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「Catch up Premier League」~Match week 8~ 2021.10.16-10.18

目次

①ワトフォード【15位】×リバプール【2位】

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■それじゃ5バックの意味がない

 実力者は揃っているのだが、どうもチームとしての輪郭がはっきりしないワトフォード。監督交代に踏み切り今節はラニエリ新監督の就任初陣ということに。再建屋として名高い名リリーフの登場にファンの期待は大きかっただろう。

    しかし、蓋を開けてみれば試合は気持ちいいくらいのリバプールのワンサイドゲームだった。ワトフォードは5-4-1である程度受けたところから設計しようと思っていたのかもしれないが、これが全くといっていいほど効いていなかった。

 理由としては5バックの脆さだろう。特にワトフォードの左サイドが全く歯が立たなかった。一番の理由はローズだろう。高い位置に出ていっては交わされて、相手を加速させるばかりか、5バック全体がラインを下げる際にも自身が最終ラインの動きについていけず、対人でもラインコントロールでも90分間穴になり続けていた。

 100歩譲ってサラーに対人で歯が立たないのは仕方ない(それでも遅れて無理にチャレンジにいったいたのでもっとできることはあったと思うが)としても、全体のラインを下げない動きについていかないのは怠慢というしかない。リトリートが遅れるのは前節と同じ悪癖だが、今節はまがいなりにもCB起用。この守備基準ではどうしようもない。

 厳しいことを言うようだけどもこういう選手が1人でもいればちょっと今のリバプールとやりあうのは厳しいと思う。案の定、サラー、アレクサンダー=アーノルド、IHのケイタやミルナーなどのトライアングルであっさり破壊。ワトフォードは同サイドのカバーとしてシソコかクツカが間に合えば防げることもあったが、その際には中盤が手薄に。今度はリバプールが内側に斜めのパスを入れて勝負に出れば問題ない。

 こうしてあれよあれよという間にワトフォードのゴールネットを揺らし続けるリバプール。ハーフタイムまでに2点ビハインドのワトフォードは4-2-3-1にシフトして勝負に出る。

    正直、このシフトはよくも悪くも影響がなかった。どっちにしろホルダーを捕まえる気が薄い上に、後から食いつきに飛び込んでいく癖は直っていなかったのでリバプールはやりたい放題やることが出来た。ワトフォードはカウンターの機会さえあれば、可能性は感じさせたけど、そこにいたるまでのスキームがない。ので得点につながりにくい。

 リバプールにとっては一部の南米組の不在などほとんど関係なし。キックオフからフルタイムまでリバプールペースだった90分。リバプールに屈し続けたワトフォードの修正は名物再建屋でも時間がかかってしまうのだろうか。

試合結果
2021.10.16
プレミアリーグ 第8節
ワトフォード 0-5 リバプール
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
LIV:8′ マネ, 37′ 52′ 90+1′ フィルミーノ, 54′ サラー
主審:ジョナサン・モス

②アストンビラ【10位】×ウォルバーハンプトン【12位】

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■半狂乱の大逆転劇

 欧州カップ戦にはなかなか届かないけども、残留争いとも無縁ないぶし銀の両チームによるミッドランズダービー。前半の内容も非常に堅いものになった。保持の局面が多かったのはホームのアストンビラの方。外を回すボール保持から、サイドを変えながら相手陣に侵入。最終的にはキャッシュのところからクロスでエリア内にめがけてという攻撃が多かった。

 しかし、今季のアストンビラは押し込んだ際の攻撃力はどうしても昨季より割引である。相手の最終ラインをいったんフリーズさせてから攻略できるグリーリッシュがいない分、昨季の大きな武器だったスペースに入れるクロスが発動する機会が減り、威力もグンと下がってしまっている。

   アストンビラは元々エリア内の高さで勝負するチームではないので、ただ入れるだけではNG。早いクロスを刺すようにというのが昨年のアストンビラの定点攻撃の強み。今季は4-2-3-1を一時的に棚上げしているようにこの部分はまだ模索中。どちらかといえばこの形は早い攻撃に強い。

 逆に急ぎすぎ感があったのはウルブス。ヒメネスを外し、ファン・ヒチャンとトラオレを並べてスピード勝負を挑みたかったのはわかるが、少し直線的過ぎて淡白だった感は否めない。プレスも控えめで攻撃の機会自体も少なく、相手陣にそもそも危険な迫り方をすることが出来ない。

