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「数的有利狂想曲」~2019.4.15 プレミアリーグ 第34節 ワトフォード×アーセナル レビュー

 前節のレビューはこちら。

ワトフォードとの前回対戦はこちら。

スタメンはこちら。

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目次

【前半】
変化した相手人数、変化しない展開

 前節までは3バックだったアーセナルだが、この試合は久々の4バック。リーグ戦では実にノースロンドンダービー以来で実に1か月ぶりの4バック採用である。アーセナルのビルドアップは4バックと2CHがメイン。CHではそれぞれの理由で久々のリーグ戦スタメンになったトレイラとジャカがコンビを組む。4バックでCBとCHのボックスビルトアップを試みるアーセナル。しかしながら、この日のワトフォードのフォーメーションは「対4-4-2兵器」として名高い3-1-4-2。4-4-2型の後方のプレスはひっかけられる仕組みになっているこの布陣。改めて4-4-2対策としての3-1-4-2は有用だと感じさせた立ち上がりだった。アーセナルは両CBを幅広くするなどして対処していたものの、ビルドアップの出口になることが多いCHには、相手選手がいるためなかなか前を向けず。トップ下もビルドアップを助ける意識が高いエジルではなく、ラムジーだったためやや停滞気味の立ち上がりのアーセナルだった。仮に前進できたとしても、ワトフォードは見切りが早く撤退して今度はブロックを構える。WBがイウォビを捕まえられる状態にして、今度は崩しのキーマンを抑えるような動きにシフトしていった。

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 そんな中10分過ぎに脈絡なく発生した2つの出来事。もちろん得点と退場である。得点のシーンはラムジートップ下起用のポジティブな部分が見られたところ。彼が最終ラインに積極的にプレスをかける意識の高さが、フォスターに持ち直しを強いることになり、オーバメヤンのプレスがひっかかる引き金になった。そしてディーニーの退場。残り80分近くを10人で過ごすことになってしまったワトフォード。あきらめなければいけなくなったのは襲い掛かるような前へのプレス。しかしながら陣形としてはミドルラインで踏ん張る形を維持。アーセナルの中盤がこの日パスミスが多かった影響もあり、カウンターやその流れのセットプレーでアーセナルを脅かす展開は見られた。基本的にはワトフォードの方が有効打につながる攻めをしていた印象。非保持においては第3レイヤー(守備側のMF-DF間)での縦パスを遮断する意識がアップ。ラムジーがときたま降りるようになったけど、ワトフォードがラムジーに前を向かせてのプレーを許したのは第2レイヤー(守備側のFW-MF間)まで。ラムジーが第3レイヤーでボールを受けるときは近くにいるワトフォードの2列目が下がりながら対応。第3レイヤーでは前を向かせへん!

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 ワトフォードの退場後の陣形は4-4-1っていう表現が最も近いだろうか。アーセナルのSBが上がってきたときはWBが出ていって4バック化。アーセナルのSBで主に上がるのはモンレアルなので、出ていくのはフェメニアなことが多かった。攻撃においてはさすがにグレイが1枚でボールを収めるのは難しかったが、中盤でのパスカットからのボールの動かし方は華麗で、ヒューズ、キャプー、ドゥクレは撤退や出ていく守備の連係もとてもよかった。変な言い回しだけど試合展開に関しては退場前と比べて「相手が一人少ないこと以外は特に変わっていない」という印象を持ったのは、この3人による貢献が大きい。

 ハーフタイムで交代したトレイラについて、エメリはブーイング(ディーニーが退場になったヒジ打ちを受けた相手がトレイラ。ホームサポーターのブーイングの的になっていた)と軽いけがだと説明していたけど、結構そういう部分で彼はナーバスなのかも。確かに見返してみると退場後にパスミスは目立ったし、普段のプレーをするのが難しい精神状態だったのかも。そこまで裏付ける証拠はないけど、その後の交代も含めてこの試合で気になるシーンだった。

