■180分間の逃走劇
10月の前回対戦ではショートカウンターから先制パンチを食らわせたパレスが、10人になったシティ相手に追加点まで奪って逃げ切った試合である。シティの今季のリーグ戦の敗戦は3試合。ダブルを達成したトッテナムを除けば、シティに負けを付けたのはクリスタル・パレスただ1チームである。
というわけでシティとしてはパレスへのリベンジ的にも、追ってくるリバプール的にも何としても勝ちたい一戦となった。構図としてはエティハドでのゲームと同じ流れといっていいだろう。ボールを持つシティ、そしてブロックを組んで待ち受けるパレスという構図である。
前半戦での対戦は先制点の場面のように高い位置からボールをひっかけることも狙っていたが、今回のパレスはそこまで前向きな矢印を使ったプレッシングはしてこなかった。重心を決めていたのは中盤で、前向きなプレスに打って出るときはギャラガーをマテタのサポートに加わらせることでプレッシングに厚みを出す。
逆に、最後方のプロテクト役にはクヤテ。撤退させられたときに彼が3バックの中央のようなところに入り、最終ラインを5枚にするような形で相手を迎え撃つ。これは前回のシティ戦でも見られた形である。
全体の重心が下がってもOKと判断したのはカウンターの担い手が増えたからだろう。ザハ頼みだったカウンターはいまやオリーズ、ギャラガーも加わり、チームとして一気呵成に攻め込むことができている。ならば多少重心を下げてでも、まずはじっくり迎撃することを優先したという感じだろう。
一方のシティは左サイドから。いつもなら低い位置を取ることが多いベルナルドはハーフスペースの相手に最終ラインに入り高い位置でのプレーを狙う。左サイドは3バック気味のラポルテがワイドに開きながら全体を押し上げながら高い位置を取ることで攻撃参加を増やしている感じ。ベルナルドのタスク変化はこの押し上げに連動するようなものだろう。
左に流れたラポルテからは右サイドへの対角パスも手段の一つに。アンカーのロドリへのパレスのプレッシャーも緩く、対角のマフレズから仕掛けられるように手薄なサイドへのサイドチェンジを決められるように。ブロックの外からのカンセロからのラストパスもあわやというシーンを演出。
引き出しを見せてゴールを狙うシティ。ラポルトやベルナルドには跳ね返りを押し込みさえすれば点が入るシーンもあったが、これは枠をとらえることが出来ず。枠内シュートもグアイタの奮闘でパレスは0に抑え続ける。
後半のシティはPA内の増員を図り、さらなるゴールに迫る意識を見せる。そんな中でパレスも50分にセットプレーから好機。ここから10分ほどリズムをつかむ。
その後シティが再び攻め込みムードになり押し込む時間帯が続く。最近のシティ、押し込む時間帯になって攻めあぐねるときは大体マフレズにボールを預けてどうしよう?みたいになる場面が多い気がする。流動性の高いチームの中でほぼポジションが大外で固定気味のマフレズ。個で優位を取れないと、流動性を下げてポジションを固定するデメリットがシティのようなチームでは出てくるように思う。それなら動かしまくった方がいい!みたいな。
続く、FA杯においては見事なパフォーマンスを見せたため、個人のパフォーマンスは問題ないのだろう。マフレズの話は足を引っ張っている!というわけではないのだが、流れが悪い時は目立ちやすい!ということである。
結局、最後まで決め手になるルートを決めることが出来なかったパレス。ホームに続いて、アウェイでも勝ち点を落としたパレス戦のシティ。パレスの面々は180分の今季のシティ相手のリーグ戦を無失点で逃げ切ることに成功した。
試合結果
2022.3.14
プレミアリーグ 第29節
クリスタル・パレス 0-0 マンチェスター・シティ
セルハースト・パーク
主審:マーティン・アトキンソン