MENU
カテゴリー

「Catch up Premier League」~Match week 14~ 2021.11.30-12.2

目次

①ニューカッスル【20位】×ノリッジ【19位】

画像1

■予定外の回帰によるリードも…

 逆天王山を迎える両チームはどちらもボール保持型に舵を切ろうというスタイルチェンジの最中である。ニューカッスルはシェルビーがラインを落ちる流れからゆったりとしたテンポでゲームメイク。これまでの縦に早いスタイルからの脱却を図っている真っ最中。

 ノリッジも右のWGに起用したサージェントへのロングボールを駆使してはいたものの、これまでに比べれば直線的な動きが少なく、ボールを回しながらの相手の攻略に挑みだしている。

 両チームの新しいスタイルへの挑戦の過程を見ることが出来るかと思いきや、ニューカッスルにアクシデント。クリアをプッキに当てて抜け出されてしまったクラークが後ろからプッキを引き倒し、わずか9分で一発退場の憂き目に。これで試合の流れはガラッと変わる。

 4-3-2にシフトしたニューカッスルはボール保持を諦めて撤退+ロングカウンターの流れでひとまずのスタイル変化を棚上げすることに。

 その分、ボール保持の色を濃くしたのはノリッジ。SB、IHが退場前よりも気持ち一列前でボールを受ける意識を持ち、ニューカッスルを押し込んでいく。ニューカッスルはニューカッスルで反撃の糸口は十分。トップの選手はノリッジのDF相手にボールを収めることが出来ていたし、高い位置を取るノリッジのウィリアムズの裏に流れることでラインを押し下げることが出来る。

 後半、より攻勢に出るべくノリッジは4-3-1-2へとシフトチェンジ。中央の密度を上げて、前半にはやや迫力不足が否めなかったPA内の圧力を高めていく。SBが時間をもらえるのは前半と同じだったので、大外は彼らに任せつつ、中央を分厚くする算段である。

 ニューカッスルはサイドに流れることで起点は出来ていたが、FWがこの動きを担当するためにエリア内にフィニッシャーがいなくなる問題に直面。サイドからチャンスは作れるが、フィニッシュが出来ない状況に苦しむ。

   そんな流れの中で先制点を奪ったのはニューカッスル。エリア内のハンドの判定でPKを獲得。ウィルソンがこれを決めて先制する。 

    ビハインドとなったノリッジは時間をもらえているSBを変更。ウィリアムズからギアンヌリスに交代し、クロッサーとしてエリアへの砲台の役割を託す。

 このスミス監督の交代は的中。左の大外から上げたクロスを最後はプッキが叩き込んで同点。あわや10人で初勝利を掴みそうだったニューカッスルから寸前のところで勝利を取り上げて見せた。

試合結果
2021.11.30
プレミアリーグ 第14節
ニューカッスル 1-1 ノリッジ
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:61′(PK) ウィルソン
NOR:79′ プッキ
主審:アンディ・マドレー

②リーズ【17位】×クリスタル・パレス【11位】

画像2

■1年前にタイムスリップ?

 ここ数試合は局地戦の色が濃かったリーズだが、この試合は何時も通りの長いボール+オフザボールの動きという彼ららしい動きが戻ってきた感じである。SBに起用されたダラスの内側に絞りながら受ける動きも久しぶりに見た感じ。マンマークも前線から強気に行うといういつものリーズだ。

 対する、クリスタルパレスはマンマーク気味なリーズにいつもの可変は鳴りを潜める。今季のパレスはボール保持色が強いことでお馴染みだが、その可変をベースにした保持もこの試合ではあまり見られない。直線的な攻撃を繰り返しながら前線の個のアタッカーをひたすら生かそうとする形は、ホジソン率いるパレスを見ているようだった。

 もっとも、そのクリスタル・パレスのアプローチが間違っていたわけではない。強靭なフィジカルを持つパレスの前線の面々はリーズのバックス相手には十分背負うことができており、直線的な楔は収めることができる。彼ららしくはないけど、むしろ実効性は十分だった。

