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「Catch up Premier League」~Match week 11~ 2021.11.5-11.7

目次

①サウサンプトン【14位】×アストンビラ【15位】

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■不慣れな2センターが致命傷に

 4-4-2同士の噛み合わせになったフライデーナイトの一戦。いつも通りのサウサンプトンに対して、連敗から脱せないアストンビラはフォーメーションの試行錯誤が続いている印象だ。

 実際、この試合の彼らのパフォーマンスも十分だったとは言い難い。再三指摘しているが、このチームの今季のキモは中盤の3センターの完成度の高さである。それがドウグラス・ルイスが離脱してしまって以降は特にクオリティが下がり、攻守にチームを支えられていない。

 この試合でもアストンビラはその中盤の隙を突かれてしまった印象である。サウサンプトンは後方のビルドアップにおいて2-2と3-1を使い分けながら、CHがサリーしたり2トップ脇に降りたりなどかなり動き回りながらビルドアップを行っている。

アストンビラのCH2枚はそのサウサンプトンのCHの行動範囲の広さにかなり引っ張られる傾向が強かった。そのため、DF-MF間が空いてしまいサウサンプトンの2トップやSHが絞りながら受けるスペースを与えてしまうことが多かった。

 先制点となった場面もそのライン間へのアダム・アームストロングへの楔から。隙を見逃さなかったウォード=プラウズもさすがであった。アストンビラの視点から見ると縦パスを入れられたところから、リトリートのところまでかなりゆるゆるで楔を入れられてからはほぼ抵抗できないまま失点してしまった形だった。

 アストンビラが試行錯誤を続けるのは前線も同じ。前回と同じく右サイドで起用されたベイリーはやはり左足専門の色が強く、右サイドに置くとカットイン専用機になる。密集に突っ込む形のカットインで中に入り込むような動きが読まれると受けるほうとしては読みやすいし、ブエンディアやワトキンスの助けにもならない。

 そのワトキンスも動きの重さが目に付く。ちょうど連敗が始まったアーセナル戦あたりから動きが重く、サイドに流れてタメを作る役割をこなせなくなっているのが気がかりである。イングスの離脱以降、1トップにシステムを変えたため、エリア内から動かない意識を高めているのかもしれないが、もう少し2列目のスペースメイクをしてあげてもいい気がする。

 ベイリーを左サイドに置いた後半はだいぶ持ち直したアストンビラ。早い展開に舵を切って流れを引き寄せる。主導権を取り戻したアストンビラだったが、ゴール前の迫力を出せずに結局はサウサンプトンに逃げ切られてしまう。

 昨季からあらゆるチームを苦しめ続けたディーン・スミス政権はここで終焉。脱グリーリッシュとドウグラス・ルイス、イングスの離脱で最適解探しの森に迷い込んでしまったアストンビラをジェラードは救うことが出来るだろうか。

試合結果
2021.11.5
プレミアリーグ 第11節
サウサンプトン 1-0 アストンビラ
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:3′ アダム・アームストロング
主審:アンディ・マドレー

②マンチェスター・ユナイテッド【5位】×マンチェスター・シティ【3位】

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■理詰めを越えられない理不尽

 リバプール戦の大敗で解任危機が迫る中でトッテナムを返り討ちにし、逆にヌーノを解任に追い込んだスールシャールのマンチェスター・ユナイテッド。しかしながら厳しい日程はまだまだ続く。今節の相手は同じ街のライバル。代表戦直前の最後の一戦はマンチェスター・ダービーである。

 ユナイテッドはトッテナム戦の焼き直しとして5バックを継続採用。しかしながら、違う部分もいくつか。1つは2トップが縦関係を形成したこと。守備時はロナウドの真下にグリーンウッドが入り、アンカーであるロドリを監視していた。

 中央からの前進を阻害する分、サイドからの前進にはガードが緩かったユナイテッド。シティはノープレッシャーのカンセロ、ウォーカーのサイドから前進していく。シティの前進の王道パターンはポジションチェンジを伴うサイドのトライアングル形成。ユナイテッドは中央を固める代わりに、外側でこの数的不利とどのように向き合うかの解決策を見出さないといけない。

