MENU
カテゴリー

「Catch up Premier League」~Match week 10~ 2021.10.30-11.1

目次

①レスター【9位】×アーセナル【10位】

画像4

■VSかつての自分たち

 レビューはこちら。

 序盤戦の不振から脱し、徐々に勝利を積み重ね始めた両チーム。ついにはトップハーフに復帰し、今節は直接対決である。

 立ち上がりから主導権を握ったのはアウェイのアーセナル。前節に引き続き今節も保持で相手を動かすことに成功。安定したポゼッションで相手のプレスを外しながら敵陣に迫る動きを見せる。

 特に効いていたのは2試合連続のスタメンとなったラカゼット。レスターの中盤の裏で受ける役割をこなすことで同サイドのサカを押し上げることに成功。若手アタッカーのお膳立て役として十分な役割を果たす。

 アーセナルはこの右サイドの1on1でレスターのラインを揺さぶる。サカとL・トーマスの1対1はアーセナルに軍配。サカが押し下げたラインのおかげでバイタルに他のアタッカーが飛び込むスペースが出来る。得点シーンでここに飛び込んだのはラカゼットとスミス・ロウだった。理想的なボール運びと互いにスペースを供給し合うアーセナルのアタッカ―陣の連携でセットプレーの先制点に続く追加点を手にする。アーセナルは順調な立ち上がりでレスターを突き放す。

 レスターは重心を下げすぎてしまい、なかなかボールを危険な場所に運ぶことが出来ない。マディソンやティーレマンスが低い位置まで下りてきてしまうのがその一因。後ろばかり重くなり、保持は出来るけど前進できない様子はまるで悪い時のアーセナルを見ているかのようだった。

 ただ、アーセナルもそのレスターに甘えて重心を下げすぎてしまうように。すると修正したレスターが徐々にライン間にボールを運べるようになってくる。主導権は前半途中からレスターに移ることになる。

 後半はレスターが4-2-3-1に変更。サイド攻撃という前半にはなかった切り口でアーセナルを攻め立てる。中でもバーンズは復調の兆し。独りよがりの突破にこだわるのではなく、周りを使ったプレーを徐々に見せることでアーセナルが怪しい縦の守備の連携を突く。

 左右からの無限ハーフスペース裏抜けに苦しむアーセナルだったが、ガブリエウとラムズデールを軸とした堅守に助けられると、苦しい時間を0でしのぐ。

 オフザボールの動きが落ちてくると共にゴールに迫れなくなってくるレスター。終盤はややアーセナルが押し返したところでタイムアップ。序盤の貯金を活かして逃げ切ったアーセナルがさらなる上を目指すための連勝を飾った。

試合結果
2021.10.30
プレミアリーグ 第10節
レスター 0-2 アーセナル
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
ARS:5′ マガリャンイス, 18′ スミス・ロウ
主審:マイケル・オリバー

②バーンリー【18位】×ブレントフォード【12位】

画像5

■相性の良さ×前線の質で圧倒

 端的にいえば今季未勝利で低迷中のバーンリーが、台風の目としてプレミアリーグを席捲中のブレントフォードをボコボコにした試合である。

 これまでのブレントフォードはチェルシーやリバプールを相手に回した試合ですら内容面で健闘することが多かったのだが、この試合の内容はぶっちぎりで今季ワーストといってよかった。

 大きな要因として挙げられるのはブレントフォードの特性がバーンリーに対して相性が非常に悪かったことだろう。まず、彼らの大原則はサイドからファーのクロスに競り勝ち、折り返したボールをエリア内になだれ込んだFWやIHが仕留めるというものである。

 しかし、バーンリー相手にはこの『サイドのクロスで競り勝つ』という大前提があてはまらない。ブレントフォードのクロスは目の前に相手がいても上げられるフライ性のクロスであることが多い。大外で競り勝てるという設計のもと蹴っているので、ほとんどはエリア内でクロスを上げた段階でOKである。

 だけど、クロスの跳ね返しに長けているバーンリーはSBが競り負けなかったり、CBがスライドして(滞空時間の長いクロスの弊害である)対応できる場面が多く、彼らが前提としていたファーでの競り合いの勝利が得られなかったのである。リズムのつかめないブレントフォードはサイドでクロスを上げるまでの過程でパスを引っ掛けることもしばしば。流れに乗れない状況が続く。

