Fixture
プレミアリーグ 第22節
2023.2.4
エバートン(19位/3勝6分11敗/勝ち点15/得点15 失点28)
×
アーセナル(1位/16勝2分1敗/勝ち点50/得点45 失点16)
@グディソン・パーク
戦績
過去の対戦成績
過去10回の対戦でエバートンの4勝、アーセナルの5勝、引き分けが1つ。
エバートンホームでの対戦成績
過去10戦でエバートンの5勝、アーセナルの2勝、引き分けが3つ。
Head-to-head from BBC sport
- エバートンは45年以上ぶりに対アーセナルとのホームのリーグ戦3連勝を狙う。
- アーセナルは直近10試合のリーグ戦でのグディソン・パークで2勝のみ。
- アーセナルはエバートンにここまでリーグ戦で99勝。英国のリーグの歴史において、あるクラブが特定のクラブ相手に100勝挙げたことはここまでない。
スカッド情報
- ベン・ゴドフリーとマイケル・キーンは膝の怪我で欠場見込み。
- ジェームズ・ガーナーは背中に負傷を抱えており、アンドロス・タウンゼントとネイサン・パターソンも引き続き欠場。
- ジョルジーニョにはデビューの可能性。シティ戦で負傷交代したトーマス・パーティは当日評価。
- エミール・スミス・ロウは太ももの負傷で欠場で、長期離脱中のモハメド・エルネニー、リース・ネルソン、ガブリエル・ジェズスも欠場。
Match facts from BBC sport
- 直近の公式戦10試合で2つの引き分けと8つの負け。1994年以来、最悪のラン。
- グディソン・パークでのリーグ戦では4連敗中であり、1958年に樹立したクラブレコードの7連敗以来最も悪い数字。
- プレミアリーグの首位チームとの対戦は過去44回で3勝のみ(D9,L32)
- ショーン・ダイチは直近5回のアーセナル戦で1敗のみ(W1,D3)
- しかし、ホームでのアーセナル戦でのダイチの成績は2つの引き分けと5つの負け。
- ジョーダン・ピックフォードはエバートンでのプレミア200試合目を飾る可能性。
- 今季のリーグ戦でのアウェイゲーム10試合において8勝を挙げている(D1,L1)
- 今季リーグで記録した9つのクリーンシートのうち、7つがアウェイで達成したもの。
- 2018年12月以来、14試合のリーグ戦無敗を記録。
- ハーフシーズンでの50ポイントはプレミアにおけるクラブ最高勝ち点。
- マルティン・ウーデゴールは今季アウェイで6得点を決めておりチーム最多。彼が決めた直近3つの得点は全てアウェイで決めたもの。
予想スタメン
展望
ランパード時代を振り返る
ウェストハム戦での敗戦でエバートンはフランク・ランパードを解任。年が明けてもなお、降格圏から遠ざかることは出来ず、それどころかより深く足をとられてどっぷりと浸かっている状態になっている成績である。ピッチの中の事情を鑑みれば解任はやむなしといったところだろう。
というわけでショーン・ダイチのエバートンに関する情報は何もない。解任直後のプレビューというのは非常にやりづらいのだが、やるっきゃないのでとりあえずランパード時代のエバートンを振り返るところから始めよう。
ランパードは4バックと5バックのどちらも使い分けるタイプの監督だが、とりわけビッククラブとの対戦においては5バックを活用することが多かった。就任直後のチェルシー戦での塹壕戦に成功して以降、ランパードのプランは一貫してこの部分に寄り添っていた。
中盤が3枚か2枚かについては日によるが非常にファジー。イウォビとグレイがあいまいなポジションを取り、複数の役目をこなすことが多かった。グレイは2トップの一角:シャドー=7:3のイメージで、イウォビはシャドーとIHが半々という形で5-3-2と5-2-3を行ったり来たりというのがお決まりの形だった。
後方の2CHであるオナナとゲイェは並行というよりはIHとアンカーという棲み分けがあるイメージ。初めはゲイェが後ろで、オナナが前だったが、直近では逆転する起用法も見られる。このようにエバートンのセンターラインはキャルバート=ルーウィンを頂点にグレイ、イウォビ、ゲイェ、オナナとグラデーションのようにポジションを後ろ寄りにシフトさせていくポジションを取っている。
攻撃における難点は前にボールを運ぶルートが限定的であることだろう。イウォビ、グレイのどちらかがボールを持って前を向けば、それだけでチャンスは作れる。ただし、そうした状況を作り上げるための保持の仕組みはあいにく持ち合わせていないため、偶発的にそういう状況が起きるまで待たないといけないのが難点である。
