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「Catch up UEFA Champions League」~Round16 1st leg①+α~ 2021.2.16-2.18

目次

①ライプツィヒ×リバプール

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■2試合の反省を活かして2つのミスを咎める

 シティ相手の大敗、レスター戦の終盤の崩壊などショッキングな負け方でノックアウトラウンドに突入してしまったリバプール。この日のライプツィヒも非常にめんどくさい相手である。ライプツィヒは3バックが大きく幅を取りビルドアップ。特にアンヘリーニョを押し上げるようにクロスターマンはSBのような振る舞いをすることも多かった。内側には司令塔のカンプル。彼が中央での攻撃のキーマンだ。

 ライプツィヒは前の選手が降りてポストし、受けた選手が縦に進む動きを多用することで中央を進んでいくスタイル。この日のリバプールもこれに苦しめられた。カーティス・ジョーンズとチアゴはこういう状況に対応するためのインサイドハーフではない。振り回されながらも奮闘していたが、保持であれやこれややられるのは決して得意な展開ではなかっただろう。

 リバプールのボール保持時はライプツィヒは2トップがCB+アンカーの3枚を見る形。IHはIHを監視する。ボールサイドに追い込むような形でのプレスで、リバプールのSBにはボールが入った際にWBがチャレンジするつがい型の守り方だった。

   リバプールにとって理想的なのはこのWBをつり出したサイドにおいてスペースを順々に作り出して攻略するやり方。23分のシーンとか、WBが空けたスペースを前線が使ってズレを数珠つなぎにしていくイメージだ。撤退5-3-2になるとライプツィヒをこじ開けるのは至難の業なので、ライプツィヒのWBが出てくるのはリバプールにとっても攻略のチャンスとなる。

   リバプールは狭いスペースでも受けられるチアゴやジョーンズを軸に近いスペースから打開を狙う。特にジョーンズは動いて運んでという部分で大忙し、低い位置に降りてもゲームから締め出されるような形になってしまったシティ戦からは成長の跡が見えた。リバプールはタイトな守備の相手によくやるサラーの一発裏抜けを織り交ぜることで近めと遠めの解決策を提示する。

 一進一退となった前半を終えて迎えた後半。リバプールはプレスの圧力を高めて試合の主導権を握りに来る。勝負のタイミングを見計らったリバプールに対して、ライプツィヒには痛恨のミスが出てしまう。入れ替わられてしまったマネの2点目は質の部分で仕方ないのかもしれないが、ザビッツァーのパスミスは悔やまれる類のものになるだろう。

 反撃に出なくてはならなくなったライプツィヒ。キーになったのは大外のアンヘリーニョ。近いところでのパス交換やポジトラで一気にアレクサンダー=アーノルドが戻れなかったり絞ったりで空けるスペースを狙う。前線にもポウルセンやファン・ヒチャンなどパワーとスピードを投入し、圧力を増していく。

 一番ハードだった80分周辺の時間をリバプールは切り抜けると、徐々にペースは沈静化。ラストプレーになったファン・ヒチャンの決定機がせめて決まっていればライプツィヒはもう少し前向きに2ndレグを迎えられたはずだ。

 直近2試合で70分以降の試合運びに問題を抱えていたリバプール。この試合でも70分以降は自陣に閉じ込められる苦しんだが、アリソンを中心に相手のシュートチャンスを最小限に抑えながら守り切った。直近2試合の課題を克服したリバプールが、2つのミスから2点を失ったライプツィヒ相手にまずは先勝を決めた。

試合結果
ライプツィヒ 0-2 リバプール
プスカシュ・アレナ
【得点者】
LIV:53′ サラー, 58′ マネ
主審:スラフコ・ビンチッチ

②バルセロナ×パリ・サンジェルマン

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■グリーズマンから見るバルセロナの立ち位置

 バルセロナを見るのはだいぶ久しぶりである。ピッチ内外でなかなか苦しいシーズンになっている印象は確かに持っていた。だが、それでも驚いたのは立ち上がりである。バルセロナの非保持は高い位置を取るRSBのフロレンツィをグリーズマンが自陣まで下がった5バックを形成することからスタートした。