 バーンリーが優位に立ったのは攻撃面でも同じ。前線の3-2の密集をものともせず、マクニールなどのロングキックがうまい選手を軸に逆サイドに脱出する。そこからはダイレクトに裏のウッドに出して最終ラインとの勝負となる。

 ブレントフォードが最も嫌なのはFW-DFの直接対決であり、それを避けたいために前からのプレスをかけている部分もある。迷わず大きな展開に逃すというバーンリーの方針もまた、ブレントフォードにとっては相性の悪いものだった。

 加えて、加入以降調子を上げているウッドの相棒のコルネも相変わらず好調。ラインにぴったりくっつき、ウッドの作ったスペースに入り込み、長いレンジのシュートを正確に打ち込む。これができるコルネが前線に定着したことでバーンリーの得点力はいくばくか上がっている。

 攻守の相性が完全にかみ合ったバーンリー。ストライカー陣の好調さも手伝って、今季の初勝利はここまでの悪い流れを吹き飛ばすきっかけになってもおかしくないくらいの完勝だった。

試合結果
2021.10.30
プレミアリーグ 第10節
バーンリー 3-1 ブレントフォード
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:4‘ ウッド, 32’ ロートン, 36‘ コルネ
BRE:79’ ゴドス
主審:ジョナサン・モス

③リバプール【2位】×ブライトン【5位】

画像1

■隙を見つけアンフィールドからグレートエスケープ

 前節はマンチェスター・シティに格の違いを見せつけられたブライトン。しかし、まだ上位陣同士のチャレンジ期間は始まったばかり。今節の相手はアンフィールドのリバプールである。

 しかし、ブライトンは今節も開始直後から上位陣の厳しさを教えられる。大きな展開からサラー×ククレジャのマッチアップから深さを作られてしまうと、ヘンダーソンが仕留めて早々にあっさり先制する。

 だが、ブライトンも負けてはいない。ライン間の管理が厳重とは言えないリバプールに対して、縦パスを入れて前進することは十分可能だった。トロサールの偽9番の動きに2列目の選手たちは動きながら飛び出し続けたのは頼もしかった。

   非保持においてもビスマがスタメンに復帰したことで、中盤のマンマークへのトライは復活。リバプールを高い位置から捕まえにいくアプローチで、ビルドアップの阻害に挑む。

 ブライトンにとって厄介だったのはマネ。マンマークで中盤をハメ切っても彼が降りてきて、1人で運んでしまうのでブライトンの前へベクトルを向けたプレスが台無しである。

 もう1人、ブライトンにとって厄介だったのは途中交代のオックスレイド=チェンバレン。前半途中からブライトンは4-4-2気味にプレスをかける頻度が増えた上に、リバプールの強力な右サイドに対抗するために、自陣の左サイドであるモデルを下げながら5バック気味に変形する。

 オックスレイド=チェンバレンはその手前の位置に顔を出してボールを運ぶことで、ククレジャやモデルの手の届かない場所でプレー。2点目は非常に見事。大外のサラーへ出す可能性を残しつつ、ピンポイントにマネにあげたクロスにはダフィーは逆を取られた形で対応できなかった。少なくともリバプールの保持局面ではブライトンにとってめんどくさい存在であった。

 しかしながら、前半終了間際にブライトンは反撃。内外コースを作りながら、狙いを絞らせない中で縦に入れる彼ららしいポゼッションからリバプールを押し込むとムウェブがスーパーゴールを叩き込む。

 後半もブライトンの反撃ムードが止まらない。人を捕まえるプレスを強化し、リバプールのプレスを再度高い位置で捕まえるトライを行う。これだけ強気でプレスに迎えるのはやはりスタメン復帰したビスマの存在が大きいだろう。多少、捕まえきれなくても後方でカバーできる彼がいれば、積極的に前向きの守備をすることができる。14分のシュートのパンチ力と、持ち運び方などブライトンにおいては別格の存在であることが再確認できた。

 アタッキングサードにおける武器はトロサールに合わせてのオフザボールの抜け出し。再三繰り返したこの形からブライトンは同点。ブーストをかけた甲斐があり、なんとかリバプールとタイスコアに持ち込むことができた。

 リバプールは60分を過ぎるとボールを運べる機会が徐々に増えていったが、アタッキングサードにおけるボールを引き出す動きが低下し、相手陣での動きが鈍くなってしまう。

 後半に入ったジョッタ、南野という2枚の交代選手もいずれも不発。ブライトンのプレスを宥めたのは同点後。リバプールはもう一度ギアを入れ直さないといけないが、終盤にかけてエリア内のチャンスを再度増やすところまではなかなか至らず。むしろ、ランプティ投入で勢いに乗るブライトンに押される場面もあった。

