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「Catch up Premier League」~Match week 1~ 2022.8.5-8.7

目次

①クリスタル・パレス×アーセナル

■課題はありつつリベンジを達成

 レビューはこちら。

 今年も多くの移籍金を費やして大規模なスカッド増強を行ったアーセナル。CL出場権奪還はもはや現実的なノルマといってもいいシーズンである。そんな彼らの開幕戦の相手はクリスタル・パレス。くしくも昨季のターニングポイントの1つである4月の3連敗の1敗目となった相手である。

 立ち上がりから主導権を握ったのはアーセナル。特に興味深かったのが左サイドにおける旋回である。ジンチェンコがSBに入った分、彼が内側に絞る動きが入ることはある程度想定できたが、WGのマルティネッリまで低い位置までボールを受けに来るのは少々意外だった。

 アーセナルの左サイドはこうした1人の大きい動きに対して周りが内外のバランスを調整するようにポジショニングする。パレスはアーセナルのこの左サイド側の移動に対して、ついていききれずマーカーを離してしまうことが多かった。

 これにより左サイドに起点を作ることに成功したアーセナル。対角パスを駆使し、逆サイドの幅も使いながら敵陣深くまで攻め込んでいく。

 勢いをにぎったアーセナルはそのまま先制。セットプレーからジンチェンコの折り返しをマルティネッリが押し込み、今季のプレミアリーグのオープニングゴールを飾る。

 しかし、この先制点以降はペースを握ったのはパレスの方。パレスはアイェウを筆頭にアーセナルの左サイドの旋回をある程度見切った様子。新加入のドゥクレと連携しながら徐々に同サイドのアーセナルの選手を捕まえることに成功する。

 これによりプレーエリアが徐々に下がるアーセナル。ポゼッションで押し込むパレスはザハという決め手がいる左サイドからクロスで勝負に行く。しかしながら、この日のアーセナルのバックラインは強固。これがプレミアデビュー戦となったサリバとGKのラムズデールが彼らの前に立ちはだかるようになった。

 後半も押し込む機会を得たのはクリスタル・パレス。こうなってしまうと、保持ではアドバンテージになっていたアーセナルの左サイドのユニットは守備面での弱みが目立つようになる。立ち上がりは存在感を発揮していたジェズスも徐々にボールが収まらないように。パスワークもズレが目立つようになり、後半もアーセナルは苦しい展開を強いられる。

 ボールの失い方が悪くなればペースはパレスに移行。即時奪回が効かない状態でのロストが続くアーセナルを尻目にポゼッションを安定させる。

パレスの攻撃を牽引していたのはアンデルセン。左右自在に飛ばせるフィードで、勝負できる場所を好きに定めることができる。だが、そのサイドのマッチアップで優位を取り切れないパレス。アタッキングサードまではいくものの、仕上げで攻めあぐねる。

 そうこうしているうちにアーセナルが反撃に。左サイドの手当てとして入ったティアニーがロングボールに競り勝つと、このボールをつないでアーセナルは右サイドに展開。サイドの深い位置に入り込んだサカがオウンゴールを誘発し、勝負を決める。

 試合を支配しきれなかったアーセナルと、試合を仕上げられなかったパレス。どちらのチームも課題は感じられたが、勝利したのは昨年のリベンジを果たしたアーセナルの方だった。

試合結果
2022.8.5
プレミアリーグ 第1節
クリスタル・パレス 0-2 アーセナル
セルハースト・パーク
【得点者】
ARS:20 マルティネッリ, 85′ グエーイ(OG)
主審:アンソニー・テイラー

②フラム×リバプール

■流れを変えた両ストライカー

 チャンピオンシップ新記録という圧倒的な得点力で2部を荒らしまくったミトロビッチを軸に見事にプレミア帰還を果たしたフラム。開幕戦の相手はいきなりのリバプール。1試合目からラスボスの登場である。

 しかしながら、試合はリバプールが苦しむ意外なスタートとなる。フラムの2トップはファビーニョを受け渡すことをサボらずにマークを受け渡す。まずは中央で大きく展開することを塞ぐのが目的だ。ボールが進む方向の規定に成功したら、そこからは中盤4枚が大きくボールサイドにスライドする。

 イメージとしてはフラムは中盤4枚より手前で攻撃を止められれば成功!という感じだろう。中盤のスライドが間に合わない場合はSBが飛び出しながらとめにいくが、裏を取られるリスクがあるこの選択肢はなるべくであれば取りたくないはずだ。

