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「どっちも悪いに決まってる」~2021.8.28 プレミアリーグ 第3節 マンチェスター・シティ×アーセナル レビュー

スタメンはこちら。

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目次

レビュー

■プレス破壊はベルナルドから

 基本的にはチェルシー戦の構図と同じ形だったと思う。前線と中盤で前から嵌めつつ、後方ではリトリートでブロックを組み迎え撃つという二段構えである。

 前方ではオーバメヤンとサカが並ぶ2トップで、その後方からスミス・ロウとウーデゴールが二段目のプレス隊として出ていく。

 中盤よりも前の陣形は縦に長い形だったので、おそらくカウンターにおいてシティのブロックを縦に一気にぶち抜こうと考えたのだろう。いつもに比べてサイドの高い位置に人がいなかった。

 アーセナルの中盤は微妙に役割が違っていて、ウーデゴールとジャカはそれぞれロドリとギュンドアンをマークする一方、スミス・ロウはウォーカーとベルナルドを両睨みしている形。

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 オーバメヤンはディアスを監視する意識は強いけど、サカはラポルトとカンセロの間でこちらも両睨み。人と人を噛み合わせないのはどこかチェルシー戦と似ている。

 立ち上がりの5分くらいはある程度プレッシングは効いてはいたと思う。だが、この程度のプレスなら簡単に答えを出すのがマンチェスター・シティである。

 キーとなったのはベルナルド。スミス・ロウは彼とウォーカーの両睨みの役割というのはすでに述べた通り。サイドに出る場合はベルナルドをオーバメヤンに渡して、スミス・ロウがウォーカーにチェックにいく。

 その仕組みを理解したベルナルドは大きく低い位置まで下がりボールを迎えにいく。こうなるとスミス・ロウは距離的に両睨みが難しくなる。そもそも後方でエデルソンがビルドアップに参加しているシティは後方の出し手が基本的にオープン。ベルナルドへのプレスを躊躇うと、そこから前進の道筋ができる。

 一箇所に穴が開くとそこから水漏れするアーセナル。次の段階は中央のトーレス、そしてチームが前進すると見るや否や前線に飛び出すギュンドアン。ギュンドアンのマークについていたジャカは降りてくるトーレスを見るのか、上がっていくギュンドアンを見るかの判断を強いられる。

 ベルナルドやトーレスが動き回ることでジャカとスミス・ロウに判断を強いる。そしてそれを下支えするのはフリーでボールを持てるエデルソンの攻撃参加である。

 繰り返しになるが、アーセナルのプレッシングは形は違えどチェルシー戦の焼き直しである。個々の判断に委ねるプレッシング。でもまぁ、これは仕方ないと思う。シティ相手にもっと精度の高いプレスができるなら、そもそもチェルシー戦であんなことになっていない。1週間でなんとかなるならプレシーズンでもっとプレッシングは形になっているはずだ。

 ちなみにロコンガがいないのは、こうした個々の判断におけるプレスの部分の能力で見劣りするからだろう。さらに言えば5-3-2の陣形で縦に早いカウンターでの反撃を見込む展開において、ピッチを左右に振るスキルが効く流れを想定していなかったからという理由もありそう。うまくいく、いかないはともかく理屈はわかる話だ。

■プランが壊れたのは•••

 というわけで立ち上がりのプレスがハマり、そこから先制点をとる以外はこの試合のアーセナルの勝ち筋はどうみてもなかった。それはプレビューでも述べたとおりである。

 実際にベルナルドは動き出していた。プレスで効いていないエリアに顔を出し、フリーとなりボールの運び役として機能している。ものの数分でアーセナルのプレスが怪しくなってきたのは確かだ。

 しかしながらこの試合を決定的に壊したのはプランではなく選手個人のレベルでのパフォーマンスだろう。シティの先制点のクロス対応はシステムの不備というよりはチェンバースの個人の対応がお粗末だったことに起因する。2失点目におけるセドリックの対応も同様だ。彼に関しては前節のチェルシー戦で個人のパフォーマンスが厳しいものがあると述べたばかりだったので、この試合でもこのレベルのパフォーマンスを見せたことには失望を禁じ得ない。

 もちろん、彼らを送り出したのはアルテタである。ただ、いくらなんでも個々のレベルのプレーがあまりにも低い。この試合のプランを先に壊したのは右サイドのバックスの守備が起因である。誤魔化しながら勝つしかない試合において明らかにそのプランを手放してしまった。そして1失点をきっかけでプレスのチャレンジをやめてしまって5-4-1での撤退を開始するアーセナル。こうなるともう無理である。リスクがあってもまだ前に出た方が可能性があった。

 ただし、誤魔化しながら勝つしかないチームに仕上げたのはアルテタであることに触れないわけにはいかない。アーセナルは選手が悪いのか?監督が悪いのか?という二元論の域はすでに終わっている。どっちも悪い。そしてフロントも。というかフロントが一番悪い。