 快勝のいい流れを継続したかったリバプールと大敗の悪い流れを切りたかったブライトン。アンフィールドでの一戦はともに勝ち点を分け合う結果となった。

試合結果
2021.10.30
プレミアリーグ 第10節
リバプール 2-2 ブライトン
アンフィールド
【得点者】
LIV:4′ ヘンダーソン, 24′ マネ
BRI:41′ ムウェプ, 65′ トロサール
主審:マイク・ディーン

④マンチェスター・シティ【3位】×クリスタル・パレス【15位】

画像8

デザート付きのフルコースで悪癖解消の大金星

 立ち上がりはいつも通りだったように思う。パレスの最終ラインに対して、シティは積極的にプレスをかけていた。デ・ブライネがIHの位置から一列前に移動する形で2トップに変形するスタイルもいつもと同じ。だけども、この試合はいつも通りにはいかなかった。

 まず、いつもと違ったのはIHからのプレスから得点という成果を得たのがシティではなくパレスだったということ。ギャラガーのスライドで出すところに詰まったラポルテのロストからザハがカウンターを仕留めて先制点を決める。相変わらずエデルソンの寄せが早かったため、難易度は意外と高かったように思うが、不思議な回転のシュートを決めてみせた。やはりザハである。

 シティは保持からサイドを崩そうと試みるが、裏抜けの動きで相手を置いていけず、トライアングルから相手の守備のギャップをつくれない。パレスは押し込まれてサンドバックの状態が長かったものの、最終ラインが動かされないことに加えてアンカーのクヤテがPA内に入り込んで跳ね返しに参加したため守備の人数も十分。シティ目線からすると、サイドを変える過程でいつもより手間取る機会が多かったのも誤算だっただろう。

 ただし、シティに得点機会がなかったわけではない。一番チャンスになりそうだったのはセットプレー。今季のパレスはチームとして完成度が高まりつつあるけども、セットプレーの守備だけはビタイチ変わる気配がない。とにかく相手に触られまくるため、セットプレーの印象がないシティさえチャンスを作ることができていた。

 押し込み続けていればそのうち!と思っていた矢先に再び仕事をしたのはザハ。キープからの抜け出しでラポルテを決定機阻止の一発退場に追い込む。ついでに挑発からの乱闘まで引き起こして、まさしくザハのフルコースである。

 10人で後半に臨んだシティはベルナルドの広い行動範囲を生かしながら人数不足を補う動き。なおプレス意欲がまだまだあったパレスは中盤の前への意識が強い分、ライン間が開きやすくシティは早い攻撃から敵陣に迫る機会が増えるようになる。ジェズスのゴールが取り消された場面はあわやであった。

 パレスがリスクを承知で追加点を狙いにいったのは、1点のリードではここ数試合続く終盤での失点で勝ち点を失う悪い流れがよぎると考えたからだろう。それが結実したのが88分。オリーズ、ザハのキープから攻め上がったギャラガーが追加点を叩き込む。シティ相手に90分駆け回った後に中盤が攻め上がれるだけで只者ではない感があるのだけど、ゴールまで叩き込んでしまうのだから、やはりこの男も流石である。

 ザハのフルコースから、ギャラガーにデザートまでつけられてしまったシティ。退場者が出たという情状酌量の余地はあるとは言え、ズルズルと上位陣に離される手痛い1敗となった。

試合結果
2021.10.30
プレミアリーグ 第10節
マンチェスター・シティ 0-2 クリスタル・パレス
エティハド・スタジアム
【得点者】
CRY:6′ ザハ, 88′ ギャラガー
主審:アンドレ・マリナー

⑤ニューカッスル【19位】×チェルシー【1位】

画像6

■堅いならブロックごと撃ち抜く

 ニューカッスル×チェルシーというカードを見た段階から想像した通りの展開になったといっていい内容だった。当然、チェルシーがニューカッスルの5-3-2攻略に挑み続けるという形である。

 当たり前のように時間を与えてもらうチェルシーのCB陣。ニューカッスルのプレス隊は彼らには目もくれずチェルシーの中盤を消すことを優先にまずは動いている様子だった。破壊のきっかけになりそうだったのはまずはカンテ。ゾーンの切れ目に顔を出し、誰も届かないところからボールを受けてそこから運んでいくスキルは絶品である。