 序盤はこのスライドしながらの守備がうまくいっていた。リバプールはフラムの中盤のフィルターを突破することができず、前に進むことができない。トップに当てるべくロングボールを蹴ってもフラムのバックラインに跳ね返されてしまう。ミドルカウンターからチャンスを得たフラムが試合のペースを握ったと言っていいだろう。

 そういう状況を動かすのはいつだってチアゴである。降りる動きを使いながら、自分のマーカーであるハリソン・リードやスライドした時のマーカーであるケパノに対してファジーなポジションをとる。

 曖昧になったマーク相手からフリーになったチアゴは対角パスから右サイドに展開。サラー&アレクサンダー=アーノルドのコンビからクロスを行い、逆サイドのロバートソンが折り返すというCSで見られたおなじみの流れをこの日も見せることになった。

 一方のフラムはミトロビッチへのロングボール一辺倒。ここで落としてサイドに展開しながらなんとか前進するスタイルでリバプールに押し込まれた陣地を回復していく。

 だが、先制したのは苦しいはずのフラム。右サイドで噛み合わないパスを交換しているH・リードとケパノを追い越したティティのクロスをファーで待ち構えていたミトロビッチが叩き込み先制。下馬評を覆すようにホームチームが先制する。

 リバプールは上にあげたおなじみのパターンから反撃を試みるが、フラムのゴールネットをなかなか揺らすところまで辿り着かず。1点のビハインドでハーフタイムを迎える。

 後半早々にリバプールはチアゴが負傷交代。これによりエリオットとヌニェスがピッチに入ったあたりから試合の流れは変わるように。良くも悪くも上の定点攻撃にこだわっていたリバプールだが、この交代以降は縦に早く進むように。

 特に右サイドから縦に進んでいくやり方をメインに据えて、同サイドのロビンソンを狙い撃ちにしていた。同点ゴールもまさにこの形から。マティプの縦パスから右サイドに展開し、サラーからヌニェスにクロスを上げて同点に追いつく。

 だがフラムも反撃に。後半しばしば見られていたロングカウンターからミトロビッチがファン・ダイクを出し抜きPKを獲得。再びリードを奪う。ダイクにしては軽率なアプローチになってしまった感があったシーン。ミトロビッチがこの日2得点目となるPKを決めて見せた。

 しかし、リバプール側のストライカーも負けていない。ヌニェスが右サイドからの長いレンジのボールを粘って収めると、これをサラーが押し込んで同点に追いつく。

 終盤はオープンな対決になった一戦。流石にこうなるとリバプールが有利ではあったが、なんとか凌ぎ切ったフラム。ホームでのラスボス決戦で勝ち点を得ることに成功した。

試合結果
2022.8.6
プレミアリーグ 第1節
フラム 2-2 リバプール
クレイヴン・コテージ
【得点者】
FUL:32′ 72′(PK) ミトロビッチ
LIV:64′ ヌニェス, 80′ サラー
主審:アンディ・マドレー

③ボーンマス×アストンビラ

■内外分断でシャットアウト、3年ぶりの復帰を祝うクリーンシート

 3シーズンぶりのプレミア復帰を果たしたボーンマス。ホームでの開幕戦の対戦相手となるのは途中就任のジェラードが2年目のシーズンを迎えるアストンビラである。

 プレミア復帰に沸くヴァイタリティ・スタジアムの熱気に後押しされるように、両チームは高い位置からの積極的なプレッシングでスタート。互いにプレッシャーをかけられた側は前線に蹴り飛ばす形で試合は始まる。

 その流れから生まれた1stチャンスを手にしたのはホームのボーンマスの方だった。セットプレーから先制したのは3バックの一角に入るレルマ。シーズン開幕からわずか2分でボーンマスはプレミア復帰を祝うゴールを奪うこととなった。

 この先制点以降は両チームのプレスの高さや意欲には差が出るようになった。比較的ゆったりとした保持を許す位置にプレスを設定したのはリードしているボーンマス。ハーフウェイラインかやや後方をトップのプレス開始位置とする。

 ボールを持てる格好になったビラはアンカーのカマラが最終ラインに降りるサリーの形を使いサイドを押し上げる。サイドの攻撃は全体がスライドするように人数をかけて行ってはいたが、フリーで抜け出す選手を作ったりや、PAに侵入するようなドリブルができる状況を作ることができず。ビラはアバウトなボールをひたすらPA内に放り込むことしかできない。

