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「Catch up Premier League」~2023.1.12 プレミアリーグ 第7節 フラム×チェルシー ハイライト

3分で失ってしまった勝利への道筋

 エリザベス女王の崩御で延期になった第7節は年明けから合間合間に挟んでいく日程で消化していく形になった。その先陣を切るのはウェストロンドンダービー。昇格組のフラムが混沌のチェルシーを迎える一戦である。第7節に対戦していればベンチに座る指揮官はポッターではなかっただろうし、ジョアン・フェリックスがスタメンに名を連ねることもなかっただろうことは日程の妙である。

 初スタメンとなったフェリックスは非常にのびのびとしたパフォーマンスだった。ハフェルツ、マウントも含め、この日のチェルシーの前線はいずれもボールを引き出す能力に長けていた。低い位置までボールを引き取りに行く動きとサイドに流れながら裏を取る動きを組み合わせてフラムのバックラインを撹乱。かつ、複数の選手が同時に動くことでフラムの守備の狙いを絞らせないようにしていた。単一ルートでボールの動線が簡単に読めていたFA杯のシティ戦に比べれば、かなりバリエーションに富んだ前進の設計図を書けていたと言えるだろう。

 その中でもフェリックスは特に躍動していた。周りの味方との距離を適切に保ちながら、ワンタッチで落とす動きを入れ込みつつ、自らも反転しながら前を向くことで前進の原動力に。連携面、個人の動きのキレの両面で申し分なく、特に前進の局面では文句なしの働きと言っていいだろう。

 あえて注文をつけるのならば、素直すぎるフィニッシュでレノを乗せてしまったことだろうか。この日のチェルシーが前半無得点に終わったのはレノを勢いづかせてしまったところによる部分も否めない。

 前進の手段が豊富なチェルシーに対してもきっちり対抗できるのがフラムの今の強さでもある。チェルシーはバックラインの選手が足元に長けているわけではないので、プレッシャーをかければきっちり見返りがある。フェリックスを中心としたチェルシーのアタッカー陣に前進を許しながらも、勇気を持ってラインを上げ続け、中盤で跳ね返すというフラムの守備の理念を実施し続けたのは立派。チェルシーほど機会は多くないが、ミドルゾーンからのカウンターで相手を脅かすシーンもしばしばだ。

 アタッキングサードにおけるパスコースの作り出しもこの試合のフラムの良かったポイントだ。ホルダーを適切なタイミングでサポートできる動き出しを2列目とSBがこなしており、ボールの出しどころに困るシーンは皆無。球持ちのいいウィリアンとの相性は抜群で、チェルシー陣内を枚数をかけながら攻め立てることができていた。

 そのウィリアンからフラムは先制。右サイドからのクロスを引き取ったウィリアンはカットインからのシュートを沈める。チャロバーに跳ね返ったボールが吸い込まれるという幸運も手伝い、フラムはリードを奪うことを成功する。

 チェルシーもハイラインでテンポよくプレーはできていたが、この日のフラムのパフォーマンスにより抵抗されてしまった感がある。前半のチェルシーの出来で気になるところは、今季要所で感じる後方のハイライン耐性の怪しさだろう。この試合で言えば、チャロバーが相手との間合いを掴めない場面がやたらと目立っており、高い位置でボールを奪い返すための障害になっていた。リズムを掴めない一因だったと言っていい。

 後半、チェルシーはホールの突破で左サイドからファウルを獲得。これを直接狙ったマウントに虚を突かれたレノがなんとか掻き出したが、クリバリがこぼれ球を押し込み後半早々に追いついてみせた。

 同点ゴールから勢いに乗りたいチェルシーだが、直後にザカリアが負傷。接触プレーがないところでの交代ということもあり、チームは暗いムードに。すると、この影に飲み込まれるようにジョアン・フェリックスが危険なタックルにより一発退場。わずか3分ほどの間にチェルシーは2人の優れたパフォーマンスの選手を失うことになった。

 10人になったチェルシーはFA杯のように前進のルートが単一に。10人になってしまったこととフェリックスがいなくなったことの両面でチェルシーは問題を抱えてしまったように思う。それでも、ラインコントロールの面でアダラバイオが淡白なパフォーマンスをみせたこともあり、チェルシーには得点のチャンスがないわけではなかった。しかし、これをチェルシーのアタッカー陣が咎められない。

 数的優位を得たフラムは右サイドからのクロスを軸に攻勢を強める。決勝点もこの右サイドのクロスから。ペレイラのボールにファーに流れるヴィニシウスが合わせる形で勝ち越しゴールを奪う。ヴィニシウスは前半もファーに逃げながらのシュートを枠内に持って行っており、不利な体勢からでもヘディングをねじ込めるスキルがある選手ということだろう。殊勲の働きであった。

 チェルシー目線で失点シーンを見てみると、ケパの飛び出しの早さが悪い意味で目につく。だが、2人マークについているはずのヴィニシウスをチャロバーが簡単に逃したことを踏まえると情状酌量の余地はある。2人ついているならフィールドで解決したい状況ではあった。

 ウェストロンドンダービーは順位が上のフラムが勝利。フラムが数的優位の状況を生かして勝ちきったことで、ポッターの立場はさらに危ういものとなった。

ひとこと

 いい流れをスコアに反映できず、より大きな出来事に飲み込まれて台無しになると言うのは悪い流れのチームにはよくある話のように思う。続出する離脱者やフラムというタフなチームが相手だったことも含め、この日のチェルシーはいくつかの逆風に屈してしまったように思える。

試合結果

2023.1.12
プレミアリーグ 第7節
フラム 2-1 チェルシー
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:25′ ウィリアン, 73′ ヴィニシウス
CHE:47′ クリバリ
主審:デビッド・クーテ

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