 パレスが昨年のままなのは守備も同じ。中盤中央のプレスでの押し上げが不十分で、リーズはアンカーが自由にボールの配球が出来るように。そういえば、フィリップスがアンカーの位置から快適にゲームメイクしている姿もなかなか久しぶりに見る気がする。

 フィリップスにプレッシャーがかからないということはピッチを縦横無尽に使えるチャンスをリーズに与えてしまっているということ。リーズはラフィーニャやジェームズへの展開でピッチに幅と奥行きをもたらせる攻撃が出来るように。

 縦横無尽の攻撃をフィリップスが司るリーズとアタッカーにボールを当てるカウンターに舵を切るパレス。まるでこの試合だけ20-21シーズンの戦いを見ているかのようだった。

 スコアが入らないまま後半に推移すると徐々にザハが個人でファウルをむしり取れるパレスに流れが向いていく。ここは個人の力。前節のような組織力勝負の時は浮きがちだけど、ザハはこういう流れになると非常に頼りになる。

 しかし、そんなパレス優勢の展開の中で終盤にチャンスを得たのはリーズ。グエヒのハンドからPKを得ると、これをラフィーニャが叩き込み後半追加タイムに決勝点。終盤までもつれた一戦はホームのリーズが勝利を手にして幕を閉じた。

試合結果
2021.11.30
プレミアリーグ 第14節
リーズ 1-0 クリスタル・パレス
エランド・ロード
【得点者】
LEE:90+4′(PK) ラフィーニャ
主審:ケビン・フレンド

③サウサンプトン【15位】×レスター【10位】

画像3

■落ち着かないサイドのせめぎ合い

 試合が落ち着く前に先制点はサウサンプトンに。セットプレーからいきなりベドナレク。展開がどうなるかを考える前にサウサンプトンが一歩前に出る。

 試合が始まって間もないから展開が落ち着かないという書き方をしているが、最近はレスターが絡む試合は割と軒並み落ち着かない。当然サウサンプトンも落ち着かないのが大好きなチーム。試合は時間が経っても落ち着かないままである。

 4-4-2で噛み合うフォーメーション同士の一戦ということもあり、序盤からプレスの掛け合いに。ボールは落ち着かず、ハイテンポで攻撃が繰り出され合う状態に。マッチアップはどちらのボール保持においても、攻撃側に優勢に傾く。

 中盤が互いにプレッシャーをかけられないということもあり、中盤から長いボールを前線に差して、お互いにゴール前に迫るシーンが多く生まれることになる。発見としてはルックマンが意外と背負えるということ。バーンズの方がスマートな印象があるけども、割とアバウトでも収められるということでルックマンの新しい武器を見た感じがした。

 一進一退の流れで生まれたレスターの同点弾は右サイドからマディソンが相手を押し下げたところから。セットプレーの流れということもあり、こちらもCBのエバンスがゴールを決めて見せる。セットプレーから得点が決まる流れは止まらず。サウサンプトンの勝ち越しゴールとなったアダムスの得点もセットプレー絡みである。

 後半はサウサンプトンが積極的にプレッシングを行う。後半開始早々にンディディが捕まるといきなりあわやというシーンを作り出すサウサンプトン。しかしこのプレスを脱すると今度はレスターが攻勢に。

 レスターの同点ゴールを生んだマディソンの得点は、前からのセインツのプレスをいなして一気に加速したところが起点。得点以降も左サイドに流れるマディソンとバーンズのコンビネーションでリヴラメント相手に優位を取れることがわかると、徹底的にこちらのサイドを攻めることに。得点の場面もマディソンが左サイドに流れたところからだった。

 その後もペースはレスターに。左サイドを軸に押し込みながらシュートを量産。サウサンプトンは引き続き前からのプレッシングを後半から積極的にプレスを行ってはいたが、レスターは大きな展開で脱することでこのプレッシングをいなす。

 しかし、終盤になると再びペースを握ったサウサンプトン。カウンターから一撃を狙う展開から徐々にサイドアタックが効くように。狙いを定めたのはマディソンがポジションを移してきたレスターの左サイド。戻りが遅れがちなマディソンのサイドからクロスを上げる形で反撃をする。