 そもそもハイボールで優位に立てるスカッドではないし、ビラの良さは外でできたタメを早いクロスでマイナスで折り返し、それに逆サイドの選手が合わせる形。外と内が分断されたようなこの日のやり方ではタワー型のFWでもいない限りは優位を取るのは難しいだろう。

 ビラは外切りのハイプレスから敵陣深くまでプレスをかけるが、ボーンマスのバックラインは安全第一でトップのムーアに放り込む。時には左のWBであるゼムラが中にカットインしながら逆サイドへの展開でチャンスメイクすることも。その辺りはビラのプレスの強烈さを見ながら調節しているように見えた。

 アストンビラは有効打となる攻撃を打ちきれないまま試合は後半に。ブエンディアの投入で4-2-3-1にシフトチェンジを行うビラだが、状況は好転せず。外と中は分断されたまま無闇にハイクロスでボーンマスのブロックに挑んでは跳ね返されるシーンのオンパレードである。

 ボーンマスはがっちりとビラの攻撃を受け止めながら左サイドに流れるムーアへのロングボールで陣地回復。接触プレーが多く、攻撃がぶつ切りになることも含めて、アストンビラはすっかりとリズムを崩されたように見えた。

 いつまでもペースを引き戻せないアストンビラを横目にボーンマスはセットプレーから追加点。空中戦のターゲットになっていたムーアがネットを揺らし、試合を決定的なものにした。

 セットプレーからの2発という強かさ以上に、アストンビラをうまくペースに嵌め込んだゲームコントロールが見事。ボーンマスの3年ぶりのプレミア挑戦は白星でのスタートとなった。

試合結果
2022.8.6
プレミアリーグ 第1節
ボーンマス 2-0 アストンビラ
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:2′ レルマ, 80′ ムーア
主審:ピーター・バンクス

④リーズ×ウォルバーハンプトン

■時間限定の優位を活かせず

 立ち上がりから積極的にプレスを仕掛けていったのはリーズ。立ち上がりのウルブスはDFにプレッシャーをかけてくるリーズの前線に対応しなければいけなかった。

 リーズの前線には昨シーズンなかなかプレーができなかったバンフォードが先発復帰。やはり、彼がいるとプレスのスイッチ役としては別格。ジェームズも頑張ってはいたが、バンフォードの相手の追い込み方はやはり一段上。昨季終盤よりも優れたプレスでチームを牽引する。

 だが、ウルブスはこのプレスを振り切って先制する。ネベスの大きなボールからネト、ヒチャン、ポデンスと繋いでゴール。リーズのプレスをひっくり返す形で早々に先制点を奪う。

 ウルブスはリーズのプレスにパスを引っ掛ける場面もあったが、長いボールを使って脱出できるのが大きい。こちらも負傷明けから徐々に状態を上げている最中のネトが躍動。スペースがある状態での彼はこの日のどの選手よりも輝いていたと言ってもいいだろう。

 CF起用のファン・ヒチャンもいぶし銀の働き。これまでは抜け出しなどを主とした機動力勝負のイメージがあったが、PA内でのワンタッチなどこれまでとは異なる持ち味を見せることに成功していた。

 試合が進むにつれてウルブスは敵陣でのプレッシャーをかけるように。ウルブスは中央を封鎖する形でリーズを外に追いやりながらプレスをかける。苦しむリーズであったが、なんとかこれを跳ね返して同点。右サイド深い位置から攻め込むとアイト=ヌーリ、ネベスとクリアしきれなかったボールを最後はロドリゴが打ち込んで同点に追いつく。

 タイスコアで迎えた後半はプレスとビルドアップの応酬。両チームのプレッシングは悪いものではなかったが、ビルドアップ回避がスムーズでボールの前進を許す場面が多かった。

 どちらも均衡していた試合であったが、徐々にウルブスが試合の主導権を握るように。スムーズな長いレンジのパスで幅をとった攻撃を敵陣深くまで押し込むと、トランジッションでCBが高い位置から潰すことに成功。押し込みながらのプレーを続け、決定機を作り出していく。

