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「Catch up Premier League」~2023.1.14 プレミアリーグ 第20節 マンチェスター・ユナイテッド×マンチェスター・シティ ハイライト

相手が出てきた瞬間をひっくり返す精度の勝負

 ユナイテッドが勝てばシティとの勝ち点差は1。ユナイテッドにとっては優勝争いに参加できるかどうか?シティにとってはアーセナルにこれ以上離されたくないという思いを抱えての熱いシチュエーションでのマンチェスター・ダービーとなった。

 ボール保持の主導権はあっさりとシティで決着。ユナイテッドはバックラインにはハイプレスを仕掛けずにシティの保持を受け入れる立ち上がりとなった。まず、述べておきたいのはシティの保持における振る舞いである。ここ数試合はメンバーに関わらず3-2型のビルドでロドリの隣に選手を置く形が多かったが、この試合ではあまりアンカーのそばに人が常駐することはなく、特にSBのポジションはワイドに取ることが多かった。

 そのため、ユナイテッドはエリクセンとマルシャルでアンカーを受け渡しながら対応する形に。注目されるのはサイドの守備である。この試合のユナイテッドのプレスのスイッチを握っていたのはWG。WGが開く立ち位置をとるシティのCBにプレスをかけるところからハイプレスが起動する。

 その際に本来のマーカーであるシティのSBは空く。リスクを取るチームであればSBが縦にスライドするのが基本線だろうが、ユナイテッドは後方での同数を受け入れたくないのかスライドはしなかった。ユナイテッドのWGの後方に出てくるのはCH。フレッジとカゼミーロの役目である。

 CHにとっては高い負荷のタスクではあるが、ユナイテッドの陣容とシティの前線にハーランドがいることを踏まえれば、ここでリスクを取るのは理解ができる。広い範囲を守る前提だからこそ、エリクセンをCHから1列前に上げてフレッジとカゼミーロを並べたのかもしれない。

 だが、ユナイテッドはこのスペースのカバーが間に合わない時がある。その際にはシティのSBがフリーで前に持ち上がれるし、遅れて出てくるユナイテッドのCHの背後のスペース(=上の図の緑部分)が空くことになる。

 そこにパスを刺すことができればシティの攻撃は加速できる。ハーランドが降りて受ける意識がいつもより高かったことやベルナルドが低い位置でボールを受ける動きもユナイテッドのCHの守備の基準に迷いを与えるためだろう。シティの狙いはユナイテッドのMFの背後のスペース。そのために相手を動かすことはできていた。

 だが、要所でのパスの精度が定まらないこの日のシティ。つまらないミスが出れば、一気にユナイテッドがカウンターでひっくり返す。ユナイテッドのプレスはハイプレスではないが、中盤での蓋を間に合わせることが前提の仕組みになっている。よって、基本的にはミドルカウンターがユナイテッドの狙いということになるだろう。

 ボールを奪ってから1本目のパスの精度でネガトラからシティの急所であるアンカー周辺かサイドの裏を中心に縦に長いパスを出していく。ライン間のエリクセンや後方のブルーノからラッシュフォードがチャンスを得た場面は何回かあったが、シティのDFのナイスカバーでこのピンチを回避する。

 要はこの試合は『相手が勝負を仕掛けたタイミングでひっくり返せるか』が両チーム共通のテーマ。シティはユナイテッドがプレスに来たタイミングで背後にパスを刺したいし、ユナイテッドはシティがボールを失った瞬間にパスを刺したい。パスを刺す精度はユナイテッドの方が上だが、背後をつく頻度はシティの方が上という前半だった。

 ハーフタイムで動いたのはユナイテッド。準備するアントニーの姿に誰もが前半で負傷したラッシュフォードの交代を思い浮かべただろうが、交代したのはマルシャル。アントニーをトップに置く形で後半のユナイテッドはスタートする。

 イメージとしては左に残したラッシュフォードは守備免除。エリクセンが同サイドを埋める形でカバーして、その分アントニーが下がって守備をする左右非対称の形に。しかし、これは少し無理があったように思う。サイドの守備は完全に後手に回っていたし、ウォーカーがインサイドとアウトサイドを使いわけながら簡単にラッシュフォードの背後からボールを運べるように。

 安定して運ぶポイントを見つけたシティはボール保持でのプレーエリアが明らかにユナイテッド陣内寄りに。右サイドを軸にあとはエリア内で守備を破壊するフェーズに突入した。ヴァランは奮闘していたが、60分にユナイテッドは決壊。右サイドのカバーにフレッジとカゼミーロを動員してもデ・ブライネにクロスを許してしまうと、これをエリア内に飛び込んだグリーリッシュが決めた。

 ユナイテッドは失点を機に前プレに移行する。どちらにしろラッシュフォードの戻っての守備は期待できないので、前を向いてのプレスというリスクを取る勇気を得ることができたのは失点に伴うユナイテッドのわずかな幸運と言えるだろう。それ以上にユナイテッドにとって助かったのはシティの保持がピリッとしないこと。ラッシュフォードがCFに移ったことで、CBは安定してボールを持てるようにはなったが、アタッキングサードでのつまらないミスからユナイテッドに反撃の余地を残してしまう。

 シティからすればブルーノが決めた1失点目のジャッジには文句はつくだろうが、2失点目のような形でゴールを決められるような試合運びをしてしまった自分たちの振る舞いにも課題はあったとも言える。ユナイテッドはカウンターに全精力を傾けたラッシュフォードの意地と左サイドを切り拓く役割をこなしたガルナチョが殊勲の働きだった。

 おそらく物議を醸すであろうジャッジにより終盤は小競り合いが増えたのはやや残念ではあった。レベルの高いマンチェスター・ダービーを制したのはユナイテッド。オールド・トラフォードで前半戦のリベンジに成功し、さらなる上位進出を狙える勝利を手にした。

ひとこと

 前半の局面勝負は非常にヒリヒリするものだった。ややモヤモヤする部分もあるが、相手が前に出た時にひっくり返す精度!という前半の部分に掲げたこの試合のテーマを愚直にこなしたユナイテッドに勝利が転がり込んだということになるだろうか。

試合結果

2023.1.14
プレミアリーグ 第20節
マンチェスター・ユナイテッド 2-1 マンチェスター・シティ
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:78′ フェルナンデス, 82′ ラッシュフォード
Man City:60′ グリーリッシュ
主審:スチュアート・アットウェル

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