■両者なりの均衡によるモノトーン
まず、この試合で目についたのはワトフォードの割り切りである。2トップを前に残してSHは低い位置をカバーしながら時には6バック化しながら守りに行くのがこの試合のワトフォードである。
ワトフォードのこのやり方は明らかにこれはトッテナム対策。トッテナムの戦い方がうまくいくのはピッチの幅を使いながら3トップ+WBで攻めることができている時。ラニエリは『ならトッテナムが使いたい幅に初めから人を置いたらどうするの?』と考えてこのやり方を敷いたのだろう。10人のサウサンプトン相手でも崩しきれなかった前節のトッテナムの保持の拙さもこのやり方の追い風になったかもしれない。
ラニエリの4-4-2というとミラクルレスターを思い出す人も多いと思うけども、ワトフォードにはオルブライトンのように4-4-2のSHとして堅実な役割をこなすことができる選手がいない。クツカがこの試合でSHとして起用されていたのは、その部分を強引に補おうという発想からであろう。
というわけで試合は非常にモノトーン。6バック型のワトフォードに対して、愚直にトッテナムが大外からラインを押し下げながらクロスを上げる形を繰り返す。左サイドのレギロンとデイビスのタンデムはいつもよりもさらに積極的。ワトフォードは攻撃を跳ね返しながらロングカウンターに備える。それを90分間延々と見続ける。そんな感じの試合である。
どちらかといえばこの均衡の中で優位を見出していたのはトッテナムの方。トッテナムがサイドに相手を引っ張り出すことで、徐々に中央のプロテクトが怪しくなるワトフォード。危ない!と思ったら最後の最後のぎりぎりのところでシソコが最終ラインに入ってボールを跳ね返し緊急避難をすることもあった。
そうなるとよりワトフォードの最終ラインはさらに深くなる。トッテナムにとってはセカンドボールも大きなチャンス。空いたバイタルからミドルを放つことで、大きなチャンスを得ることができていた。
それに比べるとワトフォードは物足りない。まぁ、6バックの完成度は正直こんなもんだろうなという感じだけども、2トップ主体のロングカウンターは絶対もっとできた。トッテナムに牙を剥くことができないところには不満があったはずだ。
スコアが動かなかったこともあり、想像通りこの均衡は90分続いた。そして、試合を決めたのはセットプレー。96分に試合を決めたのはソン・フンミンの美しい軌道のFK。これに合わせたダビンソン・サンチェスが決勝となるヘディングをゲット。彼らなりの均衡の中でも優位を見出していたトッテナムが勝ち点にそれを反映する先制点を手にして見せた。
試合結果
2022.1.1
プレミアリーグ 第21節
ワトフォード 0-1 トッテナム
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
TOT:90+6′ サンチェス
主審:ロベルト・ジョーンズ