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「Catch up Premier League」~Match week 25~ 2023.2.24-2.26

目次

フラム【6位】×ウォルバーハンプトン【15位】

2トップ採用の意義とアクシデントで引き戻した流れ

 ウルブスのフォーメーションはヒメネスとクーニャを併用する4-4-2。いつもは4-2-3-1であるので、陣形としてはある意味同じようなものかもしれないが、CFタイプを2枚並べる形はロペテギになってからは初めてな気がする。

 よって、フラムのフォーメーションとは比較的噛み合わせがいいものとなった。ウルブスのポゼッションは2CBが開きながらCHが中央に降りる形。いつも通り、CB間に落ちる役割はネベスよりもレミナが優先である。フラムの非保持はこのサリーの動きに対してはスルーをするという判断を行う。よって、ウルブスは保持時に後方の数的優位を確保。安定したポゼッションを確立する。

 ウルブスの攻撃は前節のボーンマス戦はここから先が壁だった。そして、今節もここからが壁。サリーでバックラインにフリーマンを作る、そしてサイドに展開する。ここまではウルブスはできる。しかし、サイドに展開してからが打開できない。SHとSBの2枚の連携で崩していくのが基本線だが、突破力に極振りしている選手はいないので、デュエルで優位を取れるマッチアップはない。よって、カウンター気味にボールを奪い取れた時にのみチャンスが得られる状況だった。

 フラムのボール保持はウルブスに比べると変化は少なめ。パリーニャをアンカーにする4-3-3への変化。フラムの日常である。ウルブスは4-4-2での守備なのだが、アンカーのパリーニャの管理がうまくできていなかった。よって、フラムはここからサイドに自由にボールを供給することができる。フラムはウルブスよりもクリティカルにサイドの深い位置まで入り込むことができる。

 その割にはチャンスにならなかったというのが本音だ。理由の1つとして考えられるのはウルブスの後方の4-4ブロックが動かなかったため、ライン間のウィリアンという形が作れなかったこと。もう1つはクロスというサイド攻撃の出口がミトロヴィッチがいない分、十分な効果を得られなかったことだろうか。サイドからズレを作れていたわけではないのでクロスは山なり。高さでアドバンテージがなければ跳ね返されるのは当然である。

 前半のうちに先制点を得ることができたのは前進の局面に解決策を見出したウルブスだった。先制点の場面はこの日のウルブスのメンバー構成を生かしたもの。FWタイプを2枚置くことでロングボールの的としてヒメネスを解放しやすくなる。

 縦横に大きく動くヒメネスに対して、フラムのCBはついていかない選択をする。フリーでロングボールを受けたヒメネスのおかげでサラビアがサイドにスムーズに展開し、クロスをフリーで落としたヒメネスの助けを受けてサラビアが先制ゴールをゲット。2トップ採用を原動力とした先制ゴールでウルブスがリードでハーフタイムを迎える。

 後半頭からフラムは2枚の交代で変化を加える。中盤にルリッチを入れて、2列目には好調のソロモンを投入。右にウィリアンを入れる形で後半に臨む。

 しかしながら、ペースは依然ウルブスのもの。サイドからの攻撃に対して2枚のFWが構えている形はとてもよく効いており、シンプルなクロスからチャンスを作っていく。後半はリズムに乗ったのか、プレスにも意欲的で前半以上にテンポを掴んだといえるだろう。

 後半も順調だったウルブスだったがアクシデント発生。2トップの一角だったクーニャが負傷。これにより4-2-3-1への移行を余儀なくされることに。フラムは2トップが解体されたことにより、バックラインがヒメネスへのロングボールに躊躇なくアタックに行けるようになる。

 ラインが下がることとなったウルブスに対して攻勢を仕掛けるフラム。決め手になったのは交代で入ったソロモン。2試合連続得点中のイスラエル代表はこの試合でもカットインからゴールを決めて連続得点を継続。ウルブスが失点を喫したのは交代で入ったトラオレのサイド。守備の連携がうまくいったとはいえないシーンだった。

 その後も攻勢を強めていたのはフラム。ヴィニシウスのあわやというシュートシーンをジョゼ・サがセーブしていなければ、最後に両チームがもらう勝ち点は違う結果になっていたかもしれない。

