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「Catch up Premier League」~Match week 20~ 2021.12.28-12.30 etc

目次

①クリスタル・パレス【12位】×ノリッジ【20位】

■畳み掛けて後半はローギア

 開幕から保持に取り組むシーズンという位置付けをはっきりさせたクリスタル・パレスと、シーズン途中のスミス監督の就任から保持を頑張るようになったノリッジの一戦。

 両チームの試合はボール保持における現状のクオリティが内容にくっきり反映される結果となった。ホームのパレスは比較的落ち着いた保持。CBが広く横に開きながら距離を取りつつビルドアップ。ノリッジは4-4-2型で比較的前からプレスにくる。この日はアンカーの位置に入るヒューズが背中で相手を背負いながらボールを左右に散らし、プレッシングの回避に大きく貢献していた。

 パレスはプレスを回避し、フリーでボールを持ったバックラインから大外のミッチェルとアイェウにボールを出す。幅を取りながらの前進でノリッジ陣内にボールを運ぶ。押し込んだ状態でPKを獲得したのはまたしてもヒューズ。積極的な攻撃参加でマクリーンのファウルを誘った。

 先制したパレスに比べると、ノリッジの保持は拙さを感じる場面が多かった。距離を取りながらのパスワークへのトライは悪くはないけども、パスのスピードが遅く相手のプレスにつかまりやすい。中盤で背負いながら受ける場面もパレス同様にあったが、こちらはホルダー自らが反転にトライしたせいで、ボールを奪われるシーンが目につく。積極的にプレスに行ったのはこの場面でもヒューズだった。

 全体的にパレスに比べるとノリッジは馬力不足。相手に寄せられた時にゴリゴリ進むことができる力が明らかにパレスの方が上だった。

 前半のうちにパレスは一気にカタをつけにいく。同点ゴールを狙いにきたノリッジのセットプレーをひっくり返すとカウンターからマテタが追加点をゲットする。前半の終盤には果敢にPA内へのトライが目立っていたシュラップが3点目。完全にトドメを刺す。

 後半はギアを落としたパレス。ノリッジの保持に対してプレスをかけることを抑えて、持たせるシーンが増えるように。前半のようにプレスに苦しむことはなくなったノリッジだったが、押し込んでからのクオリティで今度は苦しむことに。

 サイドから押し下げてのクロスから打開を狙っていくが、エリア内の迫力は不足。サージェントを追加で投入し、PA内の人員増加で圧力を高めていくが、結局最後までゴールを破ることは出来ず。

 前半のリードを維持に成功したパレス。過密日程の中でも貴重なローギアの45分で後半を凌ぎ、勝ち点3を確保した

試合結果
2021.12.28
プレミアリーグ 第20節
クリスタル・パレス 3-0 ノリッジ
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:8′(PK) エドゥアール, 38′ マテタ, 42′ シュラップ
主審:ポール・ティアニー

②サウサンプトン【14位】×トッテナム【5位】

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■単調なスタンスと固定メンバーが呼んだ取りこぼし

 過密日程に挑む両チームのスタンスは対照的。サウサンプトンは大幅にメンバーを入れ替える一方で、トッテナムは固定したメンバーをリピート。慣れたメンバーでの継続を選んだコンテに対して、ハーゼンヒュットルはフレッシュなメンバーで戦うことを選んだ。

 サウサンプトンが変えたものはメンバー選考だけではなく戦い方も。5バックをベースに相手の3トップ+WBに噛み合わせる形で守りやすく戦うやり方を採用。

 サウサンプトンのプレスは出足が良好。決して足元が得意というわけではないトッテナムのバックス相手を苦しめる。フレッシュなメンバーを採用したことにより、組み合った状態でのフィジカルはサウサンプトンが優位に。サウサンプトンはプレスで捕まえさえすれば有利な状況で試合を進める。

 その一方で、プレスを脱出した際にはトッテナムに一気に展開が傾く。トッテナムの3トップにサウサンプトンの3バックが対峙した時は圧倒的にトッテナムが優位に立つことに。ただ、トッテナムはややこの3トップの裏狙いへの単調さが目立つ。彼らのいい時は対角にパスを通しながらWBを絡めた攻撃ができる時。そのような幅を使った攻撃はできていなかった。