    共に試合を観戦したバルサファンのHikotaさんからは「バルセロナは保持率が上がってこないと難しい」と聞いていたのだが、5バックというのはある程度受けることを許容するやり方。しかも、メンバー構成は労働者を揃えたバルベルデ時代とは違う。ハイプレスを掲げることにチャレンジする前にWGが下がる姿勢にはバルセロナの現在地と苦しみを感じる部分であった。

 バルセロナのボール保持は以前よりも直線性が増していた気がする。縦への進みは速く、PK奪取のシーンもDFからの長いボールからメッシの裏抜け一発である。試合終盤を見るように押し込めば十分に得点の匂いがするバルセロナだが、押し込むための手段に思い悩んでいるように思えた。高い位置がトレードマークだったジョルディ・アルバのポジションもこの日は低め。チームとしてタメが効かず、アルバを押し上げる時間を捻出できていないのか、それとも彼自体のコンディションが悪いのかは判断がつかない。

 一方のパリもソリッドで付け入るスキはない!という感じの立ち上がりではなかった。プレスに出ていくタイミングは少々あやふやで、前に出ていくことでバルセロナの前進の出助けになっているような守り方も見られることもあった。

    パリの攻撃はSBが高い位置を取ることで相手を押し込んでいく。パリのビルドアップ隊は幅を意識していたため、バルセロナがSHを下げて守るというのは理には適っている。実際に戻りが遅れた場面はCB-SB間が空いてしまい、ギャップを突かれるシーンがあったことも正しさの裏付けではある。綺麗な形でないと点は取れない。でもSHが下がる。立ち位置さえ取れればこの11人なりに正しい配置はあるし、それは効くと思う。ただ、そこまでたどり着けないのが今のバルセロナなのだろう。

 ただ、パリのオーバーラップによる躍動が目立つのはむしろグリーズマンが戻る右ではなく、クルザワが上がってくる逆サイド。このサイドのケアが遅れたことで同点弾を浴びてしまうバルセロナであった。デンベレが悪いのか、それともそちらのサイドは戻らないお約束なのかはわからない。

 試合は時間が進むにつれパリペースに。相変わらずパレデスもヴェラッティもめちゃめちゃうまい。サイドは深い位置、中央でのプレスがタイトとは言えないバルセロナをあざ笑うかのような長いパスでパレデスは2点目をおぜん立て。3点目をセットプレーで仕留めれば、あとは自陣を固めて得意の速い攻撃でとどめの4点目を決める。

 バルセロナは終盤はアタッカーの逐次投入で対抗。だが、前線への飛び出しでアクセントになっていたフレンキー・デ・ヨングの位置が下がると、前線の流動性は下がってしまいより苦しい展開に。交代は停滞の呼び水になってしまっていた。

 カンプ・ノウでのハットトリックという新しい称号を手にしたムバッペとは逆に、バルセロナは残り90分でのリカバリーも難しい状況に。いい選手は揃っている。しかし、それを活かす手段が見えない。ここ数年のピッチ内外の混乱は確実に欧州のバルセロナの立ち位置に影響を与えている。そう感じてしまう試合だった。

試合結果
バルセロナ 1-4 パリ・サンジェルマン
カンプ・ノウ
【得点者】
BAR:27′(PK) メッシ
PSG:32′ 65′ 85′ ムバッペ, 70′ キーン
主審:ビョルン・カイペルス

③ポルト×ユベントス

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■ルールはたった一つのプレッシング

 試合の大まかな流れが決まる前に先制点はポルトに入った。プレスに徐々にパスコースを断たれるとベンタンクールがシュチェスニーに苦し紛れに戻したバックパスをかっさらわれてユベントスはあっさりと失点。ただ、ふりかえってみればこの失点は前半の大勢を象徴するものといってもいいかもしれない。

 ユベントスは失点シーンでもそうだったようにペンタンクール、もしくはラビオが最終ラインに落ちながら後方3枚でビルドアップを進める。前の4枚はほぼビルドアップには関与しない。降りることで中盤が空洞化し、足りなくなってしまった場合はSBのダニーロが1列前に入る。ダニーロのタスクは通常SBや3バックの一角、時には1列前で中盤の役割など非常に多岐にわたっている。2ndレグで累積警告による出場停止になったのは彼らにとってはとても痛いだろう。

