MENU
カテゴリー

「Catch up Premier League」~Match week 12~ 2022.10.18-10.20etc

目次

ブライトン【7位】×ノッティンガム・フォレスト【20位】

喉から手が出るほどほしいあの男

 レスターと入れ替わるように最下位に沈んでしまったノッティンガム・フォレスト。今節の相手は就任以降、なかなか初日が出ないデ・ゼルビのブライトンである。

 フォレストのプランははっきりしていて、バックライン中央のダンクには持たせていいというものだった。その代わりCHであるカイセドとマック=アリスターには前を向かせないように注意する。縦パスを入れてもなかなか動いてくれないフォレストにブライトンは攻めあぐねているような立ち上がりだった。

 しかし、徐々にサイドを経由するブライトンに対して、IHが外目の守備位置を取るようになるフォレスト。となれば、前線が下がりながらCHの2人のケアをしなければいけない。そうなれば全体の重心は下がるのでブライトンのCBはフリーに。こうしてブライトンは押し込む展開を作ることに成功する。

 大外からのボール運びで敵陣まで侵入する機会を増やしたブライトン。フォレストの中盤のカバーが遅れやすいブライトンの左サイド側から侵入しエリアに迫っていく。

 さらにはブライトンにはカウンターからもチャンス。やたらとつなぎたがるフォレストの攻撃を中盤で塞ぐと、そこから一気に進撃。敵陣深くまで侵入する。攻撃のクリティカルさでいえば、むしろポゼッションよりもこちらの方が有望だったかもしれない。

   だが、ブライトンは毎年恒例であるあの発作が発動する。シュートがやたら入らない病である。ことごとく枠外とヘンダーソンのストップの憂き目にあってしまい、優位な前半に得点まで結びつけることができない。

 後半はさらにハイプレスを強めたスタートで押し込むブライトン。ショートパスで根性を見せるフォレストを保持で返り討ち。心ををへし折ってハーフコートゲームに移行する。

   フォレストは70分まで敵陣のPA内でのボールタッチと、シュートが共に0という悲惨な状況。貴重なロングカウンターからようやくジョンソンがチャンスを迎えるも、このシュートは枠をとらえることができない。

    ただ、ブライトンはブライトンで押し込んだとしても意外とゴールまで向かっていけない状況が続く。ランプティを入れたサイドから攻勢をかけるが、ここから生まれたチャンスはヘンダーソンに防がれてしまう。

    頻度も含めて後半のチャンスの質はそこまでたかくなかったブライトン。デ・ゼルビからすれば、停滞した状況からチャンスを作れる三笘が喉から手が出るほど欲しい展開だったはずである。押し込むところまでは完璧にこなしながら仕上げられないアタッカー陣が得点を決められず、デ・ゼルビ体制での初勝利はまたしてもお預けとなった。

試合結果
2022.10.18
プレミアリーグ 第12節
ブライトン 0-0 ノッティンガム・フォレスト
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
主審:ダレン・イングランド

クリスタル・パレス【13位】×ウォルバーハンプトン【17位】

アタッカーのスキルで取り戻した流れ

 監督はいなくなってしまったがようやくCBにコリンズが戻ってきたウルブス。しかしながら、バックラインはなかなか揃わない。今度はアイト=ヌーリの不在で左SBにブエノを抜擢することに。CHに入ったトラオレ2号機と共に未知数のタレントがどこまで食い下がれるかに注目が集まる先発メンバーとなった。

 ハイプレスに出て行く意識が強かったのはホームのクリスタル・パレス。しかし、ハイプレスの収支は微妙。ウルブスは枚数をかけきれないパレスのハイプレスをいなし、つなぎながら一気に前進をしていく。効いていたのは降りてくるヌネス。彼を捕まえられないパレスはウルブスにすり抜けられてしまう場面が目立っていた。

 バックラインとネベスからの大きな展開で右の大外のトラオレも活用していたウルブス。大きく幅を使いながらの前進でパレスを横にも揺さぶっていく。先制弾はネベスの展開から。左サイドでオーバーラップしたのは例のブエノ。彼のラストパスをトラオレが沈めて、ウルブスに貴重な先制点をもたらす。ブエノはいきなりの大仕事だ。

