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「前進の手段はあるけども」~2021.1.17 プレミアリーグ 第19節 リバプール×マンチェスター・ユナイテッド レビュー

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目次

レビュー

■存在感の大きさとズレ

 低迷するマンチェスター・ユナイテッドを見下すリバプールという構図がここ数年のお決まりだったノースウェストダービー。しかしながら、今回の対戦は直接順位が入れ替わる可能性のある首位攻防戦。いわば、フラットな戦いである。もっと言えば、直近の勢いを感じるのはむしろマンチェスター・ユナイテッドの方といってもいいだろう。

 試合はまずはリバプールのボール保持のペースで進む。おそらく致し方なく組まざるを得なくなった本職CH同士のCBであるファビーニョ、ヘンダーソンのコンビは保持の面ではさすがである。ここの2人とアンカーに入ったチアゴの3人でマンチェスター・ユナイテッドのプレッシングをどんどん無効化していく。

 イメージとしてはプレス隊を1つ1つずらしていく形だろうか。CBのところで相手のトップ下を引き出し、アンカーのところでCHを引き出す。そうしてショートパスで作った貯金を受け取るのはこの日久しぶりの先発に入ったシャキリ。DFライン前で前を向くシャキリのところまで正確にボールを届けることで、中央に起点を作る。

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 マネが内側で受ける素振りを見せることで大外を空けてロバートソンのオーバーラップを促すシーンもあった。マネはここ最近、組み立ての局面の負荷も上がっているような気がする。

 ユナイテッドが圧力をかけたプレスがほぼ機能しなかったのはやはりチアゴの存在が大きいだろう。単純なショートパスのスキルだけでなく、ボールを外して受ける動き、そしてボールをコントロールしながら対面の相手をいなす動きもピカイチ。ポゼッションの安定に圧倒的に貢献した。

 一方で周囲との連携に難を感じる場面があったのも事実。例えば、アレクサンダー=アーノルドが高い位置を取るタイミングとチアゴが大外に出したそうにするタイミングがずれているように見える場面もあった。この日はチアゴがボールを持っているときに限らず、アレクサンダー=アーノルドが攻めあがる頻度がやや少なめだったので、単純にそういう指針だったのかもしれない。

 支配力で押し切るという部分ではチアゴのスキルは活用しない手はない。オーバーラップを活用した幅のところを仮にもっと整備ができれば、さらにリバプールはボール保持によって試合を落ち着けながら進めることができるだろう。過密日程が続く状況において、保持しながら時計の針を進めることができればリバプールにとっては大きなアドバンテージになる。

■キレキレのルーク・ショウ

 マンチェスター・ユナイテッドのボール保持の機会は前半においてはだいぶ限られた機会であった。とはいえ、その限られた機会である程度侵攻できるようになったのがユナイテッドのチームとしての厚みが出てきた部分である。

 ポグバのSH起用はアストンビラ戦でも見られた手段。その試合では左サイドでの起用だったが、この試合では右サイドでの先発となった。SHとして起用する意図はサイドに穴をあける意図だろう。純粋なサイドプレイヤーではないため、シンプルなドリブルでのサイド突破が求められているわけではない当然ないはず。

 アストンビラ戦では対面の選手を引き付けることで、縦関係の相棒であるルーク・ショウがオーバーラップするスペースを創出していた。この試合でも対面のロバートソンを引き付けつつ、同サイドの打開ということが目的だったように思う。ただ、そのスペースを活用するのはオーバーラップを狙うワン=ビサカよりもサイドに流れる最前線のラッシュフォード。右サイドに流れつつ、ラインブレイクを狙う頻度が高かった。

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 トップのラッシュフォードがわざわざサイドに流れることでPA内からCBを引っ張り出したかったところだろう。仮にエリアからラッシュフォードが離れてしまっても、左のWGのマルシャルが入ってくれば人数的に担保はできる。トップ下のブルーノ・フェルナンデスやCHのフレッジやマクトミネイも上がる脚力があるので、打開をサイドのラッシュフォードにゆだねることも可能は可能である。

 ただ、この日はロバートソンがそこまで中央に絞ったり、引いた位置で受けようとするポグバに食いつくことがなかったので、陣形がそもそも歪まなかった。同サイドで穴をあけることがなかった相手を見て、ポグバは大きなサイドチェンジをすることが多かった。リバプールはひとまず縦で急進してくるパターンを封じた格好になる。

