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「勝手にプレミア定点観測」〜10月編 part2〜

 さぁ、後編。こっちは地獄編です。天国編はこちらをどうぞ。

目次

【11位】サウサンプトン

2勝2敗/勝ち点6/得点5 失点6

■『富士急』のクロップの不安定さ

 「アルプスのクロップ」という異名をとるハーゼンヒュットルが就任して3季目。「アルプスの」といわれると「おじいさんと住んでいるのかな?」とか「ブランコに乗ってるのかな?」というしょーもないことを思ってしまうのだが、このチームはブランコというよりはジェットコースターという形容の方がしっくりくる。アルプスというよりは富士急である。

 ぱっと見はコンパクトな4-4-2を敷いてくるソリッドなチームに見えなくもないが、一本のパスで簡単に裏を取られてピンチになるケースが非常に多い。特に大量失点したトッテナムとの相性は最悪で、スペースさえあればなんでもできるアタッカーぞろいの彼らをわざわざ元気づけに来たのだろうか?と思うのくらい裏を取られまくっていたし、ロングボール一辺倒のバーンリーにもたまに裏を取られるくらい裏を取られるチームである。スピードがないハイラインは正直厳しい。

 幸い、ボール保持は絶望的ではなく、毎試合コンスタントに得点を決めている。ジェネポやレドモンドなどのドリブラーは十分にプレミアでも武器になるし、フィニッシャーにはイングスがいる。

 ハーゼンヒュットルは就任3シーズン目でこんな感じなので、ここからも起伏が激しい状態を繰り返しながらきっとこんな感じでえっちらおっちら進んでいくんだろう。

今月気になった人:カイル・ウォーカー=ピータース
 斜め方向の侵入とスクエアなパスも効果的で結構楽しみなSBだなと思った。スパーズ産だけど。

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【12位】クリスタルパレス

2勝2敗/勝ち点6/得点5 失点7

■懸念はご無用、色気より年季

 今季はザハをトップに起用する4-4-2を採用したホジソン。年季が入った4バックは相変わらずそこそこの強度を発揮。開幕前は「なんか今季はボールを持ちたそうにしていて心配」と話していた友人のパレスサポーターが懸念はどこ吹く風。開幕戦からガッツリボール保持を放棄し、ブロック守備を組みだしたので、彼の懸念は開幕10分で吹き飛んだことを僕は悟りました。いいのか悪いのか知らないけど。

 開幕2連勝の立役者は好調だった両WG。右のWGであるタウンゼントは開幕から高パフォーマンスを維持。逆サイドは負傷したシュラップに代わり新戦力のエゼが台頭。ザハも結構パスを出していた場面もあったので、王様の信頼を勝ち取った様子に見て取れた。

 しかし、全勝対決のエバートンに敗れると、続くチェルシーにも完敗。自陣から脱出できずロングカウンターも不発でチェルシーの圧力に完全に屈した。攻撃陣の破壊力は中堅クラスであり、伸びしろでもある。守備でどれだけ我慢できるかがキー。特に押し込まれることを許容するチームとしてはセットプレー守備の弱さは大きな懸念になりそうだ。

今月気になった人:エベレチ・エゼ
 「2部の有望株」「QPR出身」「プレミア初参戦」とかなり爆死要素がそろった感はあったものの、ふたを開けてみれば堅実なプレーとオフザボールでのサポートで左サイドを活性化。エゴに走る様子はほぼ見えずにここまではいいパフォーマンスを披露している。

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【13位】ウォルバーハンプトン

2勝2敗/勝ち点6/得点4 失点7

■指針のマイナーチェンジが弱みをあぶりだす

 序盤戦を見て個人的にちょっと怪しい予感を感じるチームである。スタイルとしては昨季の5バックを踏襲しているのだが、昨季よりもやや攻守にちぐはぐな感じを受ける。

 まず最終ラインで気になるのはCBの強度。とりわけ両サイドのサイスとボリーである。ハーフスペースガンガン攻めるモードだったシティに屈するのは仕方ないとしても、ウェストハムにも同じように彼らの裏を狙われまくった上に失点を重ねてしまうと少々不安が残る。WBがやや前に意識が行く機会が昨季より多く、なるべく中盤で止めたいのかな?と思うのだが、3枚で守るとなると後方の強度に不具合をきたしているのかもしれない。昨季は結構5バックにしっかり撤退するイメージだったので。

