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「Catch up Premier League」~Match week 22~ 2022.1.14-1.16 etc

目次

①ブライトン【9位】×クリスタル・パレス【12位】

■またしてもあの男がエンディングを飾る

 毎度毎度劇的な結末と小競り合いがおなじみ。日本のファンにとってはやたらキックオフ時間が厳しいことが多いM23ダービーである。今回もフライデーナイト開催。リアタイするには5時起きが必要であった。

 試合はブライトンの保持のモノトーンな展開。パレスは今季は積極的に取り組んでいるプレッシングに出ていくことはなく、ホジソン時代を彷彿とさせるような待ち構え方を見せていた。

 保持で押し込むブライトンだが、チャンスを作るのは縦方向の鋭い抜け出し。10分手前のシーンのようにミスで抜け出したククレジャがトロサールにラストパスを送り決定機。保持をしつつも、チャンスメイクは縦パス一気!というのは最近のブライトンのあるあるである。シュートが決まらないのもあるある。

    ブライトンは右のハーフスペースからの抜け出しを軸にチャンスを作るように。出し手はウェブスター。これに気づいた守備側のシュラップが慌ててブロック守備からフィードを潰しに動き出す!という構図だった。

 なかなか前進できないパレスは限られた機会を左サイドに全振り。いつものように3-2-5でピッチ全体を使うスタイルではなく、逆サイドのオリーズまで積極的に左に流れながら壊す形。しかしながらクロスに合わせる選手が足りず、チャンスメイクは質も機会も十分ではない。左右に振りながら、ファーのクロスに飛び込む人員を用意できるブライトンが優勢に試合を進める。

 ブライトンは先制のチャンスとなるPKを獲得。CKの流れからヒューズがフェルトマンを掴んで倒してしまう。OFRでPKを得たブライトンだったが、グロスのキックは中途半端に。真ん中に残っても、右に飛んでも止められる甘い位置に蹴った結果止められてしまった。止められたPK直後のCKからモペイが押し込むが、こちらはOFRで得点取り消し。めっちゃOFR連打されていて笑った。

 後半は前半と比べてオープンに。ブライトンも勢いを持ってPA内まで攻め込めていたし、前半はシュートがなかったパレスも後半早々に右サイドに抜けるギャラガーからシュート機会を作ることができた。

 幅を使えて両サイドから攻めることができ、中央ではモペイのポストから深さを作れていたブライトンの方が後半も優勢。だが、アンカーであるララーナの負傷で3バックへの変更を余儀なくされる。このシステム変更でパレスのプレスが噛み合うようになったのはブライトンにとって不運だった。

 そして先制したのはパレス。徐々に間延びしてFWの帰陣が遅れるようになり、バイタルが空く機会が増えてきたブライトンの隙をパレスがついた格好。シュラップでラインを下げて、空いたバイタルをギャラガーが強襲し先制する。

 困ったブライトンは捨て身の4バック回帰。ランプティとマーチという右サイドのアタッカー重ね作戦でクロスを入れまくる。受ける機会が増えたパレスに対して、決定的な働きをしたのがモペイ。手薄になった左サイドから侵入し、アンデルセンのオウンゴールを誘発。

 色々あった試合だが、最後はモペイが振り出しに戻すという結末は前回大戦と同じ。またしてもパレスファンの脳裏に嫌な思い出を追加したブライトンがアウェイ戦と同じく終盤に勝ち点を拾う結果となった。

試合結果
2022.1.14
プレミアリーグ 第22節
ブライトン 1-1 クリスタル・パレス
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRI:87′ アンデルセン(OG)
CRY:69′ ギャラガー
主審:ジャレット・ジレット

②マンチェスター・シティ【1位】×チェルシー【2位】

■カンセロとデ・ブライネで中央破壊

 レビューはこちら。

 序盤からシティの保持で試合は進む。シティのバックラインに無理にプレスをかけにはいかないチェルシー。だが、ハイラインを維持するトライはしていたため、シティはまずは裏をシンプルに狙う形でゴールに迫る。

