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「EURO2020ハイライト」~Quarter-final スイス×スペイン~ 2021.7.2

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■プレスをめぐる駆け引きの先にはGK劇場

 ここまでの試合を見てくるとスタイルがよりはっきりしているのはスペインだろう。彼らのポゼッションを軸としたスタイルに対して、ジャカを出場停止で失ったスイスがどのようなスタイルを取るか?という部分が注目ポイントになる。

 スイスはこれまでの5-2-1-2のフォーメーションを放棄し、4-4-1-1にシフトチェンジ。2トップの一角だったエンボロをサイドに流し、中盤に組み込む形である。スイスの非保持のコンセプトとしてはシャキリがアンカーのブスケッツにマンマークを行う。後方のフロイラーとザカリアはインサイドハーフを監視。中盤は人を捕まえる様相が濃かった。

 しかし、それだけであれば5-2-1-2のフォーメーションを維持したままでも形的にはできる。4バックに変えたフォーメーション変更の意図としてはサイドの数もあわせたいという所だろう。

 もう1つのスイスの特徴はボール奪取後。セフェロヴィッチ、シャキリ、エンボロのアタッカー陣だけではなく、CHの2人も含めた多くの選手がボール奪取と共に前線に駆け上がる。おそらく、瞬間的にはスペインに対して数的優位となる人数に高い位置を取らせているはず。中盤でボールを奪った時は縦に一気に向かう形である。中盤の要だが、機動力に難があるジャカがいないことを逆手に取った中盤の厚みを使った攻撃だった。

 人は捕まっている、そして引っかけると早々にカウンターに打って出られることを把握したスペインはすぐに対応。後方からの長いボールでスイスのライン間を開けさせる。そして数的優位の状態のCBから、セフェロヴィッチのマークがついていない方(主にラポルト)がボールを運び、中盤のホールドを解除する。

 スイスの一気呵成のカウンターに対しては、スペインは特に対策を講じている様子はなし。『中盤はミスらないでね』というやや前時代的な保持に関するスタイルはいかにもスペインらしい。個人的にはどこか懐かしく好感を覚える。

 ボールをロストした場合はスペインは即時奪回に移行。スイスに蹴らせてボールを回収し、無限の攻撃のループに突入。アルバのミドルから誘発したオウンゴールで先制点を手にしたこともあり、序盤はかなり支配的な展開だった。

 とはいえ、このスペインのスタイルで90分をまるっと支配するのは至難の業。特に連携面でほころびが出やすいナショナルチームであればさらに難易度が上がるといっていいだろう。

スイスが講じた対策は2つ。1つは自陣からのボール保持でつなぐ意識を高め、1stプレスを外すこと。顕著だったのはCBの動き直し。決してポゼッション傾倒ではないバックスがショートパスでポジションを取り直すことで、スペインの1stプレスをいなすことを強く意識するようになった。

 もう1つはプレスを外した先の部分。高い位置を取るスペインのSBの裏を取り、ラインを押し下げる。スペインは即時奪回が決まらなければ、攻撃時の重心が前に傾いている状態からポジションを整え直す時間を作ることができない。スイスはこの部分を露わにするために、危険を冒してショートパスをつなぐ意識を高めたのだと思う。

 だが、スイスのこれまでの得点はサイドから合わせる形よりも、直線的にゴールに向かう形であることが多い。したがって、サイドからフィニッシュに向かう部分でどうしても刺さる形を作ることができない。スペインはスペインで撤退守備の強度は明らかな弱点なので、ハマらないハイプレスもノーミス発注のボール保持もやめるわけにはいかない。というわけでスペインの先制点以降は互角な状況が続く。

 そんな均衡が崩れたのは68分。サイドからの攻撃に蓋をしようと出ていったラポルトの勝利がパウ・トーレスに当たり、跳ね返りを拾われる。これをシャキリが決めて同点に。跳ね返りを拾ったのはCHのフロイラー。サイドからの押し下げと中盤の手厚いカウンターサポートというスイスの方針がかなった同点ゴールだった。

 しかし、直後にスイスはそのフロイラーの退場で数的不利に。そこからはゾマー劇場。10人でしのぐスイスの最後尾で大きな壁となり、スペインにたちはだかる。

ただし、延長戦をしのいだ先に待っていた主役はウナイ・シモン。2,3本目と立て続けにグラウンダーのボールをストップし、4人目のバルガスはふかしやすい上側を狙うプレッシャーをかけられてしまった感。線で見てスイスのキッカー陣に圧をかけ続けたウナイ・シモンが圧倒したPK戦だった。

 両GKの目覚ましい活躍が見られた120分だったが勝者はスペイン。スイスはフランス戦に続き、PK戦での強敵撃破には至らなかった。

試合結果
スイス 1-1(PK:1-3) スペイン
サンクトペテルブルク・スタジアム
【得点者】
SWI:68′ シャキリ
ESP:8‘ ザカリア(OG)
主審:マイケル・オリバー

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