 ともにSBを徹底的に狙ったオープンな打ち合いだったが、最後まで決着はつかず。落ち着かずに始まった試合は最後まで落ち着くことなく90分を駆け抜けた。

試合結果
2021.12.1
プレミアリーグ 第14節
サウサンプトン 2-2 レスター
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:3′ ベドナレク, 34′ アダムス
LEI:22′ エバンス, 49′ マディソン
主審:ロベルト・ジョーンズ

④ワトフォード【16位】×チェルシー【1位】

画像4

■したたかな布陣変更で健闘のワトフォードを退ける

 前節はユナイテッド相手にホームで勝ちを逃してしまったが、内容を紐解いてみれば優勢だったのは明らかにチェルシー。想定外の展開や部分的に精彩を欠いてなおユナイテッドを相手に試合を掌握できるのはそもそもの完成度がそれほど高いということだろう。

 というわけで下位に沈み、不安定な戦いに終始するワトフォード相手には楽勝かと思っていた。だが、この試合のチェルシーは苦戦。特にこれまではスムーズに運べていた球出しのところをワトフォードのプレスで咎められることが多かった。特に左サイドのところ。リュディガーのところとCHのサウールのところでワトフォードのクレバリーの出足に負けてひっくり返されることが多かった。

 ボールを引っ掛けた後のデニスを主体としたカウンターはチェルシーにとって非常に危険。加えて対面がマルコス・アロンソなので裏へのケアは甘く、ひっくり返した直後にそのまま裏を使う形で攻め入ることが多かった。ワトフォードの得点はサウールのところからボールを奪い一気に攻め込む形からだった。

 チェルシーは浮き玉で右サイドに振る形でのプレス脱出は見事だったけど、強引なターンや楔に関しては割と相手の守備にしてやられるパターンが多く、いつものボール保持ほどの安定感はあまりなかったといえる。加えて深い位置まで進んでもプレッシングが割と後追い気味。前線があまり細かく動きながらプレスをかけなかったこともあり、中盤もプレスの狙いが定まらなかったようである。

 そんな中で同点ゴールを生んだチェルシー。得点場面でらしさを見せたのは深さを作ったマルコス・アロンソ。らしさを見せてラインを破り、最後はマウントが決めて同点に追いつく。

 同点に追いついてなおペースを掌握しきれないチェルシーは選手交代と共に布陣を変更。サウールを諦め、チャロバーをアンカーに据えてIHにロフタス=チークとマウントを置くことにした。サウールの苦難はまだまだ続く。これにより、ワトフォードのプレスの主軸を担っていたシソコとクレバリーに背後を気にさせるように。

 これでいくばくかのビルドアップのプレッシャーを回避したチェルシー。ボールホルダーがオープンになれば列を越えることは容易。裏へのパスでラインブレイクするとツィエクが勝ち越しゴールを叩き込む。

 しかし、終盤までワトフォードの両翼の攻撃に苦戦したチェルシー。デニスのカットインに内側の選手が合わせる形で最後までゴールを脅かしてはいた。だが、僅かに及ばなかったワトフォード。戦前の予想よりもチェルシーを苦しめたが、勝ち点を奪うまでには至らなかった。

試合結果
2021.12.1
プレミアリーグ 第14節
ワトフォード 1-2 チェルシー
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
WAT:42′ デニス
CHE:29′ マウント, 72′ ツィエク
主審:デビット・クーテ

⑤ウェストハム【4位】×ブライトン【9位】

画像8

■呪いを解いて勝ち点奪取

 前節、チャンスメイクは出来るもののシュートまでに至らないという昨シーズンの呪いが復活してしまったブライトン。その流れを払拭したいウェストハム戦なはずだったが、開始直後のチャンスをいきなりモペイが外してしまう。

 いきなり呪いの継続して体感してしまったブライトンにウェストハムがセットプレーで襲い掛かる。GK付近に放たれたCKをニアに入り込んだソーチェクがわずかにずらしてネットイン。先制点を早々にゲットする。

