MENU
カテゴリー

「Catch up Premier League」~Match week 9~ 2021.10.22-10.24

目次

①アーセナル【12位】×アストンビラ【13位】

画像1

■ダイナミズムといぶし銀、対極な両SBが4-2-3-1の解決策

 レビューはこちら。

 ジャカ不在での4-2-3-1のトライに失敗した前節のアーセナル。彼らが今節取り組んだのは4-3-3への回帰ではなく、4-2-3-1への再チャレンジだった。もっとも、そのままの焼き直しではなく、彼らがトライしたのはラカゼットとオーバメヤンを中央で組ませる2トップ式に近いやり方だった。

 主導権を握ったのはホームのアーセナル。5-3-2で守るアストンビラに対して、優位を取ったのは負傷したティアニーに代わって抜擢されたタバレスがいる左サイドである。内に絞るスミス・ロウが空けた大外のスペースを強襲できる脚力を活かしてのオーバーラップで、早い攻撃からエリア内にチャンスを供給する。

 前に出ていくタイミング、頻度などタバレスは攻撃面では即レギュラーになってもおかしくないパフォーマンスでアストンビラを押し込む。攻め上がりへの積極性とは裏腹に、スミス・ロウとポジションを入れ替えながら相手の空いたスペースに立ち位置を取る賢さはイメージとは異なる部分だった。

 逆サイドの冨安はより慎重なプレーながらもチームに貢献。WBを引き出し、サカの裏抜けのスペースを作ったり、逆サイドへの展開で攻撃のスイッチを入れるなど自陣深い位置での貢献が目立った。後半は自分の裏を狙うワトキンスを察知するや否や前方へのプレスをやめるなどの臨機応変さも披露。2点のビハインドで後半を迎えたアストンビラの反撃の芽を摘んだ。

 アストンビラは今季ワーストクラスのパフォーマンスといっていいだろう。定点攻撃ではアーセナルにやられっぱなしだったし、プレスで自陣からの脱出をすることすらできなかった。気になったのは前線の動きの重さ。ワトキンスはサイドに流れながらのプレーが前半から少なく、後半も冨安に素早く対応され行動範囲の広さが活きなかった。こうなるとイングスは消えてしまうのは当然。ワトキンスは開始1分での無駄な警告も含めて、前節の悪い流れを引きずっているかもしれない。

 前半終了間際のPKが文字通り決着の一撃だっただろう。完璧だった前半戦の最後に得たPKでオーバメヤンが跳ね返りを押し込み、ゴールマウスを守るかつての仲間に膝をつかせる。マルティネスの2回目のエミレーツ凱旋はいい思い出にはならなかったようだ。

試合結果
2021.10.22
プレミアリーグ 第9節
アーセナル 3-1 アストンビラ
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:23′ トーマス, 45+6′ オーバメヤン, 56′ スミス・ロウ
AVL:82′ ラムジー
主審:クレイグ・ポーソン

②チェルシー【1位】×ノリッジ【20位】

画像2

■文字通りの『ボーナスステージ』

 第9節の対戦カードは上位対決が目白押しである。トップ7のチームのうち、6チームが直接対決の潰し合いをするという大変見応えのある週末になっている。そのトップ7のうち、唯一、今週潰し合いを回避しているのがチェルシー。開幕戦から厳しい日程を続けたチェルシーは皆が潰し合いをやっているのを横目に最下位のノリッジとの対戦。側から見ればボーナスステージである。

 しかし、そういう時にこそ落とし穴があるのがプレミアリーグ!そんなことを思えたのは8分間だけ。マウントがDFの股を抜くスーパーシュートを決めるまでの話だった。ルカク、ヴェルナーとCF色の強い選手が軒並み不在というわずかな不安要素を簡単に吹き飛ばす先制点であった。

 ノリッジはサイドでの守備をCB、WB、IHで囲んだり、カウンターの際はWBのギアンヌリスも高い位置まで出ていったり、カバクが持ち上がったりなど一応工夫はしていなくはなかった。だけども、とにかくマークがルーズ。ハドソン=オドイは少し低い位置まで降りてしまえば簡単に反転して前を向けるし、前を向いたハドソン=オドイを止められる選手はノリッジにはいない。