 チェルシーもルカクというロングカウンターの武器を持っているため、高いラインを敷くシティのバックラインを強襲。立ち上がりはそれぞれがジャブをかます戦い方となっていた。

 しかし、時間の経過とともに両チームの崩しには差が出ていく。裏だけでなく、サイドでの崩しを有しているシティがチェルシーの5バックを裏に横に揺さぶりながら、チェルシーのゴールに迫る攻撃を見せていく。

 その一方でチェルシーは速攻の精度がついてこない。アンカー脇に陣取るプリシッチとツィエクはボールを自陣から引き出す動きは出せるものの、そこから素早く攻撃を完結させることができない。シティの帰陣よりも先に仕留めることができず、最前線でルカクが孤立する状況が続く。

 さらにシティは年末年始に控えめだったプレスも解禁。不慣れな並びとなったチェルシーのバックスに対して時間を奪うプレスを行うことで、高い位置でボールを奪い切る機会が出てくるように。時間とともにペースはホームチームに流れていった。

 前半では仕留めきれなかったシティは後半にはダイレクトに中央を刺す楔を狙うように。だが、これはチェルシーが網を張っていた部分。ロングカウンターの機会を得たチェルシーだったが、推進力の課題を解決できず、この機会をなかなか得点に結びつけることができなかった。

 シティが念願の中央をこじ開けたのは70分のこと。デ・ブライネにライン間で前を向かせたカンセロのパスも、チアゴ・シウバを出し抜いたデ・ブライネのフィニッシュも絶品だった。

 終盤はカウンターに舵を切ったチェルシーだったが、得点の匂いを増やす方向に展開を持っていけず。最後は堅く締めたシティが勝ち点と連勝をさらに伸ばすことに。プレミア制覇という観点で言えば、チェルシーには非常に厳しい結果になってしまった。

試合結果
2022.1.15
プレミアリーグ 第22節
マンチェスター・シティ 1-0 チェルシー
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:70′ デ・ブライネ
主審:クレイグ・ポーソン

③ニューカッスル【19位】×ワトフォード【17位】

■回帰路線も最後の最後でミッション失敗

 残留争いに向けた重要な重要なシックスポインター。補強を進めるニューカッスルはトリッピアー、ウッドなどいきなり新戦力が先発。ワトフォードもカマラ、サミルがデビュー戦を飾るなどかなり新鮮な顔ぶれでの対戦となった。

 保持の時間が長いのはホームのニューカッスルの方。自陣からボールを動かしながら、敵陣の侵入を行う。ニューカッスルは左右のサイドの役割がかなりはっきりしていた。左サイドはサン=マクシマンを主体とした、ドリブルで仕掛ける部隊。右サイドはフレイザー、トリッピアーの両方の右サイドの選手は共にクロスの精度に長所がある。

 ニューカッスルの前半のチャンスはほとんどクロスによるヘディング。エリア内にはウッドに加えて、IHのジョエリントンがクロスに入っていく動きを見せて攻撃に厚みをもたらす。序盤のチャンスの多くはジョエリントンのシュートによるものであった。FWとMFの1人2役ができるだからこそのジョエリントンのチャンスメイクであった。

 ワトフォードのチャンスはニューカッスルに比べるとカウンター寄り。早い攻撃で決着をつける意識が強かった。左サイドを中心にロングカウンターを繰り出すことが多かった。プレッシングからのミスを誘発してのカウンターもあり。特に序盤のニューカッスルはパスミスやドリブルでのロストなど自陣深い位置でのミスが多かったため、ワトフォードはそこからチャンスを作ることが多かった。

 ただし、プレスをかけられると弱いのはワトフォードも同じ。プレスに関してニューカッスルはそこまで強気に出まくるチームではないが、ワトフォードは入れ替わった最終ラインの連携も怪しく、ショートパスからの脱出は難しかった。