 そうした展開の中で先手を取ったのはサウサンプトン。プレスで押し込む時間帯を増やすと、スローインからウォード=プラウズがダイナミックなシュートを叩き込んで先制する。

 だが、トッテナムもすぐに反撃。最終ラインの裏に抜け出したソンをサリスが倒して一発退場+PK献上という憂き目にあう。追いつかれた上に数的不利という苦境に陥ったサウサンプトン。5-3-1という形で守ることになる。

 初めはサウサンプトンがホルダーを放置しながら、ラインをむやみに上げるためトッテナムに有利な時間帯が続いていたが、時間の経過につれて徐々にサウサンプトンが割り切るようになると展開は急変。

 裏一辺倒しかなかったこの日のトッテナムは工夫がなく、ラインを下げられてしまってはできることがない。プレスに至っては全然かける余裕がなく、ここにきてメンバーをリピートしたことが足枷になってきている感じ。

 トッテナムは右の奥のスペースからクロスを上げることにフォーカスして攻め込もうとするが、サウサンプトンはニアを引っ掛けながら対応し籠城。トッテナムは守備を動かせない状況で沈黙する。

 結局試合はそのまま終了。前半だけ見れば余裕で逆転が可能だったトッテナムだが、割り切れられた相手を壊す手段はなし。10人相手に手痛い引き分けを喫することになった。

試合結果
2021.12.28
プレミアリーグ 第20節
サウサンプトン 1−1 トッテナム
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:25′ ウォード=プラウズ
TOT:41′(PK) ケイン
主審:シモン・フーパー

③ワトフォード【17位】×ウェストハム【6位】

■先手を取られるも即時対策

 幸先の良いスタートを切ったのはワトフォード。トップのデニスが左右に動きながらボールを引き出しながら縦に早い攻撃を狙う。守備はCHが運動量を生かしつつ、サイドに極端にスライドしながら囲い込んでボールを一気に奪っていくスタンスでウェストハムを苦しめる。

 先制点はこの流れで生まれたもの。運動量豊富な中盤のショートカウンターを起点に、デニスがスーパーゴールをゲット。相手のDFとの間合いを図りつつ、GKが届かない位置に撃ち抜くことができるという超絶技ありゴールでワトフォードが先手をとる。

 快調なスタートを切ったワトフォードだったが、徐々に戦い方はバレていく。ウェストハムは相手をサイドに集めつつ、逆サイドに展開するという横方向への揺さぶりを仕掛けることで、ワトフォードを苦しめるように。極端にスライドを仕掛けるワトフォードの戦い方ならば、ウェストハムはサイドを変えるだけで簡単に決定機を生み出すことができる。

 押し込まれるワトフォードは防戦一方になる。ならば陣地回復をしたいところなのだが、ウェストハムのプレスがそんなにキツくないにも関わらず、長いボールをとりあえず放り捨ててしまう。これではなかなか前進は難しい。ラニエリになってもなお、ビルドアップのメカニズムの整備は難しいということだろう。

 少ないタッチでのサイドチェンジや中央での選手のターンからチャンスを生み出すウェストハム。大外からはクファルのクロスも自由に挙げられる状況に。同点ゴールを決めたのはソーチェク。ウェストハムはランシーニのサイドに流れるフリーランが見事。ワトフォードの中央をこのフリーランで広げた。ワトフォード側からするとどうせボールサイド周辺を固めるならば、中央もセットで固めたいところ。このランシーニのフリーランで簡単にこじ開けられて欲しくなかったところである。

 直後にウェストハムは追加点。サイドに流れたアントニオから手薄になった中央をベンラーマが貫いて逆転。1点目と同じくサイドに集約された中で中央がガラ空きになってしまった。

 後半早々にトランジッションからウェストハムが3点目を決めて勝負あり!かと思いきや、これは直前のプレイがOFRにてファウル認定されてゴールが取り消しになる。OFRに救われたワトフォードだったが、直後に連携ミスからピンチに。GKのバッハマンとクツカのバックパスを掻っ攫われて慌てたところでバッハマンが相手を倒してしまう。先ほど救われたOFRに今後は3点目のきっかけとなるPK判定を下されることになった。

 ワトフォードは個人でターンができるジョアン・ペドロの投入で前進のバリエーションが出てくるように。ジョアン・ペドロを起用すれば前進はしやすくなるが、スライドのプレスはしにくくなる。人選によってどこを取るか!という感じのワトフォード。

