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「Catch up Premier League」~Match week 31~ 2024.4.2-4.4

目次

ニューカッスル【8位】×エバートン【16位】

セットプレーが明暗を分けた後半

 立ち上がりからボールを持ったのはニューカッスル。エバートンは2トップが縦の関係を作り、中盤を噛み合わせる形で守っていく。

 自陣では余裕があるニューカッスルは縦パスを入れて裏をとっていく。ニューカッスルが利用したのはイサクとバーンズの縦関係。前節、ウェストハムに対しての大逆転劇に貢献したコンビから裏をとっていく。

 この関係性からニューカッスルはあっという間に先制ゴールをゲット。前節とは逆のイサクが抜け出し役を担い、シュートコースを作り出すボディフェイクで先制ゴールを手にした。

 これ以降もニューカッスルは左サイドをつっついていくことに終始。エバートンを押し込みながら攻略していく。

 エバートンは保持に回るとサイドから押し下げつつセットプレーで勝負。右サイドのベトを軸に少ない手数から敵陣に迫っていく。ただし、これはニューカッスルのカウンターの機会にも。こちらは左サイドを軸にひっくり返す動きを見せて、前に出てきたエバートンのDFラインの背後をとる。エバートンは前に出ていくにつれて、ライン間の管理がアバウトに。ニューカッスルにライン間の侵入を許す。

 苦しい展開が続くエバートンは強気なプレスでスタート。しかしながら、ターコウスキが咄嗟の対応でオウンゴールのような形になってしまうなど、バタバタした対応に。

 そんな状況に乗じて次にネットを揺らしたのはニューカッスル。だが、これはわずかにオフサイドで取り消し。デザインされたセットプレーは紙一重で決めることができなかった。

 それ以降も優勢だったのはニューカッスル。サイドからの裏抜けから押し下げての折り返しから決定機を迎えるが、イサクの決定機をマイコレンコが阻止するなどギリギリのプレーでなんとか失点を食い止める。

 エバートンはお馴染みになっている前線の枚数増でのパワープレーに移行。キャルバート=ルーウィンとシェルミティの2トップでニューカッスルに圧力をかけていく。

 ようやく押し込むフェーズに踏み込んだエバートン。同点のきっかけになったのはセットプレー。ニューカッスルはダメットのホールディングでPKを献上してしまう。

 このPKをキャルバート=ルーウィンがゲット。ドゥブラーフカに触られてしまって冷や汗をかいたが、なんとか追いつくことに成功した。

 追いつくところまでは辿り着いたが、試合をひっくり返すところまでは辿り着かず。試合は1-1での痛み分けとなった。

ひとこと

 キャルバート=ルーウィンのPKは見ているこっちがヒヤヒヤする。

試合結果

2024.4.2
プレミアリーグ 第31節
ニューカッスル 1-1 エバートン
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:15′ イサク
EVE:88′(PK) キャルバート=ルーウィン
主審:トニー・ハリントン

ノッティンガム・フォレスト【17位】×フラム【12位】

違いを見せつける3得点で畳み掛け成功

 なんとか前節残留圏に復帰したフォレスト。この立場を死守するためにも今節もアーセナルは負けられない試合に挑むこととなる。

 互いに守備は中盤を噛み合わせる形。だが、クオリティには雲泥の差がある立ち上がりだった。上々だったのはフォレスト。ウッドが出ていく動きを見せると中盤からダニーロがこのアクションに呼応。一気にプレスに出ていく。

 一方のフラムは緩慢さが目立つ出来に。枚数は合わせているはずなのだけども、簡単に横断を許しながらフォレストに振り回される展開が続くことになってしまう。

 フォレストの先制点は実にあっさり。ロングカウンターの起点になったのはギブス=ホワイト。中盤で華麗なターンをかますところから一気に前進。裏抜けするハドソン・オドイが先制ゴールを仕留める。