 しかし、ウルブスには交代選手がおらず、ベンチが動けない。チャンスをフイにすると、前線の選手を代えてフレッシュになったリーズがペースを握り返す。

 トップ下のクリヒへのパスが刺さるようになったことでリーズは反撃に成功。決勝点もクリヒへの縦パスがきっかけになったところから、最後はアイト=ヌーリのオウンゴールを誘発した。

 時間制限があった優位を得点につなげられなかったウルブスが凌ぎきったリーズに勝ち越しゴールを許す。スリリングな展開を制したのはホームのリーズだった。

試合結果
2022.8.6
プレミアリーグ 第1節
リーズ 2-1 ウォルバーハンプトン
エランド・ロード
【得点者】
LEE:24′ ロドリゴ, 74′ アイト=ヌーリ(OG)
WOL:6′ ポデンス
主審:ロベルト・ジョーンズ

⑤ニューカッスル×ノッティンガム・フォレスト

■スコア以上の完勝で勝負のシーズン好発進

 試合開始から終盤までほとんどニューカッスルが試合を支配するワンサイドゲームと言っていいだろう。立ち上がりはフォレストもハイプレスから仕掛ける姿勢を見せたが、すぐに降参。撤退第一の守備に切り替えていく。

 ニューカッスルは立ち上がりからWBの裏のスペースに切り込む形で敵陣に迫っていく。イキイキしていたのはやはりサン=マクシマンである。ファウルをとって好機を得ることに成功する。

 一方のフォレストは立ち上がりはポゼッション志向が強め。3バックの中央にいるニアカテがアンカータスクに入る形でボール保持をおこなっていく。ニアカテは序盤は縦にボールを入れることができており、ショートパスの前進ができている。

 前線に起点を作れないことが両チームの違い。フォレストは高い位置でファウルを奪ったり、陣地を回復できる選手がいないのが痛い。よって一度押し込まれてしまうとフォレストはなかなか敵陣に入ることができない。

 フォレストは非保持で中盤で人を捕まえ切れている分、なんとか踏ん張ることができた印象。となるとニューカッスルの攻略手段は外からになる。右サイドから大外を走り込む形でラインを下げるように敵陣に入り込んでいく。

 ニューカッスルが優れていたのはネガトラにおけるバックラインの貢献。最終ラインも当然素晴らしいが、中盤でデュエルに勤しむジョエリントンにギマランイスはフォレストに反撃の起点を作らせない。

 後半も展開は同じである。押し込むニューカッスルがフォレストのブロックを攻略するという流れ。アルミロン、サン=マクシマン、そしてウィロックがPA手前で仕掛けながらゴールに迫っていく。

 クロス、細かいパス繋ぎ、そしてセットプレー。あらゆる策を講じたニューカッスルがフォレストのゴールマウスをこじ開けたのは58分。ブロックの外からのシェアのミドルという非常に意外な形で先制点を奪う。

 失点後も押し込まれる状況を変えることができないフォレストは68分に4-2-3-1にフォーメーション変更。リンガードに自由を与えて、ボールを受けるポイントを作れるようになったことで、ボールを保持できる時間を取り戻すことができるようになる。ただし、ロングボールを蹴ってしまうと相手に回収されるという点は同じ。しっかりと繋ぐことが前進の条件である。

 だが、次の点が入ったのはニューカッスル。左サイドからのサン=マクシマンのタメを活かし、抜け出したジョエリントンが折り返しに成功。最後はウィルソンが仕留めてこの試合の行方を完全に決める。

 強かに試合を進めて、ブロック攻略後は安定した試合運びを見せたニューカッスル。プレミアの勢力図を塗り替える野心を持って臨んだシーズンにおいて開幕戦を勝利で飾ることに成功した。

試合結果
2022.8.6
プレミアリーグ 第1節
ニューカッスル 2-0 ノッティンガム・フォレスト
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:58′ シェア, 78′ ウィルソン
主審:シモン・フーパー

⑥トッテナム×サウサンプトン

■苦手分野を克服し、幸先の良い開幕戦に

 今年のトッテナムの課題は明らか。昨シーズンに苦しんだ撤退型の相手に攻めあぐねることなく、確実に勝ち点3を得ることができるかどうかである。そういう意味では昨シーズン、10人でトッテナム相手に勝ち点を奪ったサウサンプトンが開幕戦の相手というのは示唆的かもしれない。