 試合は1-1で終了。アクシデントで流れが変わった試合をフラムが引き戻し、勝ち点を分け合う結果に終わった。

ひとこと

 負傷なしで見たいなと思う試合だった。フラムは苦しい内容となったが、ソロモンの存在はまさしく救世主。やや蓄積疲労を感じる2列目に新しい風を吹かせている。

試合結果

2023.2.24
プレミアリーグ 第25節
フラム 1-1 ウォルバーハンプトン
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:64′ ソロモン
WOL:23‘ サラビア
主審:マイケル・オリバー

エバートン【16位】×アストンビラ【11位】

PAから先の精度で違いを見せたビラがエバートンを下す

 立ち上がりはアストンビラのボール保持に対して、エバートンがボールを奪いに行くという構図で試合がスタートする。アストンビラのバックラインは初めはCBがボールを保持することに余裕があるが、インサイドのオナナのチェイスからエバートンはプレッシングを開始。アストンビラの陣内にどんどんとボールを押し込んでいく。

 このプレスを押し切れるかどうかが序盤の分かれ目だったといってもいいだろう。ビラのバックラインがショートパスを軸にこのプレスをしのぐことができれば、エバートンの中盤の後方にはかなりのスペースがある。このスペースに縦パスを刺しての前進がアストンビラの狙いである。

 あるいはエバートンがプレスのスイッチをいれる前に解決してしまうという手段もビラにはあった。先述の通り、オナナがプレスのスイッチを入れる前まではビラの最終ラインは比較的自由にボールを持つことができる。この段階で背後を狙うケースもあり。フリーのバックラインから低くないエバートンの最終ラインの裏を狙うパターンもアストンビラは織り交ぜていた。

 エバートンはプレスからのショートカウンター以外でいえば、モペイを使ったロングボールをもレパートリーに。キャルバート=ルーウィンと異なり、素直な長いボールではサイズ的な難があるため、上下左右に動きながらフリーになる手段を模索していた。

 キープが出来ないモペイでは前線にパスが通っても時間を作ることができないので、自陣からの陣地回復に関しては明らかにキャルバート=ルーウィンよりも質は据え置きである。バックラインからの繋ぎではなかなかおしあげられないエバートン。だからこそ、前からのプレッシングは重要。ショートカウンターであれば重心が高い状態で前に人数をかけながら攻撃ができる。

 エバートンはコールマンの出足の良いカウンターから同サイドのイウォビにつなぐパターンが効いていた。逆サイドのマイコレンコとマクニールのクロスも含めて、順足の選手からのクロスが主体となる。

 アストンビラは徐々に中盤でのボールロストからエバートンに理想の形でカウンターを運ばれるシーンが増えるようになる。こうなると、エバートンにとってはおいしい。彼らの望むオープンな形を増やしつつ前半はスコアレスで折り返す。

 迎えた後半、エバートンは外でのクロスを主体として攻勢をかけていく。アストンビラは後半頭は少しボールを保持しながら試合をコントロールする意思を見せるが、すぐにもっさりとしたエバートンが望む展開に持ち込まれてしまう。アストンビラはあわやというピンチが出てくるが、ミングスが体を張ったブロックでなんとか事なきを得る。

 エバートンに押し込まれる劣勢を跳ね返したのがアストンビラのアタッカー陣だった。交代で入ったブエンディアがおそらく1stプレーでポストを決めて、インサイドに侵入したマッギンがPKを獲得。これをワトキンスが決めて先制する。

 このマッギンとブエンディアのコンビは追加点でも大暴れ。ワトキンスのポストから斜めに入ってくるマッギンがボールを前に進め、仕上げとなったのはブエンディア。1人をかわしてエリアに接近し、豪快なフィニッシュで試合を決めた。

 試合はこの2ゴールでビラが逃げ切りに成功。エバートンは優勢に進めながらも勝ち点を逃す結果となった。

ひとこと

 頻度でいえばエバートンの方がより相手のPAに迫るタイミングはあったが、ビラの方が迫った後の動きに十分な精度があったといえるだろう。マッギンの斜めのランやブエンディアのフィニッシュなどはこの日のエバートンにはないものだった。

試合結果

2023.2.25
プレミアリーグ 第25節
エバートン 0-2 アストンビラ
グディソン・パーク
【得点者】
AVL:63’(PK) ワトキンス, 81‘ ブエンディア
主審:アンソニー・テイラー

レスター【14位】×アーセナル【1位】

充実の最小得点差

レビューはこちら。

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 基本的には試合は頭から最後までアーセナルのものだったと言えるだろう。立ち上がり、アーセナルのバックラインにプレスをかけに行ったレスターだが、このプレスは空転。むしろ、レスターのプレスの強度を利用してアーセナルはぐいっと前に出てきた印象である。