 ユナイテッドの答えはサイドのCBのスライド。5バックが横にスライドしながらサイドの数を合わせにいく。しかしながら、シティのもう一つの王道の攻めのパターンはファーサイドへの狙い澄ましたクロス。バックラインが横にスライドするとこの大外のクロスへの対応が難しくなる。

 サイドのトライアングルとファーへのクロスという2つのシティの王道パターンを両方は同時に防げなかったユナイテッド。最終ラインが横にズレながらの対応であたふたする中で早々に失点をする。バイリーのオウンゴールを見てヴァランがいないこともトッテナム戦との違いだったりすることも思い出す。

 もっとも、この場面はバイリーだけの責任ではない。左右に振られながらぎりぎりの対応になっていたことは構造上の仕組みであるし、シティはこういうぎりぎりの対応からエラーを引き起こさせようと危険な場所にとりあえずライナー性やグラウンダーの早いクロスを叩き込むことが多かった。

 シティの追加点も最終ラインの横スライドからファーのケアが甘くなるという筋書き。ユナイテッドは5バックにしてなおシティに対する防衛策を完成できなかった印象だ。2点ビハインドになれば当然ハイプレスには出るが、ロナウドを抱えながらシティ相手にプレッシングを完成させるのは至難の業だろう。

 攻撃においてもロナウドがサイドに流れることで直線的な部分が持ち味のユナイテッドのカウンターが一度落ち着いてしまうことに。プレスもカウンターの部分もロナウドが加入した時点で織り込み済みだったとは思う。ロナウドを獲ったのはそれでももたらしてくれる理不尽が大きかったからだろう。

 しかしながら、この試合はユナイテッドの弱みをつくシティのロジックの前に完全沈黙。理不尽は炸裂せず、理屈の前に完全に屈したマンチェスター・ダービーとなった。

試合結果
2021.11.6
プレミアリーグ 第11節
マンチェスター・ユナイテッド 0-2 マンチェスター・シティ
オールド・トラフォード
【得点者】
Man City:7′ バイリー(OG), 45′ ベルナルド
主審:マイケル・オリバー

③ブレントフォード【12位】×ノリッジ【20位】

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■秋に到来するサンタクロース

 前節はバーンリーに今季初勝利をプレゼントしてしまったブレントフォード。今節も同じく未勝利のノリッジとの一戦となった。

 バーンリー相手にはフィジカルバトルを全面に押し出すスタイルの相性の悪さが如実に表れた印象だった。いわば、いつも通りのブレントフォードが見られなかったことが問題だった。

 だけども、この試合のブレントフォードはそもそもの自分たちのスタイルを押し出すことが出来なかったように思う。高い位置からのプレスでDFラインという弱みを隠すのが彼らのスタイルなのだが、プレスの勢いがいつもと比べると明らかにスケールダウン。簡単にノリッジに運ばせる場面が目立つ。

 攻撃においてもいつもとはテイストが異なる。WBが空きやすくそこまではボールを運べるものの、全体を押し上げるためのメカニズムがない。今までブレントフォードのWBがうまく攻撃に絡めたのはCFに一度当てて高い位置に進出してからボールを受けることができるからこそである。

 この試合のブレントフォードはそもそも2トップへの長いボールを当てることをしなかったため、ほとんどこの形を作ることができなかった。おそらくGKがラヤでなくなったのは一因だろう。糸を引くようなフィードがなくなったのは攻撃面において大きな損失である。

 それはそれとして気になるのはトニー。献身的な姿勢と競り合いをいとわない迫力はどこへやら。前半のトニーは無謀なタックルと生気を感じないパフォーマンスでまるで双子の弟がプレーしているかのようだった。

 一方、がけっぷちのノリッチはむしろ保持でのやり直しなどいつもだったらできないところまで精力的にチャレンジ。ブレントフォードとは対照的なパフォーマンスとなった。保持の局面で効いていたのは左のSBのウィリアムス。左サイドのボールの預けどころして機能。対5-3-2で時間を与えられるSBとしての役割を全うし、左サイドからの前進に貢献した。

 8分という開始間もなくだったノルマンのゴールはブレントフォードを押し込んでいる局面から。左サイドの突破からの跳ね返しをクリアミスしたのはここでもトニー。そのあとのボールに対する無関心さも非常に彼らしくないプレーである。