 ただ、内側を囲むニューカッスルもさすがに簡単に決定機は渡さない。わかりやすくマッチアップで優勢を取れるルカクやヴェルナーや、可変性をもたらすことが出来るマウントの不在によりちょっとブロック崩しのアクセントが少なかったように見える。

 左サイドの縦関係はその中でも効果的なポイントの1つ。止まりつつ相手をピン留めできるハドソン=オドイと彼の外側を追い越すように回るチルウェルの関係によりニューカッスルは抉られる機会が徐々に出てくるようになった。

 ただ、それよりもチェルシーが上手だったのはニューカッスルのカウンター対応だ。深い位置に押し下げられてもニューカッスルに得点のチャンスがあるのはサン=マクシマンというロングカウンターの名手がいるから。

 チェルシーはそのサン=マクシマンを複数人でサイドに追いやるように囲むのがうまかった。たとえ複数人でもスピードに乗った状態で360度が確保できる状況だとサン=マクシマンなら突破してしまう可能性は十分にある。しっかりと封じ込めることが出来たのは封じ込め方をちゃんと理解していたからである。

 後半になると中央への縦パスからのポストでのミドルという形でより攻勢を強めるチェルシー。押し込む機会を増やすと、左サイドのハドソン=オドイの抉る動きから最後は逆サイドのジェームズ。ラインを下げることによって外から打ち抜ける射程圏内に持って行ったチェルシー。ブロックごと外からミドルで壊すことで先制点を得てみせた。ニューカッスルはちょうどハドソン=オドイのサイドのIHをフレイザーからアルミロンにスイッチしようとしていたところ。わずかだが、ここの手当てが間に合わなかった。

 ここからは完全に試合はチェルシーペース。カウンターから再びジェームズが追加点をとると、ハフェルツが完璧な抜け出しからPKをゲット。先制点までには時間がかかったが、ブロック破壊もカウンター対応にもバッチリ回答を用意してきたチェルシー。ノリッジ戦に続き、下位をきっちり叩くことで後続との差を広げることに成功した。

試合結果
2021.10.30
プレミアリーグ 第10節
ニューカッスル 0-3 チェルシー
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
CHE:65‘ 77’ ジェームズ, 81‘(PK) ジョルジーニョ
主審:ポール・ティアニー

⑥ワトフォード【14位】×サウサンプトン【16位】

画像7

■ガラ空きのハーフスペースから生まれたスーパーゴール

 悪くない内容ながらも結果が出てこないサウサンプトン。今節はきっちり内容にひっぱられて監督解任まで引き起こしてしまったワトフォードとの一戦だ。こちらは名修繕工のラニエリの元で、5失点の大敗と5得点の大勝というド派手なリスタートを決めているところである。

 立ち上がりから保持で時間を作ることが出来たのはサウサンプトンだった。チェルシー戦での一発退場による出場停止がようやく明けたウォード=プラウズの復帰はサウサンプトンにとって特大の朗報。中央のポゼッションはCBとCHの4枚で安定するし、それによりSBが高い位置を取ることもできる。保持の局面だけ見てもこれだけのメリットがある復帰である。

 特にSBが高い位置を取れるメリットはこの試合においては非常に大きかった。ワトフォードの4-4ブロックはハーフスペースを塞ぐのが苦手でどうしても脇が甘くなりがち。絞るSHと高い位置を取るSBのセットで十分に攻略が出来る。

 とりわけワトフォードが困らされたのは絞るレドモンドと高い位置を取るウォーカー=ピータースがいるサウサンプトンの左サイドのコンビ。内外をこの2人で占有するとどうしてもワトフォードは後手を踏むことになる。

 先制点もこのスペースから。左のハーフスペースで受けたアダムスがそのまま反転してスーパーシュートを決めてみせる。決めたのはアダムスを褒めるしかないが、再三このスペースで前を向かせるという構造を許していたのはワトフォードの落ち度である。

 両SBが高い位置を取ってナンボ!というサウサンプトンに対して、ワトフォードに反撃の手立てがないわけではなかった。とりあえずWGへのロングボールという割り切りは気持ちいいくらい。そして、おそらくそれが最もゴールに近いルートなのはエバートン戦を考えても明らか。とにかくWGの裏抜けで勝負を行う。

