Fixture
プレミアリーグ 第21節
2023.1.22
アーセナル(1位/15勝2分1敗/勝ち点47/得点42 失点14)
×
マンチェスター・ユナイテッド(3位/12勝3分4敗/勝ち点39/得点30 失点22)
@エミレーツ・スタジアム
戦績
過去の対戦成績
過去5年の対戦でアーセナルの4勝、マンチェスター・ユナイテッドの4勝、引き分けが3つ。
アーセナルホームでの対戦成績
過去10戦でアーセナルの4勝、マンチェスター・ユナイテッドの3勝、引き分けが3つ。
Head-to-head from BBC sport
https://www.bbc.com/sport/football/64279776
- アーセナルは直近7試合のホームのリーグでのマンチェスター・ユナイテッド戦で5勝(D1,L1)
- 17試合のアーセナルのプレミアでのユナイテッド戦の勝利のうち、11勝は日曜に挙げられたもの。
- 直近9試合のアーセナルホームでの試合において、ユナイテッドは6試合で無得点。
スカッド情報
Arsenal
- 膝の怪我をしているガブリエウ・ジェズスとふくらはぎの怪我をしているリース・ネルソンは欠場。
- ガブリエウ、ウィリアム・サリバ、ブカヨ・サカの3人は累積警告5枚にリーチ。
- レアンドロ・トロサールのこの試合の登録が間に合ったかは確認中。
Manchester United
- カゼミーロは累積警告による出場停止。
- レンタル元のパレス戦の試合によって欠場していたジャック・バトランドはベンチに復帰。
- 直近の欠場者の中ではディオゴ・ダロトやアントニー・マルシャルは復帰の可能性あり。
Match facts from BBC sport
Arsenal
https://www.bbc.com/sport/football/64279776
- ホームのユナイテッド戦を首位で迎えるのは過去2回であり2004年3月と2007年の10月の試合はいずれもドロー。
- 22-23においてビッグ6に対して5戦4勝しており、唯一の敗戦がユナイテッド戦。07-08以降、5勝したシーズンはない。
- 18試合のリーグ戦のうち、17試合で得点しているが、唯一得点を逃したのは直近ホームゲームのニューカッスル戦。
- 2試合連続のホームのリーグ戦での無得点になれば2020年11月以来。
- フレディ・リュングベリ、ティエリ・アンリに続き、ブカヨ・サカは3戦連続でユナイテッド相手に得点をとった選手になる可能性。
- ガブリエル・マルティネッリは直近10試合のエミレーツにおけるリーグ戦で10得点に関与(6G4A)。
Manchester United
https://www.bbc.com/sport/football/64279776
- パレス戦の引き分けによって、公式戦の9連勝と先制したリーグ戦の15連勝がストップ。
- 2試合連続で勝ち点を落とせばブライトンとブレントフォードと戦った開幕2戦以来のことに。
- アウェイで6勝目を挙げれば昨季の数に並ぶ。今季挙げた5勝はいずれも1点差での勝ち。
- マーカス・ラッシュフォードは10試合のアーセナル戦の先発で4得点、4アシスト。最も得点に関与している相手。
- ラッシュフォードは直近26試合(2年間)のアウェイで先発したリーグ戦では得点がない。この間、途中出場の選手としては4得点を挙げている。
予想スタメン
展望
強みの押し出しと崩しの底上げ
前節の記事で述べたとおり、アーセナルは今優勝への第一関門を迎えている。第一関門となる2試合のうち、1試合目となる先週はトッテナムの本拠地の制圧に成功。2位との勝ち点差は広がることになった。第一関門の後編の試練はもちろん今週のユナイテッド戦である。今季のリーグで唯一の敗北を喫した相手を越えればひとまずは第一関門を通過したと胸を張れるだろう。
そのユナイテッドは前回対戦時は5位だったが、現状は3位。年末年始の無敗が効いており、CL出場権内で5位に6ポイントのリードがある状況。チームの調子は上向きである。前回の対戦時と比べるとチームとしての風格は明らかに出てきているといえるだろう。