 ノリッジの追加点は十八番であるプッキの抜けだしから。ようやく得意な形が今季のスコアにつながった印象である。逆にブレントフォードは負傷交代したイェルゲンセンのところから、交代したグッドが試合に入れず失点につながってしまった。

 後半はトニーが自分が何者かであるかを思い出しブレントフォードが勢いを取り戻す。こちらも得意パターンであるファーへのクロスを多用しながらノリッジを押し込むように。まさしくファーへのクロスでヘンリーが一点を返したものの反撃もそこまで。

 前節に引き続き、未勝利勢に初勝利をプレゼントしたブレントフォード。ユニフォームの色も相まって季節外れのサンタのように下位勢に勝ち点を配ることとなってしまった。

試合結果
2021.11.6
プレミアリーグ 第11節
ブレントフォード 1-2 ノリッジ
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:60′ ヘンリー
NOR:6′ ノルマン, 29′(PK) プッキ
主審:ジャレット・ジレット

④チェルシー【1位】×バーンリー【18位】

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■一瞬のスイッチ切れが致命傷に

 序盤戦にきつい日程を消化しながらも首位に君臨するチェルシー。下位との取りこぼしをしたくない3連戦も第3ラウンド。3タテを狙う最後の一戦はホームのバーンリーとの試合である。

 試合は立ち上がりからチェルシーのペースだった。トランジッションからのスムーズな前方への運びで、チェルシーは序盤からバーンリーのゴールに攻め込んでいく。

 バーンリーの4-4-2のプレスに対して、チェルシーは大外から見事に回避。最終ラインの持ち運びからSHを引き付けると、大外のWBにボールを逃がし、そこから裏に出すことでバーンリーのDFラインを下げながらゴールに向かっていく。

 バーンリーはこれに対してSHが低い位置に入ることで5-3-2気味にバックラインを形成する。とりあえず埋めて5レーン的な攻撃に対して、スペースを空けないような形で受ける。チェルシーは自陣に引き込むようなボール回しで対抗。バーンリーの中盤を自陣方向に食いつかせるようなパスワークで最終ラインと中盤のライン間にギャップを生んでいく。

 こうなると、バーンリーの最終ラインが手前のスペースを埋めるか否か?というところの判断をしなければいけなくなってしまう。なので最終ラインで5ラインを埋めればOK!という状況にはならなくなる。

 さらにここまでのバーンリーの対応は全てチェルシーに対してラインを上げられるようなアプローチにはなっていない。2トップも起点にはなり切れず、陣地回復がままならない。チェルシーに対して一方的に攻められる状態が続く。

 そうなった時に最近のチェルシーで強みになるのはWBの存在である。5-3-2ブロックを攻略することにおいて特に重要なのは外から打ち抜ける大外の選手がいるか?という話である。例えばアレクサンダー=アーノルドとか。彼のような3ポイントシューターのような特殊技能者がいればブロック攻略はグッと楽になる。

 今季のチェルシーはWBはファイナルサードへの貢献が大きい。特にジェームズがこの役割を担うことが多い。この試合でもピンポイントクロスで得点を演出。前節の2得点に続き、ファイナルサードで光って見せた。アロンソもチルウェルも彼とはタイプが全く違うが、最後の局面で貢献できる選手。外から打ち抜くための武器が揃っているチームといえる。

 後半もチェルシーがペースをにぎる。バーンリーはプレスの積極性を上げて食って掛かってくるが、チェルシーにとってはこれを回避するのは朝飯前。大外を使いながらプレスを回避し主導権を渡さない。

 それだけにバーンリーの同点弾は青天の霹靂だった。この瞬間だけチェルシーの対応はスイッチが切れたかのよう。ホルダーへのチェックも、クロス対応も、ラインコントロールも怠慢で瞬間的にバーンリーに好き放題をさせてしまう。

 その後はバーンリーのブロック攻略に四苦八苦。引き分けでOKなバーンリーはチェルシーの選手の移動には目もくれず、ひたすらPA内で跳ね返し。スコアも内容も握っていたチェルシーが一瞬のスキを突かれてバーンリーにからめとられてしまうことに。チェルシーは下位とのリードを広げる貴重なチャンスをフイにしてしまった。