 立ち上がりの10分ほどは互いに組み合う展開が続くが、徐々にトッテナムが押し込む状況になっていく。ただし、この日のサウサンプトンは5-3-2。トッテナムが得意なWB→WBの形だけでは簡単にズレを作ることができない。

 攻めあぐねるトッテナムを尻目にあっさりと先制したサウサンプトン。左サイドでエメルソンに粘り勝ちしたジェネポがライン際からピンポイントのクロスを上げて、これをウォード=プラウズが叩き込む。アシスト、ゴールともに難易度の高いスーパーなものだった。

 反撃に出なければいけないトッテナムはズレを作るために動き出す。動き出したのはクルゼフスキ。ここまではインサイドに止まる動きが目立っていたが、内から外へのランでフリーになると、カットインからのファーのクロスという得意パターンを見せるようになる。

 このクルゼフスキのファーへのクロスが刺さるのには時間が掛からなかった。逆サイドのウォーカー=ピータースは対面のセセニョンとの競り合いに苦労していたからである。数回繰り返しただけであっさりと決壊し、トッテナムは同点に追いつく。

 保持で5バックを揺さぶることができるか?という課題についても、トッテナムは実直に取り組んでいたように見えた。2トップを外し、3センターを外し、徐々にサウサンプトンの5バックを丸裸にしていく。

  逆にサウサンプトンは同サイドに相手を閉じ込めることができず、撤退守備の踏ん張りが効かない。5-3-2であるならばトッテナムを同サイドに推しやりながらスモールスペースの攻略に追い込むたいところであるけどもそれができず。トッテナムが自在に左右に動かしながら手薄なサイドを作り、サウサンプトンを追い立てていく。自陣からのポジトラでCHに強引にパスをつけてカウンターを招く以外は完璧にトッテナムペースになっていると言っていいだろう。

 セットプレーから2点目を得たのは流れに乗ったトッテナム。セットプレーからソンの低く鋭いクロスをニアでダイアーが合わせて逆転する。

 巻き返したいサウサンプトンは後半5-4-1にシステムを変更。逆襲を期すが、サウサンプトンが積極策に出た分トランジッションからの攻撃機会を得たトッテナムがペースに握っていく。むしろ相手の調子を乗せてしまった感がある。

 サウサンプトンの3失点目は少し力の抜けるものだった。サリスはそもそも厳しい対応になってしまったのは確かではあるけども、理想的な体の使い方で言えば、ゴールを背にして体を捻りながら逆サイドに流すことができれば少なくともオウンゴールは避けられただろう。押し込まれてからの状況が悪かったとはいえ、セーフティにクリアできるチャンスは残されていたように思う。

 本来得意なロングカウンターでノリに乗るトッテナムは直後にクルゼフスキが4点目をゲット。一気に試合を決める。

 苦手分野であるブロック解体に成功し、得意分野のカウンター連発の後半に展開を呼び込んだトッテナム。上々の立ち上がりでホームでの開幕戦勝利を飾ることができた。

試合結果
2022.8.6
プレミアリーグ 第1節
トッテナム 4-1 サウサンプトン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:21′ セセニョン, 31′ ダイアー, 61′ サリス(OG), 63′ クルゼフスキ
SOU:12’ ウォード=プラウズ
主審:アンドレ・マリナー

⑦エバートン×チェルシー

■不安な内容と明るい新戦力の台頭

 キャルバート=ルーウィンの離脱とリシャルリソンの移籍を受けて、開幕戦のCFはゴードン。ちょっと難しいスカッドになってしまったかな?という感じのエバートンに対して、チェルシーは時間的にはギリギリではあるけども、ある程度充実感のあるスカッドを並べることができたのかな?というメンバー構成になっている。

 立ち上がりはある程度互角か、ややホームのエバートンが攻め込む構図になっていた。5バックではあるが大外からガンガン立ち向かう形でチェルシーから正面切って向き合おうとする。

 しかしながら、噛み合わせるフォーメーションをしているにも関わらず、高い位置からのプレッシングを積極的に行うことができていないエバートンは徐々にラインが下がっていくように。バックパスからのわちゃわちゃでゴドフリーを負傷で失うなど、順調とは言えない序盤戦になってしまった。

 こうなるとチェルシーがエバートンのブロックをどう溶かすか?のチャレンジに試合の展開が流れていく。だが、チェルシーもこのフェーズで苦戦。特に大外の動きが少なく、5バックを大外から突っつくことがうまくいかない。

