■ベンゼマが呼び起こしたベルナベウの魔物
1st leg
よく1-0で凌いだ!というのがマドリディスタの1stレグの正直な感想だろう。ベルナベウに帰ってくるとはいえ、内容的にはパリが圧倒。その上、カゼミーロとメンディという主力2枚を欠いて2ndレグに臨むのだから、不安の種は尽きない。
立ち上がりから強襲プレスをかけるマドリー。保持側のパリにプレッシャーをかけていく。序盤の序盤は面食らった感のあったパリだったが、これには落ち着いて対応。時にはリスキーとも思えるパス回しからマドリーのハイプレスをいなし、逆にいつのまにか裏をとってムバッペ!という流れになっているのは恐ろしい。
マドリーの保持の局面においてはパリは前に3枚を残す形。実質4-3のブロックで守る必要がある。パリのトップはローラインで迎え撃つ時には歩いては戻ってくるが、走ってプレスバック!というシーンはほとんどなかったと言っていいだろう。
1stレグに引き続き、ダニーロはヴィニシウスを監視。ハキミとセットで2枚で迎え撃つように。2枚に囲まれたヴィニシウスは序盤から苦戦。突破はおろか、ファウルに漕ぎ着けるのにも非常に苦労。4-3ブロックは横移動も迅速で、マドリーの横への揺さぶりに対応。
マドリーの左の攻めはヴィニシウスを封じられているし、右はアセンシオ、カルバハル、バルベルデがピリッとせず、機能しない。したがって、やや距離があるところからベンゼマに合わせてのピンポイントなクロスが最も惜しいチャンスになる感じであった。
その右サイドの攻めがむしろマイナスに働いてしまったのがパリの先制点の場面。カルバハルがメンデス相手に引っ掛けてしまうと、そこから一気にカウンター。右サイドが前がかりになっていた分、ムバッペのカウンター対応に出ていったアラバはぎりぎりになってしまった。それでもファーのシュートコースは切れていたと思ったけど、ムバッペはニアを撃ち抜いてしまった。つよ。
前半をなんとか0で凌ぐというプランは崩壊してしまったマドリー。後半はアセンシオが右→左への斜めのランで左サイドの攻撃にアクセントをつけようとする。だが、これもパリの網の中。
パリの保持は前半に引き続きまったりとしたテンポ。前線は降りる動きをしつつ、短くパスを繋いで前を向けた人が一気に前進する!みたいな。全員前に運べるからこそ、降りることを怖がらないのはパリらしいなと思った。
そんなパリだが、つなぎから思わぬミス。前半からやや無理筋な自陣での保持は目立っていたが、後半のベンゼマはその隙を見逃さず。バックパスのコントロールを手間取ったところですかさずドンナルンマに寄せて、ボールを奪い追撃弾をゲット。
このゴールでピッチにいる全員がここがベルナベウであることを思い出したかのようだった。そこからはマドリーは勇猛果敢。パリは攻めに出るどころの話ではなかった。混乱の中でダブルチームで対応されることが減ったヴィニシウスを軸にマドリーは徐々にエリア内に侵入する機会を増やしていく。
そして、決め手になったのはモドリッチ。ネイマールからの横パスをカットすると、そのままドリブルでパリの守備陣を切り裂く。左のヴィニシウスに展開し、もう一度ボールを引き取ったモドリッチはベンゼマに絶妙なラストパス。前半ならブロックに阻まれていたであろうパスがあっさり通るのだから、本当に流れとは恐ろしいものである。
さらに、その得点のリスタートからロドリゴがボールを奪取。ヴィニシウスに対応したマルキーニョスのクリアがベンゼマに渡ると一気にトータルスコアで逆転する。ベンゼマはあっという間にハットトリックである。
こうなると、パリは3人の前残りという仕組みがグッと重石になってしまうことに。守備陣の混乱は相当で、跳ね返すのが精一杯。ヴィニシウスからボールを取り返すことができず、そもそも前に出ていくことができない。
わずか15分強でベルナベウに飲み込まれてしまったパリ。優位に進めながら瞬く間に崩壊という悪癖を今年も披露してしまい、ラウンド16で姿を消すこととなった。
試合結果
2022.3.10
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 2nd leg
レアル・マドリー 3-1 パリ・サンジェルマン
エスタディオ・サンチャゴ・ベルナベウ
【得点者】
RMA:61′ 76′ 78′ ベンゼマ
PSG:39′ ムバッペ
主審:ダニー・マッケリー