 後半の頭、結果を得たのはニューカッスル。サン=マクシマンである。左サイドからのサン=マクシマンらしさ全開で、独力で勝ち点をもぎ取ってしまっていた。後半は右のクロス攻勢に比べて、サン=マクシマンの独力突破の比重が上がった。確かに結局サン=マクシマンが効くけども、このサッカーはブルースでもできそう!というのが正直な感想である。

 撤退してサン=マクシマンという状況が増えていくニューカッスル。ニューカッスルがリードを得てからはワトフォードが相手に攻め込んでいく機会を得るようになる。終盤まではなんとか凌いでいたが、後半追加タイム手前でエリア前のデュエルを制したジョアン・ペドロの同点弾が炸裂する。

 回帰色を強くまでして結果を得にいったニューカッスルだが、終盤にひっくり返されて勝ちきれず。ワトフォードとの順位を入れ替えることができず、降格圏からの脱出には失敗してしまった。

試合結果
2022.1.15
プレミアリーグ 第22節
ニューカッスル 1-1 ワトフォード
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:49′ サン=マクシマン
WAT:87′ ペドロ
主審:ポール・ティアニー

④ノリッジ【20位】×エバートン【15位】

■前線の奮闘が通用し、最下位脱出

 6試合連続で勝ち点なしどころか得点もないノリッジ。そんなノリッジと今節対戦するのは直近12試合でわずかに1勝の15位と同じく苦しんでいるエバートンである。苦悩の両チームにとっては何かきっかけをつかみたい一戦となった。

 スミス監督就任後のノリッジは積極的に保持に対してここまで取り組んでいるものの、なかなか実になっていない。ノリッジのポゼッションが苦しいのはバックラインでやり直しをしている最中に、プレスをかけられると苦し紛れに前線に蹴るから。そして前線がそのボールを収められないからである。

 だけども、この日は少し様子が違った。プレスをかけられて苦し紛れに前線に蹴らされるところまでは同じ。しかし、そこから前線の選手が体を張ることで相手を背負いながらキープすることができた。エバートンは正直組織的な守備は出来ないチームではあるが、対人ではどちらかといえば強みがあるチームだと思っていたので個人的には結構想定外の展開。

 新加入のマイコレンコあたりがなかなか対応に苦慮するのは理解できるが、アンドレ・ゴメスやコールマンあたりがあっさり当たり負けするのは切ない。ちなみにマイコレンコのところも彼自身のパフォーマンスには理解を示せても、ここにいるはずのディーニュがいないということには理解を示せないサポーターも多いはずである。

 いつもと比べて前進が容易だったノリッジ。ディーニュがいるはずだったエバートンの左サイドから2対2をあっさり制して、オウンゴールを誘発し7試合ぶりの得点を挙げる。

 すると直後に追加点。右サイドのゴードンとコールマンの連携ミスを利用して、カウンターを発動すると最後はアイダのゴールで2点目。1点目でオウンゴールに関与したキーンは2失点目ではプッキに気を取られて通されてはいけないファーのパスコースを空けてしまうという踏んだり蹴ったりな出来だった。

 攻撃でもエバートンは不振。コールマンを上げる3バック風味で前進を狙うが、どこをどう経由して前進をしたいのかが全く見えてこない。唯一の糸口となっているグレイがボールを引き取ってドリブルを仕掛けてファウルをもらいFKからロンドンとキャルバート=ルーウィンめがけて放り込む!という戦い方になってしまう。

 むしろ、この攻撃を迎え撃ってアーロンズを軸に右サイドから反撃するノリッジの方が2点リードも落ち着いて試合を運んでいると形容できたくらいである。

 後半も流れは大きく変わらず。リードしつつもプレスラインを下げないノリッジの奮闘が光る。アグレッシブな姿勢で後半もチャンスを引き寄せていた。前線ではサージェントが体を張りターゲットマンとして躍動していた。

 アーロンズが負傷交代で下がるとさすがに押し返すことは難しくなったが、エバートンの反撃をリシャルリソンのオーバーヘッド1点にとどめたノリッジ。久しぶりの勝利で最下位からの脱出に成功。一方のエバートンはこの敗戦を受けてベニテスを解任。迷走するクラブ運営にファンが心配を募らせている。もしかしたらもしかするかもという悪い予感は早く拭い去りたいが・・・。