 さらにフォレストは自陣からの保持から追加点をゲット。ムリージョの縦パスからウッドが反転を決めてゴール。ゴールから距離はあったが、レノの対応はかなり緩慢。バッシーの寄せも甘くなかなかにフラムらしくない守備だった。

 甘い中盤の受け渡しやバックラインの粘りのなさにマルコ・シウバの我慢も限界。前半途中に怒りの3枚替えを敢行する。この交代以降は押し込むことができていたフラムだが、リトリートからの守備の強度はフォレストは十分。サイドのスペースを埋めるのが間に合っており、フラムの反撃を許さない。

 逆に中盤の緩慢な守備を利用してフォレストは3点目。ペレイラのサボりからフラムは1つずつ守備がずれていってしまった印象だ。

 後半開始直後にフラムはセットプレーから1点を返す。だが、ゆるさは相変わらずでなかなか明確な反撃のきっかけを作ることができない。

 逆にフォレストはダニーロのキープで反撃のきっかけを作ったり、スポットでサイドの裏抜けを見せるなど局面でのカウンターから一気に攻め込む形を見せていく。

 押し込む機会こそ後半に増えたフラムだが、明確な活性化を最後まで行うことができなかったフラム。セットプレーからの好機はそれなりに作れていたが、オープンプレーからの決め手となる攻撃を構築することはできない。

 前半に積み上げた3得点を守って逃げ切ったフォレスト。クオリティの差を見せつける畳み掛けて貴重な3ポイントの積み上げに成功した。

ひとこと

 前半のフォレストのどこからでもかかってこい感はお見事だった。

試合結果

2024.4.2
プレミアリーグ 第31節
ノッティンガム・フォレスト 3-1 フラム
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:9′ ハドソン・オドイ, 19′ ウッド, 45+3′ ギブス=ホワイト
FUL:49′ アダラバイオ
主審:マイケル・オリバー

バーンリー【19位】×ウォルバーハンプトン【10位】

厚みを増す前線はジョーカーになりきれず

 立ち上がりから積極的に仕掛けていったのは勝ち点がどうしても欲しいバーンリー。高い位置からのプレスでウルブスにプレッシャーをかけていく。アイト=ヌーリがこれをプレスでスルスル回避していく形から試合はスタートする。

 ウルブスはプレッシャーをかけられてもこの場面のように自陣から落ち着いてキャリーしていくことを選択。人数をかけたショートパスの繋ぎからバーンリーの守備ブロックの攻略を狙っていく。CHの列を落とすアクションにサラビアが呼応する形でビルドアップの人数を確保していく。

 しかしながら、いつものノリで前に蹴ってしまうと手薄な前線はどうしても苦しい。アバウトなボールがチウォメに収まらずに流れていくあたりはウルブスがいつものノリからなかなか脱することができないことを表していた。

 一方のバーンリーもボールを持つ側に回れば落ち着いた保持でスタートする。カレンのサリーに合わせて、こちらも中盤に降りてくるフォファナやオドベールが起点になっていた。ただし、ウルブスの4-4-2はライン間の管理が非常にアバウト。受けた選手がよりフリーになりやすいという特徴を持っていた。よって深いところまで入り込むことができていたのはバーンリー。ボール保持側が攻める機会を与えられる試合で主導権を握る。

 そういう意味では先制点も順当な流れの中での出来事としていいだろう。右サイドからのクロスに合わせる形で入り込んだのは逆サイドのラーセン。ウルブスはSHを下げて守っていたにも関わらず、肝心なところでラーセンを逃してしまうという非常に不可解な対応を見せた。

 そんな苦しい状況でもウルブスはハーフタイム直前に同点ゴールをゲット。セットプレーからのアイト=ヌーリのゴールで試合を振り出しに戻す。

 だが、そのゴールを流れを変えることはなし。後半もまたバーンリーの保持でスタート。一方的なポゼッションに加えて、高い位置からのプレッシングから主導権を完全に引き寄せる。組み立ては2CB+2CHで行いつつ、大外はSBに任せる形でビルドアップを組み、敵陣に近づいていく。