 勝利したシェフィールド・ユナイテッド戦や盛り返す場面もあったシティ戦ではスピード感あふれるアタッカー陣の攻めが見られたものの、ウェストハム戦ではブロックを前に足元足元の攻撃を選択し沈黙。続くフルハム戦でも勝利こそしたものの、守備のリズムが作れないことから昨季の迫力にはやや陰りが見えるように映るのが心配だ。

今月気になった人:ダニエル・ポデンス
 出してよし、受けてよしの万能型で落ち着き払ったプレーでシティ相手にも脅威になる場面を演出した。出場時間的にはまだ準レギュラークラス。プレータイムをまずは確保したいところだ。

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【14位】マンチェスター・シティ

1勝1分1敗/勝ち点4/得点6 失点7

■新陳代謝中の守備陣を支えきれない攻撃陣

 やってしまった!!昨季末のCLが影響しての後ろ倒しの日程によって消化は1試合少ないものの、内容も含めてみるとやってしまった感が否めないところである。ウルブスに勝利してシーズンを開幕させたのはよかったが、ここからは散々だった。

 引いて受けたレスター相手には攻めあぐねた上に前がかりになったところを自由に使われて完敗。最後はボールを取り返すのもままならなかった。打って変わってスペースを与えてくれるリーズ戦では、連携らしい連携からの打開は鳴りを潜め、結局はスターリングの個人技によるこじ開けのみの1得点にとどまった。新戦力が多い守備陣の経験の浅さを下支えする攻撃陣の停滞で勝ち点を落としてしまった印象だ。

 アグエロとジェズスの離脱でCF不在になったり、昨季のCLから続く厳しい日程、そして新戦力のフィットなど情状酌量はある。一方でハーフスペースからの打開に固執したり、中盤の攻守のバランスを見出せなかったり、ぐるぐる0トップを入れ替えてみたりなど傍から見ると不思議な戦い方を選んでいる印象もある。CLではラッキーな組み分けを引いたものの、リーグにおいて早々に優勝争いから離脱してしまえば厳しい評価は免れないだろう。

 中断明けはエティハドにアーセナルを迎えての一戦。かつての右腕であるアルテタ相手に勝利をつかめなければグアルディオラへの風当たりは一層強まりそうだ。

今月気になった人:カイル・ウォーカー
 チームの中で特別パフォーマンスが悪いとは言わないが、被カウンター時の粘りや攻勢に転じた時の迫力が弱まったような。昨季はこういう時にもパフォーマンスがしっかりしていた気がするので。シティに限った話ではないが変則日程の昨季にフル稼働に近かった選手はちょっと今季は想像以上に心身ともに負荷がかかっている可能性がある。

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【15位】ブライトン

1勝3敗/勝ち点3/得点8 失点10

■内容と結果のどちらに引っ張られるか

 内容を見てみるとボール保持の安定性は昨季に比べて高まっているといえる。チームの心臓であるビスマがアクロバティックな足裏ハイキックで出場停止になっても大きな質の低下も見られず。グレアム・ポッター監督のメソッドは広くチームに浸透していることがうかがえる。もっともビスマの退場は監督が想定していたのかもしれないけど!!

 ただ、勝ち点がついてこない。ニューカッスルは寄せ付けずに完勝したものの、チェルシー相手には主導権を握りつつも要所で急所に刺さるような一撃を食らいノックアウト。

 マンチェスター・ユナイテッド相手には一度は引き分けで終えたように見えたが、ラストプレーでのVARの介入によるオンフィールドレビューにより無念のPK判定。運用上は全く問題ない上にどう見てもハンドだったとはいえ、追加タイムの同点ゴールが水泡に帰すのは切ないものがある。

 続くエバートンは非保持の局面が未知数の相手。得意のボール保持を頑張ればチャンスはあったはずだが、悪天候に適応できずビルドアップでミスを連発。見事に重馬場に対応したエバートンに大量点で敗れてしまう。

 内容はいいけど、結果がついてこないという状況は非常に微妙。こういうチームが結果に引っ張られて内容が悪くなっていく例は多い。内容も結果も両取りしてトップ10争いに殴り込みをかけたいところだが。

今月気になった人:タリク・ランプティ
 チェルシーから冬に完全移籍してきた若武者は右の外からチャンスメイクで存在感あり。ブレイクの予感が漂う。

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【16位】マンチェスター・ユナイテッド

1勝2敗/勝ち点3/得点5 失点11

■新戦力に期待する前に屋台骨を取り戻すべき

 やってしまった!!!その2。でも1試合消化少ないし、昨季の終わりも遅かったし、まだ始まったばかりだし仕方ないでしょ!この説明で納得できないユナイテッドファンは手を挙げて!