 そんな堅い展開の中で試合を動かしたのは今季絶好調のマッギン。後半、サイドの高い位置で起点になると、粘ったクロスからイングスのゴールを演出。さらには自身もミドルを叩き込み追加点。一気に試合を引き寄せる。

 しかし、アタッカーの逐次投入に踏み切ったウルブスがここから先はパワーでがっちり押し切る。まずはシルバでエリア内攻撃を強化、さらにはモウチーニョに代えてポデンスという攻撃的な交代を実施し、仕上げにはヒメネスで放り込み体勢に。

 アストンビラが一気に引いたことでハーフコートゲームになった試合でエリア内への放り込みを強化すると、ここからあっという間に2得点。強引な形で引き寄せた流れで追いつく。そして終盤ラストワンプレーはネベスのFKが壁に当たって跳ね返り、そのままゴールマウスに。

 試合の流れに導かれたように転がったFKはウルブスに奇跡的な勝ち点3をもたらす3点目に。アウェイのウルブスが大逆転でビラを下すという半狂乱のダービーとなった。

試合結果
2021.10.16
プレミアリーグ 第8節
アストンビラ 2-3 ウォルバーハンプトン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:48′ イングス,68′ マッギン
WOL:80′ サイス, 85′ コーディ, 90+5′ ネベス
主審:マイケル・オリバー

③レスター【13位】×マンチェスター・ユナイテッド【4位】

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■終盤に出てきた機動力の差

 よもやよもやの出遅れとなってしまったレスター。攻守の歯車がかみ合わないまま続けていた4-2-3-1はひとまず棚上げをして、昨シーズン終盤の基本形となった3-4-1-2への回帰でこの試合に臨む。4-2-3-1での目玉は両WGの突破力。

   しかし、現状のバーンズやルックマンの仕上がりではワン=ビサカやショウにぶつけてもなかなか勝機を見出しにくいということだろう。その判断はよくわかる。

 ただし、序盤のレスターは苦戦した。理由としてはユナイテッドがばっちりマンマークを当てやすいかみ合わせになってしまったからだろう。正三角形同士のマッチアップとはいえ、相手を定めておけばそんなに苦労はしない。

    対人に優れたユナイテッドが序盤は優勢。レスターはこれまでよりは保持で落ち着いたり、幅を取ったりできる機会はあったけども、ゴールにガンガン迫っていけるという感じの立ち上がりではなかった。

 どちらかといえばレスターがマーカーがはっきりしないSBからボールを運ぶことが出来たユナイテッドの方が優勢に進めることが出来ていたといってもいいかもしれない。

 デュエル色の強い展開の中で先制点はマンチェスター・ユナイテッド。今季好調のグリーンウッドがスーパーミドルを突き刺し先手を取る。しかし、レスターも負けじとスーパーゴールで応戦。こちらはティーレマンスが技ありのゴールでデ・ヘアの虚を突いてみせた。

 後半はやや試合の展開が変化。徐々にユナイテッドの中盤のマークが甘くなり、レスターが動きが上回るようになる。中盤のホールドが解除されれば、レスターからするとかなり選択肢が広がる。ライン間のマディソン、裏のイヘアナチョとヴァーディ。ティーレマンスからするとパスを出すには困らないのがこの2トップ+トップ下のシステムだ。

 勢いに乗るレスターは完全に終盤はユナイテッドを飲み込む。セットプレーからソユンクが押し込むと、同点弾をものともせずに1分後にヴァーディが勝ち越しゴール。対人、機動力で勝る終盤のレスターは試合のテンションを下げないままストライカーのダカを投入すると、そのダカが試合を決定づける4点目。終盤の強度で上回ったレスターが久しぶりの快勝を果たす。

 一方のユナイテッドにとっては重たい逆転負け。対人+ソリッドなカウンターの強度は最強だったユナイテッドだけど、ロナウド加入以降それは変わりつつあることを感じる敗戦となった。

試合結果
2021.10.16
プレミアリーグ 第8節
レスター 4-2 マンチェスター・ユナイテッド
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:31′ ティーレマンス, 78′ ソユンク,83′ ヴァーディ, 90+1′ ダカ
Man Utd:19′ グリーンウッド, 82′ ラッシュフォード
主審:クレイグ・ポーソン