 同じく、チェルシー対策として一般的なコバチッチとジョルジーニョに人を当てるというところをIHの2人がやってはいたが、ここもマークが甘く簡単にボールを前に運ばせる。ノリッジは一度ラインを下げてしまうと、相手がバックパスをした際にもう一度ラインを上げ直す習慣があまりなく、ボールを縦に往復させるだけでチェルシーの両CHは簡単にフリーになることができる。

 チェルシーはサイドからラインを押し下げる形でノリッジの陣内に攻め込んでいく。この日効いていたのはそこから直接狙ったシュート。チルウェル、ジェームズの大外からのシュートがともに決まるなど、大外からの攻め込みがいかに深い位置まで入り込めているがよくわかる場面だった。

 試合としてはほぼ前半で終了。CL後のチェルシーはテンションを下げてはいたが、ノリッジがギブソンの退場で10人になると、最後にもう一度得点を重ねにいく。VARの助言に加えて、PKの蹴り直しというお膳立てまでもらったマウントは後半追加タイムにハットトリックを達成することができた。

 上位対決の間に、チェルシーは文字通りのボーナスステージを堪能。マウントのハットトリックという副賞までつけてもらい、90分間のフットボールを楽しんでプレーした。

試合結果
2021.10.23
プレミアリーグ 第9節
チェルシー 7-0 ノリッジ
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:8′ 85′(PK), 90+1′ マウント, 18′ ハドソン=オドイ, 42′ ジェームズ, 57′ チルウェル, 62′ アーロンズ(OG)
主審:アンディ・マドレー

③クリスタル・パレス【14位】×ニューカッスル【19位】

画像3

■またしても課題を露呈、6つ目の引き分けは改善への警告

 前節はアーセナルに土壇場で追いつかれてしまい、勝ち点3を最後の最後で手放してしまったクリスタル・パレス。勝ちきれない試合の中でホームに迎えるのは、こちらは正真正銘今季勝てていないニューカッスルである。

 試合は今季から保持に積極的に取り組んでいるクリスタル・パレスが一方的に保持を行う流れに。布陣で言えば、パレスはサイドが自由にボールを持ちやすい上に、ニューカッスルの2トップがあまりプレスにおいて何かしらの役割を果たしている感じがしなかったためここから自在に持ち運び。クリスタル・パレスのバックラインとアンカーの保持を阻害するものは何もなかった。

 というわけでサイドから突破を狙うクリスタル・パレス。右のWGの先発に抜擢されたオリーズはボールの持ち方とか止まり方に面白さはあるものの、連携面も含めてまだ途上という感じ。同サイドのIHのギャラガーとはまた相乗効果までは生み出されていなかった。ただ、これまでは右サイドのパレスの攻撃はウォードがボトルネックになっていたので、大外で仕事ができそうなオリーズの出番は今後増えていくかもしれない。

 一方で、左サイドはベンテケとエドゥアールが近い位置でプレーすることで突破を図る。大外のミッチェルはクロスを上げるだけでなく、クロスで飛び込む役割まできっちりこなす働き者である。先制点はこのミッチェルのクロスから。ギャラガーのタメを引き取ったミッチェルのクロスを叩き込んだのはベンテケ。後半まで時間はかかってしまったが、保持の時間を多く過ごす中でなかなか手の届かなかった先制点をようやくゲットする。

 しかし、ニューカッスルも黙ってやられているわけではない。打開の策になるのは相変わらずサン=マクシマンのドリブル、そしてセットプレーである。前任者から相変わらず様子が変わっていないセットプレーというクリスタル・パレスの弱みはこの日も駄目な顔を覗かせる。ニューカッスルの同点弾は確かに綺麗なウィルソンのバイシクルではあったが、いくらなんでもエリア内で攻撃側の選手にボールを触られすぎだろう。これだけ触られてしまえば決まっても仕方がない。

 最終盤、再度ミッチェル→ベンテケのクロスで勝ち越し弾を挙げたかのように見えたが、これはグエーヒのファウルでギリギリ取り消しに。喉から手が出るほど欲しかった勝ち越しゴールをギリギリで取り上げられてしまい、これでパレスは6つ目の引き分けである。