 ジョアン・ペドロの投入から撃ち合いの様相を呈する両チーム。だが、得点を決めるのは相変わらずウェストハム。仕上げをしたのは結果が欲しかったヴラシッチだった。

 先手は取られたものの冷静に巻き返したウェストハムが逆転勝ち。格の違いを見せつけての4得点で2021年を締め括った。

試合結果
2021.12.28
プレミアリーグ 第20節
ワトフォード 1-4 ウェストハム
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
WAT:4′ デニス
WHU:27′ ソーチェク, 29′ ベンラーマ, 58′(PK) ノーブル, 90+2′ ヴラシッチ
主審:ダレン・イングランド

④レスター【10位】×リバプール【2位】

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■地獄のコンボで大健闘の白星

 リーズ戦が延期になってしまった影響で休養たっぷりで試合を迎えることになったリバプールに対して、中1日でシティとリバプールのコンボという地獄の年末を迎えることになったレスター。メンバーも中盤のンディディを最終ラインに入れなくてはいけないくらいにはカツカツで、非常に厳しい戦いが予想される下馬評となった。

 レスターは割り切りながらリバプールにボール保持の時間を与えるやり方。大きな展開ができる2CBとファビーニョを抑えつつ、中央を抑えながら受けていく。リバプールのSBに時間を与えることにはなるが、素早いサイドチェンジは抑えられる分、サイドを突破さえされなければ十分に決壊は防げる。

 特に時間をもらっていたのは左サイドのツィミカス。リバプールはここでボールを落ち着けることができる。イメージとしては奥のWGが背負う形でピン留めして、落としをSBが受ける形での前進。レスターのSBが前に迎撃しにくい形で、リバプールは敵陣の奥の方に進んでいく。

 立ち上がりは中央をうまく封鎖できていたレスターだったが、徐々にIHのチョーダリーの対応が遅れ出すように。中央封鎖が甘くなってきたレスターに対して、リバプールは徐々にエリア内に侵入できるように。すると、13分にリバプールはPKを獲得。左サイドからツィミカスの侵入を生かした突破の流れからンディディがサラーを倒してPKを獲得。ツィミカスに破られてしまったのはチョーダリーだった。

 だが、サラーがこのPKをまさかの失敗。リバプールは絶好の先制のチャンスを逃すことになる。PKの失敗に助けられて前半を無失点で終えたレスターは後半にサイドに手当てを行いながらプレスを行うスタイルにシフトチェンジ。選手交代+システム変更で4-5-1にシステムを変えて、サイドにも人員を割くことができるようにした。

 リバプールは左右に相手を動かしやすくはなったものの、サイドの突破そのものは難しくなる。しかしながら、特に左サイドが攻撃の決め手にならないことが足枷になるリバプール。押し込むことはできるが、崩すところまでは至らない。

 すると、59分に先制したのはレスター。交代したルックマンがデューズバリー=ホールとの連携で抜け出すと、アリソンのニアを撃ち抜いて先制。千載一遇のチャンスを物にする。

 まさかのリードを許したリバプール。フィルミーノを投入してアタッカーを増やしながら攻め込み続けるが、シュマイケルを中心とした守備陣に守りきられてまさかの敗戦。日程面での不利を覆したレスターがリバプールに相手に大健闘の白星を飾った。

試合結果
2021.12.28
プレミアリーグ 第20節
レスター 1-0 リバプール
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:59′ ルックマン
主審:アンドレ・マリナー

⑤チェルシー【3位】×ブライトン【9位】

■『まさか』ではなく『ようやく』

 プレミア屈指の変幻自在のフォーメーションの使い手であるブライトン。この試合に向けてポッター監督が選んだのはチェルシーとのミラーフォーメーションとなる3-4-3だった。

 ミラーフォーメーションを選ぶということはすなわちブライトンの選択はマンマーク。となるとチェルシー側の狙いは当然1on1で一番効きそうなルカクへの縦パス。ここにまずはボールを収めて、裏抜けするマウントとハドソン=オドイを使う形でチェルシーは攻め手を見出す。

 ブライトンからするとバーンとルカクのマッチアップに関しては特にスピード面で怖さがある。なのでここは織り込み済み。モデルがコバチッチを見る形で1列下がり、ララーナとバーンで挟むようにルカクを監視するようにしていた。