 後半頭のやたら速い展開はリードしているサウサンプトンにとってはありがたくなかったはず。両チームに平等にチャンスがあった時間帯だし、ワトフォードにも得点の機会はあった。保持で落ち着かせることができるとしたらサウサンプトンの方だったが、それができなかった。

 後半のワトフォードは4-5-1にシステム変更。てっきりハーフスペースを埋めるのかと思ったら全然そんな気配はなし。多分、エルナンデスやサール、セマやデニスといったWG陣に非保持で重めのタスクを与えるのがはばかられるのだと思う。CHに入ったクレバリーはむしろアバウトなロングボールに対してセカンドボールを拾う役割を担っているとみるべきだ。

 アバウトな展開を越えて70分以降はサウサンプトンはボールの保持を強める。このまま試合は終わるかと思った終盤にワトフォードに決定機。だが、ヒーローになりかけたフレッチャーのシュートをマッカーサーがすんでのところで防いで勝負あり。

 昇格組に格の差を見せたサウサンプトン。ウォード=プラウズの復帰など徐々に復調の気配が漂っている。

試合結果
2021.10.30
プレミアリーグ 第10節
ワトフォード 0-1 サウサンプトン
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
SOU:20’ アダムス
主審:ピーター・バンクス

⑦トッテナム【6位】×マンチェスター・ユナイテッド【7位】

画像2

■より悪い方が負けた

 リバプールに歴史的な大敗を喫し、窮地に追い込まれたスールシャール。ひとまずは様子見と言った様相だが、次の代表ウィークまでの成績次第では再度進退の危機に晒されることになる。一方のトッテナムもインパクトとしては地味ながらウェストハムになかなか厳しい内容の敗戦を喫している。こちらも連敗は避けたいところである。

 ユナイテッドは5-3-2のフォーメーションでトッテナムを迎え撃つ。フレッジとブルーノ・フェルナンデスを同じ高さで並べるというちょっと変わった形で守っていることからもわかるとおり、相手の守備位置に合わせて人にぶつける形でこの試合に臨む。ぐちゃぐちゃにされた前節のリカバリーとしてまずは人への意識を強くシンプルにというユナイテッドの守備であった。

 トッテナムはこれに対してCHが低い位置に下がったりサイドに流れたりなどどこまでついてくるかを試すように。2列目で言えばソンも同じような動きを行う。ただ、今のトッテナムはケインに全体を押し上げることが期待できないため、後ろに重たい動きをした時に陣地回復が厳しくなる。そうなると、結局ソンへの裏狙いの一発が主流に。どうしてもこれだとチャンスがニッチになってしまう。トッテナムは前半からまともに敵陣を脅かすことができなかった。

 トッテナムは守備でも苦戦。今までは中央を固めた結果、サイドが薄くなった!という感じだったけど、今節はただ4-2-3-1に並んだままホルダーを放置しつつ、ズルズル下がるという流れの連続でそもそもどう守りたいのかがよくわからなかった。決してユナイテッドの保持が良かったわけではないけども、サイドに流れる仕事を増やしたIHと対角のパスを駆使し、幅方向を使いながら前に進んでいく。

 トッテナムはソンを軸とした縦のギャップ、ユナイテッドは対角パスを駆使した幅を使いながら前進を狙う。この形で先制できたのはユナイテッド。ファーに流れるような形から仕留めたロナウドの見事なフィニッシュで前に出た。

 後半もスピードが上がらないままの攻撃を行い続けるトッテナム。縦横無尽に動き続けるソンへの依存度が下がらず、交代選手も攻撃の核になれず。孤立する前線とそれを支えられない中盤のボール回しでただただ時間が過ぎていく。

 ユナイテッドは後半はやや急ぎすぎ感もあったが、どちらかといえばカウンター型のトッテナムに対してはボールを持たせたかったのかもしれないし、そもそもちょっと急げば崩せそうなカウンターチャンスが多かったことも否めない。

 結局そこからはFWがカウンターを二発で加点したユナイテッド。トッテナムは文字通り何もできずに完敗。前節は決して見られなかったニヤリとした表情を見せたスールシャール。ひとまずは肩を撫で下ろしたことだろう。

試合結果
2021.10.30
プレミアリーグ 第10節
トッテナム 0-3 マンチェスター・ユナイテッド
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
Man Utd:39′ ロナウド, 64′ カバーニ, 86′ ラッシュフォード
主審:スチュアート・アットウィル