 前線に起点がなかったウルブスはようやくクーニャの投入で前のターゲットを作ることができるように。これで前線の預けどころを作ってタメができるようになったというのは今後に向けても朗報である。

 一方のバーンズーもジェイ・ロドリゲスを前線に投入。クーニャほどの柔らかさはないのだが、決め手にかけるボックス内の厚みを増すことを期待されての投入となった。

 だが、前線の交代選手は均衡した展開を破るジョーカーにはなりきれず。ジリジリとした試合はそのまま幕を閉じ、1-1のドローで決着した。

ひとこと

 ウルブスに仕留められた前半終盤のセットプレーはバーンリーにとっては悔やまれる一撃となってしまった。

試合結果

2024.4.2
プレミアリーグ 第31節
バーンリー 1-1 ウォルバーハンプトン
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:37′ ラーセン
WOL:45+3′ アイト=ヌーリ
主審:トーマス・ブラモール

ボーンマス【13位】×クリスタル・パレス【14位】

前線活性化のタイミングはお早めに

 共に順位は中位。パレスはまだわずかに万が一の可能性を残しているが、残留争いには巻き込まれていない両チームの対戦となった。

 立ち上がり、両チームは強度の高い入りを披露。中盤を中心にバチバチとしたデュエルを見せる。やや優位を見せたのはホームのボーンマスの方。バックラインからのキャリーでパレスの中盤を揺さぶり、サイドから押し下げてゴールに向かっていく。

 5-4-1で受けるパレスは少しボールのつかまえどころを見つけられずにいた。押し下げられる状況に抵抗できず、自陣ゴールの近くでプレーする機会が増える。カウンターで縦へのスピードを出そうにもなかなか前に進むことができず、押し返すことができない。エゼがスピードに乗った状態を作りたいが、カウンターは必ずスローダウン。そうしたシチュエーションを作り出すことができない。

 しかしながら、勢いに乗り切れないのはボーンマスも一緒。珍しくアンカーに入ったスコットはパスミスが多く、パフォーマンスが不安定。ロスト後にプレスバックした味方にタックルをかますという珍プレーまで披露。リズムに乗ることができない。

 ということでパレスはボーンマスのミスからカウンターを発動。少しずつ敵陣に迫るようになる。そしてパレスはネットを揺らす。右サイドのマテタのポストから侵入し、ファーで待ち構えるエゼがフィニッシュ。だがこれはオフサイド。ゴールは認められなかった。

 後半も前半に引き続きクリーンなチャンスを作ることができない展開。そうした中でもやや変化を見せたのはスコットに代えてセメンヨを投入したボーンマス。アタッカーの増員で少しずつ勢いが出てくる。テコ入れが遅れたパレスはマテタに負荷が集中。前進の状況を作ることができない。

 この勢いの差はそのままスコアに直結。先制点を手にしたのはボーンマス。右サイドのセメンヨの抜け出しからクライファートがゴールをゲット。ついに均衡を破る。これ以降もセメンヨは推進力をもたらしてアクセントになっていた。

 パレスもエドゥアールを前線に入れるが活性化は時すでに遅し。均衡した展開を打開することに先手を打ったボーンマスが逃げ切りに成功し、勝ち点3を積み上げた。

ひとこと

 セメンヨ、なんでベンチスタートだったのだろう。

試合結果

2024.4.2
プレミアリーグ 第31節
ボーンマス 1-0 クリスタル・パレス
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:79′ クライファート
主審:グラハム・スコット

ウェストハム【7位】×トッテナム【5位】

交代に動いたジレンマ、動けないジレンマ

 ウェストハムの中盤は3センターの形。アンカーをソーチェクとしてIHにウォード=プラウズとパケタがトッテナムのCHについていく。

 トッテナムの先制点はまさしくそれを利用した形だった。CHに釣られるパケタの背後に侵入したウドジェを起点に大外のヴェルナーが加速。縦突破からマイナスの折り返しをジョンソンが仕留める。トッテナムとしては初手の攻撃の形から先制点を導いた格好になる。