試合結果
2022.1.15
プレミアリーグ 第22節
ノリッジ 2-1 エバートン
キャロウ・ロード
【得点者】
NOR:16′ キーン(OG), 18′ アイダ
EVE:60′ リシャルリソン
主審:アンディ・マドレー

⑤ウォルバーハンプトン【8位】×サウサンプトン【11位】

■立ち上がりと締めくくりに強度のピーク

 立ち上がりから勢いの良さを見せたのはアウェイのサウサンプトン。ボールを奪ったら一気にゴールへと向かい直線的な攻撃に打って出る。阻まれてもOK。得意のCKさえ獲得できれば十分に得点のチャンスはある。ウルブスはセットプレーから放り込まれるボールをとにかく跳ね返す序盤となった。

 セットプレーが最悪取れればOKという心持ちだと勢いよく仕掛けられるのだろうか。それとも過密日程が終わったことでコンディションが整ったのだろうか。いずれにしてもセインツの強度はなかなかのものだった。

 プレスに戸惑い引っかけるなど、序盤はサウサンプトンの勢いに慌て気味だったウルブス。だが、立ち上がりを凌ぐと徐々にペースを引き寄せてくる。アイト=ヌーリとモウチーニョの左サイドから段々と相手を押し込んでいく。この試合におけるサイドの攻撃の機能性はウルブスの方が上だった。右サイドのセメド、トリンコンも連携からの崩しを見せることができる。

 もちろん、本来の持ち味であるカウンターも好調。速いカウンターとゆったりとしたサイド攻撃のコンビネーションで前半の中頃から主導権を握るように。ライン間でうろちょろするモウチーニョやポデンスにもサウサンプトンは苦戦していた。

 そのポデンスのカウンターの流れからウルブスはPKを獲得。速い流れにサウサンプトンのバックスはついていけず、雑なコンタクトでPKを献上してしまうことになった。試合はハーフタイムに向かうにつれて落ち着いたこともあり、前半の残り時間はゆったりとした場合の攻め手があるウルブスのペースで進むこととなった。

 ハーフタイムにアダムスを投入し、3-4-3に移行して反撃を狙うセインツ。少しペースを引き戻してはいるものの、なかなかチャンスは作れない。枠内に飛ばすシュートは多いものの、シュートの形自体はあまり決定的とは言えず、ジョセ・サを脅かすのには苦労していた。

 噛み合わされるフォーメーション変更をされたウルブスだったが、この日はプレス耐性も十分で対応することができていた。プレスを跳ね返し押し込み返すと、追加点はセットプレーから。ネットを揺らしたコーディのシュートは一度目は取り消されたものの、直後の二回目で得点を認められることに。

 追加点を奪い、安全圏内に入ったかと思われたウルブスだったが、セインツはセットプレーで反撃。神業と言って差し支えのないウォード=プラウズの直接FKが決まる。このゴールの直後に両軍は小競り合い。試合のテンションが一気に上昇。立ち上がりと見紛うような勢いまで強度が上がる。

 ともに決定機を迎え、試合は乱戦の様相。この状況を終わらせたのはトラオレ。直前に逃した決定機を自ら挽回する形で試合を決める3点目を決める。はじめも終わりもハイテンションだった試合はホームのウルブスが制することとなった。

試合結果
2022.1.15
プレミアリーグ 第22節
ウォルバーハンプトン 3-1 サウサンプトン
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:39‘(PK) ヒメネス, 59’ コーディ, 90+1‘ トラオレ
SOU:84’ ウォード=プラウズ
主審:マイケル・サリスベリー