 一方のパレスは好調な前線のデュエルからの反撃の兆しを見せる。ハイプレスは難しくても、押し込まれた後のカウンターから陣地回復をするのは容易。この日は特にエゼ、ザハのドリブルがキレキレ。ウルブスの守備陣はたまらずファウルを犯してしまう場面が多かった。ファウルはパレスも結構多かったのでお互いさまではあるけども。

 時間の経過とともに展開はウルブスからパレスに傾くように。同点弾が生まれたのは後半。ドゥクレのボールハントから中央のアタッカー陣がボールをキープし、右サイドに展開。オリーズのクロスをエゼが押し込んで試合を振り出しに戻す。

 同点後も攻撃の手を緩めないクリスタル・パレス。ロングボールからエドゥアールがボールのキープに成功すると、ザハの抜け出しから勝ち越し点をゲット。逆サイドで起こっていたこととは言え、さすがにブエノの戻りが遅いことは指摘しなければいけないだろう。先制点の場面では輝いたブエノだが、ほろ苦い部分もあった試合となった。

 リードをしたことでプレスを弱めて受けに回るパレス。ネベス頼みで尻すぼみになっていたウルブスは、パレスの撤退によりようやく前進ができるようになる。中でも交代で右サイドに入ったゲデスは好調。抜け出しからのラストパスを送ることで終盤のチームの攻撃を牽引する。コリンズには彼から決めなければいけないチャンスが巡ってきたのだけども。

 それでもなかなかウルブスの同点ゴールが遠かったのはいちいちパレスがロングカウンターで陣地回復を行うから。ザハを中心としたアタッカーは高い確率で敵陣までボールを運びかえることで押し込んだウルブスを台無しにしていた。

 アタッカーの個の力で流れを引き戻したパレス。貴重な逆転勝利でウルブスを下すこととなった。

試合結果
2022.10.18
プレミアリーグ 第12節
クリスタル・パレス 2-1 ウォルバーハンプトン
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:47′ エゼ, 70′ ザハ
WOL:31′ アダマ・トラオレ
主審:デビッド・クーテ

ボーンマス【10位】×サウサンプトン【18位】

粘りに粘ってついに土をつける

 パーカー解任以降、無敗を続けているボーンマス。今季ここまで敗れた相手はアーセナル、リバプール、シティとことごとくビック6であり、それ以外には無敗という状況が続いている。今節の相手は勝ちなしが続くサウサンプトンである。

 早い攻撃主体でスタートしたサウサンプトン。彼らの今季の攻撃の成否は個人におけるデュエルで優位を取れるかに依存するところが大きい。この試合においてはボーンマスの選手たちとの個人の能力の差を感じる多く、デュエルで打ち勝つところから局面を打開することが多かった。

 ボーンマスはより相手を動かしながらのスペースメイクでの前進が多いチームだ。この試合においては配置の工夫もあった。前線は中央にポジションすることが多いビリングが左サイドでスタート。クリスティ、タヴァニア、ソランケを軸に右サイドから動き出しを行い、ビリングは左サイドから絞りつつフィニッシュに関与するという形だった。

 どちらのチームもある程度ボールを持つ局面で持ち味を出せた理由は、守備側に回ったチームの手際の悪さが大きい。どちらもブロック守備の網目が大きく、ライン間に入り込んだりターンすることでの前進が非常に容易だった。

 特にボーンマスは前線の守備が攻撃時と同じくらい自由に相手を追いかけまわしていた。攻撃時の流動性は良いけども、守備の流動性は味方に迷いを与えてしまうのである。前線の守備が定まらなかったボーンマスはサウサンプトンの攻撃を誘導できなかった。

 先制点はエルユヌシのドリブルから。逆サイドへのカットインからプローのオーバーラップから最後はアダムスがゴールを決める。自由に相手を動かしまくってのゴールである。

 先制点をとったサウサンプトンだが、順風満帆とは言えない。ハイテンポなプレスを行ってもボーンマスのボール保持を助長してしまい、ペースを引き寄せることが出来ず。前線の配置はボーンマスほどではないが整備されている感がない。

   アーセナルから出向しているメイトランド=ナイルズは守備ではミスを待ち構えるボーンマスの餌食になったり、保持では輝きを見せられなかったりなど非常に苦労していた。ボーンマス側にボールを奪った後の1本目のパスの精度が備わっていれば、展開はまた違うものになったはずだ。