⑧ノリッジ【20位】×リーズ【17位】

画像3

■最後はお金で解決

 負傷者が多発してスカッドのやりくりが厳しくなっているリーズ。前節の交代カードなんかを見ると学徒動員感が否めない感じであった。それでも数人の負傷者が戻ってきたのは朗報。特に前節負傷交代したラフィーニャが大した怪我ではなかったのには非常に胸をなでおろしただろう。

 泥沼の未勝利地獄から抜け出す兆しの見えないノリッジとの一戦は立ち上がりからよく言えばおおらかな、悪く言えば互いに間延びした展開になった。どちらのチームも早い攻撃が得意ではあるので、この展開は攻撃面での良さを出すという意味ではそれなりにアリだったのかもしれない。

 特に、遅攻による定点攻撃の崩しという選択肢のないノリッジにとっては、この展開は非常にありがたかったはず。多少前に進む攻撃が遅れたとしても、基本線としてリーズはプレッシングの姿勢は崩さないので、裏を取ることで直線的にゴール前まで進めるという選択肢がなくなることはなかった。

 特にノリッジが狙っていたのはリーズの左サイドの裏側。幅を取る意識がそこまで高くないダラスと守備面で適応し切れていない部分があるジェームズの裏をアーロンズやダウエルを中心に攻めていくことが出来ていた。

 対するリーズも前進は問題なし。ノリッジは行ける!と踏んだのかWBも含めて普段よりも積極的なプレスを仕掛けてきたが、サイドから奥に進み一度ラインを下げさせればやり直しは十分に可能。フィリップスを軸にゲームを組み立てるのは難しくはなかった。

 加えてある程度メンバーが戻ってきたことでラン&ガンスタイルも復活。右サイドのラフィーニャは速攻の槍としてだけでなく、裏抜けによるポゼッションの緊急避難先としても機能。この右サイドで主導権を握れたのは大きかった。あとはハリソンが不器用ではあるものの、不慣れな最前線でつぶれ役として頑張っていたのはなんか心を打たれた。

 同じような縦に早い攻撃は出来ていた両チーム。その中で差を分けたのは前線のアタッカーの質である。この22人ならば真っ先に名前が挙がるのはラフィーニャだろう。先制点は彼の右サイドでの一撃から。何とか彼につないだジェームズもよく粘った感のある得点で苦しみながらも前に出る。

 直後のセットプレーからオモバミデレの同点弾で追いついたノリッジだったが、さらにその直後に得点を取ったのはロドリゴ。反応が遅れたクルルはミドルを防ぐことが出来ず、再びノリッジに勝ち越しを許してしまう。

 ロドリゴ、ラフィーニャと昨季お金を払って取った戦力の質で競り勝ったリーズ。カウンターの質勝負で今季2勝目を手にすることができた。

試合結果
2021.10.31
プレミアリーグ 第10節
ノリッジ 1-2 リーズ
キャロウ・ロード
【得点者】
NOR:58′ オモバミデレ
LEE:56′ ラフィーニャ, 60′ ロドリゴ
主審:アンソニー・テイラー

⑨アストンビラ【13位】×ウェストハム【4位】

画像9

■保持が足を引っ張りシフトチェンジ失敗

 どちらかといえばトランジッション寄りの両チームだとは思うが、この日はかなり落ち着いて試合に入った印象だった。

 特にホームのアストンビラは保持の局面を非常に意識してはいったように思う。彼らが今季ずっと5-3-2に舵を切っていたのは、保持局面でグリーリッシュが作ることができたタメが彼抜きではできないからという理由だと思っている。この試合では2トップの一角を務めたイングスが欠場したタイミングでの保持主体の4-3-3へのトライということになった。

 しかしながら、正直この試合のアストンビラのポゼッションはうまくいっていたとは言い難い。ウェストハムの硬いブロックに対してどうやって前進するか?という部分で見えてこず。唯一の光明となりそうだったのが今季絶好調のマッギンのポスト。右の奥に入り込み、ラインを押し下げる動きで前進を助けてくれていた。

 前進がうまくいかない時の頼みの綱といえば3センターを軸としたプレス。だが、この日は中盤の要人であるドウグラス・ルイスが欠場。加えて、前半早々にラムジーが負傷交代し、ヤングが登場すると3センターはバラバラな部分が目立つように。むしろ、ウェストハムに間を通される狙い目になってしまう。先制点のシーンも見事に間を通されてしまった形。ライスのカットインから逆サイドのジョンソンまで見事に横断し、スーパーゴールを呼び込んだ。

