■ヒーローになり損ねたザハ
落ち着く前にいきなり先制点が入ったこの試合。1分もかからないうちに先手を取ったのはノリッジの方だった。左サイドからラシツァがウォードを振り切りクロスを送ると、アイダとプッキが縦関係でギャップを作りシュート機会を創出。あっという間にグアイタの守るゴールマウスをこじ開けてみせた。
先制点は即座に決まったものの、試合はゆっくりとした展開になった。特にパレスの保持時にはノリッジは無理にプレスをかけることをせずにじっくりと待つ様相だった。リードしたこともあるだろうが、5レーンを埋めるためにSHの意識が後ろ側に向かったことが大きかったと思う。SHの意識が後ろならば、CFが無理に追いかけまわすこともできない。必然的に重心は後ろになる。
撤退気味のノリッジに対して、パレスは攻めどころを見つけることができた。右の大外でボールを持つオリーズから相手を引き寄せると、ここから逆サイドで待つザハの元にボールを届ける。パターン化した攻撃が通用したのはオリーズと同サイドでサポートする動きを繰り返すギャラガーがいたからこそ。オリーズとギャラガーというスライドをサボれば2人で壊せるコンビがいるからこそ、ノリッジがサイドに流れる動きを生み出せていた。
ノリッジの前進の手段はパレスに比べて限定的。プッキの裏を狙う動き、ラシツァの対面の相手を振り切るフリーラン、そして背負えるアイダなど個人技によるものが中心。パレスがプレスでノリッジのCBに圧をかけると、安全第一でボールを蹴り出していたのも前進が個人技だよりになった一因である。リードしていることを踏まえれば悪くないのだろうけども。
前進の手段も崩しの道筋も見えていたパレスがノリッジを押し込むことで優勢に時間を進める。前半終了間際のマテタの得点はオフサイドで取り消しになったが、ノリッジはいつ決壊してもおかしくない状況だった。
後半も試合はパレスのペース。少しでも前に出たいとノリッジがラインを上げようとすると、パレスが裏を取ることですぐさま押し下げる。主導権を取り戻そうという動きを許さないパレスに同点弾が入ったのは60分のこと。お馴染みだった右から左への展開のザハのアイソレーションからスーパーミドル。崩しの道筋を得点につなげたエースはさすがである。
その勢いのまま、2分後に得たPKを沈めていればこの試合のMOMは文句なしでザハだったのだが、軸足を滑らせてPKは力なく枠外に転がっていくことに。助かったノリッジはその後も苦しい展開を強いられ続けるも、なんとかタイムアップまでしのいで勝ち点1をゲット。ヒーローになり損ねたザハはチームに勝利をもたらすことができなかった。
試合結果
2022.2.9
プレミアリーグ 第24節
ノリッジ 1-1 クリスタル・パレス
キャロウ・ロード
【得点者】
NOR:1′ プッキ
CRY:60′ ザハ
主審:ポール・ティアニー