 リードをしたウェストハムは安全第一の撤退守備を敢行。アンカー気味に2トップ間に存在するビスマに対して、2トップが比較的狭く立つ必要があったため、ブライトンはウェストハムの1列目のプレス隊を越えることは比較的簡単にできた。だが、そこからの2列目の撤退がウェストハムは非常に迅速。一気にPA付近まで下がることで、自陣を固める。

 マンチェスターシティ戦で見せたソーチェクの同サイドのハーフスペースを埋める5バック変形に伴う撤退守備はとても強固。シティは大きな展開で壊し切ったが、ブライトンはなかなかこの守備網を壊せずに苦戦することになる。左の大外からタメが効くククレジャを軸にスペースにクロスを上げるが合わせきれない。

 しかも、めんどくさいことにウェストハムは撤退守備からもロングカウンターを平気で放てるスキルがある。ロングカウンターからあわや失点の憂き目にあう可能性もあったのが厄介であった。

 後半も試合の流れは大きく変わらず。後半早々にCKにてウェストハムが追加点と思いきや、これはファウルにより取り消し。ブライトンが首の皮一枚で終盤までチャンスをつないでいく。

 前半のうちに負傷で2枚の交代カードを切ったブライトンは最後の1枚としてランプティを投入。同じく途中交代のマーチとの縦関係のタッグを結成することで、左サイドだけでなく右サイドからもチャンスメイクを強化した。

 そして、その右サイドからブライトンは同点ゴールをゲット。右サイドからのクロスに合わせたのはモペイ。簡単なシュートを外しまくっていたここ数試合の姿が嘘のようなスーパーシュートで追いつく。最後の最後に呪いが解けたブライトン。苦戦しながらもウェストハム相手に勝ち点をもぎ取って見せた。

試合結果
2021.12.1
プレミアリーグ 第14節
ウェストハム 1-1 ブライトン
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:5‘ ソーチェク
BRI:89’ モペイ
主審:クリス・カバナフ

⑥ウォルバーハンプトン【6位】×バーンリー【18位】

画像5

■決め手を欠く×決め手に届かない

 あまりパブリックイメージとしてはないかもしれないが、バーンリーは割と高い位置からプレッシングを仕掛けることが多い。ただ、仕組みとしてどこかに追い込んだりとか、あるいは誰かにボールを持たせたりとかそういう仕掛けを施して追い込むタイプではない。

 だけどもとりあえず勢いはある。というわけでポゼッションに自信がないチームはこのプレスに押し切られてしまう。例えば、マンチェスター・シティのようなチームには全く通用しない感じである。

 ウルブスはバックスにプレス耐性があるわけではない。というわけでこのバーンリーのプレスを交わして前進することは難しい。しかしながら、そもそもとして彼らは保持にこだわる必要はない。何よりもこの日のウルブズの前線にはアダマ・トラオレがいる。とりあえず彼に向けて裏に蹴ればいい。ウルブスにはその割り切りができる。

 ラインを下げる裏へのボールを蹴り、そこからハイプレスでラインを押し上げる。それがこの試合のウルブスの流れだった。そのためにウルブスはウィリアム・サの周りにやたら人を集めてフリーの選手を作る。フリーの選手にボールを渡したら、とりあえずトラオレに蹴る。一度収まれば前に押し上げる時間を稼げるので問題ない。

 しかしながら押し込んでからの攻撃はパターンがないウルブス。サイドの大外+ハーフスペースの裏抜けのコンビネーションを組み合わせる。だがこれは2人の関係性のみ。バーンリーはSHが低い位置までラインを下げながらスペースを埋めるため、この2人でのコンビネーションには十分に対応できてしまう。

 一方のバーンリーは本当に前進の手段がない。PAに入り込む手段が全くない。かつ、チャレンジングなパスにミスるとウルブスの鋭いカウンターが飛んでくるという状況である。