試合結果
2021.11.6
プレミアリーグ 第11節
チェルシー 1-1 バーンリー
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:33′ ハフェルツ
BUR:79′ ヴィドラ
主審:アンドレ・マリナー

⑤クリスタル・パレス【13位】×ウォルバーハンプトン【7位】

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■サイドに流れるギャラガーが今節も大車輪の活躍

 前節は10人のマンチェスター・シティ相手になんとか逃げ切ってみせたクリスタル・パレス。今季ここまで逃げ切り失敗を繰り返しているパレスだが、10人相手に2点差ならば逃げ切れることを証明してみせた。

 この試合は非常にソリッドな試合だった。両チームとも中央を固めたため、ゴールに向かうシーンはとても少なかった。特に苦労したのはアウェーのウルブス。ウルブスの前進にはCHが幅を使いながら相手陣に進撃するのがお決まりなのだが、この試合ではパレスのIHが高い位置からチェックをかけることで自由を阻害する。

 パレスはウルブスの保持に対して見事な割り切りだった。少しでも突破されそうになると、2人がかりでホルダーを押さえてファウルも辞さない覚悟で止めに行く。前線のパワーとスピードを活かして前進したいウルブスだったが、パレスの体を張った守備に苦戦する。

 ウルブスに比べればまだパレスの方が前進がスムーズだったか。最終ラインにはボールを持たせる決断をしたウルブスのプレスに対して、落ち着いてボールを持てる機会を確保。動き出しで特徴だったのは極端に右サイドに流れるギャラガー。相手のWBを引きつけつつ安全に一列目を超えるためにボールを引き出す動きを見せる。

 とはいえパレスの攻撃も特にうまくいっていたわけではない。前半はウルブスの守備も内側を固め、外に相手を追いやることでPA内に近づかせない。互いにゴールに近づくことすらできずに前半を終える。

 後半になり先制したのはホームのクリスタル・パレス。得点シーンで効いていたのはやはりギャラガーのボールを引き出す動き。ギャラガーがWBを引きつけるのと併せて、途中から右サイドに入ったエドゥアールが裏抜けを行うことで深さを作る。押し込んだところからサイドチェンジを行い、逆サイドまで展開したところでザハが華麗にフィニッシュ。追加点となった2点目はギャラガーが自ら決めており、ギャラガーはボールの引き出しにフィニッシュに大車輪の活躍をみせた。

 ウルブスは後半もパワーとスピードで打開策を模索し続けた印象だった。ヒメネスがサイドに流れ出したところでチャンスメイクが徐々にできるようにはなったが、スペースを見つけながら効率的に前進したパレスに比べるとやや内容が乏しかったか。

 前節に引き続き、2点差をつけて懸念の逃げ切りのミッションも問題なくこなしてみせたクリスタルパレス。勢いに乗る連勝でトップハーフを射程圏内にとらえた。

試合結果
2021.11.6
プレミアリーグ 第11節
クリスタル・パレス 2-0 ウォルバーハンプトン
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:61′ ザハ, 78′ ギャラガー
主審:グラハム・スコット

⑥ブライトン【8位】×ニューカッスル【19位】

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■『居残り組』相手に支配はしたが…

 23時台の試合でノリッジが勝利したことでプレミアリーグで唯一の未勝利チームとなってしまったニューカッスル。ピッチ外では景気がいい話題も聞こえ始めてきたものの、降格してしまえば元も子もないだろう。冬の移籍市場前にゲームセットとなるとどうしようもない。

 試合はブライトンの保持を中心に進む。アンカーのビスマを中心にIHのララーナが中盤に降りることで2センター気味に変形。ニューカッスルはブライトンの最終ラインに積極的なプレッシャーをかけることをしなかったし、ブライトンの保持という状況を動かそうという意思はニューカッスルには感じなかった。

 押し込んだ局面を作り出すのはそんなに難しい話ではない。バックラインの保持からニューカッスルのシャドーであるアルミロンやサン=マクシマンの2人を引っ張り出すと、同サイドを縦に進みながら前進することが可能になる。サイドの縦関係から押し込むとブライトンはPAまで攻め込むことができる。

 しかし、そこから先が難しいブライトン。エリア内を閉じるニューカッスルに対して0トップ気味で高さがないブライトンはここから先の決定打を見出すことができない。エリア内に入ったトロサールは厳重なマークに空いなかなか仕事をすることができない。