 後半も流れが良化しないサウサンプトン。保持でも非保持でも落ち着かず、バタバタとした試合運びが続いていく。加えてボーンマスは横幅を使いながらゆったりとした保持で試合をコントロールするようになる。

 なかなか主導権を取り戻せないサウサンプトンは5バックにシフトする。しかし、後ろを重くした途端、ウォーカー=ピータースが負傷交代。悪い流れは止まらない。

 5バックにした時点で陣地回復ではだいぶ分が悪くなったサウサンプトン。あとの時間はボーンマスの攻撃に耐えられるかどうかである。サイドからの押し込みは簡単に許すサウサンプトンだが、ラストパスとクロスの精度が足りないボーンマスには救われた格好である。

   バズヌの落ち着いた対応とサリスを軸とした跳ね返しでなんとか守り切ったサウサンプトン。ボーンマスに監督交代後初めて黒星をつけることに成功した。

試合結果
2022.10.19
プレミアリーグ 第12節
ボーンマス 0-1 サウサンプトン
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
SOU:9′ アダムス
主審:ジョン・ブルックス

ブレントフォード【9位】×チェルシー【4位】

両GKの競演でゴールに鍵がかかる

 カンテ、ジェームズとワールドカップの出場が難しい負傷を抱えてしまった選手が続々と出てきたチェルシー。苦しい台所事情になってきた中で今節はプレミアの中でも有数の難所であるブレントフォードのホームスタジアムに乗り込む。

 チェルシーは序盤から積極的。高い位置からブレントフォードのDFラインにプレッシャーをかける。チェルシーのバックラインはククレジャを中心にラインを上げながらプッシュアップする。

 ブレントフォード側はチェルシーのプレスに抵抗。開始直後に見られたヘンリーの爆裂持ち上がりなどサイドからボールを運びクロスを上げることを目指していく。特にブレントフォードの右サイドにおける攻防は見応え抜群。クロスを上げたいブレントフォードに対してククレジャが抵抗したり、そのククレジャの裏をムベウモがとったりなど一進一退の攻防が続く。

 クロスから決定的な場面を作るブレントフォードだが、本日もケパは絶好調。ピンチをセーブで打ち消すことに成功する。

 チェルシーの保持はバックラインから横を揺さぶりながらブレントフォードの2トップがカバーしきれない場所から運んでいくイメージで前進していく。チェルシーのバックラインはSBがアシンメトリーの立ち位置。左のククレジャが高い位置をとる一方で、右のアスピリクエタは3バックの一角として振る舞う。これでブレントフォードの2トップに対して数的優位を作る。

 チェルシーは右で余らせたアスピリクエタから持ち上がるシーンが多かった。アスピリクエタが過剰に高い位置をとらない分、右の大外はギャラガーとロフタス=チークの2人でシェアしていく形で高い位置をとる。

 前半の早い時間でギャラガーが負傷してしまった際にはロフタス=チークを右のSHに移動するのに伴い、ハフェルツとマウントを入れ替える。トップ下に右に流れやすいハフェルツを入れることでハフェルツとロフタス=チークで担当する形に変更する。

 トップのブロヤやマウントなど、この日のチェルシーは動きながら受ける選手が前線に豊富。ラストパスを相手を外して受ける形も多かったが、動き出しに力を使う分、フィニッシュの精度が割引に。なかなかゴールマウスを捉えることができない。特にブロヤは動きながらのプレーの精度が今度の課題になるのかもしれない。

 得点が決まらないまま迎えた後半。クロスを上げられてしまう機会が目立つようになったチェルシーは非保持において5-4-1に変更。ワイドをケアしやすい変形を行う。しかしながらそれでもなおサイドからクロスを上げられて決定機を生み出されるなど根本的にチャンスを潰せているわけではなかった。

 それでもCHのジョルジーニョとコバチッチからキャリーしながら押し返す機会を増やしていく。終盤はかなり押し込む場面が増えたチェルシー。WBにスターリングを入れたり、アスピリクエタが高い位置をとるようになったりなど攻勢に出るチェルシーだが、ブレントフォードのゴールにはラヤが鍵をかけてシャットアウト。