 はい。わかりました。全員手を下ろしてください。

 昨季強さを見せた時期のユナイテッドの良さは何といっても愚直さ。優秀な選手が泥臭く走るという古き良きユナイテッドがスールシャール就任後のチームの強みだった。

 開幕後からの試合を振り返ってみると今季のユナイテッドは完全にこの良さを放棄している。特にひどかったのはトッテナム戦。目立ったのはマグワイアを筆頭にミスを重ねる最終ラインだったが、前線の出足の悪さとプレスバックのサボりは看過できない。全員攻撃、全員守備が当たり前の時代に前線がそろいもそろって戻りを怠っては勝てるはずもない。

 確かに退場者は出たが、トッテナム戦のテンションでは10人だろうと11人だろうと12人だろうと勝利は望めなかっただろう。運動量が豊富な前線がいてこそ許されるエクストラプレイヤーのポグバは更なるチームの重石になってしまっている。そして、薄氷の勝利を挙げたブライトン戦でも何もできなかった開幕戦のパレス戦でもボールをロストしたときの献身性は見られていない。

 カバーニ、テレス、そしてファン・デ・ベークと補強は積極的に行ったが、昨季のチームの屋台骨であった泥臭さを軸に再建できなければ、スールシャールの下での成功はあり得ないはずだ。

今月気になった選手:マーカス・ラッシュフォード
 コロナ禍におけるオフシーズンでの活躍で言えばプレミアMVP級。ブライトン戦のゴールの美しさは今季数少ないユナイテッドの輝きである。

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【17位】ウェスト・ブロムウィッチ・アルビロン

1分3敗/勝ち点1/得点5 失点13

■1部仕様へのモデルチェンジは・・・・

 ここから未勝利ゾーン。ワンランク地獄度が上がります。

 チャンピオンシップでどのようなサッカーを展開していたかはわからないが「ビリッチ監督は1部で戦うために5-4-1を導入したようだ」みたいなことをどこかで誰かから聞いた気がする。しかしながら、その努力が実を結んでいるかというと微妙なところ。というか結んでいない。

 確かに人はいるがコンパクトではないし、連動して動けてはいない。蓋を開けてみればベタ引きしているもののリーグ最多の13失点。3点リードを得たチェルシー戦ですら、見ている半分くらいの人は逃げ切れるか怪しいことを薄々勘づいていたように思う。立っているだけといわれても仕方ないの完成度だ。

 ということで第4節のサウサンプトン戦では4-4-2にチャレンジしたものの、1枚少ない分しっかりスカスカになっているのはいいんだか悪いんだか。特に良くはなっていなかったのでここから先どうするのかが難しいところである。

 ロビンソン、ペレイラの前線はプレミアでは勝負できるクオリティがある。ここにどう届けるかのメカニズムは見えてこないため、相手のミスに助けられたチェルシー戦のような形が発生しなければチャンスを作るのはハードモード。手当てがなければ降格を避けるのは難しい。

今月気になった選手:マテアス・ペレイラ
 
仮に今季1年間この企画が続くとするともしかするとこのゾーンは毎回ペレイラを紹介し続けるだけのスペースになるかもしれない。頑張れ。

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【18位】バーンリー

3敗/勝ち点0/得点3 失点8

■功労者に次の一手はあるか?

 ここからは勝ち点0ゾーン。

 EL出場をリーグ順位で決めるほど躍進をみせたのは17-18シーズンのこと。あれから3年がたったが、やっているサッカーは大きくは変わっていない。しかし、彼らは変わらずとも周りは変わっている。中堅チームはおろか、昇格組やヨーヨークラブでもボールを保持する志向が見られるようになった昨今、バーンリーは取り残されてしまった感がある。

 同じ武骨派でもニューカッスルやクリスタル・パレスと比べると明らかに前線のクオリティでは劣るのが苦しい。4-4-2の守備は徐々に相手のボール保持によって間延びしてしまう機会が増えている。要塞だったターフ・ムーアでさえ、ショーン・ダイチの構築した強固な守備ブロックが相手の攻撃を受けきることはめっきり少なくなってしまった印象だ。

 古き良き香りがするスタイルは個人的には嫌いではないのだが、さすがに今季はかなり厳しい戦いになるだろう。スタイルは真逆であれど、クラブにとって功労者であるエディ・ハウが次の一手を見いだせずに競争力を維持できなかったボーンマスに重なる部分はある。

 ダイチに次の一手はあるだろうか?

