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「対策は実装ありき」~2023.2.11 プレミアリーグ 第23節 アーセナル×ブレントフォード プレビュー

目次

Fixture

プレミアリーグ 第23節
2023.2.11
アーセナル(1位/16勝2分2敗/勝ち点50/得点45 失点17)
×
ブレントフォード(7位/8勝9分4敗/勝ち点33/得点35 失点28)
@エミレーツ・スタジアム

戦績

過去の対戦成績

 過去4回の対戦でアーセナルの3勝、ブレントフォードの1勝。

Head-to-head from BBC sport

Head-to-head
  • ブレントフォードのアーセナルのアウェイでの8回の対戦のうち、唯一の勝利は1938年4月のリーグ戦(W3,D4)
  • アーセナルは勝てばダブル。ブレントフォードがプレミアでダブルを記録した47つ目の相手になる。

スカッド情報

Arsenal
  • ガブリエル・ジェズス、モハメド・エルネニーは欠場。
  • 腿の負傷をしているエミール・スミス・ロウは復帰にはややショートか。
  • 11月からハムストリングの影響でプレーしていないリース・ネルソンはフルトレーニングに復帰済み。フィットする見込み。
Brentford
  • ポンタス・ヤンソン、シャンドン・バプティスト、フランク・オンエカの状況は当日まで確認する。

Match facts from BBC sport

Arsenal
  • エバートン戦の敗戦は直近14試合の唯一の敗戦。しかし、今季のホームゲームでは9戦無敗で8勝を挙げている。
  • 2022年4月以来の公式戦3連敗の可能性。
  • プレミアにおける同一シーズンのレコード(05-06と14-15のチェルシー、13-14のアーセナル)であるロンドンダービー8連勝を狙う。
  • 今季の7試合のロンドンダービーでは16得点、3失点。
  • 直近喫した2つのリーグ戦の失点はいずれもCKから。今季のそれ以前の15失点 のうち、CKからの失点は1つのみ。
Brentford
  • 直近のプレミアリーグ9試合無敗(W5,D4)でこれより長く負けていないのは16試合無敗のニューカッスルだけ。
  • 史上初めてのトップリーグ4試合連続のクリーンシートを狙う。
  • 2試合連続アウェイゲームでクリーンシート。それ以前の24試合のアウェイゲームでクリーンシートは1つだけ。
  • 先制したプレミアリーグの試合では負けたことがない(W17,D4)

予想スタメン

展望

2つのスタイルの使い分け

 序盤戦は試合ごとにムラがあり、内容的にももう1つという試合が多かったブレントフォード。だが、中盤戦以降は昨年見せたようならしいしぶとさを見せる試合が一気に増加し、順位も右肩上がりとなった。特に中断明けの成績は目を見張るものがある。ワールドカップ以降のリーグ戦は6戦無敗の4勝2分。直近5試合はわずか1失点であり、守備面での成績が光る。 

 直近5試合の間に稼いだ勝ち点はリーグで最も多い。アーセナルはエバートン戦の敗戦後にリーグで最も素晴らしいランを記録しているチームと対峙することになる。要塞と化している彼らのホームスタジアムで戦わなくて済むのは非常に幸運だろう。未だあのスタジアムから勝ち点3を持ち帰ることが出来たのはアーセナルだけである。とはいえ、アウェイでもシティを下した実績は持っているのだけど。

 ブレントフォードのスタイルでまず目に留まるのは2つのフォーメーションの使い分けである。3-5-2と4-1-4-1の2つはどちらも中盤が3枚の逆三角形型。トーマス・フランク監督は今季に限らずこの逆三角形となる形を基調としており、どちらのフォーメーションでも固定される部分だ。

 攻撃は多くの場合は出口が2つに絞られている。FWへのシンプルなロングボールをそのまま裏に抜ける形に持って行くか、サイドからのクロスかのいずれかである。ブレントフォードといえば、高い位置からのプレスと手早い攻撃で相手を苦しめる印象を持っている人が多いだろう。おそらく、それはトーマス・フランクが多くの人が見ているビッグマッチにおいて、そうしたプランを好んで採用するからだろう。試合によってはまったりと保持をする気もあるチームである。

 フォーメーションの違いでいえば、3-5-2を使う方がよりアグレッシブ。初期のサイドプレイヤーの位置が高いため、ある程度直線的な攻め筋をしてもサイドの攻撃が追いつく。CFにボールを当ててワイドに展開、そこからファーにクロスを上げる形は彼らの十八番といえるだろう。最近、左サイドのヘンリーはいろんな形でクロスを入れられるようになったのが厄介である。