 以降もトッテナムのこの攻略の形はテンプレ化。左右のMF-DFのライン間のハーフスペースに起点を作り、大外にボールを預けて縦突破からマイナスの折り返しでチャンスを作っていく。

 ウェストハムは少しずつパケタが位置を調整することでライン間のクローズに成功。少しずつカウンターを打てるようになる。すると、セットプレーから同点ゴールをゲット。GK付近にまとわりつき隊の一員であったズマがヘディングを沈めて追いつく。やや劣勢気味な展開の中で試合を振り出しに戻す。

 以降も試合の論点は同じ。ライン間に縦パスを通したいトッテナムとそれを防いでカウンターに移行したいウェストハム。試合が進むにつれてウェストハムはライン間のクローズとカウンターの起点として中盤からの加速に成功。ペースを引き戻す。チャンス構築はセットプレーがメイン。先制点に近い高い弾道を中心にトッテナムのDF陣を苦しめるボールを入れていく。

 局面での体のぶつけ合いも増えて、非常にタフな流れに。時間の経過とともに試合は見ごたえのあるデュエルが目立つ展開となった。

 後半の入りは前半の入りと同じくウェストハムはプレスに色気を見せたスタート。前半と異なったのはこの強気の姿勢が刺さったことである。ハイプレスからカウンターを発動し、一気にゴールを陥れに行く。ベンタンクールのパスミスは致命的なものであったが、ヴィカーリオがチームを救ってみせた。同点ゴールと似たセットプレーからの決定機を作るなど、ウェストハムが攻め立てる立ち上がりに。

 一方のトッテナムもすぐに反撃。ゴールにかなり近い決定機を作るなど、試合は両軍のゴール前で油断ができない展開となった。より悪い失い方でピンチを招いていたのはトッテナムの方。だが、ファン・デ・フェンとヴィカーリオの冷静な対応で事なきを得ていた。

 60分台はジリジリとトッテナムがペースを引き寄せる時間帯。ソンとジョンソンはもう一歩相手を剥がせればというところまで行けるように。サイド攻撃では右を軸にクロスをあげていく。交代選手が流れを変えそうな展開の中で、サールの投入でポロ以外にも飛び出す選手を作るなど、ポステコグルーは采配で変化をつける。テコ入れの方向性は右サイドからの崩しにフォーカス。ウェストハムのカウンターの運び屋であるクドゥスの位置を下げるという牽制の意味合いもトッテナムにはあったかもしれない。

 ウェストハムはカウンターでの前線の個人のキープへの依存度が高まっていく。アントニオ、クドゥス、ボーウェンは代えにくくなっていたし、中盤はアルバレスが出場停止でパフォーマンスがよくないフィリップスしかいない。モイーズは試合の流れを変える一手を見つけられずにいた。

 押し切りたいトッテナムだが、2列目と前線の交代選手がピリッとせず。足元で受けたがるクルゼフスキ、リシャルリソンが流れに乗ることができず、いなくなったスターターを恋しく思ってしまう出来だった。

 終盤には互いに決定機を生むなどいかにも局面での対人勝負の色が濃かったこの試合らしい終盤戦に。だが、どちらもゴールを生むことができないまま試合は終了。前半の1ゴールずつの引き分けで幕を閉じた。

ひとこと

 交代選手で動けないジレンマを抱えたウェストハムと動いたジレンマを抱えたトッテナムという感じの後半となった。

試合結果

2024.4.2
プレミアリーグ 第31節
ウェストハム 1-1 トッテナム
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:19′ ズマ
TOT:5′ ジョンソン
主審:ジョン・ブルックス