 チェルシーはネガトラにおいてもエバートンのボールホルダーを捕まえるスピードが非常に遅いのが目に付く。自陣深くまでの侵入を許してはチアゴ・シウバが味方を叱り飛ばすような声かけをするというのがこの試合のおなじみの光景となってしまっていた。

 そうした中で活躍して見せたのは新加入のスターリング。インサイドでボールを引き出す役割として、オフザボールで動き回り、5バックの攻略のきっかけとなるズレを作るべく動きができていた。

 ボールを握りながらもなかなか思うように攻められないチェルシー。前半終了間際にようやくチルウェルも侵入からPKを獲得。こじ開ける絶好のチャンスを迎えると、このPKをジョルジーニョが決めて先制する。

 後半も似たような展開が続く両チーム。チェルシーは押し込みながらも攻めあぐねるし、エバートンも前線に高さがない分、ハイボールに逃げては跳ね返される展開が続く。グラウンダーで縦パスを一本繋ぐことができれば、エバートンはチャンス構築のきっかけを掴めそうな気配もあるが、チェルシーのバックラインがこれをシャットアウトする。チアゴ・シウバは今年も偉大である。

 そんな後半の中で目立ったのはククレジャ。大外を回る攻撃参加やパスの供給の部分でも躍動。なかなか内容面で前向くことが難しい中で、合流数日でのこのパフォーマンスはチェルシーファンに希望を与えるものだった。

 互いに会心のパフォーマンスとはいかなかったものの、チェルシーがなんとか逃げ切り勝利。前後半に見せた新戦力のパフォーマンスなどの好材料をここから内容につなげられるかが気になるところである。

試合結果
2022.8.6
プレミアリーグ 第1節
エバートン 0-1 チェルシー
グディソン・パーク
【得点者】
CHE:45+9′(PK) ジョルジーニョ
主審:クレイグ・ポーソン

⑧レスター×ブレントフォード

■オープンな展開でビハインドを清算

 レスターが3-5-2、ブレントフォードが4-3-3。昨年のフォーメーションで言えば、両チームの形はむしろ互いを入れ替えた方がしっくりくるくらいなのだが、今年は両チームとも一味違うのかもしれない。

 噛み合わせが良くないフォーメーションゆえに、非保持側がどのようにプレスをかけるかが難しいところではある。結論から言えばどちらのチームもある程度相手に持たせる形を採用したと言えるだろう。

 レスターはブレントフォードのSBに自由に持たせるアプローチ。横を制限しながら同サイドにきっちり閉じ込めていく方針である。よってブレントフォードの攻め筋は縦に縦に。大外を直線的に進んでクロスまで持っていく形が攻め筋である。

 ブレントフォードの非保持はレスターよりもさらに控えめ。4-5-1を敷いて時間の経過とともにプレスラインを徐々に下げていく。撤退気味のブレントフォードではあったが、アンカーのンディディや降りてくるティーレマンスやデューズバリー=ホールを捕まえることができず、レスターに中盤中央に起点を作ることを許してしまう。ブレントフォードは5-3-2に移行して中央のプロテクトを優先することにする。

 レスターは敵陣に侵入してからもブレントフォードよりは攻め筋があったように思う。2トップが裏を取りながらのスペースメイクだったり、大外から押し下げてバイタルエリアを開けてのミドルなどからブレントフォードのゴールを脅かす。特にミドルは頻度が高い手段だったと言えるだろう。ブレントフォードは陣地回復にも苦しんでおり、どちらかというとレスターがボールを持つ時間が長い展開で試合が進んでいく。

 そんな中で先制点を奪ったのはレスター。セットプレーからニアのカスターニュが先制ゴールを決める。ペースを握っているレスターが順当に得点まで漕ぎ着ける。

 後半早々にレスターは追加点をゲット。2トップが深さを作ることで間隔が空いたブレントフォードのMF-DFライン間に入り込んだデューズバリー=ホールがミドルを打ち込んで突き放していく。

 この追加点をきっかけにブレントフォードはプレッシングを強化。レスターもこれに早い攻撃で対抗したため、試合は全体的に間伸びした陣形での打ち合いという流れになっていく。

 こうなると前半にはなかなか前進ができなかったブレントフォードにもチャンスが回ってくるように。反撃弾となったトニーのゴールはヘンリーの目先を変えたアーリークロスが見事であった。