 アーセナルが狙い撃ちにしていたのはテテのサイド。アーセナルの左サイドはビルドアップにおいて特に変化が大きなポジションである。ジャカ、ジンチェンコ、ガブリエウとあらゆる選手が次々と登場。特に開いたり絞ったりするジンチェンコとジャカのポジション取りに対してテテは困惑気味。アーセナルはテテをインサイドに引き寄せてからその外側を使うことでチャンスを作り出していた。

 アタッキングサードにおいてもアーセナルの好調さは健在。この日のメインディッシュはCF起用されたトロサール。近頃、ややサポートが遠く孤立気味のマルティネッリとのポジションチェンジのパートナーになり、左サイドの中継点を増やすことに成功した。

 プレスをひっくり返す形で前進したアーセナルはアタッキングサードにおける攻略も無理はない。相手を前に引き出した状態でボールを前に運んでいるので、WGが1人で勝負できる場面も目立つ。アーセナルはボールを持たされるのではなく、プレスを交わして攻め込むことで確実にゴールに迫っていた。トロサールがネットを揺らしたシーンが認められれば前半は完璧なシナリオだったはずだ。

 前半の終盤は連携面で左サイドがややレーン固定気味になるなど、難がないといえば嘘になる。だが、冬以降は破壊力が一変したレスターをここまで完封するのは色眼鏡抜きでもよくやったと言えるだろう。バックライン、特に両CBはパーフェクトな対応を見せた。オールド・トラフォードですら猛威を振るったテテは保持面でも目立つことはなかった。

 迎えた後半、トロサールとマルティネッリのポジションチェンジから先制点を生んだアーセナル。後半開始早々に均衡を破ることに成功する。

 前に出なければいけないレスターだが、なかなかエンジンがかからない。64分のようにエンディディが1列前のプレスに出ていけた時はいいのだが、前半の悪いイメージが残っているのかそうした場面は非常に限定的。なかなか、アーセナルからいい形でボールを奪うことができない。

 アーセナルキラーのヴァーディもこの日は目立った出番はなし。アーセナルは最後までモノトーンでレスターを支配。最小得点差ながらゲームを支配し、連勝での首位キープに成功した。

ひとこと

 トロサールCFというオプション採用やトーマスとジョルジーニョの併用というテスト。アウェイでの勝利とチームの幅を広げるトライは見事だった。

試合結果

2023.2.25
プレミアリーグ 第25節
レスター 0-1 アーセナル
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
ARS:46’ マルティネッリ
主審:クレイグ・ポーソン

ウェストハム【18位】×ノッティンガム・フォレスト【13位】

サイド増員がゴールラッシュ開幕の合図

 どちらのチームもバックラインにはそこまでプレッシャーをかけないスタートとなった両チーム。よってまずは保持側がどのようなアクションをするかが大事なスタートとなった。

 ノッティンガム・フォレストはCBが大きく開く立ち上がり。アンカーのシェルビーに対してはイングスが監視を行っているため、なかなか簡単に使うことができない。よって、フォレストが選択したのは積極的なダイレクトプレーである。左サイドに流れながらのウッドのところを使う形で徐々に起点を作りながらボールを前進させていく。

 ライン間でギブス=ホワイトがボールを持てれば加速するというのは王道パターンなのだが、ウェストハムがこのあたりはきっちりと封鎖。ウッドへのロングボールへの対応も含めて抜かりなく、フォレストの攻撃が勢いづくことを許さなかった。

 一方のウェストハムはサイドから着実な前進を狙う。4-3-1-2のフォレストのフォーメーションで空きやすいSBからボールを運ぶことで、サイドの奥を取ることに成功。フォレストの陣内にボールを押し込むルートを確保することが出来た。

 よって、試合はウェストハムがフォレスト陣内で過ごす時間の方が長い状態だった。そうなると両チームに差が出てくるのはセットプレーの頻度である。ウェストハムはGK周りにガンガン背の高い選手をぶつけていくことで圧力をかけていく。一流のGKだが、上背があるわけではないケイラー・ナバスに対しては有用な対応のように思う。押し込まれながらもなんとかフォレストが凌ぎ続ける前半となった。