④マンチェスター・シティ【3位】×バーンリー【18位】

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■キラーは蚊帳の外、広がったいつも通りの光景

 バーンリーはいつもの通りの4-4-2で今回もシティに挑む。違いといえば、最前線にコルネという新戦力がいること。何を隠そう、このコルネは2年前のCLでシティを葬り去ったリヨンの一員で、自らも得点を決めたシティキラーである。

 というわけでいつもよりは期待は持てたはずのエティハド遠征になったバーンリー。オカルト最高。しかし、繰り広げられたのはいつものシティ×バーンリーだった。一応、ハイプレスのチャレンジにはいくバーンリー。でも、当然通用しない。勢い任せの4-4-2はプレミアで最も通じない相手である。

 プレスは骨折り損ということが分かったので、とっとと撤退するバーンリー。しかし、4-4-2ブロックになったからといってシティ相手に守れるようになるわけでもない。打開のきっかけになったのはシティの左サイド。CBがきっちり持ち運ぶので、バーンリーの2列目がCBを捕まえるのか、それともSBを消すのか?を迷うようになる。

 バーンリーは迷いながらも内側を消して、大外を空けることを選択することが多かったので、シティは彼らのプレスの誘導通り、大外からきっちりと押し下げて見せた。下手くそなチームがバーンリー相手に押し込むと、やたら持たされている感が出るのだけど、シティはそういう部分が皆無。彼らは押し込んで、かつしっかりとバーンリーを殴っていた。

 その理由はボールサイドと逆側においても常に攻撃の準備が出来ているからだろう。クロスに飛び込む動きはもちろんだし、ボールサイドが死んだと思ったらSBを起点にボールを引き取り、逆サイドからの攻略に移行する。やり直しの下準備はやはり群を抜いているとみるべきだろう。SBは今季おなじみの2トップ脇からのボール運びもやっていたし、オーソドックスな今季の役割で活躍できる試合だった。

 シティの2得点はいずれも跳ね返りを押し込んだものだが、全体が押し上げられているからこそという証拠でもある。バーンリーもコルネを最前線からカンセロの裏を狙わせる形にシフトしたりなど、修正はしてみたが実らず。キラーの到来で胸を膨らませたバーンリーファンの願いも虚しく、結局はいつも通りのシティ×バーンリーになってしまった。

試合結果
2021.10.16
プレミアリーグ 第8節
マンチェスター・シティ 2-0 バーンリー
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:12′ ベルナルド, 70′ デ・ブライネ
主審:マーティン・アトキンソン

⑤ノリッジ【20位】×ブライトン【6位】

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■動かされるくらいなら動かない

 未だに勝ちがなく引き分けで勝ち点をとるのが精いっぱいなノリッジ。今節の相手は潤沢とは言えないスカッドで上位陣を快調に追走しているブライトンである。  

    試合は好調のブライトンが支配的に進める展開でスタートする。日によって保持の仕方をマイナーチェンジしている感のあるブライトン。この日は3-5-2がベースかと思いきや2トップは縦関係。モペイは最前線に居残るが、もう片方のトロサールは中盤に降りてくる役割が半分くらい。

    おそらくこれはノリッジの3センターの後方を獲ろうという動きだろう。ブライトンのセントラルが引いて受けると、ノリッジの中盤もそれにつられて出ていく。その後方のスペースを狙おうというのが列移動するトロサールの狙いである。

 ブライトンが素晴らしいのはこの空いたスペースを誰が使うかが決まっていないところ。単にトロサールが使う決まりになっていれば、それに手を打てばいいのだが逆に高い位置を取った中盤やククレジャのようなサイドプレイヤーもここに入り込むことがある。全体のバランスをみつつ、今誰がどこにいるかでどこに入ればいいかを設計できているブライトンの保持はこの日もいい感じだった。

 しかし、ノリッジに攻め手がなかったわけではない。前節のアーセナル戦でも紹介したが、ブライトンは高い位置からの守備にトライ中。だが、フィルター役のビスマの不在でバックスが広い範囲をカバーしなければいけないことが多く、プレミアのアタッカーの機動力に後手に回る可能性があるという懸念がある。