⑥アストンビラ【14位】×マンチェスター・ユナイテッド【7位】

■ユナイテッドを引き立て役に華々しいデビュー戦

 一貫して4-2-2-2のフォーメーションで戦ってきたラングニックのユナイテッドだったが、この試合では4-1-4-1を採用することに。

 変わったのは方針だけではなく攻め方も。今まではアタッカー陣が非常に狭く縦に鋭く進むことで直線的な戦いに注力していた。だが、この日のユナイテッドは幅を使うことに長けていた。4-2-2-2と異なり、4-1-4-1はピッチに三角形ができやすい配置となっているため、普段よりユナイテッドはポジションの入れ替わりが非常に頻発する。

 特に効いていたのが、左サイドの連携。ブルーノ・フェルナンデス、エランガ、テレスの三角形のポジションチェンジは相手を出し抜いて敵陣に親友。IHが広い守備範囲を賄う形になっているアストンビラだが、この流動的な動きに対して後手に回る。ユナイテッドの攻撃に対応できずアストンビラはファウルを犯してしまう。先制点はここから。ブルーノの直接FKをマルティネスは後逸。前回対戦時に煽られてPKを止められたリベンジを無事に果たすこととなった。

 ビラはポゼッションでは内側を使えずに外回りのボール循環が多く苦戦。MFが縦に動きながらギャップを作ろうとするも、なかなか前進が出来ない。内側にボールを入れるとカウンターが飛んでくる。

 ペースを握ったユナイテッドだったが、前半途中からややポジションチェンジがごちゃっとしだした。特にブルーノの自由な動きに周りが合わせるのに苦労していたように見えた。無秩序な状態になり攻守の入れ替わりが激しい展開になったが、ユナイテッドはプレスに関してもかなり強引。攻守の自由度の高まりが少し嫌な方向に転がっているように見えた。

 後半の立ち上がりはカウンターから再びブルーノが得点を決めるが、これを境にペースはビラに。動きすぎるフレッジと自陣のスペースを埋めに戻る動きが怠慢なブルーノの2人が開けたスペースをビラは徐々に使えるように。アンカーのマティッチ脇からライン間侵入を見せて主導権を握る。ユナイテッドは左サイドのテレスの裏も怪しく、ビラは攻め所を複数見つけることができていた。

 時間の問題だったビラの得点は左のハーフスペースから。デビュー戦となったコウチーニョがワンツーで侵入すると、ラムジーにアシスト。反撃の狼煙を上げると、今度はラムジーが侵入役となりリンデロフを引き出した左サイドを攻略。1点目とは逆にコウチーニョにお膳立てを決めて一気に同点に追いついた。

 前半はラングニック就任後でも指折りの出来だったものの、マティッチの脇という穴を放置しすぎたせいであっさり追いつかれたユナイテッド。勝利濃厚な前半が一転、後半はかつてライバルチームで躍動していたコウチーニョのお披露目を彩る引き立て役に成り下がってしまった。

試合結果
2022.1.15
プレミアリーグ 第22節
アストンビラ 2-2 マンチェスター・ユナイテッド
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:77‘ ラムジー, 81’ コウチーニョ
Man Utd:6‘ 67’ フェルナンデス
主審:デビッド・クーテ

⑦リバプール【3位】×ブレントフォード【13位】

■あらゆる得点パターンで終わってみれば完勝

 ミッドウィークにリーグ戦をこなしたものの、サウサンプトンに敗れたブレントフォード。連敗だけはどうしても避けたいところなのだが、舞台はアンフィールド。目の前にいるのはリバプールという状況である。

 だいぶ割り切り型の撤退守備に舵を切った年末のシティ戦に比べると、リバプール相手にはブレントフォードは比較的強気で向かってきたように思う。2トップは2CBにプレスをかけていたし、アンカーのファビーニョにはジャネルトかバプティストがマークに行くようになっていた。

 しかしながら、5−3−2というフォーメーション上、リバプールがサイドから押し下げるのは容易である。加えて、ブレントフォードの3センターは自らのラインをリバプールに保持で超えられると、撤退型のブロックを意識して自陣深くに構えることとなる。

