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「グループHの主導権は死守」~2021.10.20 UEFA Champions League GS 第3節 ゼニト×ユベントス レビュー

スタメンはこちら。

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目次

レビュー

■外からは押し下げられるけど

 チェルシーに勝利を挙げて、グループHの首位に立ったユベントス。ただし、ここからチェルシーはマルメとの連戦。おそらくここはチェルシーの連勝が予想されるはずで、ユベントスはゼニトとの戦いでポイントを落としてしまうと再びグループ首位の座を奪われかねない。

 というわけで現状第3勢力のゼニトをきっちり叩き、グループ突破をより確実なものにしつつ、首位通過を視野に入れることがここ2戦を連勝で乗り切りたいところである。

 試合はどちらかといえばユベントスの保持の時間が多かった。ユベントスのボール保持は3バックに移行。片側のSBが大外の高い位置に入り、逆サイドのSBは絞りながらの3バックを形成する。オーバーラップするSBは左のサンドロが主流。したがって逆サイドはベルナルデスキが大外を取ることが多かった。

 SBがオーバーラップするのが左サイドの方が多いということもあり、攻め気はどちらかといえば左サイドの方が強かったユベントス。逆サイドのデ・シリオもオーバーラップしないわけではないが、機会は少なめ。WGのキャラクターを見ても、低い位置まで降りてくる右のベルナルデスキに対して、左のキエーザは同サイドのSBが高い位置を取らなくてもバランスを取ろうとする機会は比較的少なかった。

 ゼニトのプレスは積極的な顔とリトリートを使い分けていた。前節のマルメ戦では攻撃的なタレントを非常に多く並べ、3-1-5-1のようになっている形が際立っていたが、その日に比べればこの日のメンバーは攻撃色は控えめ。クズヤエフに比べれば、バリオスの方が普通の中盤CHとしての計算は立つだろう。

 ただ、前にプレスに出て行こうとするときの構造は同じ。CHは縦関係になり、バリオスが刈りながら、ウェンデルがそのカバーに回るという形で前から圧力をかけるプレスを行う。

 したがって、ゼニトとしては高い位置から刈り取ってやろう!というバリオスが早い段階で警告を受けてしまったのは痛かったはずである。前線3枚だけで取り切る感じもしなかったゼニトは徐々に非保持で撤退のフェーズを増やしながら、受ける場面が増えるようになった。

 ボールは落ち着いて持てるようになったユベントス。サイドに流れながらボールを前に運ぶという段階は問題なくできるものの、あまりゼニトを困らせている感じはしない。

 おそらく、これはユベントスの中盤の存在感が希薄だからという部分が大きいのではないか。ベンタンクール、ロカテッリ、マケニーの3人は出来がとても悪いということではないんだろうけど、ゼニトのブロックを壊すようなチャレンジはあまり多くなく、ゼニトのブロックの外側でボールを動かしながら押し込む時間が続いていくことになった。

 大外から貫ければそれでも問題ないのだけど、この日は個で勝負できるキエーザの存在感もイマイチで、ユベントスは大外からもゼニトにヒビを入れることができなかった。

■58分トリオが押し返しのキー

 一方のユベントスの非保持はIHが3バックの両脇にプレスに行きながら変形する形である。攻撃の時もポイントになるのはCH。ゼニトはシャドーのクラウジーニョとマルコムが前を向ければそれでOKなのだけども、やはりユベントスとしてはDF-MF間を締めてくるので、ここで簡単に前を向けるということがあまりない。

 そのため、ここでも行動範囲が広いCHが掻き乱しにいく。例えば、5分のシーンのようにCHがサイドに流れながらシャドーが降りるスペースを提供するようなポジション交換とか。

 ゼニトのCHはボールを持ちながらどうこうというよりはオフザボールの動きの多さの方が効いているように見えた。なので、逆に自陣に押し込まれてしまい、CHの動きが取れない時は苦しい。先ほど、ユベントスの攻撃に対してゼニトがラインを下げて対応したと書いた。確かに比較的問題なくブロックを組みながらユベントスの攻撃を跳ね返すことはできていたが、押し下げられたら押し下げられたで前進する手段に苦しんでいたのは事実。

 一応ターゲットマンとしてジューバという的がいるはいるのだけど、彼は競り合いには勝てる一方でボールをキープしながら味方の攻め上がりを待てるようなタイプではない。なのでジューバを生かすためにはより敵陣に近い位置で放り込む状況を作りたい。

    だけども、自陣深い位置のゼニトにはそこまで至る手段がない。したがって、ユベントスがこじ開けられない状況に苦しむのと同じようにゼニトも自陣から脱出できない状況に困っていたように見えた。

 後半はゼニトが大きな展開を駆使しながら陣地回復の方法を見出す。最終ラインからWBを使った対角のパスを増やし、ユベントスの陣形を横に広げていく形。先ほど述べた通りユベントスはIHが前に出てくることでプレスに出てくるので、プレス時はそこまで中盤に人数を揃えられているわけではない。

 加えて、ゼニトのCHは行動範囲勝負。早い展開は比較的得意である。対角のパスとサポートに入るMFのコンビネーションで徐々にゼニトが前に出ていく機会を得ることができるようになる。

 しかし、ユベントスも選手交代で応戦。58分の3枚替えが流れを変えるのに効いていた印象。中盤に入ったアルトゥールのおかげで中央への縦パスというバリエーションがユベントスに加わった。ボールを受けてからの突破はもちろん、オフザボールのスキルも高いクアドラードが斜めの走り込みをアクセントにサイド攻撃を活性化する。

 再び押し込む機会が多くなったユベントス。すると試合終盤に先制点。押し込んだ状態で左サイドからクロスを上げて、これに合わせたのはクルゼフスキ。58分に交代投入された3人目の選手が決定的な働きを果たし試合を決める。

 ダメージが大きかったのだろうか、流石に先制点を喰らった段階で動けなくなってしまったゼニト。ユベントスが終盤の得点でノックアウトし、グループHの首位を堅持した試合となった。

あとがき

■圧倒的ではないけど倒しにくい

 正直、現状ではどんな相手でも勝てる!という感じはしないんだけど、チェルシーもゼニトもブロック守備で絡め取ってしまったユベントス。何点でも取れる感じはしないけど結局どちらの試合でも解決策を見出してしまった。この試合はあまりキエーザが試合を決めるイメージが湧きにくいパフォーマンスだったので、どうするんだろう?と思ったけど、押し込む状態から実直にチャンスを待ち続けた。

 こうなるとアッレグリっぽいチームになってきたなという印象を持つ。リーグ戦もなるべく見るようにしているが、現状ではまだ掴みどころがないチーム。派手ではないが、倒しにくいチームになるための試行錯誤を着々と積んでいるようには見えるのでリーグとCLを追いながらどこに向かうのを探っていきたいところだ。

試合結果
2021.10.20
UEFAチャンピオンズリーグ
Group H 第3節
ゼニト 0-1 ユベントス
ガスプロム・アリーナ
【得点者】
JUV:86′ クルゼフスキ
主審:サンドロ・シェーラー

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