 終盤にチャンスを迎えたチェルシーだったが、パンチ力はもう一押し足りず。難所に挑んだチェルシーはスコアレスドローで勝ち点1を持ち帰るという結果にとどまった。

試合結果
2022.10.19
プレミアリーグ 第12節
ブレントフォード 0-0 チェルシー
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
主審:ジャレット・ジレット

リバプール【8位】×ウェストハム【12位】

2人のストライカーの特性を存分に生かす

 ディアスに続いてジョッタも離脱。リバプールの前線の事情はだいぶ苦しいことになってきた感じがある。欧州カップ戦も掛け持ちしているというハードな状況において、かなりやりくりが難しくなってきたのは否めない。

 一方のウェストハムはズマがCBに復帰。今節はダウンズが中盤に入る形での少しアレンジを加えたフォーメーションでアンフィールドに乗り込む。

 ウェストハムのフォーメーションは4−3-3と4-4-2のハーフアンドハーフという感じ。非保持においてはボーウェンを前に残す4-4-2のような形の方が多かった。カウンターを見据えてボーウェンを前に出しておきたいということもあったのかもしれない。

 しかしながら、ウェストハムは非保持における4-4-2の形が歪。前に出ていく意識はあるものの、前後が分断気味になってしまいライン間をコンパクトに保つことができない。かつ、2トップはキーマンであるチアゴを管理することができないという厳しい状態に。ライン間が空いてくると輝いてくるのはフィルミーノ。相手が生み出した隙をつく達人であるフィルミーノに縦パスを入れてリバプールは前に進んでいく。

 もう1人のFWであるヌニェスも好調だ。バックラインのチアゴはダイレクトな裏へのパスでヌニェスを走らせながらゴールに直線的に向かうアプローチも敢行。ボールコントロールには難があるが、とにかくゴールに向かう力がとても強い男にはぴったりのアプローチである。

 持ち味を生かすことができた2人のFW。先制点を決めたのはヌニェスの方だった。チアゴが展開した左サイドからのクロスに合わせてウェストハムのゴールをこじ開けて見せる。

 リバプールに比べるとウェストハムはアタッカーの持ち味を生かすことができなかった。ボールを大事にする意識が強かったこの日のウェストハムはスカマッカにはボールを入れるチャレンジがそもそもなかなかできない状態に。基本的には触ってナンボのストライカーは完全に孤立してしまった。

 ウェストハムはより手薄なサイドの攻略に挑むが、この日のリバプールはエラーになることも多いアレクサンダー=アーノルドも食らいつきながら守る。前半終了間際にチャレンジが遅れたことで献上したゴメスのPKもアリソンがセーブ。追いつくことを許さない。

 後半、試合のテンポを上げていくウェストハムだがリバプールはフィルミーノを指南役としたハイプレスで対抗。カウンターのスピード感も十分でウェストハムに得点の隙を与えない。

 停滞感の割にはモイーズはアントニオの投入が遅かった感がある。74分に投入したアントニオで推進力を得ると最後の力を振り絞りリバプールのゴールに向かうウェストハム。左サイドを攻略したベンラーマから生まれた決定機はソーチェクのゴールをアリソンが阻んで得点には至らず。

 ストライカーの特性を活かして先制点を得たリバプールが2試合連続でMOM級の働きを見せたアリソンの貢献で逃げ切りに成功。公式戦3連勝で本格的な反撃の態勢に入った。

試合結果
2022.10.19
プレミアリーグ 第12節
リバプール 1-0 ウェストハム
アンフィールド
【得点者】
LIV:22′ ヌニェス
主審:スチュアート・アットウェル

ニューカッスル【6位】×エバートン【14位】

噛み合わない攻撃を繰り返すエバートンをシャットアウト

 じっくりとボールを持つことを許されたニューカッスル。キャルバート=ルーウィンのプレッシングはアンカーのギマランイスが基準であり、制限をかけられることがなかったニューカッスルのCBは自由にボールを持つことができた。

 しかしながら、ニューカッスルはショートパスではなく、比較的前線に蹴って特性を生かそうとする場面も多かった。ウィルソン、アルミロンにシンプルなロングボールを入れて陣地回復を狙っていく形である。

 中盤に無理に刺すとエバートンからのカウンターが飛んでくる。エバートンの中央3枚は動きの範囲が非常に広く、好調のニューカッスルのWGへのスライドもこなす。これにより、WG独力での突破は難しくなった。カウンターでのスピード感も含めてエバートンの中盤はニューカッスルに対して攻守にややこしい存在だったと言えるだろう。