 現にノリッジはアタッカーのスピードは十分にあるチーム。サージェントにボールを収めてからの抜けだしは効いており、ここ数試合の中ではノリッジは最も勝ちに近づいた感はあった。しかし、チャンスは作れても決定力はない。特にそのサージェント。ハイラインの拙いブライトンの連係ミスに乗じて後は無人のゴールに押し込むだけにも関わらず、まさかのころころシュート。DF間に合っちゃったじゃん!というノリッジサポーターの文句が聞こえてきそうなシーンだった。

 終盤になるとブライトンの流麗なポジションチェンジは鳴りを潜めるようになり、だんだんとノリッジにつかまるように。かつ、ノリッジの3センターが割り切って自軍に引き、降りていくブライトンの選手たちを無視するようになった。動かされるくらいならいっそ動かなければ良い!的な。ホルダーだけは捕まえていたので、ある程度コースに制限をかけつつ試合を閉じに行く。

 そうなってくるとデュエル色が強くなる。ククレジャに代えてマーチを入れたのはポッターの覚悟だろう。しかし、ここから強引にこじ開けるだけの力はブライトンにはまだない。最下位相手に試合も陣形もうごかせなくなった後半はじり貧。ブライトンは2試合連続のスコアレスドローでやや停滞感を感じる結果となった。

試合結果
2021.10.16
プレミアリーグ 第8節
ノリッジ 0-0 ブライトン
キャロウ・ロード
主審:ピーター・バンクス

⑥サウサンプトン【17位】×リーズ【16位】

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■脆さをついたカウンターで今季初勝利

 もはやおなじみになってきたリーズの対4-4-2専用機である3バック。大体、このシステムの採用はバーンリーとサウサンプトンが狙い撃ちにされているんだけど、ここまでくるともはやストレートにこの形で対策を敷いてきたといっていいだろう。

 間と外に人を置けるこのシステムで序盤は積極的にボールを支配しながら試合を進めるリーズ。しかしながらいつものこの布陣よりも後ろから2列目の選手たちがやや外に流れる傾向が強く、中央で受けられる選手がいなくなりがちになっていた。

 こうなるとボールがどうしても外に循環しやすくなってしまい、中央で受ける選手はクリヒのみとなってしまう。加えて、ジェネポはややジョレンテとシャックルトンの2択で迷っている傾向はあったので、リーズは右から運びやすくはなっていたが、そこから先がない。

    この日のリーズの前線には裏にボールを引き出せるバンフォードも、大外で1枚剥がすことが出来るラフィーニャも不在。ということで、バックラインでは安定してボールを持てるリーズだったが、敵陣まで侵入してダメージを与えるまでは至らないことが多かった。

 一方のサウサンプトンは対リーズお馴染みのマンマークを剥がすミッションに挑むことになる。この日のリーズの形だと通常よりも中盤がスカスカになりやすいという難点がある。したがって、被カウンターは食らいたくないリーズ。特にロバーツが1列下げて中央を埋める前にカウンターを許すと、こちらもクリヒが孤立する形で受けなくてはいけなくなってしまう。

 加えて、サウサンプトンはマンマークでも光明を見出す。外だけでなく、内に入り込む動きで相手を振り切ったのが今季売り出し中のリヴラメント。対面のジェームズがややリーズ色に染まっておらず、リトリートの守備に甘さがあるところを狙い撃ちする。サウサンプトンはレドモンドも1枚剥がすスキルがあり、対人においては優位だった。

 その被カウンターにおけるリーズのリスクに対するセインツの優位がスコアにつながったのが後半である。後半にネジを巻きなおして前に出て来たリーズをカウンターであっさり裏返し、0-0とは思えないほどイージーなカウンターから先制点を奪う。

 その後はサウサンプトンがややカウンターの精度が低下する。ばてたのだろうか。かといってリーズもフレッシュな選手たちが精度を伴ったプレーを見せることができず。こちらはシステム云々というよりもバンフォード、エイリング、フィリップス、ラフィーニャ、フィルポなど大量の主力を欠いたことが大きな要因だろう。

 最後は息切れ感もあったが、サウサンプトンは今季初勝利。ここから波に乗っていきたいところだが。

試合結果
2021.10.16
プレミアリーグ 第8節
サウサンプトン 1-0 リーズ
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:53′ ブロヤ
主審:デビッド・クーテ