 保持局面ではウェストハムの方が上だったといっていいだろう。アストンビラの同点弾は先に述べたマッギンからブエンディアの裏抜けを使った形で右サイドを見事に攻略して見せたが、彼らのクリーンな崩しは数える程。

 ウェストハムは中に高さがある分、大外からの連携でクロスで壊すやり方もできるのでその部分もアストンビラに比べてアドバンテージだった。ただ、2点目もきっかけは中央から。ライスのミドルによってまたしてもアストンビラの3センターが捕まえられないところから失点してしまった。

 ポゼッションができない流れが致命的になったのは後半。前半からCB起点の危険な形でのビルドアップロストが目立っていたアストンビラだったが、後半にはヤングとナカンバの連携ミスからカウンターを喰らう。コンサがなんとか止めたものの、状況はすでにファウルを与えたら退場のシチュエーション。後半まるまるを10人で戦うことになる。

 11人で満足に前進できないチームが10人で前進ができるわけがない。そこからは堅実なウェストハムにジリジリと内容面で差をつけられていく。終盤までは勝ち点の可能性を残してはいたものの、やはり最後の最後に決壊。保持での振る舞いがアキレス腱となり、痛恨の連敗となったアストンビラだった。

試合結果
2021.10.31
プレミアリーグ 第10節
アストンビラ 1-4 ウェストハム
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:34′ ワトキンス
WHU:7′ ジョンソン, 38′ ライス, 80′ フォルナルス, 84′ ボーウェン
主審:クリス・カバナフ

⑩ウォルバーハンプトン【11位】×エバートン【8位】

画像10

■この負けより、これからが気になる

 ワトフォードに終盤の猛攻を受けて5失点という大敗を喫したエバートン。今節はリカバリーが必要。結果を求められる試合となった。

 彼らのこの試合での選択はウルブスにボールを渡して、4-4-2でブロックを組み守るというものだった。ウルブスは保持に強みがあるタイプではないし、エバートンはカウンターから刺せるアタッカー陣も揃っているので、選択としては合理的ではある。

 だけども、エバートンにとって現実は非常に厳しいものだったと言わざるを得ない。単純にウルブスの3-4-3とエバートンの4-4-2の噛み合わせのズレによって動かされてしまう。例えばWBにSBが釣り出されたり、後方のビルドアップにアランやグバミンが引っ張り出されてしまうことで、そもそも4-4-2できっちり構えられる場面が非常に少なかった。

 なのでウルブスからすると、停滞した局面でゆっくりボールを動かしても中央を破れるという状況に。オフサイドで得点が取り消された場面とかはエバートンからすると4-4-2で構えるという選択肢自体を見直さなければいけないくらいの中央の壊され方だった。

 エバートンが気になるのは保持の局面でも。単純に深い位置まで押し込まれてしまうというのもあるのかもしれないけども、ボールを奪って前につけるという流れにスムーズに移行できず。グレイ、タウンゼントのようなスピード豊かなアタッカーにボールを預けるためにもたついてしまい、結果的に撤退したウルブスの守備ブロック相手に停滞するようになってしまう。

 後半はウルブスが撤退志向を強めたこともあり、だいぶエバートンがボールを持てる場面が出てきたのだが、やはりどうしても元気のなさが気になる。精神論みたいになってしまうのだけど、多少アバウトでも強引に自分たちの流れに引き寄せられるのがエバートンの良さだと思う。

    なので、この試合に負けたことというよりも、ドゥクレが負傷離脱して以降はちょっとこの勢いだと良さがなくなってしまっていることとどう向き合うか?みたいなことを考えないといけないフェーズのように思えた。

 セットプレーからキルマンがタウンゼントを上回り、先制した1点目。そして、2点目のようなプレス起因でのショートカウンターなど順調に得点を重ねるウルブス。後半は1点を返されたものの、カウンターやサイドの崩しなど後半も十分に持ち味を出せていた。調子の上がらないエバートンを尻目にホームで完勝を収めたといっていいだろう。

試合結果
2021.11.1
プレミアリーグ 第10節
ウォルバーハンプトン 2-1 エバートン
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:28′ キルマン, 32′ ヒメネス
EVE:66′ イウォビ
主審:マーティン・アトキンソン

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次