 この日もお祓いに行きたくなるような引き分けになったクリスタル・パレス。しかし、これだけ続けば流石にたまたまではないだろう。軽さの目立つセットプレーを改善しなければ、保持の支配が緩む終盤に失点のリスクは減ることはない。保持で変化を感じるだけに、まだ手付かずのセットプレーを改良して早く変化を勝ち点に結びつけたいところである。

試合結果
2021.10.23
プレミアリーグ 第9節
クリスタル・パレス 1-1 ニューカッスル
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:56′ ベンテケ
NEW:65′ ウィルソン
主審:ダレン・イングランド

④エバートン【8位】×ワトフォード【16位】

画像4

■まったりムードを吹き飛ばす雪だるま式の悪循環

 前節はリバプール相手に5失点と就任早々大クラッシュを引き起こしてしまったラニエリのワトフォード。今節は同じマージーサイドに本拠地を構えるエバートンとの対戦である。

 ワトフォードはメンバーこそ多少入れ替えたものの、前節の課題を覆い隠せていたとは言い難い。WGの守備位置が高い割には後続がついてこず、WG-SB間にぽっかり空くスペースを使いながら、エバートンに前進を許す。もともとエバートンもオープンな撃ち合いの方が得意なチーム。序盤から殴り合いとなった一戦は早々にホームのエバートンが先制点を奪う。

 決めたのはゴードンのカウンターからのデイビス。手薄なサイドからボールを押し下げたエバートンがCHの攻撃参加で圧力を上乗せし、一気にワトフォードのゴールを打ち破って見せた。

 前に出ていけば間延びし、後ろに構えれば長いボールを飛ばされるしでなかなかきっかけを掴めないワトフォード。しかし、同点弾は突然に。セットプレーから前半の内に追いついてみせる。見事なセットプレーではあったが、エバートンの守備陣はほぼ動くことができなかったのは気になった。

 それでも試合はエバートンが優勢だった。前後分断で生まれるギャップをついてエバートンは前進できていたし、カウンターの好機をワトフォードが活かせる感じもしなかった。メンバーが代わっても展開は同じ。リシャルリソンの久しぶりのゴールでリードを奪った70分台はこのまままったり試合が終わるものと思えた。

 しかし、流れを変えたのはミスの連鎖。イウォビ、デイビスの2人のクリアミスで再度ワトフォードにコーナーを与えると、これをクツカが押し込み同点に。

 ここからは流れは一気にワトフォードに。もともとドゥクレがいてなんとか成り立っていたCHの守備範囲に丸投げするやり方はこの日も健在。ただし、ドゥクレがいないので純粋に機能性は落ちる。CHがカバーできない範囲はCBがカバーに出てくる。エバートンの守備は前から取る試みを積極的に行う分、後ろへの皺寄せが雪だるま式で積み重なっていく守り方である。

 同点にされた直後、展開がもたらす焦りからか、ワトフォードのカウンターに対してゴドフレイが前に出ていきあっさり交わされてしまう。CBがリスクを先送りにすれば当然その先にはGKしかツケを払う存在はおらず、そこを破ったワトフォードにあっさり逆転を許す。

 そこから先はエバートンの守備陣の拙いPA内での対応が目立つばかり。今季ここまでの鬱憤を晴らすかのようにゴールを積み重ねるワトフォードを前に、何もできなかったエバートン。ミスの連鎖とセットプレーの拙さで明け渡した主導権の代償は高くつくことになってしまった。

試合結果
2021.10.23
プレミアリーグ 第9節
エバートン 2-5 ワトフォード
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:3′ デイビス, 63′ リシャルリソン
WAT:13′ 80′ 86′ キング, 78′ クツカ, 90+1′ デニス
主審:グラハム・スコット

⑤リーズ【17位】×ウォルバーハンプトン【10位】

画像5

■局地戦という課題をクリアしたゲルハルト

 非常に落ち着かない状況から入ったこの試合の立ち上がり。ボールが行き来する展開の中で、先制点を得たのはアウェイのウルブス。縦に早い状況で互いの守備陣は軽い対応が続いていたが、ババを引いたのはハリソン。サイドでの雑な守備対応から簡単にエリアにボールを入れられることに。最後に決めたのは量産体制に入っているファン・ヒチャンである。