好調の一番の理由はチームとしての強みを前面に押し出せているという点である。中盤のボール奪取力とそこからの素早い攻撃でチャンスの構築がスムーズにできているのである。
中盤のボール奪取を象徴する試合となったのが先週のマンチェスター・ダービー。SHとして先発したブルーノがCBにプレスに行くときに、マークを捨てたSB(カンセロ)にプレスに行くのはCHのカゼミーロだった。
SHの後方は一般的にはSBがケアするケースが多い。だが、ユナイテッドは中盤がカバーの役割を担う。シティにはハーランドの怪物がいるので、後方が同数になるのを避けたいという対策的な意味もあると思うが、彼らの強みが中盤にあるという証左でもあるだろう。
断っておくが、ユナイテッドのバックラインが頼りないという意味ではない。レギュラー格の選手の能力は総じて高く、ルーク・ショウはCBまで涼しい顔で務めるようになったし、ワン=ビサカはパレス戦でラストプレーで決定的なピンチを食い止めて見せた。
だけども、バックラインは全員が全員広いスペースを走り回りながらフィジカルバトルを全勝できるわけではないだろう。主軸の1人のヴァランは能力的にはこうしたバトルにこそ勝ち続けるポテンシャルはあるが、負傷が少なくない選手であり、負荷が高い起用法にはリスクが伴う。デ・ヘアを含め、メンバー的にもボックスをがっちり守るのを得意としている選手が多く見える。
それならば、無理が効いて質の高い中盤に負荷のかかる仕事をやってもらおうというのは当然の流れともいえる。アーセナルがバックラインに高い位置でガンガン跳ね返させるのをユナイテッドは中盤でやっているイメージと述べればいいだろうか。中盤で奪えるならばゴールまでの距離も短い。
ボールを奪ったあとの大きな展開が出せる選手は豊富。エリクセン、ブルーノ、カゼミーロ、最終ラインのリサンドロ・マルティネスなどロングキックの精度が高い選手がずらりと揃っている。
速い攻撃の主役となっているのはラッシュフォード。カウンターを完結し、ゴールまで持って行くという凄みが今の彼にはある。サイドに流れても怖いのが厄介。サイドからの高いクロス精度を生かしてのアシスト役としても優秀な存在である。徐々に出番を増やしているガルナチョも悪くない。周りに人がいない時の1on1ではその存在感を存分に発揮。広いスペースでの攻撃を完成させることができる選手である。
こうした中盤の奪取力と前線の動けるストライカーのコンビが彼らの強み。それを補完するのがCFのマルシャルであり、ベグホルスト。特にベグホルストにはポストプレイヤーとしてエリクセンやブルーノに前を向かせる役割が期待されている。
このように速攻だけでなく遅攻としての武器も十分に持っている。押し込む局面において効いているのは左サイド。ラッシュフォードは止まった状態からでも対面の相手を剥がせる調子の良さがあるし、後方のルーク・ショウの絶妙なオーバーラップのコース取りはゴールに続く電車道になる場面もあるくらいだ。
ショウの相棒が同じSB型のマラシアである場合は、2人でレーンを入れ替えながらラッシュフォードの周辺をサポートするし、リサンドロ・マルティネスであれば後方支援のフィードが期待できる。ここにエリクセンが絡んでくるのだから左サイドの崩しはバリエーションの富んでいる。パレス戦の先制点は力業ではなく、相手のズレをサイドから滑らかに使って崩している。ラッシュフォード頼みの攻撃というわけではなく、チームとしての崩しのパターンができつつある証拠である。
まとめると強みをきっちりと押し出しつつ、試合の中で洗練されてきた部分が出て来たことが彼らの好調の要因といえるだろう。間違いなく今の彼らは強敵だ。
- 中盤のボール奪取力とカウンターの相性が抜群。
- 左サイドを軸とした定点攻撃の底上げ。
シティと似たアプローチで
カゼミーロの不在は当然アーセナルにとっては大きな追い風になる。中盤でのボール奪取力を支える筆頭の存在であり、ロングキックの起点など保持面でも効いている存在。ビックマッチにおいて決定的な差になりうる空中戦の強さとセットプレーにおけるフィニッシャーとしても優秀であらゆる局面での影響が出ることは確実だろう。