 対するニューカッスルも苦戦。カウンターの起点も作れず、反撃もできない。前節と同じくサン=マクシマンは徹底マークに遭い、カウンターから破壊力を出すことができない。ただ、ポゼッションの部分ではやや落ち着きがあった。ここはシェルビーの起用が一定の寄与を果たしたか。ピッチを大きく振ることである程度のボール保持はできていた。

 それでもゴールに迫る機会は圧倒的にブライトンに分がある。機会の数が差を生み出したか、狭いスペースで執念のPKを獲得したトロサールが貴重な先制点を得る。

 保持での局面を落ち着かせる力も含めてこのままブライトンの勝利で試合が終わるかと思いきや、試合はセットプレーからニューカッスルが追いつく。後半は前半と比べ、WBとCBとシャドーのトライアングルからサイドにおいてボールを運びながら機会を増やしたのは幾許かよかった。

 終盤はファウルの応酬となり荒れ気味な試合に。しかし、終盤のサンチェスの退場はラフプレーではなく高いラインの裏を取られたツケを払う決定機阻止である。GK退場でダンクがゴールマウスを守ることになったブライトンにとっては終盤を引き分けで終えることが精一杯だった。

試合結果
2021.11.6
プレミアリーグ 第11節
ブライトン 1-1 ニューカッスル
アメリカンエキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRI:24′ トロサール(PK)
NEW:66′ ヘイデン
主審:デビット・クーテ

⑦アーセナル【6位】×ワトフォード【16位】

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■幸運だけでは守りきれない

 レビューはこちら。

 最下位だった9月から足掛け2カ月。7試合負けなしで4位との勝ち点差は3。悲願であるチャンピオンズリーグ出場権を争えるところまで、アーセナルはようやく帰ってきた。上位を争うリバプールとの直接対決を次節に控えていることも考えると今節のワトフォード戦は絶対負けられない試合でもある。

 直近の試合では前半の早い時間から先制点を奪うことで先行逃げ切りに転じるスタイルが馴染んできたアーセナル。この試合でも開始早々にネットを揺らす。ボール奪取からエリア内までスムーズに進むパスを出したメイトランド=ナイルズのプレーから最後はサカが叩き込む。惜しくもオフサイドで取り消されてしまったが、アーセナルにとっては順調な滑り出しとなった。

 一方でワトフォードは相変わらず守備面での課題は際立つ。特に久しぶりの先発に復帰したローズは相変わらずの低調さ。対峙するとファウルを犯すか、簡単に裏を取られるの繰り返し。同サイドの冨安がオーバーラップしなくてもデニスはサカのフォローのために自陣に下がっていた。

 ラカゼットへのファウルも軽率そのもの。ゴールに向かっていない選手に対して、わざわざしなくてはいけないチャレンジではないだろう。先のオフサイドの場面しかり、この場面で得たPKを決められなかったオーバメヤンが本来の調子ならば、試合は前半に決していてもおかしくなかった。

 それでもこじあける強さがあるのが今のアーセナル。後半に重心を上げて一気に畳みかけに行くと、試合を決めたのは新10番のスミス・ロウ。リーグ戦3試合連続のゴールは連勝を重ねる原動力となる決勝点となった。

 終盤、受けに回ったアーセナルはやや危うさこそあったものの、逃げ切りに成功。ファンにとっては嬉しい若武者の躍動と、新戦力がすっかり柱として君臨する守備ユニットの活躍でいよいよ次節はアンフィールドに乗り込むチャレンジに臨むこととなる。

試合結果
2021.11.7
プレミアリーグ 第11節
アーセナル 1-0 ワトフォード
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:56′ スミス・ロウ
主審:ケビン・フレンド

⑧エバートン【10位】×トッテナム【9位】

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■続く試行錯誤の苦労

 コンテを迎えて初めてのリーグ戦となったトッテナム。ミッドウィークのカンファレンスリーグでは就任後の初陣を勝利したが、リーグ戦でも同じように結果を残せるか。

 エバートンは中盤の間伸びが目立っていることで失点が嵩んでいるチーム。この試合では4-3-3を採用しつつ、間伸びの主要因になりやすいIHの飛び出しを抑制しつつ戦っている。必死に手綱を握りしめながら間伸びしないように慎重に慎重に戦っているように見えた。

