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「ようこそ、エランド・ロードへ」~2020.10.3 プレミアリーグ 第4節 リーズ×マンチェスター・シティ レビュー

スタメンはこちら。

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目次

【前半】
的中した3つ目の懸念

 プレミアリーグの特徴の一つといえば豪華絢爛の監督の顔触れだろう。放映権の高騰により市場で優位に立ったこともあり、徐々に他国で実績を挙げた監督がプレミアに乗り込んでくることも増えてくる。クロップやグアルディオラ、モウリーニョはもちろん今季好調のエバートンを率いるのはCL制覇の経験もあるアンチェロッティである。CLに出場が遠ざかっているクラブでも大陸からネームバリューのある監督を呼ぶことができるということだ。

 昇格組のリーズが2部時代に招聘したのは奇人の名高いマルセロ・ビエルサ。この試合はビエルサ×グアルディオラという奇人対決でもある。今季のプレミアは試合前に対戦する両監督が並ぶグラフィックがあるのだが、なかなかの画力であった。

 リーズといえば勇猛果敢にリバプールに殴りかかった開幕戦の印象が強い人が多いだろう。王者にいつも通り殴りかかるスタイルなのだから相手がシティだろうとグアルディオラだろうと関係ない。彼らのいつも通りをぶつけるだけである。

 彼らの『いつも通り』で特徴的なのは非保持の局面である。完全なマンマークも完全なゾーンもない!とよく言われるが、このリーズはマンマーク成分が相当濃いチーム。後方の4バック、そして中盤の5枚は目の前の相手を捕まえることを優先している。

 この日のシティのFWはマフレズ、スターリング、フェラン・トーレスとポジションレスに入れ替わることが多いメンバー、彼らがポジションを入れ替えればリーズはCBとSBを入れ替えることも平気でやる。そんなチームである。

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 トップのバンフォードはGKや2枚のCBへのプレスという行動範囲が広めのお仕事を託されている。ただ、他の9人も指をくわえて奮闘しているバンフォードを眺めているわけではなく、近くにいる選手が剥がされれば自分たちのマークを捨ててヘルプに行く。バンフォードが抜けられてしまった時はボールサイドのSHが次の矢として出ていくことが多い。

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 エネルギッシュに向かってくる相手ということで保持側としてはめんどくさいのだが、シティとしては何とかやりようがある部分はある相手でもある。というか正直どちらかといえばやりやすい相手なのかなと思っていた。

 理由はいくつかある。まずはハイプレスの仕組み。最近のハイプレス志向のチームはハイプレスを発動させると、後ろの噛み合わせをキープするよりもとにかく前の人数を合わせることを重視する傾向がある。リーズのハイプレスは後ろをキープしつつ、前をずらされたらヘルプに行くという形のもので、アグレッシブではあるもののチーム全体の重心を著しく前に傾ける感じはしない。

 シティからすると、この初手での数的有利は使える。13分のつなぎがわかりやすい例だろう。ラポルトの持ち運びからマークがズレていき、ロドリが前を向ける状況を作り出している。

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 2つ目の理由は保持側が広さを規定できること。マンマークの特性上、ボール保持側がお互いの距離が離れた立ち位置を取れば、リーズの陣形も広がざるを得ない。理屈の上ではリーズの陣形のコンパクトさをボール保持側次第ということになる。シティのように広く攻めるチームには相性が悪いように思えた。

 最後の理由は個の能力。マンツーマンは1対1で止めてこそ。前線にドリブルで剥がせるアタッカーがいるシティにはどこまで通用するのかなという所である。現に先制点は個人で何枚も剥がしたスターリングのドリブルから。この3つ目の懸念が的中した形である。

【前半】-(2)
サイドが怪しいシティ

 では完全にシティペースだったか?といわれるとそういうわけではない。例えば先に紹介した13分のシーンはあっさりパスミスでボールを敵に渡してしまう。新戦力や若い選手が多いCBを軸とした連携はまだ未完成のように見える。

 加えて、この試合は前線の好連携も見られる場面は少なかった。今季のシティはニアのハーフスペースの裏抜けにこだわる回帰をみせた攻撃が特長だが、この試合ではリーズのターゲットは人。人にばかり基準を置いているチームに裏はない。いや、裏はあるけど向こうがついてくるという対応を取られてしまって終わりである。裏はあってもリーズ側がついていくか悩むことはない。結局は得点シーンのようにドリブラーが剥がせなければチャンスまで行けるシーンはあまりなかった。

 さらに気になったのはシティのSBのパフォーマンス。攻撃では元気なメンディが守備で問題を抱えるのはいつものことだが、逆サイドのウォーカーも14分の決定機に対して簡単にフリーでヘディングを許すなど、時に電池が切れたようなプレーが見られたのは気になったところである。

 そんなこんな安定しないシティ相手にリーズが保持をする時間は普通に作れていた。前半終了間際に表示されたスタッツを見ると、シティよりリーズの方がパスの本数が多い展開になっていた。つなぎながら中盤の3枚が前を向いてチャンスを作る志向の強いチームだった。