 ウェストハムが優位に進めながらもスコアレスで試合は後半に。やや押され気味のフォレストは少しサイドのプレッシャーのタイミングを早めることで対応していく。

 それでもウェストハムは中央へのパスを刺しこむ形でプレスを回避していく。フォレストのIHがサイドに出て行くことで空いたスペースをスムーズに活用しながら次のプレーに移行していた。攻撃の中心は相変わらずSB。左サイドにクレスウェルを投入したのはクロスをより殺傷力の高い武器にするためだろう。フォレストもオーバーラップしたウェストハムのSBの背後から侵入することで徐々に反撃の兆しを見せる。

 試合を大きく分けたのはフォレストの選手交代である。シェルビー→アイェウの交代でフォーメーションは4-2-3-1に移行。高い位置からサイドでプレッシャーがかけられる布陣を採用する。

しかし、これがフォレストにとっては裏目に。中央の密度が減少した分、ウェストハムはさらに容易なサイドチェンジを行うことができるように。手薄なサイドから攻め込めるようになったウェストハムはイングスのゴールを皮切りにゴールラッシュを幕開けする。

 特にフォレストの泣きどころになったのは右サイド側の守備。こちらのサイドは再三再四破られ続け、ウェストハムがエリアに攻め込むための足掛かりとされていた。ネコ・ウィリアムスにとっては非常に嫌な日になってしまった。

 ライスのミドル、アントニオの上から叩き込むヘディングと多彩な形でゴールを決め続けたウェストハム。4点差が付いた中での後半の7分の追加タイムは必要?と思わされたが、得点は入らずともゴールに迫る気概を見せたフォレストの姿勢は見るべきものだったかもしれない。

 試合は70分以降の大量得点でウェストハムの勝利。エバートンとボーンマスに変わっての降格圏脱出に成功した。

ひとこと

 なかなか得点が取れなかったチームにとってはメカニズムよりも勢いに乗った大量得点が助けになる場合もある。今季ここまで湿っぽい前線に得点が出て来たことは今後の残留争いに向けても朗報といえるだろう。

試合結果

2023.2.25
プレミアリーグ 第25節
ウェストハム 4-0 ノッティンガム・フォレスト
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:71′ 73′ イングス, 78’ ライス, 85′ アントニオ
主審:ジャレット・ジレット

リーズ【19位】×サウサンプトン【20位】

このカードらしくない

 この2チームの試合と聞いてプレミアファンはどのような試合を期待するだろうか。やはり、ノーガードでのスピーディな打ち合いだろう。だとすれば、そうしたプレミアファンにとってはこの試合の内容は少しがっかりするものだったかもしれない。

 まず、両チームとも非保持で全く急がない。CBはボールを持ってOKだし、相手がボールをゆっくりと持ったとしてもそこまでプレスで急かすことはない。

 よって、次に注目されるのは保持側がこうした落ち着いた展開に対して、どのような回答を見せるかである。サウサンプトンはCHが最終ラインに落ちながら相手を引き出すアクションを見せる。今日の2人のCHであれば、より後方のプレーの印象が強いのはラビアだろうが、最近はトップ下を務めることも珍しくはないウォード=プラウズもこの試合では低い位置からのゲームの組み立てに貢献。バックラインの左に入るという3バック可変からサイドを押し上げていく。

 サウサンプトンの保持に置ける狙いはバックラインからきっちりと縦にパスを刺すことで中に起点を作りながら進んでいくことである。中央の選手は動きながらパスを受けることができる位置に積極的に顔を出していく。

 一方のリーズは4枚のCBとCHで組み立ててバックラインからの前進を狙っていく。リーズはとにかくフリーになった中盤を足掛かりに大きく左右にボールを振るイメージである。つまり攻撃の出口となるのはサイド。ワイドのアタッカーに勝負の命運を託っていく。

 異なる前進のアプローチをとっている両チーム。その前進の頻度には差が徐々に見えてくることとなる。安定して前進することが出来たのはリーズ。余裕を持ったボール回しから自らがボールを握ることで、失点をする可能性を減らしていく形を取る。ボールを持ちながら相手の時間を削るというアプローチ自体がちょっとこの試合っぽくないのだけども。それでもボールを取り返すことができないサウサンプトンはそれになりに困っていた。

 後半、リーズはバンフォードを目掛けたロングボールから立ち上がりに一気に攻撃を仕掛けていく。前半とは異なるダイレクトな形ではあるが、リーズがゴールに迫る頻度の高いという構図はあまり変わりがなかった。