ブレントフォード【15位】×ブライトン【9位】

オープンでもクローズでもこじ開けられずにスコアレス

 ボール保持がベースになっているのはアウェイのブライトン。ブレントフォードは5-3-2でブロック守備を組んで自陣でまずは構える形である。

 というわけでまずは2トップ脇から突っついていくブライトン。グロスが左サイドに流れることで組み立ての主役となっていく。外一辺倒になってしまうとインサイドに高さがないし、大外で1枚を剥がすことができない状況だと押し込む状況を壊すのは難しい。

 だが、インサイドにジョアン・ペドロが帰ってきたことでパスワーク自体は非常に滑らかに。ララーナとグロスもいたことによりパスワークのリズムという意味では十分にいい時期のクオリティになってきた感がある。しかしながら、ブレントフォードの守備のブロックは非常に強固。なかなかこじ開けることは難しい。

 さらにはブレントフォードは自陣からの縦パスを繋いで敵陣まで繋ぐことができる。ロングボール一本というイメージはあるかもしれないが、この日はライン間を繋いで起点を作ることよりオープンな状況を2トップに受け渡すことができていた。この縦に出ていくシャープさにより、ブレントフォードは構えて守る自信が出たことだろう。

 ブレントフォードはプレッシングでもブライトンを引っ掛ける成功体験を経験したことで徐々にプレスを強化。これに伴って展開はオープンな状況に。だが、それでも試合は動かず前半はスコアレスでハーフタイムを迎える。

 ブライトンはプレスのラインを上げて勝負に出た後半。これに対して、ブレントフォードはコンパクトなライン間の繋ぎからの前進で対抗。リバプール戦と同じく、この辺りはブライトンの守備ブロックのコンパクトさの欠如が目立つこととなっていた。

 保持でも解決策が見えないブライトン。特に逆サイドが見えないことが多く、同サイド圧縮が大好物のブレントフォードにとってはこうした狭いスペースをこじ開けようとするブライトンのスタンスはありがたいものだったと言えるだろう。

 押し下げたケースにおいてはブロックの外から殴れるスーパーが武器がないブライトン。よって、ブレントフォードが強気なプレスで作り出すオープンな展開はチャンスメイクという観点ではむしろありがたいという感じだろう。

 ブライトンは87分に決定機を迎えるが、これを沈めることができず。苦戦が続くブライトンに訪れた千載一遇のチャンスを逃してしまう。同じく強気に出ていったブレントフォードも最後までゴールを生み出すことができず、試合はスコアレスで試合を終えた。

ひとこと

 ともにらしさはあったけどもネットを揺らせず。ただ、仕上げのフェーズはクオリティがもう一つという感じだろうか。

試合結果

2024.4.3
プレミアリーグ 第31節
ブレントフォード 0-0 ブライトン
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
主審:アンディ・マドレー

アーセナル【2位】×ルートン・タウン【18位】

天王山直後の一戦は強かに

 レビューはこちら。

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 首位攻防戦を終えて休む間もなくリーグ戦が続くアーセナル。今節の相手は残留圏になんとかたどり着きたいルートンである。

 ルートンのプレッシングは高い位置からの積極的なもの。しかしながら、橋岡のように本職でない選手をCBで起用しなければいけない台所事情からか、はたまたアーセナル相手にそもそも後方を同数で受け止めるのは難しいと考えたのかはわからないが、枚数を1枚余らせることで後方で数的優位を維持する。

 アーセナルはCFのハヴァーツにボールを当てつつ、WGが背後をとる形を狙っていたので結果的にルートンの後方に枚数をかけるクッションの策が壮行する場面も少なくはなかった。ただし、アーセナルも自陣でのビルドアップの枚数が余っている状態だったので、特にトーマスはボールを安定して前線に供給することができていた。

 プレッシングはいつも通りのアーセナル。2トップの誘導にCHのプレスを合わせる形でボール奪取を狙う。ただし、ボールハント役のライスがいない分、威力は多少割引。だが、このプレッシングからアーセナルは先制。スミス・ロウの見事な絞りからアーセナルが先制する。