■最終ラインのヘルプをつけてなお止まらない

 で、退場者を出したところで試合は終わりである。マンチェスター・シティの崩しについて少し触れるのならば3点目のシーンは非常に簡単にボールを動かしていた。アーセナルはセドリックがジャカと同じ位置に出ていきながら4-2-1-2のような形で迎撃するシーンだった。

 しかし、セドリックとサカの間にはトーレス。そしてエデルソンは相変わらずフリーである。というわけでズドンと真ん中を割ったエデルソン。

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 ちなみにセドリックの逆側の脇にはギュンドアンもいたのでエデルソンは好きな方にボールを通せる形である。

 そうなるとシティは一気に加速。確かに背走させられる形は厳しいというのはわかるけど、グリーリッシュと並走するようにお付き合いしながらPAまでズルズル下がるチェンバースを見ると、本当にできることが何もなかっただろうかと言いたくなってしまう。

 HTでエルネニーを入れたのは3失点目のシーンのセドリック(あれは追いかけすぎだけど)のようにサイドから前に出ていく選手がいるときに最終ラインに入ってカバーリングをする役割をするためだろう。アーセナルは5-3-1で守っていたので、サイドの選手が前に出ていく機会はある。そのカバーリングを任されたのだろう。

 4点目のロドリのシュートはそのエルネニーの最終ラインのカバーリング意識を逆手に取り、彼が最終ラインを埋めたことで空いたバイタルから打ち込まれたもの。色々と容赦がない4点目である。

 アルテタがHTに守備的な交代をすることで失望の声もあったけど、3失点目を見る限りはそういう気持ちになってもおかしくはない。その上で4点目を取られたのは切ないけども。この試合の交代には正直あまり興味がない。焼け石にどう水をかけるかは個人的にはどうでもいい。次に石を焼けないようにして欲しいと願うばかりである。

 試合はまぁそんな感じ。最後にもう少しアーセナルについて。この試合の選手の質については当然問題があるし、よくなる余地はある。トーマス、ホワイト、ガブリエウ、ぺぺ。そしてオーバメヤンやサカにはまだコンディションの問題がありそうである。そういう意味ではまだ言い訳は立つ。

 ブレントフォードはともかく、チェルシーとシティに勝てないチームはアーセナルだけではないだろう。降格の可能性について考えるのはもう少し先でも遅くはないと思う。でも、点は取れてはいない。プレスも機能していない。

 そして、それは今に始まった事ではない。昨シーズン、大事な大事なビジャレアル戦でプレッシングが効かなかったのは、記憶に新しいところ。攻撃においても守備においてもやりたい展開を具現化するには引き出しは足りていない。仮に降格争いに首を突っ込まなかったとしても、これでは欧州カップ戦争いはまだ先の話になってしまう。

 チェルシーとの試合もそうだけど、マンチェスター・シティとの一戦はこの試合がどうこうというよりはここに辿り着くまでの道筋の差である。やることは多いし、道のりは長い。プレシーズン1回、アルテタに託しただけでは問題は簡単には解決しないことはわかった。また今季も1つ1つ積み上げていけれるかを見定めながら、考えていかなければいけない苦労の絶えないシーズンになりそうだ。

あとがき

■CF不在はアキレス腱になるか

 ノリッジ、アーセナルとチームとしての底力を問われることのない一戦になってしまった。リバプール、チェルシーと優勝争いのライバルたちが好発進を決める中で、シティの直近2節はド派手ではあるけども力を測れた試合だったとは言えないだろう。

 とりわけ、今夏のリクルートがうまくいかなかったCF問題のところ。フェラン・トーレスはいいシーズンのスタートを決めたが、懸念はこのポジションになるだろう。ジェズスが今季は右を主戦場としているということを踏まえればこのポジションは実質本職が不在。CLやビックマッチのようなよりシビアな試合においてこの部分がどう出るかが気になるところである。

■準備をしっかり!を繰り返すほかない

 アーセナルについてはもう本文中で述べたとおりである。選手の質を踏まえても対戦相手を踏まえても、流石にこのフォームがいつまでも続くとは思えないが、それでもそもそも高くなかったファンの想定をさらに下回ってしまったのは残念である。

 代表ウィークで前を向く準備はできるかもしれないが、プレシーズンで大きく変わらなかった仕組みの整備や柔軟性の向上ははっきり言って期待するのは難しい。何ができるのか、何ができないのかを区別しながら次の相手にどう立ち向かうかを見定めて欲しいところ。1週間の準備期間は土台ができていないチームにとってはプラスに働くであろうことくらいしか現状の体制では前を向ける材料はない。

試合結果
2021.8.28
プレミアリーグ 第3節
マンチェスター・シティ 5-0 アーセナル
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:7′ ギュンドアン, 12′ 84′ トーレス, 43′ ジェズス, 53′ ロドリ
主審:マーティン・アトキンソン

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