 しかしながら、ニューカッスルに解決策がなかったわけではない。特にキレていたのは右サイド。トリッピアーとアルミロンを軸に斜めの楔を中央に入れたり、サイドの深い位置を抜け出したりすることで深い位置まで侵入する。手助けをしたのはアンカーのギマランイス。横パスで彼に預けることで右サイドは抜け出すタイミングを整えることができた。

 その勢いのままゴールを決めたのはアルミロン。右サイドからのクロスを味方が繋ぎ、再び右サイドにボールが戻ると彼は技ありのミドルを披露。計術的なシュートでニューカッスルに先制点をもたらす。

 エバートンはアタッキングサードにおいて息が合わない場面が多かった。カウンターはスタートの勢いこそいいもののそれぞれが単騎突撃。オナナやグレイなど独力で持ち上がる選手はいるが、よくてファウルを奪うまで。特にキャルバート=ルーウィンを絡めた早い攻撃はタイミングが合わないことが多く、パスを引き出して受けるという過程でオフサイドになったり、動き出しとパスがズレたりなど大きなブレーキとなっていた。ニューカッスルの出足は上々で、彼らに潰されてしまうことで消えるチャンスも多かった。

 イウォビのプレスの位置を高いところに設定することで反撃に出るエバートンだが、ニューカッスルは右サイドを軸に敵陣深くまで進んでおり流れは渡さない。アルミロンは後半も絶好調である。

 ボールを持とうとしてもゲイェがコントロールミスして自ら生み出してピンチを警告で止めるという最近のエバートンのお馴染みのシーンが出てくるばかり。キャルバート=ルーウィンにとりあえず蹴るという前半のうまくいかなかったプランを採用した理由を見ている側に思い出させたシーンだった。

 後半にウィロックも加わりカウンターの精度を落とさないニューカッスル。立ち上がりはエバートンがボールを持つことが増える時間もあったが、交代選手が増えてくるとニューカッスルが再びガッチリとペースを握る。

 そのままニューカッスルはゲームクローズに成功。反撃を狙うエバートンをゴールに近づけることすら許さず、最小得点差ながら力を見せつける形で勝利を手にした。

試合結果
2022.10.19
プレミアリーグ 第12節
ニューカッスル 1-0 エバートン
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:31′ アルミロン
主審:トニー・ハリントン

マンチェスター・ユナイテッド【5位】×トッテナム【3位】

1点の曇りを除けば晴れ渡るような快勝

 ホームであるオールド・トラフォードではリバプール、アーセナルなどライバルたちを次々撃破してきたユナイテッド。今節の相手は上位2チームに追いすがる好調のトッテナムである。

 ユナイテッドのスタンスは強気だった。高い位置からのプレッシングを怠らず、トッテナムのバックラインにプレッシャーをかけていく。ただし、重要なのはプレスに行きすぎないこと。中盤はあくまでマンツー優先である、前線もプレスにはいくが枚数はボール保持側であるトッテナムの方が人が余る状態が続いていた。

 そういう意味ではトッテナムにはプレスを回避するチャンスはあった。特にWBは安全地帯。ここにボールを届けることができれば、トッテナムは問題なく前進できそうである。

   しかし、盤面上空いていることと実際空いているところを使えるかは全く別の話。トッテナムのバックラインのビルドアップのバタバタ感では、全くサイドに素早くボールを付けることが出来なかったため、ユナイテッドの中盤のスライドはボールが出てからでも十分に間に合ってしまう。唯一機能していたのはケインを使ったサイドチェンジ。これだけは速度も精度も十分で、前半からファーで余ったドハティを軸にチャンスメイクをしていた。

 より多くのシュートを放っていたのはユナイテッドの方だ。トッテナムのプレス隊も時折色気は出して前進してくるがボールを奪い取ることはままならない。それを利用してユナイテッドはボールをつなぎながら前進する。

 敵陣深い位置での狙いはとにかくバイタルエリアである。ここが空けばフレッジ、ブルーノあたりは躊躇なくシュートを打ちまくっていく。中にはロリスに冷や汗をかかるようなセービングまでである。