 そんな試行錯誤中のエバートンを相手に回して、3バックのトッテナムは保持に時間をかけるとどうしても前進が難しい。特に中盤と前線のライン間での選択肢が非常に気になった。トッテナムが保持、エバートンが非保持の局面においてはうまく試合を落ち着かせていたと言っていい部分である。

 早い攻撃においてもトッテナムはなかなか光を見いだせない。特にケインはちょっと周りを使う余裕がなくなっていたように見える。前線がタメながら、周りを使う!みたいなシーンはチーム全体で少なく、カウンターから得た時間の貯蓄を浪費しながらゴールに向かい、使い切ってしまったらどん詰まりというのがトッテナムの攻撃の主なパターン。トッテナムはエバートンをずらしながら前進していく、時間の貯蓄を作り出していくようなポゼッションはまだできていない。

 トランジッション局面においても、ファウルによって止めるシーンが目立つトッテナム。ただ、エバートンも遅攻になると解決策が見いだせない。リトリート時は5-4-1になるトッテナムの守備陣に対してサイドを回してのクロスしか選択肢がなく、簡単に跳ね返されるシーンもしばしば。カットインできるグレイが唯一試合を動かせる可能性がある選手だった。

 トッテナムの攻撃で効いていたのは両WBがオーバーラップする場面。時間のタメを両WBに送り込むことができたシーンはチャンスになっている。オーバーラップに関してはレギロンは比較的脅威になっていたが、エメルソンはまだ上がるタイミングが遅く、高い位置を取る前に時間の貯金を使い切ってしまう場面が多かった。それプラスチームとしてWBに時間を送り込める場面が少なかったという問題も乗ってくる形。

 後半になっても両チームはゴールに迫る場面を作れず。トッテナムはアタッカーを下げる慎重な判断になった分、前への推進力が削がれてしまい前半以上にゴールに迫れるシーンは減った。終盤のポストにミドルが直撃したシーンくらいだろうか。

 エバートンはアランをアンカーに据える交代が功を奏し、裏へのパスからあわやPKという場面を作り出すが、これはOFRでの判定変更でノーファウルに。その後はこちらも比較的守備的な交代カードに終始し、その上交代で入ったホルゲイトが一発退場というあまりいい終盤を過ごすことはできなかった。

 監督交代の有無によらず試行錯誤中の両チーム。その苦悩を感じることができるスコアレスドローだった。

試合結果
2021.11.7
プレミアリーグ 第11節
エバートン 0-0 トッテナム
グディソン・パーク
主審:クリス・カバナフ

⑨リーズ【17位】×レスター【11位】

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■『わずか』2点のスリリングさ

 今季ここまでは4-1-2−3と3-3-3-1を併用している今季のリーズ。しかし、この試合のリーズはおそらくフォーショーとフィリップスの2センター気味の4-2-3-1に見えた。あまり相手に合わせるイメージがないチームではあるが、4-2-3-1の方が相手の逆三角形型の陣形に攻守のトランジッションにおいてスムーズに変化できると考えたのかもしれない。

 ボールを保持するのはリーズの方。大きな展開からSBの追い越しの形でチャンスを作る。トップ下のロドリゴもそこに加わる形で得意のパターンで前進していく。

 レスターは中盤だけはマンマーク気味に対抗。バックラインには無理にプレッシャーをかけることはなかったが、中盤だけ枚数を合わせることでショートパスからの前進は許さなかった。

 ボールを奪った後はレスターは早い攻撃を主体で前進を狙う。仕組みの上ではリーズの方がうまく前進できている感じはあったが、中盤のデュエルで優勢だったのはレスター。リーズのマンマークに対してのターンやドリブル突破でリーズの陣内に迫っていく。

 図面上はリーズが、局地戦ではレスターが優勢となっている試合。動的な側面が強い展開だったが、先制点は止まっているボールを蹴るプレースキックの局面から。ラフィーニャがファーにグラウンダー性の早いボールを沈めリーズが先制する。

 しかし、反撃はすぐさま。リスタートからこちらは早い流れに乗るような形での同点弾であった。バーンズの得点はスーパー。今季ここまでコンディション上昇の兆しが見られなかったバーンズだが、アーセナル戦の途中出場から徐々に調子を上げてきたよう。結果を出した意義は非常に大きい。