 というわけでサイドから深さを作ることができれば、ファビーニョへのきついマークは解除される。どちらのサイドからも自在に深さを作れる下地は整ったリバプール。だが、この日は右サイドの連携がややガチャつく感じ。WGのオックスレイド=チェンバレンの役割が定まらず、大外でアレクサンダー=アーノルドがフリーで持つ形以上のものを連携では作れなかった。

 ブレントフォードは2トップが裏に動きながら後方からボールを引き出そうと奮闘する。しかしながら、オフサイドによって主導権を握ったリバプール。自陣深い位置からの攻撃の組み立てはなかなか刺さらなかった。ブレントフォードの手法で効いていたのはハイプレス。時間を奪うことでリバプールの保持の安定感はぐらついてしまう。ここからのショートカウンターから決定機を迎える。

 ただし、リバプールもオフザボールが効いているジョタのフリーランを有効に活用しながら、カウンター処理に難のあるブレントフォードのバックラインを揺さぶる。プレスをくぐり抜ければリバプールがチャンス。引っ掛ければブレントフォードがチャンス。

 一進一退で迎えた終盤に結果を出したのはリバプールのセットプレー。ブレントフォードの守備はミスだろう。あの軌道のCKを誰も触れないままバウンドさせてはいけない。マンマークにこだわるのならば、ファーでファビーニョに競り負けるのはいただけない。いずれにしても守備が機能しなかった場面と言っていいだろう。前半終了間際にリバプールが先制する。

 後半もプレスから活路を見出したいブレントフォードだったが、立ち上がりにうまくリバプールがプレスを剥がしたことで徐々にブレントフォードから流れが逃げていくように。攻撃的な面々でリバプールを追いかけたいところだが、守勢に回る時間が増えたことでこのメンバー選考がむしろ誤算に。

 オックスレイド=チェンバレンのゴールを産んだゆったりとした崩し、南野が決めたハイプレス起点のゴールとバリエーション豊富な得点を重ねた後半のリバプール。苦しむも先制点から流れを引き寄せて、終わってみれば完勝という結末となった。

試合結果
2022.1.16
プレミアリーグ 第22節
リバプール 3-0 ブレントフォード
アンフィールド
【得点者】
LIV:44′ ファビーニョ, 69′ オックスレイド=チェンバレン, 77′ 南野
主審:ジョナサン・モス

⑧ウェストハム【4位】×リーズ【16位】

■会心の出来とハットトリックで上位撃破

 ここ数ヶ月はかなり苦しい内容の試合が続いていたリーズだったが、この試合のリーズはなかなかに会心の出来だったようにように思う。立ち上がりから保持は非常に安定したし、テンポも良く正確にパスを繋ぎながら敵陣に攻め込んでいく。

 人へのマークが甘い立ち上がりのウェストハムは素晴らしい立ち上がりを見せたリーズにあっさり飲み込まれてしまったように思う。まず、シンプルにボールを取り返せない。リーズは序盤のペースのまま、押し切っての先制。エイリングからの大きな展開をラフィーニャまで繋ぎ、後方から攻め上がってきたクリヒに落とし、そこから一連の流れをハリソンが決めた。非常にリーズらしいダイナミックな崩しで先制する。

 だが、リーズにアクシデント。前半のうちに2人が負傷交代。控え選手はまだ経験が浅く、特にビルドアップのボールの引き出し方がうまいフィルポの不在はリーズに影を落とすこととなった。

 立ち上がりに身構えたことが裏目に出てしまった感のあるウェストハムだが、徐々に巻き返し。マンマーク要素が強いリーズに対しては、1トップが2人を監視するCBから運びマンマークをずらすことと1on1を制することができる前線の起点を作ることが王道。

 後方から持ち運ぶディオプや前線で体を張るアントニオなど、ウェストハムの攻撃はリーズ攻略を正当に踏襲していった感じ。ただ、ラストパスのところで粗さが目立ち、なかなかチャンスに結びつけることができない。

 ただ、リーズはセットプレーの守備に怪しさがあった。CKからフリーとなったドーソンのシュートは幸運にも外れたが、直後に同じく空いたボーウェンからウェストハムは同点に追いつく。だが、リーズもセットプレーからやりかえし。エイリングの折り返しを再びハリソンが押し込んで再びリードを奪う。