 勢いに乗るブレントフォードは試合終了間際に同点ゴールをゲット。右サイドからのカットインでダ・シルバがミドルを撃ち抜く。レスターはずるずると下がりながらホルダーにプレッシャーをかけられない状況で好機を与えてしまった格好である。

 膠着した状況でのビハインドをオープンな状況で精算したブレントフォード。レスターに開幕戦で勝利を挙げることを阻止してみせた。

試合結果
2022.8.7
プレミアリーグ 第1節
レスター 2-2 ブレントフォード
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:33′ カスターニュ, 46′ デューズバリー=ホール
BRE:62′ トニー, 86′ ダ・シルバ
主審:ジャレット・ジレット

⑨マンチェスター・ユナイテッド×ブライトン

■完成度の差を見せつけたブライトンがOTで開幕戦を飾る

 テン・ハーグに再建を託したマンチェスター・ユナイテッドはホームでブライトンと対戦。クラブ規模は違えど、イメージを一新した新ブランドを確立したグレアム・ポッターのブライトンはテン・ハーグが目指すチームの先としては1つのモデルになるのかもしれない。

 この日、ユナイテッドで起用された選手のうち、新加入選手はCBに入ったリサンドロ・マルティネスと最前線に入ったエリクセンの2人。そしてユナイテッドのビルドアップもこの2人が中心だった。SBの片方を上げて、3バックに可変する形からボールを持ったマルティネスから降りてくるエリクセンに縦パスを通す。トップのエリクセンが空けたスペースには中盤からマクトミネイが飛び出していく形。ビルドアップの起点を最前線に置く形で失われる推進力を中盤で補う格好である。

 この2人がつながった時のユナイテッドのビルドアップはそこまで悪いものではなかったが、逆にここがつながらないと厳しさを感じる部分も。マグワイア、フレッジ、マクトミネイが中央でつなごうとするとどうしても詰まってしまい、スムーズに前進することが出来ない。

 ブライトンという相手もユナイテッドとしては厄介だった。マルティネスにはウェルベックが前に立ち、ボールをマグワイアに持たせる形を徹底してきたブライトン。王道ルートを封鎖してきたブライトンに対して、ユナイテッドはボールを前に進めることができない。外を経由してもなかなか攻めに転じる形を作ることができず。両サイドを剥がしながら攻略する精度はなかなか今のユナイテッドにはない。

 一方のブライトンはやはり完成度が高いチーム。ククレジャとビスマを引き抜かれてもなおスムーズにチームを機能させるのはさすがである。ブライトンの攻撃のポイントになっていたのはWB。とりわけ、左のトロサールである。彼が対面のSBのダロトを引き付けて、その裏をカイセドやウェルベックに狙わせる形や、横にスライドしたユナイテッドの守備陣の逆サイドを狙う形で敵陣に迫っていく。ちなみにアヤックスで見られたオールコートマンツーはユナイテッドではとりあえず棚上げされている模様だった。

 ブライトンの前線は斜めのフリーランを多用して、相手のDFラインを狙った方向に動かすのが非常にうまい。この動きにユナイテッドはだいぶ振り回されてしまった印象だ。

 先制点のシーンも追加点のシーンも仕上げとなったのは仕掛けたサイドと逆側の選手。ブライトンの片側に寄せて、逆で仕留めるやり方が効いていた証拠だろう。いずれも決めたのはグロスである。

 2点のリードを奪われたユナイテッドは後半早々にロナウドを前線に投入。アンカーにエリクセンが入り、保持が安定したことや前線にロナウドというターゲット役兼最終ラインと駆け引きができるFWが入ったことで保持の時間を増やすことに成功する。

 ショートパス+同サイドのオーバーロードという形でショートパスのつなぎがスムーズになっていくユナイテッド。この形をすでにアヤックスで履修済みのファン・デ・ベークも難なくこの形に溶け込んでいく。

 ロングカウンターを繰り出すものの、徐々にジリ貧になってくるブライトン。押し下げながらサンドバックになるシーンが続く。セットプレーから1点差に迫ったユナイテッドだったが、もう1点の差がなかなか埋まらず。ラッシュフォードに決定力があれば、もう少し試合は別の展開になったかもしれない。

 90分に行った3枚替えもユナイテッドのブーストのきっかけにはならず。前半のリードで溶かしながら逃げ切ったブライトンがオールド・トラフォードで開幕戦の勝利を飾った。