⑦ブレントフォード【7位】×チェルシー【1位】

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■残り20分で訪れた流れに立ちはだかる牙城

 チェルシーは少々意外なフォーメーションを組んできたという印象を持った。シティ戦の焼き直しとなった5-3-2という形もそうだし、アンカーにロフタス=チークを持ってきたという用兵の部分もそう。真っ先に思ったのは機動力に怪しさのあるブレントフォードの最終ラインにルカクとヴェルナーをぶつけてしまおう!というアイデアなのかというところか。

 実際に見てみた感想としては半分は当たり、半分はハズレという感じだろう。確かにチェルシーの前半のチャンスの多くはサイドからの最終ラインを強襲し、中央でDFラインギリギリでギャップを使ってオフサイドを掻い潜ろうとするルカクやヴェルナーが得点を狙うという形だった。そういう意味では当たり。

 一方でこの形一辺倒だったか?と言われると微妙なところ。例えば、積極的に裏に蹴りまくることでルカクやヴェルナーのスピードだけを生かす機会を極端に増やすことはしなかった。むしろ、この試合のチェルシーは非常に保持を大事にしていた。ブレントフォードの得意な攻守の切り替えが多い展開を避けることも同時に重視していたと思う。

 チェルシーの中盤はブレントフォードの中盤に数を合わせながら人主体で守られていたが、細かく立ち位置を変えるカンテはどうしても捕まえられない。もはや、保持のキーマンにもなるのがカンテである。アンカーのロフタス=チークも逆三角形同士のマッチアップになったことを享受し、比較的プレスがゆるく起点として十分な働きをしていたと思う。

 ブレントフォードのトニーやムベウモへの長いボールもこの日初出場となったサールを含めた3バックを中心にシャットアウト。チェルシーも無理にチャンスを追わない分、ブレントフォードにもソリッドな組織で攻める回数自体も規制するという形で試合をこう着状態に追い込んだ。ファウルを躊躇なく行っていた両チームなので、試合の流れとしても止まりやすくぶつ切りになっている展開だった。

 大きかったのは45分にチルウェルがスーパーゴールを叩き込んだことだろう。チェルシーは無理に自分から展開を動かす必要性がなくなった。

 というわけで後半も膠着した展開は継続。チェルシーがこのままブレントフォードを眠らせるのかなと思った。しかし。70分を境に試合は一変。流れは一気にブレントフォードに流れこむ。中央でのパス交換からムベウモが裏を取るチャンスを作ったことで徐々にブレントフォードがチェルシー陣内で深さを作ることに成功する。

 リスク承知で人をかけることで、チェルシー陣内でのブレントフォードが得意な競り合いは増加。サイドにボールが出るとロングスロー、そしてお得意のファーへのクロスからの折り返しのパターンを織り交ぜてチェルシーの首を絞めて行く。ここは文章だけでは書ききれない迫力なので、是非実際に試合を見てほしいところ。

 しかし、最後の砦として立ちはだかったのはメンディ。目まぐるしくエリア内で動くボールについていき、至近距離からのシュートをスーパーセーブで回避。これまでの相手はこの形で締め落としてきたブレントフォードだったが、メンディの牙城は別格。殴れども殴れども破れない今季のプレミア最高のGKを前に勝ち点0で屈することになった。

試合結果
2021.10.16
プレミアリーグ 第8節
ブレントフォード 0-1 チェルシー
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
CHE:45′ チルウェル
主審:アンソニー・テイラー

⑧エバートン【5位】×ウェストハム【9位】

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■上位をにらむ一戦はセットプレーで決着

 戦績は上々、トップグループに隙を見つけて割って入りたい両チームの一戦である。布陣としては4-2-3-1ベース同士のフォーメーション。というわけでお互いにどこでズレを作るかという勝負に出る必要がある。そのアプローチは両チームで異なっていた。

 配置の局面でズレを作ろうしていたのはウェストハムの方。CHのライスが降りる動きを見せたり、そのライスが動いたことで空けたスペースに2列目が入り込んだり、あるいは逆に裏に抜けたりなどエバートンの陣形を動かすためのアプローチを駆使しながら前進を狙っていく。

 ウェストハムがこのやり方を選んだのにはエバートンの守備の指針も大きく関係しているように思う。エバートンの4-4-2は相手の動きについていきやすい側面が強く、中盤を中心に非常に穴が空きやすい。相手が動いてくれるからこそ動くという側面が強かった。