 4-1-4-1の方は比較的トランジッションが抑えめなケースが多い。リトリートは割り切って行い、きっちりとスペースを埋める。サウサンプトン戦ではショートパスをつないで決定機を生みだすなど、彼らのパブリックイメージとは異なる形で決定機を生みだしたりもしている。つなぎながら前進するプランもレパートリーに入っているチームといえるだろう。

 もともとも強固だったセンターラインには新たにベン・ミーが加入。より最終ラインの剛性は高まっており、この部分では厄介である。

 中央以外で言及しておきたいのはムベウモ。トニーの陰に隠れがちな存在だが、中央もワイドもプレーエリアを問わず、ゴールとアシストの両面で貢献できる貴重な存在である。2トップスタートで外に流れるもよし、初期配置がワイドでも良しと非常に幅の広い選手だ。現代的とは程遠いスタイルだったカメルーン代表ですら、気を遣えていたのでとても賢い選手なのだろう。ブレントフォードを支える黒子の動きにも要注意である。

冨安に求められる要素は?

 まず、アーセナル視点で気を付けたいのはセットプレーからの失点だ。ブレントフォードのセットプレーは威力十分。無抵抗のリバプールをCKのたびにぶん殴りまくっていたし、ロングスローもレパートリーにある。エバートン戦でやられたばかりのセットプレーで同じ轍を踏むようなことがあれば、ホームと言えど苦しい戦いになるだろう。

 流れの中でのプレーの話はフォーメーションごとに切り分けていきたい。まずは3-5-2を繰り出してきた場合。個々は何と言ってもトニーとのロングボールのマッチアップの行方である。もちろん、4-1-4-1でもトニーのロングボールは出てくるが、3-5-2だとアーセナルのCBにとって同数でFWと対峙しなくてはいけないフォーメーションなので、よりタフな状況になる。

 ラヤ→トニーの流れから起点を作られる展開の恐ろしさは昨シーズンのアーセナルも十分に味わっている。ここで制空権を握れるかどうかは両チームにとって非常に重要なファクターだ。

 加えて、サイドからのクロスにはきっちりと最終ラインがスライドして対応したいところ。特に左サイドのヘンリーにクロスを上げさせると厄介なので、同サイドの選手が出て行くことはサボらないで行いたい。クロッサーへの迎撃とファーのクロス対応の両方をこなさなければいけないので非常にハードになる。

 4-1-4-1においてのブレントフォードは繰り返すが比較的静的である。非保持においてはWGはきっちりと自陣まで戻り、リトリートしてスペースを埋めてくる。

 そう聞くと、アーセナルファンはニューカッスルやエバートンとの試合における苦い記憶を思い出しているだろう。アーセナルがここ数試合で苦しんでいるのはサイドの重心を下げながらWGを手厚くカバーする4-1-4-1であり、確かにブレントフォードの4-1-4-1と似ている部分はある。2つそうした相手が続けば対策が完了したように映るのも事実だろう。

 だが、個人的にはそう結論付けるのはまだ早計なように思う。ニューカッスルやエバートンが遂行したプランは方向性自体は非常にオーソドックスなものである一方で、非常に実装するには根性がいるプランである。特に中盤の負荷はとても高いものになる。

ニューカッスルとエバートンは中盤のアスリート能力がかなり高いチーム。彼らクラスで動ける中盤を有しているチームはそこまで多くはない。マンチェスター・ユナイテッドくらいのもののように思える。ブレントフォードの中盤は献身性は十分にプレミアにコミットするレベルではあるが、さすがに先に名前を挙げたチームに比べると一段強度は落ちるはずだ。

 ポイントはマイナス方向へのチェックをどれだけ厳しくできるか。アーセナルのサイド攻撃を担保しているのはマイナス方向から再び攻めに出て行く際のバリエーションである。アーセナルのWGが押し下げたことで生まれるマイナスのスペースからの攻撃はいくつか考えられる。トーマスやウーデゴールのミドルとラストパス、ジンチェンコやホワイトのファーへのクロス。ラインの押し上げはこうした二次攻撃を防ぐための方策になる。

 アーセナルからすると、WGにマークが集約されることをスタートとして相手を上回っていきたいところ。対策はわかっていても実践できなければ怖くはない。

 ややコンディションを落とし気味のホワイトに代わり、ファンの中では冨安の先発待望論がにわかに上がっているように思える。彼が先発で出るのであれば、サカの周りのスペースを活用し、何かしらの相手のゴールを脅かすアクションが必要とされることになる。サカ以外は放っておいてOK!ならば、相手のサイド封鎖の難易度はぐっと下がることになってしまう。

 冨安にとっては得意な分野ではないかもしれない。だが、アーセナルのSBは今やフリーで何もできない選手には厳しい役回りへの変貌を遂げた印象がある。冨安のレギュラー奪取のポイントは「放っておいたら怖い存在になること」だろう。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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