 両チームの差は徐々に非保持でも。リーズはラビアを捕まえて、速い段階でサウサンプトンの攻撃を収束の方向に誘導していく。一方のサウサンプトンはサイドでのプレスが後手に回って攻撃を受けるシーンが出てくるように。その結果、ボールを簡単に運ぶことを許してしまい、前半以上に押し込まれるシーンが出てくるようになる。

 よって、先制点がリーズに入ったのは順当な流れといえるだろう。サマーフィルのサイド打開から左を打ち破ると、大外から侵入したフィルポが相手の虚を突くシュートでゴールを奪って見せる。CBもGKもシュートを打たれた瞬間に「あっ」という声が聞こえてきそうな一本取られたタイミングであった。

 先制以降も左サイドを攻め続けるリーズに対して、サウサンプトンの対策は中盤の強化という折衷案。特にこのプランを問題にしなかったリーズは黙々と左サイドを攻め続けた。

 結果的にはリーズが逃げ切り勝利。このカードらしくない淡々した試合運びでサウサンプトンを下すことに成功した。

ひとこと

 じりじりとしながらスコアレスドローに引きずられることなく、きっちりスコアに差をつけたフィルポは大仕事を果たした。

試合結果

2023.2.25
プレミアリーグ 第25節
リーズ 1-0 サウサンプトン
エランド・ロード
【得点者】
LEE:77′ フィルポ
主審:ピーター・バンクス

ボーンマス【17位】×マンチェスター・シティ【2位】

正面衝突は損をする

 前節、ようやく未勝利の沼を脱出したボーンマス。次に脱出したいのは当然降格圏の沼ということになる。しかしながらそこにやってきたのはマンチェスター・シティ。優勝争いをしているチームとこのタイミングでぶつかるのは少し間が悪い気もする。

 ボーンマスのフォーメーションは5-4-1。前節、シティから勝ち点を奪ったフォレストと形は違うがコンセプトは同じ。後方の重心を重たくする形でシティを迎え撃つ。シティはシティで前節の反省を生かしたのか、アルバレスとハーランドというストライカーを併用する形を採用する。どちらもフォレスト×シティを踏まえている感じがするのは少し面白かった。

 ポイントとなったのはボーンマスの色気である。前節のフォレストはボールを奪うと、速攻で右サイドの裏のジョンソンに蹴っ飛ばし、ボールを捨ててのワンチャンスを狙うような形であった。それに比べるとボーンマスはいささか実直にこの試合に挑んだように見える。例えば、シティがマイナスのパスを出せばきっちりとラインを上げるとか、あるいはSBのゼムラが攻撃に転じた時にオーバーラップするとかそういうアプローチで敵陣に攻め込んだり、押し下げたりする動きを欠かさなかった。

 こうしたボーンマスの動きは全うではあるのだけども、シティからするとスムーズに前進ができる隙を作られてしまうことになる。シティは攻撃をひっくり返しながらのスピードアップでボーンマスからチャンスを作っていく。1得点目はリコ・ルイスのビルドアップパスをカットする動きからのゴール、そして2得点目はラインを上げた背後を突くゴールである。5-4-1というフォーメーションほど割り切れなかったボーンマスはシティにしっぺ返しを食らってしまう。

 ビリングのパスミスからの3失点目で試合は実質終了だろう。後半頭の巻き返しの気概もリコ・ルイスの適切なオーバーラップから右サイドを破壊された4点目に全て持っていかれてしまった。

 終盤は両チームとも得られる勝ち点が分かった状態でプレーしていたように思う。シティは徹底的にテスト色が強い交代選手の起用である。フィリップスやゴメスのIHの起用、ペローネのデビューなど試せることは大体試した形である。

 よって、ボーンマスにもボールを持つ機会は試合の終盤に与えられることになる。レルマの意地の一発できっちり喜べるファンの姿は心温まるものがあった。

 真っ向勝負すればするほど損をする。シティ戦にはそんな理不尽が潜んでいることを教えてくれるかような試合だった。

ひとこと

 まっとうに挑んだボーンマスのプランはこの日は役に立たなかったけど、今後には役に立つと思う。

試合結果

2023.2.25
プレミアリーグ 第25節
ボーンマス 1-4 マンチェスター・シティ
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:83′ レルマ
Man City:15′ アルバレス, 29′ ハーランド, 45′ フォーデン, 51′ メファム(OG)
主審:ポール・ティアニー