今月気になった選手:ニック・ポープ
 先のイングランド代表の試合ではピックフォードに代わってゴールマウスを務めたようだが、ミスからPKを与えるなどクラブでのパフォーマンスはやや低調。苦しいシーズンで踏みとどまるには守護神の奮起が不可欠だが。

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【19位】シェフィールド・ユナイテッド

4敗/勝ち点0/得点1 失点6

■滑り込みの初得点と鳴り物入りの新戦力が浮上の助けになれば

 未勝利ゾーンの中では最も前を向けるチームだと思う。チャンスは作れているし、それなりに堅さもある。ブロックを組んだときの完成度はボトムハーフの中では上から数えたほうがむしろ早い気がする。しかしながら得点がとにかく入らない。

 開幕戦のウルブス戦のようなリードされる展開になると厳しいものの、リーズ戦はシュートを決める機会はあっただけに終盤のバンフォードの得点に屈して勝ち点を得ることができなかったのは切ないところだ。

 続くアーセナル戦の戦い方はかなり撤退色が強いものになった。もちろん、アーセナルはこういう形のチームが苦手だと思うのでわからなくはないんだけど、結果的には2失点を喫してジエンド。2点取られてしまうとどうしてもリカバリーは厳しい。4-3-3にシフトしてからはアーセナルを押し込む時間帯もあっただけに残念。結果がついてこないことでチームが重たくなっていないかは心配である。試合終盤に生まれた今季初ゴールと鳴り物入りで加入したブリュースターが得点量産のきっかけになればいいが。

今月気になった選手:デイビット・マクゴールドリック
 アーセナル戦の解説をしていたベンさん曰く「ゴールを決める以外は何でもできるストライカー」とのこと。なんだそのいい奴そうな肩書は。そんな彼が4節目終了ギリギリにチーム初得点を挙げたのは感慨深い。嘘です。アーセナル相手なので無駄にひやひやさせられました。

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【20位】フルハム

4敗/勝ち点0/得点3 失点11

お金はあるけど完成形は見えない

 「これは普通に4連敗だろうな」というレビュワーとしての気持ちと「多分これはアーセナルが強いんだよな・・・フルハムが弱いとかそういうことじゃない・・・よね・・・きっと・・・」という思いたくなるアーセナルファンの気持ちの狭間で揺れていたが、クレイブン・コテージのカメラの見にくさだけでは覆い隠しきれないものもある。

 予感はあたり4連敗を決めてしまったわけだが、ボール保持に関しては5バックと4バックをボール保持と非保持で使い分けたりなどの工夫は見れる。悲しいのはその工夫で地道に進むよりもミトロビッチにとりあえず放り込んでおく方が可能性を感じるということである。

 ただ、特にミトロビッチに放り込むための仕組みになっているわけでもないので、流れの中でたまたまトップにいるミトロビッチにボールを入れる状況になれば効く程度の頻度である。守備はセットプレーに弱く、前線の得点を気長に待っているわけにはいかないのがつらいところ。PSGからやってきたアレオラは加入早々大忙しで、大変な職場に来てしまった中途の人みたいになっている。

 フルハムにも友人のファンがいるのだが「結構補強がネームバリュー頼みで、ウイイレやFIFAっぽい強化の仕方をする」という話を聞いてからのロフタス=チークのレンタル加入はなんか笑ってしまった。

 お金はとりあえずあるっぽいし、パーカーはさわやかなので何かしてくれそうな雰囲気は全くないわけではないが、現状の完成度ではまずは引き分けで勝ち点を得ることすらハードルの高いミッション。伸びしろがあるのは確かだが、組みあがったときに何ができるのかは誰も想像がつかない気がする。

今月気になった選手:アデモラ・ルックマン
 エバートン発、ライプツィヒ経由でプレミアに帰還したルックマン。加入早々のウルブス戦で運ぶドリブルで違いを見せてレギュラー争いに名乗りを上げた。多分、使った方がいいと思うぞ!

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 終わり!次にやるとしても書くことないチームが4チームくらい出てきそうな気がするけど、書く気力と内容があったら次の代表ウィークで会いましょう。

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