カゼミーロがいないならば、アーセナルはショートパスで相手を引き出しながらユナイテッドのストロングポイントであるボール奪取力に正面から立ち向かっていきたいところ。ユナイテッドが極端なローラインで構えることはおそらくないだろうから、ボールを回していれば少なからず取り返しに来るアクションは見せるだろう。
狙いとしたいのはシティと同じくSHの背後のスペース。このスペースを突いて、誰が対応するかでそのあとのアクションを決めたい。
シティ戦と同じくCHが出てくるとまずは仮定しよう。フレッジ、マクトミネイの並びの場合は運動量の豊富さでシティ戦に近いパフォーマンスを見せる可能性もあるだろう。ただ、ベンチに代えが効くメンバーはおらず、90分このタスクが維持できるかは怪しい。ならば、ボディブローのようにじわじわ効かせる形で徐々にダメージを与えていきたい。
フレッジとエリクセンの場合はさすがにシティ戦と同じようには守れないはず。出て来たフレッジを外し、エリクセンが構える広めのバイタルに侵入して攻勢を狙いたい。
シティ戦と異なりSBが出て来た時は背後を狙う動きを活用。誰もついてこなかった場合はアーセナルのSBが持ち上がりながら侵攻である。いずれにしてもユナイテッドのSHの背後でSBがフリーになる形を作るのは1つの目標になる。シティは攻略にやや手間取ったが、カゼミーロがいなければアーセナルには十分攻略し切るチャンスがあるように思う。
もう1つユナイテッド戦でアーセナルが優位に立てそうなのは体力面。日程の部分はアーセナルに大きく優位である。カラバオカップ、FAカップ、そしてELのプレーオフラウンドを控えるユナイテッドはほぼすべてのミッドウィークが埋まっている状態が続いている。前節のパレス戦はある程度週末に備えてペースを落とした可能性はあるが、スカッドの疲労の色は濃いのは間違いないだろう。
アーセナルとしてはいくつかプランが考えられるだろうが、控えのスカッドに一抹の不安があることを踏まえれば、序盤からフルスロットルで相手を置いていくトライがいいだろう。前半でリードを奪い、後半はスパーズ戦のように耐えながらカウンターで陣地回復を狙う。できれば、ゴールの可能性は先週よりもちらつかせながら試合を進めたい。
ユナイテッドの攻撃で最も気を付けたいのは手早いカウンター。完全に防げればもちろんいいが、なかなかそれも難しいだろう。それならばカウンターをユナイテッドの右サイド側に誘導したいところ。速い攻撃の中でアントニーにボールが渡るとスローダウンすることがしばしばあるので、アーセナルが守備陣形を整える時間を稼ぐことができる可能性がある。ワン=ビサカも頑張ってはいるが、オーバーラップによる攻撃のサポートでより優れているダロトの不在もこちらのサイドに誘導したい一因である。
逆にホワイトの背後をラッシュフォードに取られるパターンが一番厄介。逆サイドのアントニーが飛び込んでくるエリア内をガブリエウとジンチェンコで食い止められるかは微妙なところ。サリバには何とか潰し切ってほしい。仮に難しいのならば、ホワイトの背後を空けることを避けるためにも、サカの前線へのプレスをある程度自重することも考える必要があるだろう。
- ユナイテッドのSHの背後にSBがフリーでボールを持てる状態を作る。
- 前半で押し切り、リードを奪ってハーフタイムを迎える。
- 相手のカウンターをユナイテッドの右サイド側に誘導する。
勝ち点を積み上げるペースが上がってきたユナイテッドのファンの心境は今微妙な状況にあるはずだ。アーセナルさえ調子を落とせば優勝も狙えるかもしれない。しかし、スカッドは疲労困憊でこの先も過密日程は少なくとも1ヶ月は和らぐことはない。1年目にしては上出来である一方、リーグの優勝という観点ではポジティブな感情とネガティブな感情が入り混じっているはずだ。
ならば、アーセナルとしてはきっちり彼らにダメージを与えたいところ。勝ち点的には引き分けでも悪くはないが、相手に優勝はまだ早いと諦めさせるようなパフォーマンスができれば最高である。自らが門番となり、優勝争いのライバルに試練を与えることで、優勝の可能性を高める勝利を狙っていきたい。