 それでも押し込んでからの選択はやや中央に寄りすぎている感もあるユナイテッド。狭いスペースにこだわる分、ミドルブロックに引っかかるケースも多くなる。試合全体としてはユナイテッドの完勝ではあったが、強引なミドルでシュートが跳ね返されてしまい、トッテナムのカウンターの種をまくなど部分的には付け入るスキはありそうではあった。押し込んでからのサイドの崩しもトッテナムの方がスムーズだったいえるだろう。

 しかし、ペナ幅のままで崩しを続けるユナイテッドは後半戦に先制点をゲット。狭い状態のままですべてを解決して見せた。地味ではあるが、この場面はアントニーのサイドチェンジが見事。このスピードでなければ通らないし、この弾道でなければ間に合わない。ゴールだけでなくアシストの才覚があることを示して見せた。サンチョからのラストパスをフレッジが決めて先手を奪う。

 前に出て行きたいトッテナムだがリシャルリソンとクルゼフスキを失ったとなるとなかなか手の打ちようはない。本当に控えに信頼できるメンバーがいるなら、この状況で80分までに交代0とはならない。

 焦るトッテナムはポジトラで強引な縦パスが目立つように。しかしながら、これはむしろユナイテッドのカウンターの養分になってしまう。フレッジ、カゼミーロというCHコンビはこの状況のために組まれたユニットのようなものである。

    そんな中でもペリシッチの突破からなんとか決定機を掴んだとトッテナム。だが、このクロスがオフサイドになると、そこから素早くカウンターに移行(オフサイドを流した主審の好判断が光った場面だ)し、フレッジからブルーノのラストパスで勝負あり。決定的な2点目を奪う。

 出番がないことに怒り不満げにフルタイム前にロッカーに引き上げるロナウドという一点の曇りこそあるが、ユナイテッドの完勝といっていい試合だろう。今季ライバルを下し続けている夢の劇場に新しい1ページを刻むことに成功した。

試合結果
2022.10.19
プレミアリーグ 第12節
マンチェスター・ユナイテッド 2-0 トッテナム
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:47′ フレッジ, 69′ フェルナンデス
主審:シモン・フーパー

フラム【11位】×アストンビラ【16位】

ジェラードに引導を渡すミトロビッチ

 ともに3試合勝ちなしで迎える両者の対戦。結果もさることながら、内容も停滞感がありどちらのチームにとってもブレイクスルーが欲しい中での一戦になる。

 立ち上がりからボールを持つのは一方的にフラムの方だった。アストンビラの守備は前節から昨年使用の3センターがど根性スライドを敢行し続けるスタイルにカムバック。3トップは守備での貢献は最低限の前残りを見せる姿勢になった。

 フラムのポゼッションはそうしたビラの守備の特徴をしっかり掴んでいたように思える。バックラインは横幅を使いながら広くボールを回す。時折、2列目からウィリアンが降りてきて逆サイドに大きな展開を行う。インサイドが開けばパリーニャにボールを入れて、縦方向に攻撃を加速させるという使い分けができていたのも、この日のフラムの保持が良かったポイントだろう。

 フラムがとりあえず横幅を使うだけでビラの3センターはいちいち横への移動を余儀なくされる。一般的にピッチの横幅を3枚で対応するのは基本的に難しいこと。この日のように自由にサイドを変えられてしまっては実質不可能と言っていいだろう。

 こうしてビラの中盤を突破することに成功したフラム。サイドから攻め込みクロスを上げることでチャンスを作っていく。この日はセットプレーも手応えあり。ビラのDF陣に競り勝ち、あわやという場面を作り出していく。

 中盤をポゼッションで突破されると苦しくなるのはフラムも一緒なのだが、ビラはボール回しでフラムの中盤と駆け引きすることは諦めてしまっていたように思える。長いボールをワトキンスやイングスめがけて放り込み、一気に陣地回復を行っていく形を狙っていく。しかし、全体の押し上げが効かないため、セカンドボールを拾えずすぐにフラムにボールを回収される。

 そうなると両チームの前進の機会に差が出るのは必然だ。より多く敵陣に攻め込むことができたフラムはサイドからの押し込み+セットプレーというこの試合の頻出パターンで先制。ハリソン・リードのミドルは非常に見事であった。