 勢いに乗るアーセナルは前半の内に追加点をゲット。またしても左サイドの裏に抜けたスミス・ロウの折り返しからオウンゴールを誘発。ハーフタイムの前にさらにルートンを突き放す。

 後半はアーセナルは試合をコントロールする路線に終始。無理なプレスに行かないポゼッションを行いながら時計の針を進めていく。

 ルートンはタヒス・チョンの投入からリズムを引き戻しにいく。手前に降りてはボールを引き出し、前線にボールを刺したり散らしたりすることで少しずつアーセナルを押し込んでいく。

 アーセナルは押し込まれても特に慌てる様子はなし。インサイドを固めるシティ戦を踏襲するプランから自陣に要塞を築き、ルートンの攻撃を跳ね返し続ける。

 速攻も遅攻も完全に封じてアーセナルはルートンの攻撃をシャットアウト。後半は試合をコントロールすることにフォーカスしたアーセナルが天王山直後の一戦を安定して制した。

ひとこと

 取り立てて強さを感じるわけではなかったけども、アーセナルは全く負ける気がしない90分だった。

試合結果

2024.4.3
プレミアリーグ 第30節
アーセナル 2-0 ルートン・タウン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:24’ ウーデゴール, 44′ 橋岡大樹(OG)
主審:クレイグ・ポーソン

マンチェスター・シティ【3位】×アストンビラ【4位】

押し込むフェーズで今日は解決策を見つけたシティ

 エティハドでの天王山はスコアレスドロー。三つ巴の優勝争いでは3番手と少し後手を踏む形になったシティ。今節は4位のアストンビラをホームに迎える一戦。ここを越えれば強豪ラッシュのリーグ戦は一段落することとなる。

 立ち上がりからボールを持つ展開になったシティ。アーセナル戦の文脈を繋ぐように両サイドに配置されたWGから積極的な仕掛けを見せていく。強度的にも早いテンポで押し込むアストンビラを圧倒。両サイドの攻撃をロドリが自在に操ることで敵陣深くでの攻撃のターンを続けていく。

 押し込む流れからシティは無事に先制。ドクがサイドから押し下げたところに突撃したロドリが豪快にシュートを叩き込んでネットを揺らす。

 それ以降も流れは変わらず。リコ・ルイスの列移動も含めた多様な手段からゴールに迫っていく。

 押し返す手段がないアストンビラはロングカウンターから少ない攻撃の機会を探していく。この形からゴールを生み出したビラ。デュランのゴールで試合を振り出しに戻す。

 追いつかれてしまったマンチェスター・シティだが、前半終了間際に追加点。2枚目の警告スレスレのルイスのファウルから得たFKをフォーデンが仕留めて勝ち越し。ザニオーロのところで壁が割れてしまったのがビラにとっては痛恨だった。

 後半も前半と同じ展開。シティが押し込みながら、アストンビラがカウンターの機会を虎視眈々と狙っていく形が続いていく。この形から粛々と解決策を見つけることができるのがシティの強さ。ロドリの素晴らしいタッチからスペースを生み出してのミドルでさらにリードを広げていく。

 これ以降もペースはシティ。アストンビラはイロエブナムを最終ラインに落とす5バックで後方を埋める形を作っていたのだが、ブロックの強度を上げるという点ではそこまで役に立たなかった。

 完勝ムードのシティはフォーデンがまたしてもハットトリックとなる3点目を仕留めてゴールショーを完結。ロドリが作り出したスペースから豪快にシュートを仕留めた。

 3点差をつけられたアストンビラは後半カウンターを完結することができず。ワトキンスやマルティネスといった主力不在の影響も色濃かったと言えるだろう。

 難敵ビラを見事にホームで撃退。天王山後のリスタートに成功したシティが上位追走のための勝ち点3を手にした。

ひとこと

 ロドリ、フォーデンは別格。両WGのフィーリングもギアアップされた感がある。

試合結果

2024.4.3
プレミアリーグ 第31節
マンチェスター・シティ 4-1 アストンビラ
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:11′ ロドリ, 45+1′ 62′ 69′ フォーデン
AVL:20′ デュラン
主審:ダレン・イングランド