 シティはトップのマフレズがアンカー番、両WGがCBをマークするシティのプレス隊。サイドにはなるべく中盤3枚がスライドして対応する構えであった。最も気にしていたのはアンカーのフィリップスのところ。リーズの心臓であるここへのパスを逆に取りどころに設定していたシティ。デブライネが強襲して、シュートまで持っていくシーンも何回かあった。

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 フィリップスは徐々に中央にこだわらないポジションで背中で消そうとするマフレズから逃れる動きを見せる。26分とか。毎回デブライネが捕まえるのがうまく行ったわけではない。

 このような工夫から徐々にボールを持つ時間を得ることができたリーズ。前半終了間際にはメンディからボールをかっさらったアイリングが決定機を迎えたが、ここはエデルソン。最後はあわやという場面までたどり着いたリーズであった。

 試合は0-1。アウェイのシティリードで後半を迎える。

【後半】
一息を許した分、足りなくなる

 後半頭に動いたのはリーズ。ポベダ=オカンポを右のSHに投入した。ビエルサは前半を見てシティの左サイドは攻めどころだと感じたのかもしれない。実際ひとたびボールが入ってしまえば効果が高かったポベダ=オカンポ。同サイドのSBであるアイリングとの連携も良好でリーズのサイドからの崩しの精度は前半より高まったように見える。

 受けてしまうとピンチになるシティ。というわけでもう少し前に出ていくことに。しかしながら、2列目が積極的にボールを受けに降りてくるリーズに思ったよりつながれるシーンが出てきてしまう。シティはプレスを抜けられてしまうと後方はロドリが広い範囲をカバーしなければいけない状態になるレスター戦と似た状態に。

 こうなるとリーズは相手陣まで楽にボールを運ぶことができる。ロドリゴの同点弾を呼んだセットプレーを獲得できたのも、相手陣に押し込む機会を得る機会が増えたことと無関係ではないだろう。

 60分にはシティのハイプレスは沈静化。フィリップスへのマークが弱まったことでリーズは幅を自由につなげるようになっていく。リードしている展開ではないにも関わらず、後ろのポジションの選手を入れる交代をしたのはグアルディオラにもそこの修正をしなければいけないという自覚があったからだろう。左サイドの手当てとしてアケを入れた上に、4-2-3-1にしてフェルナンジーニョを投入し中盤に防波堤を入れた。

 この交代を境にリーズを中盤の高い位置で捕まえられるようになったシティ。再度ボール保持の時間を得ることができるようになる。最後まで勝ち越しゴールを狙ったが、リーズもなかなかに粘りを見せる。

 終盤になるとペースが落ちる試合もあるリーズなのだが、この試合では前後半ともにボール保持で一呼吸を置ける場面があった分、最終盤までマンマークでのプレッシングを行うことができた。そこは終盤にリーズの運動量低下というもう1つの問題点を引きずりだせなかったシティの試合運びのツケが回ったようにも見えた。

 試合は1-1のまま終了。ホームのリーズが追いついて、勝ち点1をシティからもぎ取った。

あとがき

■引き込む力があるチーム

 リーズの本拠地であるエランド・ロードに関してこんな面白い記事を見つけた。

 この記事の中ではエランド・ロードの雰囲気をファンを引き込む魔物として例えている。前節、リーズと戦ったブレイズはアーセナルと対戦したのだが、非常にじりじりとした試合だった。いわゆる塩試合である。

   ただ、そのブレイズもリーズ相手だと殴り合いの応酬になる。エランド・ロードと同じようにこのビエルサのリーズには相手を自分のペースに引き込んでいく力がある。この試合のシティもリーズのペースに引き込まれてしまったのだろう。非常に見ていて面白いチームであることは間違いない。

 過激で熱狂的なことで知られるリーズ・サポーターと偏屈だが頑固でどこか不器用さも感じるビエルサは相性がいいのかもしれない。1つのクラブに長くとどまることは少ない印象のビエルサだが、果たしてリーズを率いての旅はどこまで続くことになるのだろうか。 

■支えきれない淡白さ

 そして相手のペースに引き込まれてしまったのがシティである。前節は堅い相手を崩せず、今節はボールを持たれる時間を作られてしまい得意な一方的に攻め立てる展開を長く続けることができなかった。新加入のディアスやアケ、そして若いエリック・ガルシアなどラポルト以外の主軸をごっそり入れ替えた分、序盤は安定しない戦いが続くのは想定内なのかもしれない。メンディの軽さは相変わらずだし、ウォーカーもやや集中が切れるような場面が目につく。

 ならば、その安定するまでの時間を稼ぐのが前線の得点力なのだが、この試合ではどこか単発で淡白な印象を受けた。スターリング、マフレズそしてフェラン・トーレスは連携で崩す場面は少なく、比較的早く遠い位置からカットインからのシュートを選ぶ場面が目立つ。シュートは多いが、枠内シュートの少なさが気になる。ゴールに迫るもう一手を選ばずにシュートを選択するのは少しシティらしくなかったようにも思う。こちらもシルバやアグエロがいない寂しさを感じてしまう。

 次の相手はアーセナル。休み明けの一戦だが、さっそく正念場になりそうだ。

試合結果
2020.10.3
プレミアリーグ
第4節
リーズ 1-1 マンチェスター・シティ
エランド・ロード
【得点者】
LEE:59′ ロドリゴ
MCI:17′ スターリング
主審:マイク・ディーン

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