 仮に守備側がウェストハムだったら、この動き回っての前進はもっと通用しなかっただろう。したがってエバートンはよりデュエル色の濃いアプローチで臨むようになった。前線に構えるロンドンがそのターゲット。なんとか背負ってポストをすることで相手のDFラインを押し下げる。エリア内では物足りなさがあったが、陣地回復においては十分ロンドンは効く。

 前を向いてのチャンスメイクがより期待できるのは好調のグレイ。中央でのスタートとなったが、途中からイウォビと場所を入れ替えてサイドに出ていった。これならばサイドからの単騎での突破を狙える上に、ボールサイドに触ってナンボのイウォビを送り込みやすくなる。遅攻の整備が課題のエバートンだが、こちらのほうがゆっくり攻める際の攻め手にも困らないはずだ。

 しかし、ウェストハムは2列目の帰陣が早くソリッド。前半の終盤から徐々にエバートンが攻める時間を増やすが、なかなか決定機まではたどり着かない。終盤には徐々に規律がなくなりだし、カウンターの応酬の展開になってくる。

 勝負を分けたのはセットプレー。終盤のたたき合いで結果を出したのはCKを叩き込んだオグボンナだった。その後はソーチェクの負傷交代を機にウェストハムが3バックに移行。終盤は畳みかける攻撃でウェストハム陣内に攻め込み続けたエバートンだったが、最後までハンマーでたたき壊すことはできず。

 共にカウンターからは見せ場を作ることはできたが、勝負を分けたのはセットプレー。グディソンパークに帰還したモイーズ率いるウェストハムがしぶとく勝ち点3をモノにして見せた。

試合結果
2021.10.17
プレミアリーグ 第8節
エバートン 0-1 ウェストハム
グディソン・パーク
【得点者】
WHU:74′ オグボンナ
主審:スチュアート・アットウィル

⑨ニューカッスル【19位】×トッテナム【8位】

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■高揚ムードで迎えた1000試合目は尻すぼみ

 憎きマイク・アシュリーという暗黒期にサウジアラビア資本の到来というウルトラCでピリオドを打ったニューカッスル。少なくともニューカッスルファンの多くはアシュリーの手からクラブが離れるというただ一点においてだけでも諸手を挙げて歓迎しているといった状況だ。

 そのため、この日のセント・ジェームズ・パークの雰囲気は異様だった。試合開始前から観客のボルテージは最高潮。客席にはサウジアラビアの王族のようなコスプレをしているサポーターまでいる始末だった。

 異様だったのはファンだけではない。ニューカッスルの選手たちもやる気満々。おそらく、ここから大きく手が入るであろうチームに対するアピールという側面が大きいのだろう。立ち上がりからシャカリキにプレスに行ってトッテナムを追いつめる。

 ニューカッスルが得た1点目はこの日の彼らの勢いにトッテナムが気圧されたかのようだった。怯んだトッテナムの守備はニューカッスルの自陣に迫ってくる勢いに耐えることが出来ず、最後はエリア内でウィルソンが叩き込みあっという間に開始から2分で早々に先制点を得る。

 しかし、落ち着いてしまえば現段階でどちらに力があるのかというのは明白である。トッテナムがニューカッスルのプレスを1つ外し、前に運ぶことさえできれば何の問題もなし。特にライン間のエンドンベレまでボールを運びさえすれば攻略ルートは選び放題。

 トッテナムのバックスは特に足元に長けた選手はいないが、ニューカッスルの中盤が展開が落ち着いている時に誰をどう守ればいいのかという点を整理できていなかったため、ダイアーやロメロは縦にパスを入れる勇気さえ出せばチャンスを作れる状況だった。

 大外を使って奥行きを作りエンドンベレの技ありシュートでまずは同点。そして、ケインの裏抜けであっさりラインブレイクをして追加点。トッテナムは目の前の状況に向き合って黙々とやるべきことをやっていた。CBは徐々にフィードに慣れてきたようで対角へのエメルソンへのパスなど、問題なく前進できるポイントを見つけて、ニューカッスルのプレスの心を折っていった。

 一気に厳しい状況になったニューカッスル。サン=マクシマンのカウンター、エメルソンを狙い撃ちしたロングボール、交代選手が入るたびに勢いが蘇生する前プレ。彼らの持っている武器はこんなところだろうか。