 そんなユベントスのビルドアップに対して、ポルトは4-4-2のプレスで迎え撃つ。この4-4-2プレスはなかなかに個性的。リトリートの際はおとなしく陣形を組むのだが、プレスの際は4-4-2の陣形を守るというよりも陣形は刻々と変化していく。おそらくこれは個人の裁量で形が変化していくタイプのものだろう。

 プレッシングに関してのルールがあるとすればたった一つ。相手がプレスを突破できそうになったら、首根っこを掴んでもアフター気味になってでも止めるというものである。特に中盤はこの徹底が見られた。オタビオがめちゃめちゃアフターでファウルをかましまくっていたし、クリベは出ていったら意地でもボールを止める。それがたとえファウルだとしてもあまり関係ない。おそらく、カードが出るかが重要でクリベはその線引きを序盤の内にしているのだろう。一緒に試合を見た舩木さんが「ポルトはリーグ戦で割と退場者をガンガン出している」と教えてくれたのには妙に納得した。審判の相性は選びそうなチームだなと思った。

 この試合の主審は比較的コンタクトに寛容だったので、容赦なくガンガン潰しに行った。ポルトは出ていくいかないの個々人の判断や、リトリートとプレスの使い分けも見事でユベントスを苦しめた。特にクリベはその判断が秀逸。中盤が出ていったときに前線からそのスペースを埋めに走るマレガの献身も光る。なので、ぱっと見陣形としては歪んでるけど、成り立ってしまっているという不思議な感情になるポルトのプレスだった。

 逆にユベントスはビルドアップの局面こそ整理されているものの、そこから先の崩しは特に何か準備がされているようには思わなかった。左に流れることが多かったロナウドを活かす仕組みもなかなか見えてこず。終盤にポルトが息切れするまで、サイドを打開してクリアなチャンスを得ることはあまりかなわなかった。

 後半早々の2失点目もユベントスらしくない。こういうなんとなくあっさりと打ち破られることがまずないのだからユベントスは強いのであって、そこをあっさり攻略されてしまうのは彼ららしくないなと思った。

 終盤にキエーザの得点で2ndレグに望みをつないだユベントス。ただ、ボール保持の安定感を得点機会がつなげる頻度をもう少し上げなければ、上位進出は少し苦しいように感じた。

試合結果
ポルト 2-1 ユベントス
エスタディオ・ドラゴン
【得点者】
POR:2′ タレミ, 46′ マレガ
JUV:82′ キエーザ
主審:デル・セーロ・グランデ

④セビージャ×ドルトムント

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■手なずけられなかったハーランド

 先制点が入るまでは試合はボールをどちらが握るかの綱引きの展開に。特にセビージャはプレスが積極的。CFがアンカーのジャンを監視し、WGがCBにプレッシャーをかけることを合図にプレスを開始する。一方のドルトムントはCBには自由にボールを持たせつつ、CHを消しにかかる。

 しかし、セビージャのビルドアップはなかなかの精度。縦横無尽に動き回るCHがボールを引き出すと左SHに入るアレハンドロ・ゴメスが隙を見て降りつつボールの収めどころになる。左サイドにボールが収まると、ここに多くの人数を集めるセビージャ。これに対抗してドルトムントは同サイドでの封じ込めを狙う。だが、セビージャの先制点はその目論見を打ち破り、人集めたサイドを脱出したところから。ドルトムントとしてはフェルナンドが逆サイドに展開したところを咎められなかったのが痛かった。スソの得点は少し敵に当たるラッキーな側面もあったが、薄いサイドの作り方はセビージャの狙い通りだった。

 先制点を得て、プレスは徐々に自重気味になるセビージャ。一方のドルトムントはプレスをかけられずに余ることが増えたCBの持ちあがりを活かすことが増える。特にアカンジの持ちあがりは目を見張るものがあった。相手陣までボールを問題なく運べるドルトムントだが、そこからのスピードアップがなかなかできずにやや停滞気味になる。

 このムードを打ち破ったのはハーランド。同点ゴールは彼がサイドに流れて相手をドリブルで引き付けてスペースを生み出したところから。ダフートの得点も素晴らしいが、ドルトムントが悩んでいた停滞を打開したのはハーランドだった。続く2得点目はカウンターから。セビージャのDFラインにとってはスピードに乗った状態のドルトムントのアタッカー陣を止めるのは少々荷が重かったように見える。したがって、先制点後はなるべく試合をスローダウンさせながらドルトムントを手なずけたかったはずのセビージャだったが、2得点を挙げたハーランドを前にそれは打ち破られてしまった。