 チェルシーはルカクを上下には動かしてはいたが、左右にはあまり動かしていなかった。ここは個人的には不思議で、もっと左右に動かせば良いのに!と思った。横の行動範囲も含めればルカクとバーンのミスマッチはさらに利用しやすい上に、ララーナがついていくのは難しくなる。なので、よりゲームのバランスは壊しやすくなるように思うのだけど。

 チェルシーはガッツリ守備時にマンマーク。ブライトンとしては攻め手は両WB。対面がプリシッチなマーチと、ランプティは共にマッチアップで優位を生み出していた。

 だが、10分を過ぎるとチェルシーの保持にブライトンがプレスにいけないようになる。押し込む機会が増えたチェルシーはセットプレーから先制。ルカクのヘッドがネットを揺らして先手を取る。チェルシーは直前にもセットプレーから決定機を迎えており、ブライトンとしては難しい対応が続いてしまった。

 しかし、ここからチェルシーはやたら落ち着いてしまいブライトンに主導権を受け渡すことに。マンマークを解除して撤退気味にするのはわからないではないが、ビスマやククレジャのような展開力のある選手に時間を与えて自在に幅を使わせたのは良くなかった。ちなみにビスマとククレジャはこの試合では貢献度が非常に高く非保持でも輝いていた。

 後半になってもブライトンの攻撃を受け続けるチェルシー。サイドの守備は前半の先制点直前にジェームズがマルコス・アロンソに交代してからはより劣勢に立たされることになっていた。後半は左のマーチの方からのクロスが多かったか。クリステンセンも交代してしまったチェルシーにはここを手当てする選手が単純にベンチにいなかった。

 中盤を増やして重心を後ろにしたチェルシー。だが、チグハグさは変わらず相手に危ない攻め込まれ方をする時間は減らない。ロングカウンターからひっくり返すチャンスを見出すものの、決定機になりそうな場面はフェルトマンが体を張って防いでいた。

 するとその時は91分のこと。こちらもセットプレーからウェルベックが同点ゴールをゲット。まさかの同点弾というよりはようやく入った同点弾という感じ。上々の内容を結果に結びつけた途中交代のウェルベックがブライトンに勝ち点1をもたらした。

試合結果
2021.12.29
プレミアリーグ 第20節
チェルシー 1-1 ブライトン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:28′ ルカク
BRI:90+1′ ウェルベック
主審:マイク・ディーン

⑥ブレントフォード【13位】×マンチェスター・シティ【1位】

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■右サイドから壊した高い完成度の守備

 激しいプレスからトランジッションを重視した縦への早い攻め込みでプレミアのインテンシティに対抗するスタイルが持ち味のブレントフォード。この日は布陣こそいつもと同じ5-3-2だが、マンチェスター・シティ相手ということで、割り切った撤退守備を行うことでシティに対抗する。

 基本的なスタンスはシティを外に追いやりながら守る形。ハーフスペースに侵入させることだけは避けながら、シティのサイド攻撃の鉄板であるSB、WG、IHのトライアングルに対して、ブレントフォードはうまく受け渡しながら対応していく。

 クロスに対しての対応はブレントフォードの方が優位。ハイクロスの競り合いながらシティ相手には問題なくできる分野である。なので、どこまでついていきながら鋭いクロスを上げさせないか?がポイントになる。

 ブレントフォードはハーフスペースの守備も完成度が高く、ワイドのCBが相手に前を向かせないように、トッテナムの降りるアクションについていきながら潰すことができていた。したがって単体で出ていくDFのスペースを埋める最終ラインの横移動もうまく、シティに対抗する5-3-2は比較的できていたように見える。

 シティはサイドチェンジで行うことで活路を探っていくが、2トップが守備をサボらないブレントフォードに対して、なかなかスムーズにサイドを変えられずに苦戦する。

 というわけで困った時は外から壊すに限る!というシティ。この日はカンセロ、デ・ブライネという外からピンポイントのクロスを入れることができる選手が右サイドに。

 その右サイドからの遠距離射撃からシティは先制点をゲット。デ・ブライネの浮き玉に反応したのは裏に抜け出したフォーデン。ワンチャンスを物にして一歩前に出る。

 ブレントフォードは積極的に高い位置をとるシティのバックラインに対してロングボールで対抗手段を探す。前に進み、エリアにクロスを上げることができる状況ならば、問題なく攻撃ができるのだがどうしてもエリアにたどり着くための機会が少ないブレントフォード。