 前節の3-3-3-1から通常のフォーメーションに戻したリーズだが、なかなかリズムまでは通常運用と行かないのが直近のリーズの苦しいところ。長い展開からホルダーを追い越す動きのコンビネーションでの前進が本来のリーズの攻撃の主流。いわば、フリーで簡単に攻めることができる選手を作るために走り回るというのが彼らの流儀である。

 だけども、この試合のリーズは大きな展開が少なくむしろアタッカーの局地戦を強いられる。フリーの選手を作れないリーズにとって攻め手の生命線は個で剥がせるアタッカーである。今日のメンバーなら無論ラフィーニャである。

 ちなみに、ウルブスにとってはこの攻め方は通常営業だ。WGへの負荷が高い戦い方は彼らの常である。リーズと戦うときは彼らのペースに巻き込まれることが多いのだけど、主力が負傷でそこまでの神通力が及ばず、この試合ではむしろリーズがウルブスの沼に沈むことになった感だ。互いに中盤で攻めあぐねながら、前に出ていけずアタッカー頼みの展開が続く。

 そんな中でラフィーニャが負傷というリーズに大誤算の状況が発生する。サマーフィル、ゲルハルトと交代選手に経験のない選手を使わざるを得ないリーズ。非常に苦しいやりくりである。

 もともと、保持に対してラインを下げ気味で対応していたウルブス。リードしている状況と、リーズの苦戦の仕方を見て、このやり方である程度いけると踏んだのか、それとも普通に次の一手が見えてこなかったのかはなんとも言えないところではあるが、終盤にはウルブズにも攻めの糸口がなかったのも確かである。

 そのため、機会を得ることは問題なくできていたリーズ。あとは攻略だけ。しかし、挑む必要があるのは彼らにとって苦手なアタッカーの個の質が問われる局地戦である。

 この状況を打開したのは途中交代のゲルハルト。童顔の見た目とは全く異なるゴリゴリのプレースタイルでドリブルに挑み続ける。そのご褒美は後半追加タイムに。セメドのファウルを誘い、PK獲得に漕ぎ着けたのはそのゲルハルトだった。

 苦手な局地戦に挑み、最後の最後に結果を出した若手の活躍により、土壇場で勝ち点を稼ぎ出したリーズ。ウルブスは前節とは逆に後半追加タイムに勝ち点を失う結果になってしまった。

試合結果
2021.10.23
プレミアリーグ 第9節
リーズ 1-1 ウォルバーハンプトン
エランド・ロード
【得点者】
LEE:90+4′(PK) ロドリゴ
WOL:10′ ヒチャン
主審:ロベルト・ジョーンズ

⑥サウサンプトン【15位】×バーンリー【18位】

画像6

■チェルシーに圧倒的感謝!!

 今季もスロースタートでいまだにシーズン初勝利を挙げることができないバーンリー。今節は先週末に一足先に未勝利軍団から抜け出したサウサンプトンのホームに乗り込み、今節こそ初勝利を目指す。

 試合は立ち上がりから落ち着かない展開が続いた。これはサウサンプトンが比較的縦に早いプレーを選択する事が多かったからである。ゆっくりビルドアップする際には必須と言っていいウォーカー=ピータースをベンチに置いたことからも、この日のサウサンプトンは比較的早く攻め込むことを決めたのだろう。

 もちろん、バーンリーはこの展開は織り込み済み。というよりも大歓迎と言った方が正しいかもしれない。中盤が間延びしたまったりとした撃ち合いこそが彼らの得意な展開。この日、サウサンプトンが選んだプランはバーンリーにとってもやりやすいものだった。

 バーンリーがリベンジしたのはシティ戦でテストしたコルネのトップ起用。先制点を取ることでコルネは早速結果を出したと言えるだろう。クロスに合わせたこのシーンではサウサンプトンのバックラインが対応する選手が定まらない状態でクロスを迎え撃つ形になってしまった。バーンリーはブラウンヒルの高い位置への侵入が助演男優賞。比較的、この日はクロスに対して人数を揃えられることが大きかったように思う。

 4-4-2同士でズレを作らなければいけないサウサンプトン。上下動で動ける選手をきっかけに糸口を見出していく。メインとして使ったのは降りていくレドモンド、そして高い位置に出ていくリヴラメントと縦方向のギャップを作り出す意識が目についた。