 後半、レスターが守備時のテンポを上げたことで試合は非常にオープンに。両チームともチャンスの量とゴール前でのシーンが爆発的に増えていったが、両チームとも肝心なシュートの精度を欠き、追加点には至らない。リーズはハリソンが決定機を逸すると、レスターはルックマンが足一歩分のオフサイドでゴールを認定されず。観客は歓声とため息が行き来する試合となった。

 終盤、交代選手が活性化できなかったのは、両チームにとっては痛かったか。特に選手層の部分で勝るレスターが解決策を見出せなかったのは心配。5-2-3にシフトする必然性はそこまで見えなかったので、4-2-3-1の維持は現状のメンバーでは難しいということなのだろうか。

 試合はタイスコアで終了。わずか2点しか入らなかったとは思えないくらいスリリングな展開はお互いに勝ち点を分け合う結果で幕を閉じた。

試合結果
2021.11.7
プレミアリーグ 第11節
リーズ 1-1 レスター
エランド・ロード
【得点者】
LEE:26′ ラフィーニャ
LEI:28′ バーンズ
主審:ダレン・イングランド

⑩ウェストハム【4位】×リバプール【2位】

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■フォルナルスの味変でトランジッション勝負を制する

 代表ウィーク前のトリを飾るのは上位対決となったウェストハム×リバプール。今節屈指の上位対決である。

 試合の内容を見てみても上位対決という看板に恥ずかしくないハイレベルな一戦となった。立ち上がりのウェストハムの4-5ブロックを見れば、リバプールにとってこの試合が簡単なものではないということはすぐに飲み込めたはずである。

 ウェストハムの4-5ブロックは大外を開けてでも中央をプロテクトすることを優先する。大外を明け渡す代わりに、ブロックの横方向へのスライドが少ないので自分達の決まった立ち位置で守れるのが強み。セットプレーから先制点をとったならばなおさら。固さに磨きがかかりリバプールは苦労する。

 ウェストハムは多少自陣に引いたとしてもカウンターという武器がある。SBの裏のスペースを軸にアントニオ×ファン・ダイクという怪獣大戦争のようなマッチアップからウェストハムはチャンスを見出そうとする。だが、そこは流石にリバプール。オープンな形でのCB+ファビーニョで守ることは非常に慣れているという感じで、最後のところで防ぐことができていた印象だ。

 ただ、先手を取られてしまったので攻め込まないといけないリバプール。ラインを上げ下げさせるようなサイドからのクロスやナローなスペースへの縦パスで何とか糸口を見出そうとしている。

 そんなアプローチが奏功したのは前半終了間際。狭いスペースへの縦パスからファウルを得ると、これを直接沈めたのがアレクサンダー=アーノルド。ハーフタイムまでに同点に追いつく。

 後半、リバプールはテンポアップしてトランジッションの強度を上げることで敵陣に侵入を試みる。しかしながら、ライスとソーチェクのセンターラインが非常に強固で、リバプールはここから跳ね返されてしまう。

 後半のウェストハムで際立っていたのがフォルナルス。早い展開の中でライン間でボールを引き取り、長いアントニオへのボールとは異なる切り口での前進でアクセントを加える。

 フォルナルスはショートカウンターから2点目を奪うと、3点目のきっかけとなるコーナーキックにつながるカウンターも起点になる。トランジッション増し増しで勝負をかけてきたリバプールを返り討ちにした主人公はフォルナルスであった。

 リバプールはこの試合においてセットプレーから2失点。上位対決においては当然これは致命傷になりうる。攻撃陣を逐次投入し、オリギがらしさを感じるアクロバティックな得点を決めるも3点目までは至らず。内容の伴う好ゲームを制したのはホームのウェストハム。直接対決で下したリバプールに代わり、3位浮上。CL出場権争いに本格名乗りを上げる勝利となった。

試合結果
2021.11.7
プレミアリーグ 第11節
ウェストハム 3-2 リバプール
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:4′ アリソン(OG), 67′ フォルナルス, 74′ ズマ
LIV:41′ アレクサンダー=アーノルド, 83′ オリギ
主審:クレイグ・ポーソン

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