クリスタル・パレス【12位】×リバプール【8位】

ファウルが多い守備陣が後半のブレーキに

 ニューカッスルを下し、CL出場権獲得に向けて上位を猛追するリバプール。しかしながら、ミッドウィークのレアル・マドリー戦は衝撃の大敗。身体的または精神的なチームへのダメージが気になるところである。

 セルハースト・パークにおいてもリバプールはボールを握る。バックラインは幅を取りながらゆったりとしたビルドアップを行う。アンカーには珍しくヘンダーソン。バイチェティッチもファビーニョもベンチからのスタートで、中盤は比較的渋いメンツである。

 そうしたメンバーによる保持は少し手間取り気味。詰まってどうしようもない!というわけではないが、アレクサンダー=アーノルドが低い位置に顔を出す(そしてミスって危険なロストをする)など、ビルドアップ隊のいつものバランスも少し変わっているように思えた。

 しかしながら、リバプールには確固たる前進の手段があった。それはパレスの右WGのオリーズの背後である。ややポジションが乱れ気味のオリーズの背後からリバプールがボールを運ぶことで敵陣への前進のルートを開拓することに成功した。大外のロバートソンとインサイドに入り込むジョッタのコンビネーションはなかなかの精度。今季、終始機能不全だった左サイドに少し兆しが見えたのは朗報である。

 逆にパレスのボール保持においてはリバプールは高い位置からの積極的なプレスを敢行する。パレスの狙い目になるのはサイドの裏のスペース。プレッシングに積極的に出てくるリバプールのSBの背後から相手のエリアに逆襲。特にアレクサンダ=アーノルドの裏をとる瞬間がよく見られるようになった。

 確実な前進の手段を手にしたリバプールは明確に押し込むことができるようになっていたが、そこはセルハースト・パーク。なかなか得点までは至ることができずに苦しむ。

 後半、選手交代に動いたのはリバプール。前半、あまり機能していなかった右サイドにエリオットを置くというのは非常に丸い判断のように思える。前半よりもリバプールは左右にきっちり揺さぶりながら幅をとっての前進をしていくことに。ワイドを使った攻めで左右をバランスをよく使いながら敵陣まで押し下げる。パレスはオリーズとアイェウを入れ替えてサイドを封鎖する。しかしペースはリバプール。サラーのシュートがポストに当たるなど、リバプールの得点は間近に思えた。

 だが、リバプールは攻撃が途切れてしまうと、パレスからボールを奪う手段がない。即時奪回からリズムを掴めないリバプールはいちいち自陣まで下がることになってしまう。非保持ではやや足を引っ張り気味だったオリーズは保持に回れば頼もしい存在だ。

 ファビーニョの投入以降もリバプールの非保持の不安定さは継続。ファウルを連発し、パレスにセットプレーのチャンスを数多く与えることとなった。パレスは枠内シュートこそ飛ばせなかったものの、終盤はリバプール相手に巻き返しに成功。3ポイントを遠ざけて勝ち点1を得ることに成功した。

ひとこと

 ファビーニョ投入以降も守備のリズムが改善しなかったのは気がかり。確かに晒される機会が多いが、ファビーニョ個人もやや守備の間合いがあっていない感があるのは心配である。

試合結果

2023.2.25
プレミアリーグ 第25節
クリスタル・パレス 0-0 リバプール
セルハースト・パーク
主審:ダレン・イングランド

トッテナム【4位】×チェルシー【10位】

ほんのり優位をきっちり反映

 立ち上がりから落ち着かない展開の応酬で幕を開けたロンドンダービー。まず、目についたのはトッテナムにビルドアップに対するチェルシーの対応である。4バックでトッテナムの3バックに対応するにはどこかでズレを作らないといけないが、この試合ではデイビスに対してツィエクが下がり、最終ラインに入り込む形で数を合わせていた。

 チェルシーは前からのプレスの意識は高いが、ツィエクを引く位置まで下げている分、なかなか右サイドに圧力がかからなかった。そのために上下動できるロフタス=チークが右にいるのだろうが、長い距離を出ていって捕まえられないシーンも多く、結果的に中央に残るエンソが広範囲をカバーしなければいけなくなる状況になっていた。よって今日もチェルシーのハイプレスはハマらない展開が続くことになった。