 特に目立ったのは後者。右サイドからギャップを作り続けて押し込むと、最後はリヴラメント自身がセットプレーから押し込んで同点。後半早々に勝ち越し点を決めたブロヤも含めて、サウサンプトンはチェルシー産のタレントにお世話になりすぎである。

 チェルシー産タレントの活躍で前に出たサウサンプトンだったが、コルネが再びスーパーゴールで同点に。試合を振り出しに戻す。その後はサウサンプトンが保持の時間を増やして試合を進めていったが、バーンリーが躊躇ないファウルでプレーがぶつ切りになったこと、そしてサウサンプトンもウォード=プラウズの不在で中盤から前線の供給に決め手を欠き、得点までには至らなかった。

 試合はそこからは得点の匂いが出ないままの引き分けに決着。サウサンプトンの連勝も、バーンリーの初勝利もお預けになってしまった。

試合結果
2021.10.23
プレミアリーグ 第9節
サウサンプトン 2-2  バーンリー
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:41′ リヴラメント, 50′ ブロヤ
BUR:13′ 57′ コルネ
主審:クリス・カバナフ

⑦ブライトン【4位】×マンチェスター・シティ【3位】

画像7

■制御も加速も格の違いが顕在

 好調だった序盤戦は対戦相手にも恵まれた感もあったブライトン。いよいよ今節から上位勢に挑むフェーズに入ることになる。そのトップバッターとなる対戦相手は昨年の王者であるマンチェスター・シティである。

 ブライトンの非保持のフォーメーションは少しわかりにくかったが4-4-2と評するのが妥当だろう。非保持の形が読みにくかったのは、最終ラインが割と人に向かう意識が強く、DFラインに穴を開けた状態になることがしばしばあったから。特に多かったのは縦横無尽に動き回るベルナルドについていくバーン。フォーデンやベルナルドなど、降りていく選手に対してはブライトンのバックスは厳しくついていく。

 そのせいもあって、最終ラインを形成する選手は流動的。大外のグリーリッシュに出ていく選手も時折変わったりなど、バタバタした対応になっていた。

 このチャレンジングなプレッシングに対して、ブライトンがそれに見合ったリターンを受け取れたかどうかは怪しい。確かに何回か引っ掛けることでショートカウンターの機会を得ることはあった。しかし、ブライトンのバックスは基本的には機動力では不利。ベルナルドとバーンのマッチアップは動く範囲が広ければ広いほど前者が有利になる。

 そのため、ブライトンは単純な脚力で振り回されて逃してしまい、結局最終ラインに穴が空いた状態でバタバタとカウンターを迎え撃つことになってしまう機会が多かった。シティが憎いのはハイプレスを狙うブライトンの中盤の裏にフォーデンを忍ばせて、出てきたところの裏返しをきっちり狙っているところである。

 それだけでなく、ブライトンは保持でもシティにプレスで捕まりショートカウンターを喰らう機会も。こちらも整ってない状態で攻撃を受けまくるきっかけになる。あれよあれよというまに3失点したブライトンであった。

 後半はシティのプレスが落ち着いたことで、徐々に敵陣に押し込む機会を得ることができたブライトン。特に効いていたのはサイドのプレイヤーたち。左はククレジャ、トロサール、そして右は交代で入ったランプティが躍動しPAに侵入する。その結果、トロサールから動き出したムウェブへの対応でエデルソンがPKを献上。これをアリスターが決めて一気に反撃を狙うブライトン。

 しかし、このPKでシティは真面目に試合を寝かせにかかる。こうなると手も足も出なくなってしまうのだから、奴らは強い。攻撃の機会はすっかり奪われてしまい、反撃どころか逆に4点目を浴びることになったブライトン。上位連戦の第一ラウンドは厳しいしっぺ返しを喰らうことになった。

試合結果
2021.10.23
プレミアリーグ 第9節
ブライトン 1-4 マンチェスター・シティ
アメリカンエキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRI:81′(PK) アリスター
Man City:13′ ギュンドアン, 28′ 31′ フォーデン, 90+5′ マフレズ
主審:ケビン・フレンド

