■これがプレミアの雄
立ち上がりで内容面で目を見張るものを見せたのはホームのインテルの方だろうか。リバプールは大きな展開と3トップの機動力でインテルをかき乱しながら前進をしたいと目論んでいたはず。
だが、この目論みはインテルのプレッシングによって阻まれる。2トップは2CB、3センターには3センターと前方からがっちりとマンマークでリバプールのスムーズな前進を阻害する。
最終ラインは降りていくリバプールの前線に対して強気にチェック。裏を取られる恐怖を感じさせない強気のプレスで、ボールをカットする。動き回るWGに対してはWBとワイドのCBがそれぞれ分担しながらマーク。インテルはとりあえずライン間に出たパスに対しては相手を反転させず、前を向かせるスピードアップを許さない。そうしている間に中盤が戻ってきて挟んで刈り取るというメカニズムだった。
こうしたマンマークの守備において怖いのは、遅れてプレスに出ていった選手のスペースを使われること。だが、インテルはそうしたことがほぼなかった。WGに気を取られたダンフリーズやペリシッチがリバプールのSBにチェックをかけることを遅れること自体はあった。だけども、周りのカバーリングの体制が整ったところで再度プレスに向かう。1人で飛び出していく隙をリバプールに与えないのはさすがイタリアのチームといったところだろうか。リバプールは自陣からのビルドアップで前を向けず、相手のプレスを引き込んでもその裏のスペースに入り込むことができない。
インテルはビルドアップの仕組みも面白かった。最終ラインの枚数と構成は流動的。バストーニとデ・フライの2人は確定。GKを挟む形の3枚の場合もあれば、シュクリニアルやブロゾビッチが3枚目を構成することも。一番多かったのはブロゾビッチが入るパターンだっただろうか。いずれにしてもビルドアップに関わるのは3枚のCBと3センターまで。WBはほぼ関わることなく、大外に位置することが多かった。
リバプールもこれに対してはマンマークのプレッシング。ただ、ブロゾビッチに押し上げられる形で出ていくシュクリニアルによって、生み出されるリバプールのIH裏のスペースを2トップの一角が使うことで前進を狙っていた。攻略法!というまでではないけども、ひとまずは低い位置で捕まらない!という結果を出すことはできた。
プレッシングでもビルドアップでも思い通りの試合運びとは言えなかったリバプール。だが、インテルが決定的なチャンスを作れていたかは別の話。2トップの抜け出しへの対応はリバプールがほぼパーフェクト。フィフティーの状態で完全にインテルのFW陣を潰すことができていたので、思う通りには行かなくても、ピンチにはならなかった。
後半、リバプールは強気でプレスに打って出る。けども、インテルはこれに対して明確に策を用意してきた。脱出に使ったのはインテルの左サイド側。前半は流動的だったデ・フライのポジションをここに固定。ビルドアップはハンダノビッチとシュクリニアルの3枚で、高い位置に出ていくのをバストーニに変更。左サイドにCBを重ねることでサラーの前後を挟み撃ち。ここから安定して前進が可能に。
インテルはリバプールを自陣に誘き寄せても、プレスには引っかからず。CHとCBの枚数調整で解決策を見出していたのを見て、対応力の高さも感じることができた。2トップのスピード不足は変わらないので、チャンスメイクはWBが抜け出した時。インテルがゴールに迫ることができたのはペリシッチかダンフリーズが抜け出した時だった。
しかし、先制したのはリバプール。右サイドのサラー、アレクサンダー=アーノルド、ケイタというお馴染みのトライアングルのコンビネーションを使って同サイドの裏に抜け出すと、セットプレーからフィルミーノがゲット。さらには8分後、同じくセットプレーの流れからサラーが押し込んで追加点をもたらす。
試合を通してアイデアや適応力を見せたインテルは素晴らしかったが、それだけにインテルにチャンスを許さずにセットプレーでしたたかに得点を重ねたリバプールの強さが際立った試合と言っていいだろう。プレミアの雄の強さに屈したインテルは2点という重いビハインドを背負って、アンフィールドに乗り込むことになる。
試合結果
2022.2.16
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 1st leg
インテル 0-2 リバプール
スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ
【得点者】
LIV:75′ フィルミーノ, 83′ サラー
主審:シモン・マルチニャク