 後半、反撃に出たいビラは割り切って強度をアップ。放り込みに後方から走る選手を増やすことで半ば強引にペースを引き戻そうとする。リズムとしては五分五分といえるところまで押しもどせた感があったのだが、それを台無しにしたのがドウグラス・ルイス。ミトロビッチの挑発に乗ってしまい、頭突きの反撃で一発退場。ミトロビッチ、相変わらずスレスレのプレーで罠に嵌めるのがうまい。

 数的優位を享受したフラムはここから一方的なポゼッションでアストンビラを押し込む。決定的な追加点を奪ったのはまたしてもミトロビッチ。キャッシュのハンドをエリア内で誘い、自ら得たPKを沈めてこの試合の勝利を決定的なものにする。

 フラムは仕上げの3点目も獲得。ミングスのオウンゴールというのはいろんな意味で切ない。ルイスの退場で流れを取り戻すチャレンジをフイにしたビラ。ジェラードにとってはアストンビラの監督としての最後の試合になってしまった。

試合結果
2022.10.20
プレミアリーグ 第12節
フラム 3-0 アストンビラ
クレイヴン・コテージ
【得点者】
FUL:36′ ハリソン・リード, 68′(PK) ミトロビッチ, 84′ ミングス(OG)
主審:マイケル・オリバー

レスター【19位】×リーズ【15位】

最下位逆戻りのジンクスを打破

 1節ごとに最下位と19位を行き来しているレスター。今季は出遅れで苦しんでおり、なかなか降格圏を脱出することができない。順番で言えば今節は最下位に逆戻りするターンである。今節はフォレストが負けを回避したため、この試合に敗れれば最下位に逆戻りだ。

 対戦相手のリーズは直近の成績で言えばレスターよりも深刻。9月のリーグ戦のうち、2試合が延期で無くなっているとはいえ、リーグ戦最後の勝利は8月と2ヶ月ほど勝利から遠ざかっている。個人の切れ味は悪くないだけに早めに悪循環は止めておきたい。

 どちらもプレッシングは前から意欲的。立ち上がりに前からのプレスでファエスを引っ掛けて、いきなりFKのチャンスを得たリーズもなかなか良かったが、よりプレスに積極的だったのはレスターの方である。デューズバリー=ホールをヴァーディと並べる形で4-4-2として運用。2列目も中盤から前がかりなプレスを行い、人を前から捕まえる圧力でリーズを苦しめる。

 リーズはこのプレスに苦戦。2列目が前を向ける機会は稀で前に進むための推進力を得ることができない。レスターの圧力に苦しむ流れの中でロカがプラートにボールを奪われ、カウンターが発動。ショートカウンターからコッホのオウンゴールを誘発する。前プレで見事に先制点で結果を出して見せた。

 20分くらいからリーズは徐々にプレスを外せるように。縦にパスを入れて、大外から裏抜けする選手に繋ぎ、そのままエリア内に折り返す形でチャンスメイクを行っていく。

 しかし、レスターも外循環のボール回しで同様に最終ラインの裏を狙っていく。アタッカーのスピードであればこちらも負けていない。

 その上、レスターには早いアタッカーを活かせる舵取り役がいる。前節と同じく最終ラインに落ちるティーレマンスはシニステラにとって邪魔だし、裏のヴァーディや左サイドへの大きな展開も平気でこなす存在。リーズにはないビルドアップにおける大きな武器になっていたといえるだろう。

 大外からの裏の抜け合いを制したのはレスター。カスターニュ、プラートが右サイドの裏を一気に駆け上がると逆サイドのバーンズが仕留めて前半のうちに追加点を奪い取る。

 ハーフタイムにリーズは2枚の選手入れ替え。オウンゴールに裏抜け対応での警告など画面から悲鳴が聞こえてきそうだったコッホをクーパーに入れ替え、アタッカーとしてロドリゴを投入。アーロンソンが低い位置をとるのは微妙なところではあるが、サマーフィルやシニステラあたりが元気な2列目を入れ替えずにアタッカーを増やすにはこれしかなかったということだろう。

 前がかりなリーズは後半はペースを握るが、レスターにはこの状況をひっくり返すことができる足は十分にある。打ち合いは受けて立つところだろう。

 レスターは終盤もプレスの手を緩めないエネルギーと6バックでサイドを埋める割り切りを披露。リーズに攻められる機会がかなり増えた時間帯だったが、バックスの奮闘でなんとかシャットアウトに成功する。