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 しかし、ユナイテッドも逆サイドに展開してからの策がないわけではない。最近のユナイテッドの好調のポイントの1つは個人的にはSBにあると思っているが、この日のルーク・ショーは攻守にピカイチだった。特にこれまで見られなかったのは、攻撃におけるボールを引き出して運ぶ部分での貢献度。ここ数試合で飛躍的に向上しているように見えるのは気のせいだろうか。

 この試合でも相手のマークに対してワンツーで外しながらスルスル前に進んでいく姿が散見されるようになった。

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 ユナイテッドのラッシュフォードの裏抜けが思うほど機能しなくても、ある程度の前進が可能だったのはポグバが同サイドをあきらめて逆に振った先にルーク・ショウという打開策があったからである。

■両軍見事な守備陣

 両チームの攻撃面のいいところを軸に触れてみたので、試合を見ていない人は共にチャンスを創出しまくった試合だと思うかもしれない。しかし、実情は真逆。ビルドアップにおいて保持側が非保持側をうまく外して攻め込んだ場面まではあったものの、そこからの決定機の創出までに至らない。

 それだけこの日の両チームのDFラインは素晴らしかった。後半もそれぞれのチャンスを作るための動きはあった。リバプールはアレクサンダー=アーノルドが低い位置からアーリー気味にエリアにクロスを上げたり、逆サイドのロバートソンに展開したり。前半、チャンスメイクに忙殺されがちだったマネがこれによりエリア内に入り込みやすくなる。

 そのリバプール左サイド封殺に大きく貢献していたのはリンデロフ。ワン=ビサカと協力して起点になるマネを潰す。逆サイドではサラーをショウが完封。エリア内のボールはマグワイアがバシバシ跳ね返すという状況に。リバプールはフレッジ、マクトミネイという中盤を何とか剥がす状況まで行くものの、堅い最終ラインの守備は揺るがず。デ・ヘアに至る以前のところでリバプールの攻撃をシャットアウトした。

 マンチェスター・ユナイテッドの後半の攻撃はややカウンター志向が強めに。大きな縦パスでスイッチを入れることができるブルーノ・フェルナンデスからカウンターを発動する。しかしながら、こちらもファビーニョを中心にDF陣が粘り強くシャットアウト。そして、こちらはアリソンの出足の良さに助けられる場面が非常に多かった。ちなみに、両チームを通じてもっとも惜しかったブルーノ・フェルナンデスのシュートのシーンではまたもルーク・ショーのライン取りがお見事であった。

 マンチェスター・ユナイテッドのDFラインに驚かされた後に、逆サイドに立ちはだかるアリソンの強大さを感じることになった試合。裏を返せば少し両チームのアタッカー陣には少し突き抜けきれない場面があったといえるだろう。

 リバプールでいえばはフィルミーノはつなぎの場面での貢献が少なく、サラーはゴール前で不発。ユナイテッドはラッシュフォードがボールを引き出すスキルを見せることができず。カウンターの決定的な場面もカバーニとの連携が取れず、パスを出すタイミングを見失ってしまった。

 非常にソリッドで強度の高い展開ということで、交代で入った選手が試合に入るのに難しい試合であったこともあった。したがって途中からの攻撃のペースアップも望みにくい展開だった。

 両チームとも最終ラインの前で手をこまねいたまま試合は終了。首位攻防戦はスコアレスドローに終わった。

あとがき

 こちらのチームが明らかに優勢!というのはそこまではなかったが、なんとなくチームとして上向きな感じを受けたのはやはりマンチェスター・ユナイテッドの方か。リバプールは両サイドバックとサラー、フィルミーノあたりに勤続疲労を感じる。攻撃が直線的なのは持ち味でもあるのだが、ワンテンポ遅れてエリアに入ってくる動きに特徴があるジョタの不在は痛い気がする。ドリブラーのイメージだが、この動きで今季のリバプールを何度か救っている印象なので、少し元気のない前線にエネルギーを注入してほしい。

 ユナイテッドはやはり両サイドバックを主体に最終ラインの好調さが際立つ。シーズン当初のひどかった姿はもう見る影もない。今季のいい時とひどい時の落差で言うとアーセナルと双璧だと思う。ユナイテッドの方がいい時の振れ幅が大きいけども。欧州カップ戦が試合数が多く、リーグ戦に影響が出やすいELなのはやや気がかりであるが、コンディションを維持できている間に後方のチームをなるべく引き離したいところだろう。

試合結果
2021.1.17
プレミアリーグ
第19節
リバプール 0-0 マンチェスター・ユナイテッド
アンフィールド
主審: ポール・ティアニー

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