■依存脱却で繋がる最下位脱出の望み
グループBの上位対決となった日本×サウジアラビアの試合の直後に行われたのは、グループのボトム2によるベトナム×中国の一戦だった。
中国は日本戦を踏襲する4-4-2を採用。アランやアロイージオなど、日本戦ではベンチやメンバー外だった帰化組をスタートから起用するという変化を付けてきた。
一方のベトナムは5-3-2。5-4-1との2択感があるが、キーマンであるグエン・クアン・ハイの位置が低くなるこちらのフォーメーションで中国と向き合うこととなった。
ベトナムの3センターは左右に動きながら中国の攻撃を片側に寄せる試みを行う。これに対して中国はその密集をかち割るようなアプローチ。パス交換から3センターの間を通すような縦パスを狙っていく。
縦パスの受け手として存在感があったのは18番のアロイージオ。フィジカルを活かしてベトナムのDFを背負い、裏を取り走る選手にラストパスを送っていた。中国は2トップ+SH2人がポジションレスに動き回る構造になっていたし、ベトナムの5バックは裏抜けに対する耐性が結構脆いので、このやり方は仕上げとしては悪くはなかったと思う。
ただ、そもそもの前提となるベトナムの3センターをかいくぐってアロイージオへの縦パスを通すというところの精度はイマイチ。中国はポゼッションでの仕掛けはそこまでできるチームではないので、その点で苦戦していた。
対するベトナムは早々に先制する。左サイドからズレを作り、最後はファーサイドのホー・タン・タイが決めて先手を取る。ベトナムはこれまではグエン・クアン・ハイの一撃必殺ラストパス頼みだったのだが、この試合ではかなりその依存度が下がったように思う。
例えば、先制点の場面では左の大外から2トップの一角のファン・トゥアン・ハイが同サイド裏に流れたことで、中国のDFラインが乱れて大外の選手ががら空きになってしまっていた。2トップの動き出しがこの試合では崩しのスイッチになることが多かった。中国がその余裕を与えた側面はあったが、ホルダーにプレスをかけられないとこれだけ多彩な崩しは出来てしまうチームということなのだろう。
セットプレーからの同サイド崩しで追加点を得たベトナムは試合を終始支配。ボールこそ、中国に渡す場面が多かったが中国が効果的に攻められている場面は少なかった。
後半、中国はアロイージオ、アランを下げて狭いところを打開にこだわるよりも、広いスペースにボールを逃がすメソッドも併用で採用した感じ。前線で背負えるアロイージオ役は9番のチャン・ユーニンに代わり引き続きインサイドの解決策も探っていく。
だけども、これも攻め手として確立できないまま時計の針は進んでいく。ビルドアップ隊がこうしたバリエーションを操るほどのスキルがないのが中国の現状である。
試合は後半に互いに1点ずつを追加して終了。エース依存からの脱却の兆しを見せたベトナムが中国を下し、最下位脱出に望みをつなぐこととなった。
試合結果
2022.2.1
カタールW杯アジア最終予選 第8節
ベトナム 3-1 中国
ミー・ディン・スタジアム
【得点者】
VIE:9′ ホー・タン・タイ, 16′ グエン・ティエン・リン, 76′ ファン・バン・ドゥク
CHI:90+7′ 徐新
主審:ナワフ・シュクララ