⑧ブレントフォード【9位】×レスター【11位】

画像8

■防戦一方の展開に輝いた新戦力

 チェルシーを苦しめながらも勝ち点を奪えなかったブレントフォードと、マンチェスター・ユナイテッドを下し、ここから上昇気流に乗っていきたいレスターの一戦。

 立ち上がりは非常に一方的な展開。ホームのブレントフォードがレスターを攻め立て続ける流れだった。この日の前半のブレントフォードは非常にベーシックな彼らの形。まずは楔を入れて前線の選手に収める。そしてそのポストでの落としをIHが拾う。ここからサイドに流してクロスに向かうという流れである。

 レスターの3-4-1-2はサイドの陣形が手薄だったので、ポストさえできてしまえばブレントフォードは楽に大外までつないでフリーの選手を作ることができる。エースのトニーは初めのポスト役だけでなく、サイドに流れる役割もこなすし、もちろんエリア内でクロスの受け手となることもできる。改めて万能性を示す一戦となった。

 ブレントフォードの振る舞いで少し気になったのは問答無用でクロスに行ってた前節とは異なり、サイドに入ってから侵入を試みるケースが多かったこと。組み立てのところを色々いじってくるパターンはこれまでにもあったけど、結局はクロス攻勢に出るところは統一されていたので、ちょっと違和感があった。

 そんなことをやっている中でワンチャンスをものにしたレスター。FKの流れからティーレマンスがスーパーシュートを叩き込み、試合の展開に逆らうように先制点を決める。

 その後も大きく展開は変わらず。右サイドから裏を狙いながら前進を試みるレスターだが、ブレントフォードに押される状況は前半を通して見られた傾向。しかし、得点はレスターという状況でハーフタイムを迎える。

 後半になるとやや展開が変わり、ボールを持つ時間が増えるレスター。一方のブレントフォードはややライン間が広がる場面が目立つようになり、レスターに中央からボールを運ばれる場面が増える。

 ブレントフォードは保持の部分でも微妙な変化。CBが持ち運ぶ機会とロングボールの頻度が上がった。この部分はややアバウトな方向に流れ過ぎてしまったか。サイドに流れてクロスを上げるところまでは割とシステマティックなチームなので、そこを怠った分後半はガチャガチャしてしまった感である。

 ブレントフォードは追いつくことはできたが、結局はカウンターからレスターが決勝点を生む。陣地回復においてはハーフタイムで交代したヴァーディの穴を埋めたダカが素晴らしかった。決勝点の場面も裏に引っ張りながらマディソンのゴールをアシスト。動き出しで勝負ありな場面だった。

 決して楽な展開ではなかったが、少ないチャンスをものにしたレスターの強かさが際立った結果となった。

試合結果
2021.10.24
プレミアリーグ 第9節
ブレントフォード 1-2 レスター
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:60′ ヨルゲンセン
LEI:14′ ティーレマンス, 74′ マディソン
主審:シモン・フーパー

⑨ウェストハム【7位】×トッテナム【5位】

画像9

■崩しきれなかった籠城作戦

 上位対決となったロンドンダービー。CL出場権を狙いトップ4争いの主導権を握るために負けられない一戦である。

 試合は互いに深いDFラインから入る慎重な立ち上がりとなった。特に深いDFラインが顕著だったのはウェストハムの方。トッテナムのCBには持たせて良し、1stプレスラインは相手のCHと深めに設定する。そして相手のラインが前進するたびに素直にラインを下げる。

 トッテナムはCHがDFラインに入り、トップ下のエンドンベレが中盤に入ることで相手を引き出そうと試みるが、ウェストハムの守備陣はほぼその誘導には乗らない。その分、レギロンは高い位置を取るがそれでも相手のDFの裏を取るまではいかず。深い位置からボールを運ぶルーカスや、ソンとケインに早めに当てたりもしてみるが、結局はウェストハムがラインを下げる速度より早く、相手を下げさせる場面が見当たらない。

 一方のウェストハムの保持においては2列目が絞りながら中央からスムーズに進むルートを消す。六角形を使いながら相手を閉じ込める感じまではいかなかったけど、今季トッテナムが意識している中央を締める指針にそぐうやり方である。

 だけども、ウェストハムはトッテナムほどは困らない。裏への攻撃からゴールに迫ったり、大外からボールを進めることで動線を確保。ウェストハムはソーチェクがエリア内に突撃する時間を作れるか、スキップがハーフスペースを埋めるのをが間に合わなかったときの逆サイドの大外などからクロスでチャンスを作っていく。