 得点の可能性がありそうだったのはウルブスの方。前半のトラオレ一本槍だけでなく、後半は右から左に流しての勝負。左のWBであるアイト=ヌーリをストロングポイントとして、ピッチを横断しながらここに最終的にボールを落ち着ける。

 だが、最後までゴールをこじ開けることができなかった両チーム。互いに小競り合いと深いタックルばかりが印象に残り、内容的にもかなり難しい一戦になった。

試合結果
2021.12.1
プレミアリーグ 第14節
ウォルバーハンプトン 0-0 バーンリー
モリニュー・スタジアム
主審:ジョン・ブルックス

⑦アストンビラ【13位】×マンチェスター・シティ【2位】

画像9

■支配する貫禄

 就任から2連勝という勢いのある船出となったジェラード率いるアストンビラ。そんな彼らに今節立ちはだかるのはマンチェスター・シティ。3節目にしてディフェンディングチャンピオンとの一戦ということになった。

 そんな試合はグアルディオラがジェラードに保持して崩すレッスンを執り行った90分となった。この日のシティは普段と異なる4-2-3-1。3センターが主フォーメーションのアストンビラに対してインサイドハーフにかみ合わせるような形で変形してきた。

 普通にやってしまってはインサイドハーフが捕まってしまう!ということで、最終ラインはまずは丁寧に1列目を外すことを意識。ロドリとフェルナンジーニョについてくる3センターは絞るカンセロとジンチェンコが不確定因子となり、プレッシャーを分散させる。

 もちろんCBから運ぶパターンも。アストンビラは4-3の守りは結構タイトだけど、前線の守備の貢献度はウェストハムのようなチームと比べると劣るので、シティは人数を前に送り込みながら1列目を越えることが出来た。

 シティがサイドに運ぶとボールを回している間にアンカーのナカンバがボールサイドに寄ってくる。そうなったときにはシティはサイドを変える。サイドを変えるとアストンビラは3センターがスライドをする。だけど、3枚でシティの速いサイドチェンジについていくのはしんどい。ということでビラのサイドの守りは厳しくなり押し込まれていくという輪廻。

 シティの先制点はルベン・ディアスのミドル。セットプレーでもない中でミドルが刺さる位置に彼が立っているということはいかにシティが全体を押し上げられているかがよくわかる。ビラは6バック化して押し上げられないことも目ずらいしくなかった。

 ビラもいつも通り、ワトキンスをボールサイドに寄せての多角形を作りながらシティ相手に前進を狙うが、押し下げられている分攻撃の回数を思うように稼ぐことが出来なかった。シティの追加点はそんな少ないビラの攻撃機会をひっくり返したところから。

 深い位置からフェルナンジーニョからジェズスにダイナミックな裏のパスでつなぎ、早めの折り返しをベルナルドがダイレクトボレー。いちいちうまい。

 後半はビラもセットプレーから早々にワトキンスの得点で反撃をするが、機会が少ないという状況を覆せる状況にはないアストンビラ。ジェラードは前半に比べれば、比較的縦に速い形での攻撃にシフトするなど工夫はしたが、戦況は大きくは変わらなかった。

 それでも最終ラインを主体にPAはしっかりプロテクトできたことで勝ち点をとる可能性は最後まで見せたビラ。終盤のブエンディア→チュクエメカのラインが決まっていれば勝ち点を取り上げることが出来たかもしれない。だが、残念そこはエデルソンである。

 シティの貫禄とビラの粘りの両方が見られた試合だったが、結果は1-2と順当にシティが勝利した。

試合結果
2021.12.1
プレミアリーグ 第14節
アストンビラ 1-2 マンチェスター・シティ
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:27′ ディアス, 43′ ベルナルド
Man City:47′ ワトキンス
主審:マイク・ディーン

⑧エバートン【14位】×リバプール【3位】

画像6

■ダービーの魔力の出番はなし

 ダービーの怖いところといえば、これまでの両チームの流れとは関係なく試合が推移すること。例えば、ダービーをきっかけに一気に上り調子になるチームも入れば、これをきっかけに一気にコンディションを落とすチームもいる。流れを変えるきっかけ、それがダービーである。