 失点後、ブレントフォードはかなり積極的にミドルプレスに出て行ってはいたが、どうにもゴールを取り切るところまでは至らない。攻守に健闘は見せたが、セットプレーも含めてなかなかチャンスの機会が増えてこない。

 試合はそのまま終了。攻守にシティ対策のきっかけを見つけるところまでは行ったものの、序盤の失点が尾を引く形で昇格組のブレントフォードがシティに屈することとなった。

試合結果
2021.12.29
プレミアリーグ 第20節
ブレントフォード 0-1 マンチェスター・シティ
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
Man City: 16′ フォーデン
主審:デビッド・クーテ

⑦マンチェスター・ユナイテッド【7位】×バーンリー【18位】

■息ができる中央密集

 前節、降格圏に踏み入れているニューカッスルから勝利を逃してしまったマンチェスター・ユナイテッド。今節の相手は前節と同じく降格権で苦しいシーズンになっているバーンリー。

 立ち上がりはバーンリーペース。ロングボールや裏抜けをピンポイントで刺すことができれば先手を取るのは彼らでもおかしくなかったくらい立ち上がりはバーンリーにチャンスはあったように思う。

 ただし、今節のユナイテッドは前節と一味違う。4-2-2-2でライン間と裏抜けに多くのリソースを割くスタンスが彼らの持ち味。バーンリーはまずは守備から入りたいチームではあるが、ラインのコントロールやサイドへのスライドが甘いところがある。

 ライン間に人を集めすぎて、いつもそこからの選択を引っ掛けてしまうのがユナイテッドのお決まり。だが、この日はそのスペースが管理されていないことから簡単に呼吸ができる。

 ユナイテッドの攻撃は彼らがめちゃめちゃ上達したとか、ラングニックの哲学が浸透したとかそういう部分というよりはバーンリーの間延びした守備に助けられる部分の方が大きいかもしれない。

 左右にボールを振りながらラインを押し下げたユナイテッド。バイタルに空いたスペースからマクトミネイがミドルシュートを放って先制する。

 この場面以外にもバーンリーの守備はとにかく『後回し』の選択をすることが多く、それによってユナイテッドは助けられた。ホルダーを捕まえに行かない、とりあえず撤退という流れから進んで自ら自陣に釘付けになっているかのよう。

 2失点目はそのホルダーを捕まえるのが遅れてしまった典型。サンチョのドリブルでいつの間にかエリア内に攻め込まれてしまう。ここからユナイテッドはオウンゴールを誘発し追加点を奪う。

 さらに3点目は1点目と全く同じような形と言っていい。左右に相手を揺さぶりしながら、空いたバイタルからマクトミネイ。違いといえば、この3点目はマクトミネイのミドルがポストをたたき、最終的に押し込んだのがロナウドということくらいである。

 1点を返して前半のうちに反撃したバーンリーだったが、後半になっても流れは変わらない。だらっと間延びした中盤のスペースにおいてはパワーもスピードもユナイテッドの方が上。体の当て合いでは前に出ることができない。

 まともに組み合った結果、上位に歯が立たなかったバーンリー。ユナイテッドは連続未勝利をこれで回避。完勝で2021年を締めくくることに成功した。

試合結果
2021.12.30
プレミアリーグ 第20節
マンチェスター・ユナイテッド 3-1 バーンリー
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:8′ マクトミネイ,27′ ミー(OG), 35′ ロナウド
BUR:38′ レノン
主審:ジョナサン・モス

今節のベストイレブン

⑧アーセナル【6位】×ウォルバーハンプトン【7位】

■10日前以上に劇的な大逆転

 レビューはこちら。

 およそ10日前のリマッチとなった一戦。4位争いの主導権を握りたいアーセナルと、欧州カップ戦争いに食らいつきたいウルブスが再び激突する。

 試合は早々にウルブスが先制点をゲット。ファン・ヒチャンがガブリエウのバックパスを掻っ攫い、ラムズデールを交わして無人のゴールに押し込んで見せる。アーセナルのバックラインはこのシーンの前においても、どこにパスを出したらいいか悩むシーンがあり、ガブリエウに関してはそれが特に顕著だった。ここはウルブスの受け手をきっちり絞る形のプレスが効いていたと言っていいだろう。