 今月に入って4戦で失点は1つのみと徐々に強度が戻りつつあるレスター。順位の入れ替わりの法則で言えば最下位に戻るのが今節だったが、勝利したことでこのジンクスを打ち破ることに成功した。

試合結果
2022.10.20
プレミアリーグ 第12節
レスター 2-0 リーズ
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:16′ コッホ(OG), 35′ バーンズ
主審:ピーター・バンクス

アーセナル【1位】×マンチェスター・シティ【2位】

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: IMG_6275-1024x768.png

天王山第一ラウンドの行方は

 首位を走りながらもここにきて2試合連続で未勝利が続くアーセナル。このタイミングでアルテタが国内で唯一勝利したことがないグアルディオラという難敵を迎えることになった。

 立ち上がり、シティのプランは明確な中央封鎖。左右に張っていることが多い両WGが受け渡しながら中央のジョルジーニョを監視していたのが印象的だった。中央にジンチェンコが入った時は揃ってインサイドをプロテクトすることもあった。

 よって、サイドからは時間が与えられたアーセナル。ただし、ビルドアップにおけるストロングサイドである左側はデ・ブライネが積極的に出て行くことでシティが警戒を強めていた。逆サイドの冨安は時間を貰えており、黙々とサカに縦パスを送る。しかしながら、相手を動かすボールの受け方ができず、サカのサポートという観点では不十分だった。

 しばらくすると、シティはプレスのスタンスを変えて冨安にもプレッシャーをかけることになる。サカ×ベルナルドのマッチアップを避けたかったのか、敵陣でのボール奪取から攻撃機会を増やしたかったのかは不明だ。同じ時間に裏のハーランドにひたすらボールを送る試みもシティはトライしており、アーセナルに阻まれるも即時奪回から二次攻撃を行う形でアーセナルにプレッシャーをかける。冨安のミスが絡んだ失点はこうしたシティ側のプレッシャーが引き起こしたエラーといえるだろう。

 中央を強力にプロテクトする方針が変わったことでアーセナルもライン間に起点を作る。ウーデゴールはライン間に定住し、ポストから周りの味方を開放する役割を果たしていた。前を向く選手を作ったアーセナルはここから裏抜けでシティのエリア内に迫る。地道な裏抜けはPKという形で結実。エンケティアの抜け出しをエデルソンが倒してしまい、アーセナルに前半の内に追いつくきっかけとなるPKが与えられた。

 後半、シティは保持の時間を増やしながらアーセナルを敵陣内に押し込む。ハーランドを中心に縦に早い攻撃を重視していた前半とは異なるアプローチ。しかしながら、ブロック守備攻略はなかなかリズムをつかめない。特に右の大外に陣取るマフレズのプレー精度の低さは足かせになっていた。

 結局縦に早い方が効きそうとわかったグアルディオラはバックラインを本職DFでかため、前線にベルナルドを投入。プレスの旗手として試合のテンポを上げる役割を託す。

 この役割変更がアーセナルに刺さる。バックラインが時間を貰えなくなったアーセナルは強引なつなぎでミスを連発。徐々にシティがショートカウンターから主導権を握るようになる。シティの2点目はガブリエウの繋ぎのエラーから生まれたものだった。

 勝ち越しゴールで波に乗るシティはさらに右サイドを攻略し追加点。アシスト役のデ・ブライネ、フィニッシャーのハーランドはアタッキングサードでの精度がピリッとしないこの日のアーセナルの攻撃陣に「こうやるんですよ」と教えているかのような一発回答で試合を決める3点目を決めて見せた。

 前半は互角も後半に地力の差が表れた両軍。天王山第一ラウンドはアウェイのシティに軍配が上がった。

ひとこと

 ベルナルドの移動を起点に行われたプレスは紛れもない変身。アーセナルはシティの分厚さを体感するとともに、シティが変身をつかうほど、このカードの重要性が高まっていることを実感することが出来たのも確かである。

試合結果

2023.2.16
プレミアリーグ 第23節
アーセナル 1-3 マンチェスター・シティ
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:42′(PK) サカ
Man City:24′ デ・ブライネ, 72′ グリーリッシュ, 82′ ハーランド
主審:アンソニー・テイラー

今節のベストイレブン

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次