さらにフィニッシャーといえるフィニッシャーはキャルバート=ルーウィンくらいしかおらず、ゴールまでの道のりはさらに細い。マイコレンコなど、WBには攻撃参加で存在感を見せる選手もいるが、守備における撤退第一主義という傾向と前に時間を作る選手がいないため、なかなかオーバーラップをする機会を作ることができない。そもそもキャルバート=ルーウィンの稼働率自体も不安定であり、土台からてっぺんまで安定感を欠いている状態。コンスタントにパフォーマンスを落とさずに役目を全うできているのは全体を見渡してもイウォビくらいのものだろう。
非保持においては先にも述べたように撤退守備が第一。だが、相手を捕まえるために列を上げるアクションもたびたびする。このアクションをした際に出て行った選手が空けたスペースをうまく埋めることができないのがエバートンの守備の難点である。いわゆるカバーの遅れが多く散見され、そのままになっているケースもしばしばだ。
この難点はランパード時代における特性というよりも、以前から存在していた悪癖をランパードが修正できなかったと表現するほうが適切なように思う。昨年チームを救ったランパードだったが、メカニズムからの修正では大きな成果を挙げられないままでの退団となった。
ダイチとエバートンの融合予想図
次にショーン・ダイチの話をしよう。ローラインでがっちり守ってのカウンターというイメージが色濃いかもしれないが、バーンリー時代の晩年にはひとまず相手にプレスをかけて力量を測ることは欠かさずやっていた。シティにも同じようにプレスに行き、あっさりと外されていた光景などは初志貫徹具合をある意味感じる部分でもあった。
長い時間プレスに出て行くというよりは、まずは出ることをして相手のペースをどれくらい乱せるかを見定めるといったニュアンスが強い。バーンリー時代に得意だったのはローラインからのロングカウンターというよりも、互いに中盤が間延びするような泥試合に持ち込み、広いスペースをコンパクトに守らせないままダラっと試合を続ける形だった。
前からのプレスに色気を出すのならば、中盤に運動量があるエバートンではバーンリー以上のカバー範囲が期待できるだろう。ただし、相手にプレスが通用しなかった際のローラインブロックにおける強度はエバートンにとっては鬼門中の鬼門。ランパードはおろか、アンチェロッティでさえコンパクトに守ることができていなかったのだから、クラブのDNAレベルでの苦手分野といえるだろう。
残留に向けてはまずこの部分である程度の完成度まで持って行く必要がある。とはいえ、中盤の運動量を生かすことはしたいはず。出てくる動きはアーセナル相手にも見せてくるはずと予見する。ただし、バランスは探り探りのはず。日程的にやや空きがあったとはいえ、どこまで出て行くかのバランス感覚と撤退守備のクオリティ向上という2つのテーマを潰すのは簡単ではない。
アーセナルからすればエバートンのプレスを引き寄せた分、きっちりと痛い目に遭わせたいところ。ライン間のスペースが空いたところは狙い目になるので、積極的に入り込みたいし、撤退時にはかなり中盤のプレッシャーが弱まるのでここから裏を狙うこともできる。
スタメンが予想される選手はもちろん、その他の選手のアピールのチャンスも十分あるはず。認知力とワンタッチパスが得意なジョルジーニョがいきなり効く相手でもある。押し込む時間帯を長く作ることができれば、トロサールにも展開は向くはずである。
非保持においてはまずは中盤でイウォビとグレイを捕まえることが第一。最短での攻撃ルートを塞ぎたい。ダイチの就任で序列が変化しうるのはバーンリー時代に重宝していたマクニールだろう。大外にパスを供給できるコーディとエリア内のターゲットマンであるキャルバート=ルーウィンが揃っている環境はバーンリー時代のクロッサーとしての資質を開花させるためには十分である。大外が機能すればインサイドのプレッシャーも弱まるはずである。ここが3つ目のルートとして機能すると面倒である。
アーセナル目線でいえば、上に名前を挙げた選手たちがどこまでハイテンポのプレスに適応できるかはキーになる。特にジョルジーニョが入った際のバランスの変化は早い段階でチェックしておきたいところだ。こちらもバランスを探る部分はある。
それでも、新監督を迎えて時間がないチームよりは抱える課題は多くはない。相手がバランスを見つけてリズムをつかむ前に先制攻撃で叩く。近年、鬼門になっているグディソン・パークだが、今季は苦手意識を払拭し、後半戦の足場固めの舞台として活用したいところだ。