 反撃のため、ボールを持って敵陣に進むアーセナル。SBで駆け引きをしながらウルブスのWBを引き出してくるムーブは比較的うまくいっており、裏のWGからゴールを狙っていく形は悪くはなかったが、ウルブスの中央の堅さに手を焼いてしまう。サイドの崩しは人数をかけることができており、PAに入ることはできていたが、PA内で相手を剥がすことができない。象徴的だったのはラカゼット。コーディに捕まり、反転しながらもシュートブロックにあってしまうなどなかなか自由にプレーをすることができない。

 押し込まれるウルブスはカウンターからチャンスを見出したいところ。序盤こそポデンスを中心に幅を使う攻撃でアーセナル相手にクロスまで持ち運ぶことができていたが、徐々に高い位置に出てくるアーセナルの守備ブロックに対して苦戦。ただし、ボールをロストしても高い位置で相手を食い止めることができていたのはさすが。反撃はできないが、ピンチにも至っていないという均衡した状況を維持することができていた。

 後半、アーセナルは前半に引き続き攻勢に出るも最後の最後をこじ開けることができない。勝負に出たいアルテタはセドリックに代えてエンケティアを投入して2トップに移行する。2トップの採用により効いたのが内側から外側へのラン。これにより最後の壁になっていたコーディを退かすことに成功するアーセナル。セットで投入されたペペのエンケティアとクロスする内側へのフリーランで同点ゴールをゲットする。

 さらに試合終了間際の決勝点も右サイドから。ペペのお膳立てを受けて抜け出したラカゼットがジョゼ・サのオウンゴールを誘発。10人で凌ぎきったモリニューでの一戦を上回る逆転勝利を見せたアーセナル。昨年のリベンジとなるウルブス戦ダブルをこれ以上ない劇的な形で達成した。

試合結果
2022.2.23
プレミアリーグ 第20節
アーセナル 2-1 ウォルバーハンプトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:82′ ペペ, 90’+5 ジョゼ・サ(OG)
WOL:10′ ヒチャン
主審:マーティン・アトキンソン

⑨リーズ【16位】×アストンビラ【11位】

■最終ラインの得点で反撃を食い止める

 ジェシー・マーシュ就任初戦となったレスター戦は惜しくも結果こそでなかったものの、ビエルサ政権後期で露呈した脆さを立て直しながら攻撃にも引き続きトライするという内容的には見どころのあるものだった。

 というわけで初勝利をなんとか挙げたいリーズ。今節の相手はアストンビラ。ビラの後方のビルドアップに対して、リーズは前節に続きアンカーを受け渡しながらのマークという我慢しながらの前線のプレスを行う。

 展開を決めるキーになったマッチアップはサイド。特にビラのSBとリーズのWGの対峙が見どころとなっていた。前にでていくのを我慢するリーズのプレス隊に対して、ビラはサイドで駆け引き。アンカーのルイスを下ろし、CBが横に広がり、リーズのWGをプレスに引き寄せたところでビラのSBがWGの背後で受ける。

 この駆け引きで優位に立ったため、序盤から内容的にはアストンビラが優勢だった。特に存在感があったのは左のSBであるディーニュ。積極的な攻撃参加でラフィーニャを出し抜きながら左サイドを制圧する。逆サイドのキャッシュもハリソンに対して優勢。ビラは左右で攻撃に厚みを持たせて攻め込むことができていた。

 ビラが決めた先制点もサイドからのクロスで。ターゲットのクロスは逆サイドに流れてキャッシュの元に。ディーニュに対して、横にスライドして対応したリーズの最終ラインは逆サイドに攻め上がったキャッシュにはマークに行けず。フリーでマイナスに折り返したパスをコウチーニョがミドルで沈めた。

 ビラは2CHであるコッホとフォーショウをコウチーニョが捕まえ切れておらず、リーズはここから攻め入る隙があったように思うが、なかなか効果的にボールを運ぶことができない。例えば、38分のような細かいパスワークから幅を使えれば、ビラの4-3ブロックはもう少しスマートに攻略できたと思うのだけど。

 リーズはビハインドで迎えた後半、サイドからの裏抜けでのダイレクトな展開を増やしてペースを掴む。ビラはミングスが警告を受けるなど、この時間帯はやや飲まれかけてしまっていた。追い上げムードのところにバンフォードが登場したのもビラにとっては厄介。長いボールを収められるCFの登場でリーズはビラに対して優勢に試合を進めていく。