【後半】
落ち着き、激流、撤回

 トレイラを下げたアーセナルがとった策はエジルの投入。ボールを落ち着かせて相手陣に押し込みたいアーセナルとしては悪くない策だったと思う。ワトフォードは後半頭からのプランか、それともエジルを警戒してか第3レイヤーの位置が自陣側にシフト。完全に試合を掌握!完璧だ!ってほどではなかったけど、よちよち歩きだった前半に比べればよい出来。56分のムヒタリアンのシーンに代表されるように決定機もちらほら出てくるなど悪くない展開だったと思う。

 ここからが若干不思議だった。確かに2枚目のカードとして下げられたマヴロパノスのパフォーマンスは不安定。判断を誤ったり、体を入れ替えられたりでピンチを招く場面もあった。下げるという判断は理解できるものだ。代わりに入ったのはゲンドゥージ。そしてシステムはまさかの3バックへの変更!マジか!どうしても2点目を取りたい!という判断なのかもしれないが、前線の高い位置で仕掛け役になっていたイウォビがWBとして位置が下がってしまい、球の収めどころになっていたエジルがサイドに流れてしまったため。交代前と比べて落ち着くを欠く展開が続く。おそらくあまりトライしたことない並びで距離感も不慣れ。最終ラインで相手のカウンターを迎え撃つ枚数も減ってしまい被カウンター時の安定感も欠くことに。

 というわけでこの変更は3枚目のラムジー→ナイルズの交代で事実上撤回。4バックに修正してバランスを取り戻そうと画策。ワトフォードはサクセスを投入し、2列目の4人を攻撃仕様に変更。カウンターの威力強化を狙う。2列目の戻りが遅さをついて相手陣に攻め込むワトフォードと、サイドから押し込みラインを下げることでチャンスを創出したアーセナル。ともに決められるチャンスはあったものの決めきれず。試合は1-0のまま終了。アーセナルが虎の子の1点を守りきり逃げ切った。

まとめ

 互角の展開に持ち込みながら、勝ち点を持ち帰れなかったワトフォード。いつもの4-4-2ではなく、3-1-4-2でおそらくアーセナル対策を敷いてきたであろうグラシアのプランは開始10分で頓挫してしまうことに。プランがあのまま続いていたらどうなったら気になるが、そんなことよりもアーセナルの勝ち点3の方が10000倍大事なので、プランがとん挫したのは助かった。ポッツォ家のもと、初めて契約延長した指揮官であるグラシア。ひとまずの目標はトップハーフだろうか。7位まで見える今季の終盤をどうまとめるか。来季への道筋が見えるようなシーズンの締めくくりを期待したいところだ。

 見返してみればリアルタイムで見たときほどは危ないシーンは少なく、落ち着いて試合をコントロールしていた場面もあったアーセナル。80分間1人少ない相手に対して「危ないシーンはそこそこに抑えられた」とか「チャンスはあんまり作れなかったけど試合をコントロールした時間帯もあった」とかがどれだけ評価を与えられることかというのは置いておくとして、ヴィカレッジ・ロードで3ポイントを得たのはCL出場権争いにおいて大きな一歩といえるだろう。交代カードを2枚消費することになった10分間だけの3バックへの変更をはじめとするこの試合のエメリのプランは危なっかしさが伴っていた。おそらく追加点を狙ったものだろうが、試合の流れを危うい方向に導いていたのは事実だ。10人相手に過ごした80分をうまく生かしたとはいいがたいアーセナルが次に臨むのは2点リードで迎える2ndレグ。今度はアドバンテージを生かしたゲーム展開を期待したいところ。しくじりは許されないアーセナル。今季の山場はまだまだ続く。

試合結果
2019/4/15
プレミアリーグ 第34節
ワトフォード 0-1 アーセナル
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
ARS: 10′ オーバメヤン
主審: クレイグ・ポーソン

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