尖ったスタイルと負傷者でいつもと違うモロッコ
アンダードックとして大暴れするも、どちらも準決勝で惜しくも敗れてしまった両チーム。3位決定戦はグループFから突破を決めた両チームの再戦となった。
立ち上がりはよく言えば3位決定戦らしい、悪く言えば落ち着かない流れになった。互いにミスが散見されており、この辺りはやや激戦を戦い抜いた疲れやメンバーを入れ替えたことを感じさせる立ち上がりとなったと言えるだろう。
特にその状況を如実に突きつけられていたのはモロッコ。意地でもボールを繋ぐところを意識するスタイルやクリアの弱さが裏目に出てしまい、高い位置からボールを奪いに来ることに積極的だったクロアチアに面食らってししまった感があった。
その流れから先制点を奪うクロアチア。フリーキックで2人目の時間差抜け出しを活かした形でボールを繋ぎ、最後はグバルディオルのゴール。若き俊英の先制点でクロアチアがリードを奪う。
しかし、すぐにモロッコも同点に追いつく。こちらもセットプレーから。フリーキックがリフレクションした先に立っていたのはダリ。ぽっかりとフリーの状況ですぐさま押し込みチャンスを得る。
ともにゴールを奪った両チームだが、やや試合を優勢に進めていたのはクロアチアの方だろう。バックラインの2人にモドリッチを軸にコバチッチ、マイェル、ペリシッチなどがローテーションする形でボール保持の助けに。この試合が初先発となったシュタロを助ける。
バックラインからボールを繋ぐ意識こそあったクロアチアだが、ロングボールを使っての前進のスタンスは相変わらず。それでもきっちり跳ね返すことができないモロッコのバックラインに対しては、セカンドボールさえ拾うことができれば問題なく前進ができる。クロアチアにとって比較的確実性の高い前進の手段として機能していたと言えるだろう。
クロアチアのサイドの攻撃の違いは左右はっきりしていた。ペリシッチとオルシッチが抜け出しを狙う左サイドは抜き切ってからのクロスをメインにしていたが、右サイドは一度奥を取ったあと、バイタルエリア方向に旋回するようにボールを動かしていた。
モロッコも20分過ぎになるとボールを持てるように。自身のミスが減ってきたことに加えて、クロアチアに即時奪回の意識が少し落ち着いてきたことも要因として挙げられるだろう。
左右のサイド攻撃という得意な形かららしさを見せるモロッコ。ライン間のブファルのカットインに外を回るアッラーで勝負する左サイド、そして多角形から抜け出しを図る右サイド。特にストロングの右サイドはハキミの抜け出しなどらしい攻撃を見せる。だが、クロアチアのサイド全体のスライドの意識の高さはモロッコのストロングポイントと非常に噛み合っており、彼らの強みをうまく打ち消していた。
前半の中盤から押し込まれ出すモロッコだが、前半終了間際に追加点をゲットしたのはクロアチア。右サイドからのバイタル方向への旋回で、シュートまで運ぶと即時奪回でコバチッチがボールを奪い、左サイドにボールを展開。オルシッチの技ありミドルで再びリードを得る。モロッコはバイタルの管理が甘くなっていたことを踏まえるとウナヒの不在が痛かったところである。
後半、攻勢に出たいモロッコだが、左サイドを軸に攻撃に打って出ることができたのはクロアチア。オルシッチを軸にモロッコのゴールに迫っていく。モロッコは後半もボールを持つことができたが、インサイドにツィエクを配置したことでやや攻撃の流れが停滞。得意のワイドアタックの威力が下がってしまい、アタッキングサードがノッキング気味になった。
むしろ、モロッコのボール保持の局面はクロアチアのカウンターチャンスになっていた。グバルディオルが抜け出したシーンは許されこそしたものの、主審次第ではクロアチアにPKが与えられてもおかしくない場面だったと言えるだろう。
自分のチームは攻めきれず、逆にクロアチアのカウンターによって冷や汗をかかされる。モロッコにとっては非常にストレスフルな展開だったはずだ。さらに追い討ちをかけたのはCBの立て続けの負傷交代。アゲルト、サイスがただでさえいない状況にも関わらず、ダリとヤミークが続け様に負傷。合計で4枚のCBが負傷することに。
これにより後方にスライドしたのはアムラバト。アムラバトの配球の良さはよりタイトな中盤でも苦も無くプレーできる部分にあるため、そもそもより自由に持たせてもらえるバックラインだとやや旨みが減ってしまうように思う。中盤の守備力低下も含めて反撃に打って出るには厳しい状況になった。
したたかに後半はリードを守ったクロアチア。第1節のリマッチを制し3位の座を確保することに成功した。
あとがき
どちらも本大会のグッドチームだったことには変わりはないし、やや疲労気味の7試合目にも関わらず、しっかりと形のあるところを見せてくれた。両チームの差があるとすると、不在者の影響がより如実に出る形だったのがモロッコだったと言えるだろう。中盤にウナヒとアムラバトをセットで置けないという状況はクロアチアのターンオーバーに比べると非常にクリティカル。逆にクロアチアは軸以外の選手たちのスマートな働きがクオリティの維持に大きく貢献した印象だ。
試合結果
2022.12.17
FIFA World Cup QATAR 2022
3位決定戦
クロアチア 2-1 モロッコ
ハリファ・インターナショナル・スタジアム
【得点者】
CRO:7′ グバルディオル, 42′ オルシッチ
MOR:9′ ダリ
主審:アブドゥルラフマン・アルジャシム