リバプール【1位】×シェフィールド・ユナイテッド【20位】

安定の複数得点で首位キープ

 アンフィールドにも関わらずいきなりチャンスを迎えたのはアウェイのブレイズ。セットプレーからニアのアフメドジッチ→マカティーのチャンスなど、リバプールはいきなりケレハーのセービングに頼る立ち上がりとなった。

 しかしながら、試合が落ち着けば当然ボールを持つのはリバプール。5-3-2で構えるブレイズに対して、SBがキャリーして敵陣にボールを運びながら押し込んでいく。ベースとなるフォーメーションは2-3-5のような形。アンカーの脇にゴメスとショボスライを配置してビルドアップを行っていく。

 狙い目になっていたのはワイトからの裏抜けでの押し下げ。特にWB-CB間のスペースを右サイドから縫えっ形で押し下げていく形で折り返していく。ブレイズはひたすら耐えるフェーズ。自陣に振ってくるクロスの山をひたすら跳ね返し続けることで耐える時間が続いていく。

 だが、ブレイズの我慢は思わぬところで決壊。GKのグルビッチがキックをヌニェスに当ててしまい、それがそのままゴールイン。リバプールはプレスが実り、運を味方につける形で先制ゴールを決める。

 この先制点以降もペースを握ったのはリバプール。一方的に押し込みながら、サイドを軸に押し下げ続ける。ブレイズはカウンターベースのロングボールから反撃を狙うが、なかなか思うように攻撃の形を作ることができずに苦戦。試合は1-0のリバプールのリードでハーフタイムを迎える。

 後半も大きな流れは変わらない。リバプールがボールを持っていくスタートとなる。少し前半とテイストが違ったのはブレイズのカウンターがそれなりに刺さるようになったこと。50分を過ぎたあたりから右サイドを軸に押し返す機会が増えていき、敵陣にボールを運べるシーンは増えていく。

 カウンターでだらっとオープンな展開になるのはリバプールとしては特に問題はない!ということで放置していたのだけども、切り替えの緩くなってしまったネガトラと自陣でのゴメスの拙い対応が重なり、ブラッドリーがオウンゴールを献上してしまう。

 追いつかれたリバプールは総攻撃モードに移行。選手を代えながらブレイズのゴールに向かっていく。

 特に効いていたのは途中交代のロバートソン。左の大外からのクロスのバリエーションを入れることで押し込む攻撃に外からの武器を加えていた。

 決勝点となったのはマック=アリスター。サイドからの押し下げを利用した豪快なミドルでついにリバプールにゴールをもたらす。

 引き続き押し込み続けるリバプールは以降も完全に主導権を掌握。決定的な3点目を手にしたのはこちらも途中雨交代のガクポ。ロバートソンからのピンポイントパスを合わせて勝利を決定づける。

 ややバタバタしたものの、落ち着いてブレイズを制圧したリバプール。失点をしても安定の複数ゴールで首位キープに成功した。

ひとこと

 ブレイズ、流石に1失点目は・・・

試合結果

2024.4.4
プレミアリーグ 第31節
リバプール 3-1 シェフィールド・ユナイテッド
アンフィールド
【得点者】
LIV:17′ ヌニェス, 76′ マック=アリスター, 90′ ガクポ
SHU:58′ ブラッドリー(OG)
主審:スチュアート・アットウェル

チェルシー【11位】×マンチェスター・ユナイテッド【6位】

大乱戦の幕を引いたパルマーのハットトリック

 低迷が続く両名門の直接対決。国内での順位をCL出場権内に押し上げていくのは厳しい状況ではあるけども、少なくとも目の前の相手を叩きのめしたい一戦となっている。

 まず、保持で入ったのはチェルシー。ユナイテッドはCB片側だけにプレスをかけて他は噛み合わせる形。バックラインからボールを動かしながら、どこに隙を作っていくかをチェルシーが探る立ち上がりとなった。