試合結果
2022.8.7
プレミアリーグ 第1節
マンチェスター・ユナイテッド 1-2 ブライトン
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:68′ マック=アリスター(OG)
BHA:30′ 39′ グロス
主審:ポール・ティアニー

⑩ウェストハム×マンチェスター・シティ

■アタッカーのスピード感を生かす仕組みとライン間の凶悪コンビ

 立ち上がりに押し込む機会を作ったのはウェストハム。敵陣でのクロスからセカンドボールの回収+セットプレーで一気に攻め立てる。ウェストハムはある程度高さがあることもあり、シティとしてはややビビらされる立ち上がりとなったといえるだろう。

 非保持においてはミドルゾーンに撤退するウェストハム。CBにはボールをもたせておく形でウェストハムの前線は中盤をケアする。シティはカンセロだけでなく、ウォーカーも絞りながら中央に人を密集させるアプローチを実施。SBが極端に絞るアプローチは昨年のCSでも見たやつである。

   去年の仕組みはメンディに偽SBとグリーリッシュの大外を回る役割を両方任せるぜ!なんだけども、今年はより流動性重視。ロドリ、ウォーカー、カンセロの3人がポジションチェンジを繰り返しながら駆け引きを繰り返していく。

 大外のレーンをむしろ有効活用していたのはWGの方。SBがインサイドに絞る分、ナローになったウェストハムの2列目の外側からボールを引き取り、運びながらアタッキングサードに迫っていく。フォーデン、グリーリッシュのコンビは加速しながら大外を駆け上がるのは向いている。何よりハーランドのダイナミズムを生かすには、やり直しを繰り返すよりもこうした動的な形でエリアに迫る方がよいという設計なのかもしれない。

 だけども、この日のウェストハムは2トップの周りでいくら人が動こうと気にせずコンパクトを維持。無駄に食いついてしまって、間延びしてしまう悪い日のウェストハムではなかった。こうなると開幕戦で精彩を欠いたシティでなくても崩すのは難しい。ロドリを中央に幽閉された形でシティはウェストハムの4-4-2攻略に挑むことになる。

 しかしながらシティは早い段階で攻略策を見つけることが出来ていた。大外レーンを空ける手法に加えて凶悪だったのはギュンドアンとカンセロのコンビ。いくらやり直しはしないといっても間を受けるのに顔を出す能力はやっぱりほしいところだし、この2人は出し手としても受け手としても別格である。

    そして、ブロックを崩す決め手になったのはハーランドのスピードである。ギュンドアンのスルーパスを受けたハーランドはアレオラに倒されてPKを獲得。途中交代で入ったアレオラにとってはいきなり試されるようなきわどいプレーになってしまったのは不運である。

 得点が入ってしまえば、ウェストハムが敷く低い位置でのブロックの意味合いも変わってくる。ただただ受けるだけでは得点のチャンスは巡ってこない。かといって前からのプレスに無理に出ていけば、今度は幽閉していたロドリが解放されることになってしまう。交代とはならなかったが、アントニオが着地の際に膝を痛めたのも不運であった。

 とはいうものの、結局高い位置から出ていくことに決めたウェストハム。しかしながらこの決断でゲームの流れを引き戻すことができない。後半は明確に4-2-3-1から4-4-2に変更するが、明確な変化はなし。60分手前に入ったスカマッカにとっては厳しいデビュー戦となった。

 一方のシティは縦に間延びしたウェストハム陣内で悠々とパスをつないでいく。グリーリッシュも前半に輪をかけて躍動しているし、なによりもこういう状況はデ・ブライネとハーランドにとってうってつけ。この2人が手を組むとこうなります!というお手本のようなゴールで2点目をゲット。シティが試合を完全に決める。

 コミュニティ・シールドでは厳しい内容とするファンが多かったシティだが、この日のパフォーマンスは保持でゲームを試合するゆったりとしたペースと一気に試合を決めにかかるハーランド仕様の仕上げの緩急が非常に効果的。アウェイでの難敵の開幕をものともせず、白星スタートを飾った。

試合結果
2022.8.7
プレミアリーグ 第1節
ウェストハム 0-2 マンチェスター・シティ
ロンドン・スタジアム
【得点者】
Man City:36′(PK) 65′ ハーランド
主審:マイケル・オリバー

今節のベストイレブン

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