 セビージャはゴメスが降りることで奥にできるスペースをうまく活用できないのがボール保持でのネックになっていた。降りるけど前に進めず後ろが重くなる状況で、ドルトムントのプレスにパスが引っかかりショートカウンターという悪循環である。セビージャがボールを持ち、ドルトムントが引っかけてカウンターを繰り出すという構図は後半も続く。

 潮目が変わったのは交代選手でセビージャのオフザボールの動きが活性化してから。ルーク・デ・ヨングが決めた2点目は2ndレグへの興味をつなぐものになった。ただ、ハーランドが見せたインパクトは強烈。セビージャにとってはドルトムントを手なずけながら2得点を奪うという難しいミッションをドイツの地で達成しなければいけなくなった。

試合結果
セビージャ 2-3 ドルトムント
エスタディオ・ラモン・サンチェス・ピスファン
【得点者】
SEV:7′ スソ, 84′ デ・ヨング
BVB:19′ ダフート,27′ 43′ ハーランド
主審:ダニー・マッケリー

⑤ベンフィカ×アーセナル

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■ミスマッチなメンバー選考と戦い方

 リーズ戦と全く同じメンバーでELに臨んだアーセナル。だが、内容で見ればリーズ戦とは異なる内容だったように思う。オーバメヤンとスミス=ロウのポジションチェンジを軸に横への揺さぶりを中心としたリーズ戦に比べると、横の並びの変化は大人しめ。ベンフィカはリーズほど極端ではないものの、マンマーク志向が強かったチームだったので、割と動き回るのは効くと思ったけども。

 というわけでマンマークを何とかしたいならば、縦方向の動きを増やしたいアーセナル。だが、この試合ではとにかくオフサイドが多かった。しかも、ベンフィカのラインの上下動のコントロールはそこまできめ細やかではなかったので、どちらかと言えばアーセナルが自らオフサイドにかかりに行っている感じ。出し手と受け手のタイミングが合わないことで90分で10個のオフサイドを量産した。

 裏抜けのフリになるパスも前後にずれることが多く、むしろ前半の終盤にマンマークを細かいパスでずらすことを成功していたのはベンフィカの方だった。

 後半のアーセナルは左サイドのスミス=ロウとセドリックのラインから相手の右サイドの裏をとる動きでベンフィカを押し込む。この日のボールタッチ自体はもっとできた感のあるスミス=ロウだけど、ボールを引き出すうまさはさすが。オフザボールに長けているので、他と比べて好不調の波が少ない選手だと思う。PKは悔やまれるけども。ただ、若干アクシデンタルなPKの後にすぐに同点弾を取り返したのはポジティブ。一回流れを持っていかれそうになると少しへたれてしまうのが直近のアーセナルだったので、そこを跳ね返せたのは良かった。

 一方で残り15分の交代策には疑問が残る。5-4-1に変更し、サイドに蓋を狙うベンフィカに対して、ダイレクトに裏をとれるマルティネッリの9番はわからなくはなかった。だが、プレッシングを見ても、ボール保持時のプレー選択を見ても、アーセナルにテンポアップを積極的に進めていこうという感じではなかった。これなら普通にラカゼットでもよかったように思う。

 アウェイゴールを持ち帰ってのドローは結果だけ見れば悪くはない。だが、主力をスタメンで投入した体力面でのマネジメントは気になる。また試合全体と通して出ているメンバーと志向した戦い方がミスマッチな気がしたのも気になった。芝が気になったのか選手のパフォーマンスも全体的に割引。もう少しできても良かったでしょう。このラウンドの決着はまだついてないけども、ベンフィカよりもアーセナルの良さを消しにくる相手と今後戦った時の不安がより募るドローになった。

試合結果
ベンフィカ 1-1 アーセナル
スタディオ・オリンピコ
【得点者】
BEN: 55′(PK) ピッツィ
ARS: 57′ サカ
主審:ジュネイト・チャキル

   おしまいじゃ!!

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