 その立ち上がりの懸念は早々に解決。ややトランジッション気味の局面から右サイドでギャップを作ることに成功。グストがフリーで抜け出して少しごちゃっとした折り返しを最後はギャラガーが押し込んだ。

 ユナイテッドが保持に回った際も課題は同じ。中盤が捕まっている形でここからボールをいかに動かすかということが問われることとなる。こちらはサイドのレーン交換が主。WGの周辺でSHとSBの位置関係を変えながら攻撃を仕掛けていく。大きくサイドを変える展開から薄いサイドを作ることもセットである。

 しかしながら、これはずっと今季のユナイテッドの課題なのだけども、ポジション交換でフリーになった選手がその先でできることの引き出しが物足りない。例に出してアレだけども、インサイドで高い位置を取るワン=ビサカなどはその代表格と言えるだろう。

 配置でできたギャップを優位に繋げることができていないユナイテッドに対して、チェルシーは追加点。ジャクソンのポストから左サイドに展開し、ククレジャとムドリクの2人のサイドアタックからPKをゲット。アントニーがククレジャにインサイドに入られてしまいファウルを犯してしまった。パルマーがゴールを決めてチェルシーはさらにリードを広げる。

 大きくサイドに揺さぶられながらもライン間はコンパクトに維持できていたチェルシー。順風満帆な流れかなと思ったけども、これに水を差してしまったのがカイセド。技術的なミスもそうだけど、GKに戻せる状況で「それ必要?」と思える横パスからガルナチョの決定機を演出。これを仕留めてリードは1点差に。

 すると、あっという間にユナイテッドは同点。左サイドからのクロスにファーで待ち構えていたブルーノが仕留めて試合は振り出しに。

 流れは良かったのに追いつかれたチェルシー。後半は内容が悪くなるという伝統はこの日も踏襲。不安定な流れのきっかけになるのはこの日もCB。強引な突撃や縦パスのミスからリズムを失い、一気に押し込まれる機会が増えていく。

 ただし、この日はユナイテッドも苦しい流れが改善することはなし。ミドルゾーンでの踏ん張りが効かなくなった両チームは守備のコンパクトさとは無縁で互いにゴール前に進撃していくスタートとなった。

 そういう意味ではフラットに引き戻せたユナイテッドが有利とも言えるかもしれないが、こちらは負傷者トラブルに襲われることに。HTでヴァランのトラブルで代わりに入ったエバンスがこちらも負傷交代に見舞われる。

 しかし、CBが致命的なミスを犯してしまったのはチェルシー。バディアシルの雑なボールコントロールを咎めたユナイテッドは速攻からの反撃に。またしても相手の後方ブロックの雑さに漬け込む形でガルナチョのゴールを奪う。

 リード以降は順調に時間を使っていたユナイテッドだが、後半ATに落とし穴。交代選手として右サイドに投入されたマドゥエケに対して、ダロトが簡単にファウルを犯してしまいPKを献上する。

 PKを決めて勢いに乗ったパルマーは止まることなく決勝点まで。ディフレクションに助けられたミドルはすっぽり枠の中に入り、チェルシーは劇的な逆転弾を手にする。

 互いにチグハグさが目立つシーソーゲームを制したのはチェルシー。ハットトリックのパルマーに導かれて、歓喜の逆転勝ちを収めた。

ひとこと

 いやぁ、見ている分には楽しかった。

試合結果

2024.4.4
プレミアリーグ 第31節
チェルシー 4-3 マンチェスター・ユナイテッド
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:4′ ギャラガー, 19′(PK) 90+10′(PK) 90+11′ パルマー
Man Utd:34′ 67′ ガルナチョ, 39′ ブルーノ・フェルナンデス
主審:ジャレット・ジレット

今節のベストイレブン

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