 劣勢をスコアレスでしのいだトッテナムは後半徐々に盛り返していく。スキップ、エンドンベレあたりがエリア内に出ていけるようになり攻撃に厚みが出てくる。

 しかし、先制したのはウェストハム。いける!と思った矢先にレギロンのパスミスから得たCKで先制するウェストハムはしたたかである。

 ここからは彼らの得意な籠城作戦。トッテナムはエメルソンも含めてSBに高い位置を取らせることで反撃を試みる。SBがとる高い位置をベースに考えれば、レギロンに代えてブライアン・ヒルというのはファイアーでもなんでもなく、役割にあった選手交代といってもいいくらいだった。

 しかし、結局追いつくことはできなかったトッテナム。したたかなウェストハムにからめとられ、上位追撃のチャンスを逃すこととなった。

試合結果
2021.10.24
プレミアリーグ 第9節
ウェストハム 1-0 トッテナム
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:72′ アントニオ
主審:ポール・ティアニー

⑩マンチェスター・ユナイテッド【6位】×リバプール【2位】

画像10

■穴を突く隙すらなし、圧巻のサラーが赤い悪魔を粉砕

 負ければスールシャールの解任も囁かれる形で迎えることとなったナショナルダービー。だが、そんなマンチェスター・ユナイテッドの状況とは裏腹に試合はあっという間にリバプールが先制する。

 トリガーになったのは右サイドの守備。どうやら、グリーンウッドがファン・ダイクを見ることになっていたらしく、ロバートソンの担当は宙に浮いてしまった形になる。そもそもの守り方の初期設定の担当のバランスが良かったか?というのはあるものの、1失点目の場面でワン=ビサカのチェイスは無謀なもの。バックスに次々を穴を開けさせることになっている。

 基本的にはこの形が続くことになる。バックラインの強引なチェイスにより、最終ラインは極端に左右に偏在化しリバプールは横断さえすれば簡単にフリーの選手を作り出すという仕組みだ。猛威を奮ったのはケイタとサラー。ユナイテッドの選手がスライドしてお留守になった右サイドで自由自在に暴れまわって、次々と得点を重ねていた。

 こういうビックマッチは強度が高いプレスでの張り合いに持ち込むことで、結果を手にしてきたスールシャールだけど、ロナウドの到来でそのメソッドの採用は難しくなっている。その分のツケを中盤やバックラインが積極性で補おうとしているので、歪んでいるように見える。

 ただ、リバプールも磐石だったか?と言われるとそういうわけでもない。彼らが即時奪回を目指して敢行するハイプレスには結構穴もある。ユナイテッドはMF-DFのライン間に比較的簡単に楔を入れて、ブルーノ等のフリーな選手にボールを入れることができていた。そこからボールを左右に振りながら、攻めていけば光は十分。特に右からカットインできるグリーンウッドはリバプールにとって鬱陶しい存在だった。

 だけども、そんな話ができたのは前半の追加タイムに差し掛かるまで。明らかに歪みの量が多かったユナイテッドは3失点目を喫すると、どうも感情のコントロールが効かなくなっていたのか不要なファールを連発。

 リバプールが得点を重ねていくのを横目に、ユナイテッドはロナウドを皮切りに後半のポグバの退場まで4枚のイエローカードと1人の退場者を15分余りで出すという形で試合を完全に壊してしまった。最後のポグバの退場でケイタが悲劇的な負傷交代をした時点でサッカーとしての試合は完全に終了。あとは徐行モードでただ時間を過ごしていくという形に。

 明暗くっきりのナショナルダービー。リバプールにも粗があったのは確かだが、触れさせなければ問題なし。ハットトリックのサラーを中心に格の違いを見せつけたリバプールがオールドトラフォードで5得点の特大インパクトの勝利を挙げた。

試合結果
2021.10.24
プレミアリーグ 第9節
マンチェスター・ユナイテッド 0-5 リバプール
オールド・トラフォード
【得点者】
LIV:5′ ケイタ, 13′ ジョッタ, 38′ 45+5′ 50′ サラー
主審:アンソニー・テイラー

  おしまいじゃ!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次