点となった中村のFKのシーンも守田のロスト回収から、小林がレオ・シルバを一発で外したドリブルから。サイドでの質的優位、大事だな。

【前半】-(3)
シンプルだけど効果的な鹿島

 では鹿島の攻撃はどうだったか。ボール保持の局面ではロングボールが主体だった。そこまで成功率は高くないけど。前に進む主な手段とカウンターから。相手陣に進んてからの攻撃は予想通りサイドから。サイドハーフとサイドバック主体のシンプルなものが多かった。安部のカットインとか、安西の巻いていくクロスとか。大分戦は全部見れなかったんだけど、町田を起用している分、後ろ側のボール回しが円滑になっていて、それがサイドを使いやすくしている部分はあったのかなと思った。高い位置ではレオ・シルバも効いていたし。そしてなんといっても内田篤人である。家長のマークがやや甘いこともあり、ガンガンアーリークロスをエリアにあげてきた内田。

画像5

 確かに大体のアーリーは家長頑張ってついてほしいぜ!って感じだったけど、得点のシーンは圧巻。ピンポイントフライングスルーパスを通した内田と、完璧なボールのコントロールと最終ラインとGKとの駆け引きに完勝した伊藤翔のゴールは敵ながらあっぱれである。普通に好きなゴールだった。すげー。欲を言えばほかの選手のカウンターの質がイマイチだったのが残念。得点直後のカウンターとか永木のパスがずれ無ければもっといい形でフィニッシュに持って行けたはず。

 そのゴール以降、試合の中にあった大きなトピックとしては家長と小林のサイド変更か。基本的にはなるべくフィニッシャーとして使いたい小林がいるサイドとは逆で崩したいと考えると、本格的に右から崩すぜ!の意思表示ともとれるかなと。やっぱりそのあと右からの崩しは増えたし。もしくは内田もっとマークしてね!かもしれない。これはよい変更だと思います。

 前半はそのまま1-1で終了。

【後半】
両チームの矜持

 ハーフタイムを挟んで感じた変化は2つだ。まずは川崎のボール保持の際の鹿島のブロックが若干下がった。最終ラインの位置はPAとハーフラインの中間→PAやや手前くらいまで下げられたと思う。後半頭に川崎が見せた小林の裏抜けからの馬渡の決定機などで、やや下げざるを得なかったのかもしれない。前節のFC東京戦も後半はブロックを下げて対応したように、川崎相手に90分間ミドルゾーンでプレスをかけ続けるのは、ややハードなのかもしれない。

 その一方で鹿島らしさが垣間見えたのは2列目の守備のアグレッシブさ。人を捕まえる守備のハードさは鹿島の真骨頂だが、押し込んだ際のロスト後のプレスやブロックを組んだ際のチェックなどが軒並み激しくなる。これに特に悩まされたのが守田。鹿島の激しいプレスに苦心し、中村憲剛から「判断が遅い」といわれたことがフラッシュバックするようなボールロストが散見された。大島もパスひっかけられていたし。この辺りは全体のブロックの位置を下げることになっても、鹿島の意地を感じた部分である。

【後半】-(2)
2018年モデルにシフト

 川崎はサイドを使ったコンビネーションで、鹿島はプレスからのミドルカウンターでそれぞれ一進一退の攻防に。そんな中で68分に先にカードを切ったのは川崎。ダミアン→阿部への交代で小林をトップに。いわゆる「2018年モデル」の登場である。お馴染みの並びに戻すこの交代でサイドをコンビネーションで攻略したり、サイドチェンジが多少スムーズになったりはした。阿部の投入でオフザボールの動きが活性化した影響もあるだろう。守備の面でもカウンターの芽を早めにつぶすなど効果は出ていた。

 そういうわけで最終盤は川崎が一層鹿島を自陣に押し込む場面が増えた。アディショナルタイムに迎えた知念の決定機のようにPA内で深さを作れる場面もわずかながら見られた。偶発的な感じは否めなかったけど。当然川崎は前がかりなので、鹿島にもカウンターのチャンスはあったが、ここもやや精度が足りず。そういえば、川崎のカウンター処理の時に谷口が相手に当てたヘディングのクリアはあの方向でいいのだろうか。確かに体勢はあまりよくなかったけど、奈良がいた方向にはスペースもあったし、敵もいなかったのであちらにクリアしたほうがいいのではないかと思った。今節でいえば鳥栖のようにクリアの方向次第で防げた感じもする失点もあったので余計に。

 試合は1-1で終了。ともにリーグ戦の初勝利はお預けになった。

まとめ

 チーム状況を考えると引き分けは悪くない鹿島。最終ラインを中心に負傷者が続出している中でチーム一丸となって取った勝ち点といってよさそうだ。キーポイントとしたあげた陣形も終始コンパクトに保たれており、前線が食いついてこないといういい意味で鹿島らしくない部分も見られた。永木やレオ・シルバのようなルンバ型のCHも狭い陣形ならばお掃除が楽ちんになる。伊藤翔は得点シーンのようなオフザボールの動きはもちろん、プレスのスイッチ役としても素晴らしく、無謀なプレスを控えることで陣形の間延びを防ぐのに貢献していた。鈴木優磨とは違った持ち味を見せた。最終ラインでは大分戦で不在だった町田と内田の貢献度の高さも特筆すべきだろう。懸念はやはりカウンターの精度。特にこの試合では両サイドハーフの貢献度がやや低かったように思える。交代した選手も含めてもう少しボールを運べる選手がいたら川崎をさらに苦しめることができたかもしれない。中村充孝やレアンドロとか。

 川崎で気になるのは攻め筋の薄さ。この試合では裏と間をうまく使えたシーンは少なく、サイドの突破に頼る部分が大きかった。サイドの幅取りもSB依存度が高く、彼らの質次第で決まってしまうところが大きかった。エウシーニョがいない中でそういう展開になるのは望ましくない。幅取りやオフザボールをより2列目に求めていくしかないと思うのだが、現状ではボールプレイヤーがあふれており、うまく機能しているとはいいがたい。

 コンビネーションで突破できる2018年モデルにしてから若干はよくなったけど、それで得点が入らない終盤に相手をこじ開ける!というのが今冬の補強だったように思うので、2018年モデルが2019年モデルのおしりふきになっているのは切ない。最後の最後にダミアンはいてほしいでしょう。レアンドロ・ダミアン、どうなのよ!?的な意見もちらほらみられるが、正直ボールがそこまでいかないのだからそういう問題ではないように思う。多分課題はもっと手前の部分。彼にボールを届けるまでの手段の数と質の問題。

    馬渡にしてもマギーニョにしてもサイドでフリーになっている選手をうまく使えてる感が薄いのは問題、仮にそこを使っても、ボールが届くまでに時間がかかっては意味がない。川崎の長所はビルドアップのスキルの高さなのだが、後方から高速でフィードを通せる選手がいないのはネック。正確な選手はいるけど。エドゥアルド・ネット退団以降は空位になってるポジションである。サイドに限らず遠方でフリーの選手にビルドアップの局面でボールを通すことができれば、コンパクトな鹿島のようなチームでも陣形のバランスは崩せる。難しい課題なのは百も承知だが、川崎がもう一段上のチームに行くためには克服したい課題であることは間違いない。エデルソンほしいよ!!!

試合結果
2019/3/1
J1 第2節
川崎フロンターレ 1-1 鹿島アントラーズ
【得点者】
川崎:9’ 中村
鹿島:21′ 伊藤
等々力陸上競技場
主審: 佐藤隆治

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次