 トッテナムは敵陣深くまでボールを繋ぐことができていたが、ロスト後の被カウンター耐性が脆い。チェルシーは速攻から数的優位の状況でカウンターを打つことができる。しかしながら、この日は前線のプレーのフィーリングが悪い。特に気になるのはフェリックスで、味方へのパスが合わない場面が目立ち、いつもの鋭いプレーは鳴りを顰めていた。

 バックラインからのビルドアップにおいてはチェルシーの守備陣のパススピードの遅さが際立つ。スタジアムの芝が長いのか、全体的にパスのスピードは遅かった。その中でもクリバリの窮屈そうなプレーはトッテナムのプレスの狙い所になっていた。

 全体的に見ればビルドアップの精度と出足の良さの部分でトッテナムはやや優勢だったと言える。ただ、それ以上に接触プレイや負傷者の続出で試合にテンポが出ないことの方がはるかに目立った。前半の見どころは終了間際の乱闘と言っても差し支えないくらい、両チームともサッカーの面では苦労していたと言えるだろう。

 後半、先制攻撃を成功させたのはトッテナム。左サイドからの流れるようなパスワークを逆サイドまで繋ぎ、エメルソンのシュートからのクリアを拾った二次攻撃をスキップが成功させる。刺さるようなミドルシュートでトッテナムが先制する。チェルシーは決定的なミスというのはなかったけども、断続的に悪いプレーがいくつも積み重なることで失点まで辿り着いていた感があった。

 チェルシーは前半よりは中央での細かなパス交換が見られるなどわずかながらも崩しの兆しが見えた。しかし、エンソのタッチダウンパスは多発しすぎていてトッテナムに見切られてしまっていた。あんまり乱発すべき類のパスではない気もする。

 だが、そうした飛び道具がないとまともに進めないのが今のチェルシーとも言える。トッテナムは低い位置に構え、ロングカウンターで陣地回復し、カウンタープレスでチェルシーのビルドアップを詰まらせるというやり方で敵陣に進撃していった。

 そして決定的な追加点はCKから。ニアでスラしたダイアーのラストパスをファーでケインが押し込んで勝負あり。オーバメヤンとムドりクの投入直前にトッテナムが完全に試合を決めてみせた。

 試合はそのまま終了。ほんのり見られた優位をきっちりスコアの差に反映したトッテナムがダービーを制した。

ひとこと

 チェルシーの辛い現状は続行。ボールと人を前に送れないという状況をチアゴ・シウバの負傷がさらに悪くしている感じ。代役のフォファナのパフォーマンスも穴を埋めるのに十分とは言い難く、暗い状況を打破するきっかけはなかなか見えない。

試合結果

2023.2.26
プレミアリーグ 第25節
トッテナム 2-0 チェルシー
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:46′ スキップ, 82′ ケイン
主審:スチュアート・アットウェル

今節のベストイレブン

ニューカッスル【3位】×ブライトン【6位】

強度で圧倒のニューカッスルがCLに前進

 週末にアーセナルを下し、EL出場決定に大きく近づいたブライトン。今節の対戦相手はあとわずかで悲願のCL出場権が手に入るニューカッスルである。

 ブライトンの最終ラインのビルドアップに対してニューカッスルは高い位置からの積極的なプレッシングで阻害を行っていく。トップのウィルソンの動きに呼応するように2列目からはイサク、アルミロン、そしてジョエリントンが前向きなプレスに参加する。

 これにより、ブライトンのバックラインは少し苦しくなったように見えた。ショートパスで出したい先にはことごとくニューカッスルの選手が待ち受けている状況。後方からそれでも強引な縦パスも多かったブライトンだが、ニューカッスルの網目の小さいプレスに対してはあわやという場面がかなりあった。

 よって、プレッシングに対しては外を回しながら裏抜けでのスピード勝負に挑むことも多かった。無理に中央に着けるのではなく、サイドからSBの背後を狙う形で一気に前進をもくろむといった形もこの日のブライトンのレパートリーにはあった。

 ボール保持に回ってもニューカッスルは好調。左サイドのハーフスペースを軸にイサクとウィロックがブライトンのバックラインを破壊していく。ブライトンはボール保持でもそうだが、ニューカッスルのこのハーフスペースへの突撃については相当手を焼いていた。