 しかしながら、今回のマージーサイドダービーはそのダービーの恐ろしさとは無縁。すなわち、両チームのここまでの流れをきっちりと反映した内容になったと言えるだろう。

 エバートンにとってはそもそもどう戦うかということ自体がかなり悩ましかったはず。彼らが得点を取るということに立脚した場合、じっくりとビルドアップから点が取れるケースは少なく、あまりここに取り組みたくはない。前節のブレントフォード戦などでは攻めあぐねた結果、スコアレスに終わっている。得点を取るならば速い展開の方がベターである。

 しかし、そのアップテンポな展開は今回の対戦相手のリバプールの真骨頂である。彼らはエバートンよりも速く、その上正確にプレーすることができる。というわけでエバートンは点を取るならば速い展開がいいが、そこは相手の得意分野という苦しみの輪廻に立ち向かうことになった。

 立ち上がりから試合はダービーらしいアップテンポな展開に。結局はやってみることにしたエバートン。しかし、激しい中でもファビーニョのサイドチェンジなど、エバートンのCHの守備範囲の広さに依存した守備を壊すような手段を有しているリバプールは確実にクオリティの差を見せつける。サイドから揺さぶりつつ最後はヘンダーソンが仕留めると、『速くてうまい』の究極体の存在のようなサラーがカウンター独走から厳しい角度で技ありの追加点を決める。

 20分でグディソン・パークの席をたつエバートンの観客はあまりにも諦めがよく見えるかもしれないが、今のエバートンでは敵わない相手に2点差という手が出ないシチュエーションに追い込まれたのは明らか。20分で力関係と厳しいスコアが突きつけられたのだから帰るのも無理はない。

 勢いのあったエバートンのプレッシングが相手のビルドアップを引っ掛けることがあったり、今季の希望の光であるグレイのゴールで1点を返したりなどはしたものの、90分間力関係は基本的には変わることなくリバプールの優位で推移する。

 後半もサラー、ジョッタが『速くてうまい』を体現するようなダイナミックさと技術を備えたシュートで隣人を突き放し、スコアの上でも4-1と完勝。

    ダービーという転換点になりうるシチュエーションを得意分野で一蹴したリバプール。好調の彼らにとってはダービーという魔法がかかりうる舞台装置も関係がないようだ。

試合結果
2021.12.1
プレミアリーグ 第14節
エバートン 1-4 リバプール
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:38′ グレイ
LIV:9′ ヘンダーソン, 19′ 64′ サラー, 79′ ジョッタ
主審:ポール・ティアニー

⑨トッテナム【7位】×ブレントフォード【12位】

画像10

■見え始めた良化の兆し

 前節のバーンリー戦は豪雪のために中止。他のプレミアのチームと異なりゲーム間隔があいているため、コンディション的には優位が予想されるトッテナム。今節は昇格組のダークホースとのロンドンダービーとなった。

 試合はトッテナムの進歩が見られる内容といっていいだろう。共に3バックだが、前線の噛み合わせは微妙に違う。トッテナムが意識していたのは左サイドからの前進。ムベウモの横、オンエカの手前から前進することでオンエカを自陣側に引き寄せるトッテナム。

 おそらく、トッテナムが用意した対ブレントフォードの崩しのノッチはこのIHの移動から始まるギャップのところだろう。オンエカが動けばそのスペースに前線から降りてくるソンか、デイビスによって押し上げられたレギロンが入り込む。CB起用のデイビスが1列目を越えるドリブルが出来るのもいい感じ。そうなった場合はホイビュアが低い位置に下がってバランスを取る。

 この左サイドの柔軟な動きにブレントフォードは自慢のハイプレスがあまり効かない状況に。保持においても3CB+WBがかみ合わされながら外に外に誘導されて前進が難しい。高い位置を取るトッテナムのWBの裏を取れた状況はあまり多くない。セットプレー絡みで早々に点をとったトッテナムが内容もスコアもリードする展開だ。