    プレスの効力の持続性を考えると交代選手が機能したとは言い難い。展開力を買われたであろうシェルビーはあっさりと退場。2枚目のファウルは確かに致し方なかったが、カウンターの打ち合いで警告で相手を止める機会が増えるであろう状況で1枚目のような不用意なラフプレーで警告をもらったのは、交代選手として試合の展開を読む力に欠けていたといわざるを得ない。

 というわけでトッテナムがやることは、交代するたびに蘇生する彼らのプレスに向き合うことくらい。難易度の高いわけではないミッションを淡々とこなしたスパーズ。最後の最後で1点差に追い込まれるオウンゴールを喫したのはご愛敬だが、試合のはじめ15分以外は彼らが支配したといって差し支えのない流れ。歓迎ムードに冷や水をぶっかけたトッテナムが連勝を飾った。監督として1000試合目の指揮となったブルースにとってはニューカッスルの監督として最後のゲームになってしまった。

 この試合は観客の中で急病人が発生するトラブルがあった。ひとまずはサポーターの方は容態が安定したようでなにより。レギロン、ダイアー、ヘイデンをはじめ、勇気をもって適切で迅速な処置に当たった両軍の選手、スタッフには大きな敬意を表したい。

試合結果
2021.10.17
プレミアリーグ 第8節
ニューカッスル 2-3 トッテナム
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:2′ ウィルソン, 89′ ダイアー(OG)
TOT:17′ エンドンベレ, 22′ ケイン, 45+3′ ソン
主審:アンドレ・マリナー

⑩アーセナル【11位】×クリスタル・パレス【14位】

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■ため息だらけのエミレーツ

 レビューはこちら。

 立ち上がりにペースを握ったのはホームのアーセナル。バーンリー戦で頓挫した4-3-3にリベンジしたこの日の彼らだったが、ビルドアップはそのバーンリー戦よりも明らかに進歩していた。

    無駄に落ちることが少なかった中盤と、持ち運ぶ機会が増えたCB。特にこの役割が整理されていたのは彼らの左サイド。今季、守備面だけでなく配球においても好調なガブリエウを軸に攻撃を組み立てていく。

 IHのプレスを外される形になったパレスはザハの不在もあって、簡単には陣地回復はできない状況であった。そうこうしている間に先制点を取ったのはアーセナル。ペペと冨安の連携から右サイドを突破すると最後は角度のないところからオーバメヤン。徐々に調子が出る試合が増えてきた感じがするエースが、簡単ではないシュートを難なく決めて見せた。

 だが、これで終わらないのが今年のパレスであり、今年のアーセナル。この試合でもアーセナルは前線がプレスで敵陣でのボール奪取を狙いつつ、ボールがある程度自陣側に進んできたら一気にリトリートするというバランス。このプレスにいくかどうかの舵取り役を任されているのは中盤だった。時間が経つと、このプレスに行くか否かという判断にギャップが出てくるようになる。

 そうすると徐々に縦に間延びするようになるアーセナルの陣形。孤立していたベンテケの周りにパレスはサポートに行けるように。こうしてベンテケへの楔から押し込む機会を増やしたパレスが前半に勢いを取り戻す。

 後半のアーセナルは負傷交代+保持とプレスの修正で4-2-3-1へ移行。2CHで保持での押し上げと被カウンター対応で中央を閉じやすくする方向にシフトする。しかし、この日のシステム変更はあまり効果が高かったといえなかった。

 パレスの後半の2点はいずれもハイプレスから。特に視野が十分確保できていた中でカウンターにつながるミスをしてしまったロコンガにとっては悔しい結果になっただろう。

 それでも逆転の直前に投入されたラカゼットで前線に起点を作ったアーセナル。左サイドを中心に終盤は攻め込む。すると後半追加タイム、CKの流れから最後はラカゼットが決めて土壇場で同点に追いつく。

 アーセナルのサポーターはまだ引き分けで喜ばなきゃいけないのかとため息をついただろうし、パレスのサポーターはM23ダービーに続き、また土壇場で引き分けかとため息をついたことだろう。どちらにとっても満足いかない結果になってしまった。

試合結果
2021.10.19
プレミアリーグ 第8節
アーセナル 2-2 クリスタル・パレス
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:8′ オーバメヤン, 90+5′ ラカゼット
CRY:50′ ベンテケ, 73′ エドゥアール
主審:マイク・ディーン

  おしまいじゃ!

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