■低調な決戦をバロンドーラーが片付ける
他のグループの結果を受けてこのカードは両チームにとって勝てば突破、引き分け以下なら共倒れという非常にわかりやすいデスマッチになった。だが、残念なことにそのヒリヒリ感が伝わってくるほど緊迫感がある試合とは言えなかったのが正直なところである。
ボールを握ったのはクロアチア。しかし、ビルドアップの重心は全体的に下がりすぎており、前進がままならない。元々このチームはモドリッチにおんぶにだっこに肩車であった。しかしながら、今大会ではモドリッチに組み立てや縦パスでの前進、守備での献身を要求するのは序の口。攻撃を完結させるためには、オフザボールの動きがほぼ皆無な前線にはスルーパスによってモドリッチが次のプレーを導くパスを出すことが求められていた。
それくらいクロアチアの前線には展開を前に進めようという気概がなかった。ひとたびその気になれば、先制点のような得点を挙げることが出来るのに、モドリッチに促されなければ動かないのだからもったいないとしか言いようがない。
スコットランドもスコットランドである。先の先制点のシーンでは5バックにも関わらずエリア内の守備が非常にルーズ。ボールホルダーにトラップする余裕がある間合いまでしか詰められないのならば、失点につながるのは当然としか言いようがない。
攻撃も相変わらずの左偏重。アダムスがサイドに流れて引き出し、ロバートソンがクロスを上げるところまではいいのだが、その先がない。予選では得点源となったマッギンはエリアに入るタイミングを掴めていないよう。得点シーンはこのお決まりのクロスが流れた形からだったが、チャンスメイクという部分でのじり貧さは相変わらずである。
むしろ、チャンスがあったのはクロアチアのビルドアップ。重たいのはモドリッチより前だけでなく、後ろも同じ。マイナスパスにプレスをかければチャンスになる機会は十分。クロアチアもスコットランドに手を差し伸べていたかのような試合だった。
そんな低調な内容の試合に決着をつけたのは、この試合においてただ一人別格だったモドリッチ。コバチッチの落としを受けてミドルシュートを叩き込むと、続くCKではペリシッチの得点をアシスト。クラブでも代表でも負荷の高いプレーを35歳になっても続けるモドリッチが重たいクロアチアを細い両腕で引き上げ、決勝トーナメントになんとか間に合わせた。
試合結果
クロアチア 3-1 スコットランド
ハンプデン・パーク
【得点者】
CRO:17′ ヴラシッチ, 62′ モドリッチ, 77′ ペリシッチ
SCO:42′ マクレガー
主審:アンドレス・ラパッリーニ