 後半のトッテナムは速攻から追加点。ケインへの長いボールの収めからサイドから裏を取り、最後はソンがゲット。速攻にはかなり屈しやすいブレントフォードの面々をアッサリ打ち破ってしまった。

 全体的にみてもこの日はトッテナムの完勝だろう。まだ途上ではあるが保持における相手のプレスの動かし方や、サイドのCBの高い位置を取っての攻撃参加など、今までの路線とは違うアプローチも徐々に浸透してきている。

 コンテ流が馴染みだしてきたトッテナム。欧州カップ戦後には現状の出来に不満を漏らした指揮官だったが、少しずつ兆しは見えてきている。

試合結果
2021.12.2
プレミアリーグ 第14節
トッテナム 2-0 ブレントフォード
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:12′ カノス(OG), 65′ ソン
主審:ジョナサン・モス

⑩マンチェスター・ユナイテッド【8位】×アーセナル【5位】

画像7

■当たり前を当たり前にでOK

 レビューはこちら。

 暫定監督に就任し、スタンドで見守るラングニックのもと、ユナイテッドには未勝利街道を脱することが求められる。対するアーセナルも勝てばウェストハムを交わして4位浮上。CL出場権争いのライバルであるユナイテッドとのマッチレースで考えてもかなり引き離すことができる状況である。

 試合は両チームともそれぞれの持ち味を見せる一戦に。アーセナルはIHのポストを中心に、CHが前を向く形を作りポゼッションからの前進を見せつければ、ユナイテッドはプレッシングからチャンスを作り出す。

 SHのラッシュフォードとサンチョが絞りながら守備をするのが特徴。彼らが絞った立ち位置をとり、アーセナルのCHにプレッシャーをかけることで前を向かせない。

 どちらかといえばポゼッションからのハイプレスを見せたアーセナルの方が押し込む機会が多い序盤だっただろうか。セットプレーから先制点を獲得。スミス・ロウが味方との接触で傷んでいたデ・ヘアの横をすり抜けるミドルを放ちユナイテッドファンにとっては拍子抜けする形で前に出る。セットプレーからの得点というのも今季のアーセナルらしい部分である。

 だが、ここからアーセナルが撤退守備に大きく舵を切ったことで試合の主導権は大きくユナイテッドに流れる。今季のバックスの守備の堅さと引いた相手に対するユナイテッドの手詰まり感を考えれば確かにこのやり方も悪くはないのかもしれない。

 しかし、この試合のアーセナルの守備は撤退ブロックで凌ぎ切れる基準を大きく下回っていた。ボールホルダーを捕まえることを怠り、ニアを防げず、悪戯にサイドに流れてはバイタルをあける。

    特に中盤の守備における優先順位の設定は無茶苦茶。エリア内で何度も自由にパスを繋ぐことを許し、あわやというシーンを作られる。前半終了間際、ブルーノのゴールはオールド・トラフォードのファンにとってはようやく得点が入ったかと思ったのではないだろうか。

 後半になっても流れは変わらないアーセナル。ポジトラでなんとか陣地回復を図ろうとタバレスが積極的な攻め上がりを行うが、ユナイテッドの逆転弾はそのタバレスの裏から。右からのラッシュフォードのクロスに機械のように正確で速いシュートを合わせたのはロナウド。仕事人に決定的な役目を見事に与えることができたユナイテッド。

 ニアを防げない悪癖は後半も継続したアーセナル。決定的な3点目のPKもまたしてもニアのハーフスペースを防げなかったところからである。多くのミスを重ねたアーセナルに対して、フレッジやロナウドが当たり前を当たり前にこなしたユナイテッド。ラングニック色を打ち出すまでもなく、ユナイテッドが未熟なアーセナルをホームで飲み込み、未勝利に終止符を打った。

試合結果
2021.12.2
プレミアリーグ 第14節
マンチェスター・ユナイテッド 3-2 アーセナル
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:44′ ブルーノ・フェルナンデス, 52′ 70′(PK) ロナウド
ARS:13′ スミス・ロウ, 54′ ウーデゴール
主審:マーティン・アトキンソン

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次