 後半は対人への寄せも強化したウェストハムがさらに主導権を引き寄せる。ペースを握り、ショートカウンターから攻撃の機会を増やす。トランジッションからフォルナルスの同点弾が生まれたのは52分のことだった。

 攻守の切り替えで劣勢に立たされたリーズだったが、勢いに乗るウェストハムをひっくり返すカウンターで再び勝ち越し。前半から効いていたディオプの持ち運びからの縦パスを引き取ったヴラシッチからボールを奪うとカウンターを発動。ゴールを決めたのは三度ハリソンだった。

 以降も攻撃的な姿勢を失わない両チーム。リーズは4点目を決めたかと思ったが、クリヒのシュートはラインを越える前にオフサイドポジションのロドリゴに当たっており取り消しとなった。

 救われたウェストハムはここから攻勢に。前半途中から攻め上がりが効いていたライスが前線に厚みをもたらす。点を取るためにアタッカーが投入されると、得点力は随一なのにマルチ性があるという理由だけで、アントニオがサイドに追いやられるというウェストハムのパワープレーあるあるはこの日も発動した。なんでなんだろうこれ。

 撃ち合いとなった試合だったが、なんとか逃げ切ったリーズ。負傷者は心配だが内容を伴う上位撃破で勢いに乗れそうな勝利を挙げることができた。

試合結果
2022.1.16
プレミアリーグ 第22節
ウェストハム 2-3 リーズ
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:33′ ボーウェン, 52′ フォルナルス
LEE:10′ 37′ 60′ ハリソン
主審:マイク・ディーン

今節のベストイレブン

⑨バーンリー【18位】×レスター【13位】

■相手の土俵でも戦えるエース

 快進撃を続け、奇跡の逆転残留に向けて一縷の望みが見えてきたバーンリー。対するは序盤戦の負傷者の連鎖から悪い流れを断ち切れず、ここまでズルズルきてしまった感のあるレスターである。

 現状のチームのコンディションとしては明らかにバーンリーが優位。だが、この試合ではレスターが序盤からうまくバーンリーを丸め込んでいた。それぞれが中間ポジションを取るレスターの3トップに対して、バーンリーはロングボールを蹴らされる。もちろん、バーンリーとしては蹴らされるのはOK。ロングボールで攻めることなど、バーンリーにとっては日常茶飯事である。

 レスターはこのロングボールに対して非常に冷静に立ち向かった。ベグホルストへの競り合いには五分以上の戦いを見せることができていたし、裏抜けに対してはラインを積極的に上げることでオフサイドを誘発。攻撃のきっかけを掴ませない。

 前進に苦戦したバーンリーは押し込まれることに。この日のレスターにはバーンリーのローブロックを破壊する準備ができていた。左サイドからはバーンズ。右サイドからはオルブライトンにリカルド・ペレイラが斜めにどんどん走り込んでくる。バーンリーのPA内の対応もこの日はどこか散漫でボールをお見合いすることでレスターに無駄なチャンスを与えるなどの勿体無いプレーが多かった。

 前半をなんとか同点で凌いだバーンリー。後半は高い位置からプレスに行く頻度を増やし、攻守の切り替えが多い陣形が間延びした得意な展開に持ち込もうとする。一方のレスターはリカルド・ペレイラに代えてルックマンを投入。畳み掛けにいく。

 バーンリーのプランは比較的うまくいったように見えた。全体がコンパクトに保てない状況においては、前半のような制限がうまくかけられず。特にロングボールの落としを受けるために待ち構えていたレノンを捕まえるのがめんどくさそうだった。

 だが、オープンに戦うのならばレスターにだって心得はある。この日が復帰戦となったヴァーディである。相棒であるマディソンを従えてピッチに入ったエースは早々にオープンなゲームの主導権をレスターに引き寄せる。流れるようなカウンターからチャンスを作り続けると82分にマディソンがようやくバーンリーのゴールマウスをこじ開ける。