 しかし、そんな展開に逆らうように得点をしたのはビラ。またしても左で作った攻撃を右で受けたのはオーバーラップしたキャッシュ。ダイナミックな攻撃参加でそのまま追加点を決めてみせた。続く3点目も同じくDFラインの得点。先日の得点の起点となった超絶アウトサイドキックで存在感を放ったチェンバースが今度はスーパーゴールで魅せる。

 優勢に進めて反撃の準備をしていたリーズを打ち砕いたビラの最終ラインの得点力。マーシュの初勝利は残念ながら今節もお預けとなった。

試合結果
2022.3.10
プレミアリーグ 第20節
リーズ 0-3 アストンビラ
エランド・ロード
【得点者】
AVL:22′ コウチーニョ, 65′ キャッシュ, 73′ チェンバース
主審:シモン・フーパー

⑩エバートン【17位】×ニューカッスル【14位】

■課題据え置きも一番欲しいものは手中に

 ランパードの就任も雰囲気は上向かずに苦しい残留争いの道のりが続いているエバートン。今節の相手はそんな彼らとちょうど入れ替わるように降格圏から脱出しつつあるニューカッスルである。

 立ち上がりから展開は両チームの勢いをそのまま反映したかのようだった。4-1-4-1のベースからジョエリントンがプレス隊に加わる4-4-2に変形しつつ、エバートンにプレッシャーをかけてリシャルリソンにボールを蹴らせて回収する。

    保持においては、エバートンのプレスの食いつきの良さを利用し、間延びした中央のスペースを使いながらスムーズに前進。エバートンのプレッシングは勢いはあったけども、結局どこに誘導したいかが不明で狭く守ることが出来ていない。そのため、後方の負荷は大きい。

    常に最終ラインは後退させられながらエリア内でクリアするというギリギリの状態での跳ね返しに終始していた。だが、その最終ラインも落ち着いて守れるはずのブロック守備には不安がある。横スライドが甘くハーフスペースを空けるケースを頻発。仮にニューカッスルが攻撃をスピードダウンさせたとして、エバートンはうまく守れているわけではない。この4-4-2のもっさり感は程度の差はあれどベニテスでもアンチェロッティでも直らなかったものである。

 反撃に出たいエバートンの頼みの綱はグレイ。左サイドから一気に裏を抜ける形での前進はこの試合のエバートンの数少ない前進のパターンだった。だが、これ一つだけではさすがにゴールに迫る頻度を確保することが出来ず。苦しい守備の対応から一本槍のカウンターという厳しい流れの前半となった。

 後半のエバートンは腹をくくったのか組織的に守るというよりもニューカッスルを乱戦に引きずり込もうと覚悟したかのようだった。リスクを脇においておいて、アランとドゥクレが中盤で大暴れし、攻守の切り替えが早く中盤が間延びしたような組織力は度外視の形。個人の質は十分なエバートンはむしろそちらの方が勝算があると踏んだのだろう。

 このプランは比較的効いたように思う。ニューカッスルの中盤はアスリート能力が高いわけではないので、こうした間延びしたダラっとした展開が得意ではない。接触からの乱闘、小競り合いも増えて、試合の流れも止まりやすくなったため、エバートンペースとはいえないまでも、少なくとも五分に試合のペースを戻すことはできていた。

 そんな展開になれば怖いのは当然退場者。この試合でババを引いたのはエバートンのアランだった。一発退場で数的不利に陥ったエバートンは再びニューカッスルに押し込まれる展開となる。

 だが、終盤にそんな苦境をなんとかしたのがイウォビ。押し込まれる展開の中でキャルバート=ルーウィンとの連携でワンチャンスをモノにし、後半追加タイムに勝ち点3をもたらす決勝点を手にする。

 正直、エバートンの問題点は何一つ解決されている感はない。だが、彼らに一番必要なのはとりあえず勝ち点。石にかじりついても降格は避けなければいけない中で、とりあえず今一番欲しいものを乱戦の中で手にすることに成功した形だ。

試合結果
2022.3.17
プレミアリーグ 第20節
エバートン 1-0 ニューカッスル
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:90+11′ イウォビ
主審:クレイグ・ポーソン

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