 その流れに乗ったのか先制したのはニューカッスル。セットプレーからのウンダフのオウンゴールからニューカッスルはついに前に出る。

 そして2点目もセットプレーから。ニューカッスルは前半終了間際にさらなる追加点を手にして試合はハーフタイムを迎えることに。

 後半、プレスに出ていくのはブライトン。高い位置からニューカッスルのバックラインを阻害することでボールの奪取及び得点を狙っていく。

 一方のニューカッスルも早い展開からの走りあいっこはお手のもの。ピンチも迎えつつ、一発でチャンスになるようなキラーパスをブライトンのDFラインの背後に送り続ける。

 両チームともゴール前のシーンが多い早い展開からゴールを奪ったのはブライトン。ウンダフが一発で背後を取る形からラインブレイクに成功。ニューカッスルまで1点差に迫る。

 しかし、負けじとニューカッスルも反撃。こちらも右サイドから最終ラインの背後を取る形でウィルソンが独走。試合を決定づける3点目を手にする。

 最後の試合はブルーノのゴール。取りも取ったり4得点。ともに欧州カップ戦争いの最終盤に差し掛かっている両チームだが、一足早く仕上げにかかったのはニューカッスルの方だった。

ひとこと

 強度面でブライトンを打ち砕くのはなかなかできない芸当。さすがはニューカッスル。

試合結果

2023.5.18
プレミアリーグ 第25節
ニューカッスル 4-1 ブライトン
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:22′ ウンダフ(OG), 45+4′ バーン, 89′ ウィルソン, 90+1′ ギマランイス
BHA:51′ ウンダフ
主審:ロベルト・ジョーンズ

マンチェスター・ユナイテッド【5位】×ブレントフォード【7位】

固められる前に握りたかった主導権

 終盤戦は体力勝負になっているマンチェスター・ユナイテッド。そんな彼らにとって球際の強いブレントフォードはとても嫌な相手だろう。

 しかしながら、ユナイテッドはあまりこの試合において恐れていた展開にまきこまれなかったといえる。5-3-2におけるブレントフォードのトレードマークのようだったバックラインへの高い位置のプレッシングは鳴りを潜めており、撤退しながら中盤のケアを優先する。これだけプレスに消極的な試合が続くと、シンプルに今は前に行って相手を潰せるようなコンディションではないのかもしれない。

 IHがSBを監視し、WBがWGを食い止める方針のブレントフォードに対して、ユナイテッドはすぐさま対応。バックラインが3枚になることでサイドにCBを押し出してアウトナンバーを作る。とりわけ、ブレントフォードにとって右サイドに登場するヴァランは面倒な存在だったはず。ハマり切らない枚数しか用意できないブレントフォードはズルズルとラインを下げることになる。

 ユナイテッドはそれに伴い高い位置からのプレッシングを行う。長いボールで外そうとするブレントフォードに対して、ユナイテッドの守備陣はキッチリとした跳ね返しで対抗して見せる。ブレントフォードはじりじり進んでセットプレーという形を作りたいが、なかなか侵入を許してもらえない。

 むしろ、セットプレーから先制点を奪ったのはユナイテッドの方だった。セットプレーを拾ったアントニーのセカンドチャンスからザビッツァー→ラッシュフォードとつないでユナイテッドが先制する。

 先制されてもブレントフォードはエンジンがかからない。ロングボールの設計は甘く、この日はセカンドボールをなかなか拾えない展開が続く。高い位置を取るSBの背後は狙い目だったかもしれないが、前半のブレントフォードはあまりそこのスペースを突く気はなかったようだ。

 後半、ブレントフォードはプレッシングの強度をようやく上げてユナイテッドに対抗。これに対してユナイテッドはロングボールを増やしていく。ユナイテッドは屈するだけではなく、自らの高い位置からのプレッシングでブレントフォードを休ませない。よって、前半よりもトランジッションの頻度は高くなる流れになった。

 対人戦では優位に立ったブレントフォード。3枚替えのタイミングから徐々にペースを握り、ユナイテッド陣内に入り込み始める。ユナイテッドはひとまずバックラインを増やしてのクロス対応を実施。エリア内を固めることで安全に逃げ切りを図る。

 終盤は堅実にしのいだユナイテッドが勝利を手に。CL出場権争いで一歩前に出ることに成功した。

ひとこと

 ブレントフォードは後半の主導権を握った時間帯をタイスコアの段階で引き寄せたい。PA内を固めたくとも固められない時間にあの勢いを持ってこれればもう少し試合展開は変わったはずだろう。

試合結果

2023.4.5
プレミアリーグ 第25節
マンチェスター・ユナイテッド 1-0 ブレントフォード
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:27‘ ラッシュフォード
主審:ジョン・ブルックス

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