 90分にはヴァーディ自身も復帰を祝うゴールをゲット。優勢に進めながらも粘りに苦しんだレスターだったが、相手の土俵で強さを見せたエースの復帰で終盤に勝ち切って見せた。

試合結果
2022.3.1
プレミアリーグ 第22節
バーンリー 0-2 レスター
ターフ・ムーア
【得点者】
LEI:82′ マディソン, 90′ ヴァーディ
主審:クリス・カバナフ

⑩トッテナム【5位】×アーセナル【4位】

■超内弁慶型ダービー

   レビューはこちら。

 アーセナルにとっては勝てばCL出場権が確定する一戦。その相手となるのは同じくCL出場権を目指しアンフィールドから虎の子の勝ち点1を持ち帰ったトッテナム。両者の勝ち点差は4。CL出場権争いの直線対決となる大事な大事なノースロンドンダービーだ。

 トッテナムの苦手な展開はボールを持たされることというのはすでに自明。そうした中でアーセナルがどれだけ嫌がることをするのか?というのが注目な立ち上がりだった。そういう意味ではアーセナルは比較的自分たちのスタイルを貫く形でトッテナムに向かっていったといっていいだろう。

    前線からのハイプレスはいつもより人数をかけたものであり、ジャカは高い位置に常駐する形でトッテナムの最終ラインにプレッシャーをかける。この形は手ごたえとしては悪くなかった。バックラインの3枚はいずれも時間を奪いに来るプレスにあわててしまい、うまく対応ができなかった。

 意外だったのはこれにエメルソンが冷静に対応したこと。低い位置の右の大外でボールを引きとり、クルゼフスキやベンタンクールの手助けを借りながら縦パスのコースを作り、アーセナルのハイプレスを打ち破るシーンがあった。

 アーセナルはハイライン破りに対して冨安やガブリエウが粘り強く対応。トッテナムのアタッカーに走られるシーンもなんとかつぶし切って見せる。

 アーセナルの保持はマルティネッリのいる左サイド偏重。右から左へのボール供給で大外のマルティネッリまでつけて単騎での突破を図る。2枚付くことがありつつも向かっていったマルティネッリだったが、味方との連携が合いきらず得点のチャンスまではたどり着かない。

    両チームとも攻撃の形が刺さり切らない中で先手を取ったのはトッテナム。PK判定はアーセナルにとっては厳しいものではあったが、クルゼフスキのカットインからファーへのクロスというのはトッテナムの得意な形。この試合初めて得意な形でゴールに迫った場面が得点を呼んだといってもいいだろう。このPKをケインが決めてトッテナムが先制する。

 もう1つ流れを変えてしまったのはホールディングの退場。ソンへの対応で前半の早い時間に警告を受けていたにも関わらず、ピッチ内でも指揮官でも修正を施すことができないまま退場してしまった。外に釣りだされてのスピード勝負という苦手な土俵で戦うことになったゆえ、こういう状況は予期できた部分ではあったが、アーセナルは対応できなかった。

 セットプレーで追加点を奪ったトッテナムは前半で2点のリードと数的優位を得る。迎えた後半、反撃に出たいアーセナルだったが、PA内の対応で後手を踏んでしまい後半早々に3点目が入り終戦。60分を過ぎれば両チームともトーンダウンし、次を見据えたカードを切ることとなった。

 今年のエミレーツでの対戦は前半終了時にアーセナルが3-0でリード。そしてトッテナムホームではまさに逆転した構図でトッテナムが前半に決着をつけることになった。近年のNLDは内弁慶のイメージが強いが、今年はどちらのカードも前半決着。内弁慶に輪をかけたワンサイドな展開でトッテナムがライバルのCL復帰に待ったをかけた。

試合結果
2022.5.12
プレミアリーグ 第22節
トッテナム 3-0 アーセナル
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:22‘(PK) 37’ ケイン, 47‘ ソン
主審:ポール・ティアニー

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