Fixture
プレミアリーグ 第12節
2023.2.15
アーセナル(1位/16勝3分2敗/勝ち点51/得点46 失点18)
×
マンチェスター・シティ(2位/15勝3分4敗/勝ち点48/得点56 失点22)
@エミレーツ・スタジアム
戦績
過去の対戦成績
過去5年の対戦でアーセナルの1勝、マンチェスター・シティの12勝。
アーセナルホームでの対戦成績
過去10戦でアーセナルの2勝、マンチェスター・シティの7勝、引き分けが1つ。
Head-to-head from BBC sport
- アーセナルはリーグ戦でマン・シティにリーグ戦で10連敗中。アーセナルが特定の相手へのリーグ戦連敗記録として歴史的に最も長い記録。
- シティは直近6試合のエミレーツでの公式戦で全勝。それ以前の61試合のアーセナルアウェイの勝利数と同じ。
- これまでの歴史上、アーセナルのホームで7連勝したことのあるチームは存在しない。
スカッド情報
- ガブリエル・ジェズス、モハメド・エルネニーは長期離脱中。
- リース・ネルソン、エミール・スミス・ロウはマッチフィットネスに不安。
- エリック・ハーランドがフィットするかは当日判断。
- ジョン・ストーンズは太ももの問題を抱えており離脱中。
Match facts from BBC sport
- 今季初めてリーグ戦で2試合連続勝利を逃している。
- しかし、ホームでのリーグ戦は直近13試合無敗で、うち11試合に勝利している。
- 直近8試合の前年チャンピオンとの試合は全て敗れており、いずれの試合も少なくとも2失点はしている。
- 最後に前年のチャンピオンに勝利したのは2017年4月のレスター戦。
- 直近3失点はいずれもヘディングによるもの。今季初めの15失点においてヘディングでの失点は1つもなかった。
- マンチェスター・シティはミケル・アルテタが監督としてプレミアで勝利していない唯一のクラブ。公式戦5回の対戦でいずれも敗れており、1得点12失点を記録している。
- アウェイではリーグ戦で13ポイントを落としており、昨季全体(11)よりもすでに多い。
- 水曜開催のプレミアリーグは直近22試合全勝。大会における特定チームの特定の曜日の連勝記録として最も長い。
- 2020年6月以来初めてのアウェイでのリーグ戦3連敗の可能性。
- 直近9試合のアウェイゲームで6得点。
- ケビン・デ・ブライネは直近13試合の公式戦の出場でゴールを決めることができていない。
予習
FA杯 4回戦 アーセナル戦
第22節 トッテナム戦
第23節 アストンビラ戦
予想スタメン
展望
シティの仕組みを復習
エミレーツでマンチェスター・ユナイテッドにリベンジを果たしたタイミングではそれなりにアーセナルの優勝を確実視する声も見られた。あれから1か月弱、今はマンチェスター・シティが停滞気味のアーセナルを追い上げするタームとして捉えられているだろう。
魑魅魍魎のプレミアリーグにおいては数カ月先はおろか、1か月先の未来すら見通すことは難しい。だが、アーセナルとマンチェスター・シティの直接対決が今季のプレミアのタイトルレースを左右するという見立てはおそらくそこまで外れることはないだろう。FAカップではすでに顔を合わせているが、リーグ戦での対戦は今季初。非常に緊張感の高まった状況での一戦となった。
シティはこのFA杯での対戦から枠組み自体は大きくは変わっていないといえるだろう。ベースのポジションは3-2-5。アンカーのロドリの周辺に人を集める仕組みである。前節のアストンビラ戦ではやや尖ったスタメンになったが、ロドリの横にベルナルド(非保持ではSB)を置いて3-2-5を形成するという部分で考えると、そこまで目新しいことをやっているわけではない。
このシティの仕組みのメリットは前回のプレビューで述べたので簡単に。キーになるのは大きく開くバックラインにより、外切りのプレッシングが難しくなること。かといって外にプレスの人員をかければロドリと内に絞ったルイス、ウォーカー、ベルナルドといった人たちをマークするのが困難になる。
WGの外のレーンの活用も重要だ。特にシティの左サイド側。グリーリッシュについていくかどうかは非常に相手チームからは重要なポイントになる。後方のサポートは少ない分、WGは上下に動くバッファがある。相手を背負ってからの反転からドリブルを始めることができるグリーリッシュと今季のシティのプランは相性がいい。
3-2-5のシステムは従来のシティと比べるとサイドからの後方のサポートは受けにくい。かつ、CFはPA内でターゲットに専念するハーランド。よって、マフレズとグリーリッシュの大外から少ない人数で打開するタスクが与えられる。
だが、逆にサイドから壊し、狙いがはっきりしたクロスが決まると止めるのは難しい。ハーランドはもちろん、アルバレスやギュンドアンといったボックス内でシュートの精度で勝負ができる選手がいる。列を上げてPA内に入ってくるロドリの空中戦も含めて、シティにクロスを許してしまうと非常に厄介である。
なので、サイドで早い段階で食い止めるアプローチは欲しいところ。先に述べたようにサイドでの人数をかける傾向は減少したので、WGを止めればサイドの封鎖に光が見えてくる。
センターラインに集まる選手たちをいまいち崩しの手段として有効活用できていない感があるのはシティの課題である。2CHで相手の中盤を引き出せれば、その背後のスペースは空いているので、このスペースを降りる前線で使えれば効率がいい。
上図のようにマンチェスター・ダービーからこの試みはちらほら見られるものの、ハーランドが降りて使ってもイマイチ前進のメカニズムにつながらないのがシティの現状。ここからアタッキングサードに持って行く部分はチームの伸びしろになってくるだろう。なお、当然デ・ブライネにこのスペースで前を向かせたら終了。シティの得点の最短ルートが開放されることになる。
アーセナル目線でいえば直線的にスピードに乗らせない限りはこのスペースの攻防には優位を取るチャンスが来るはず。FA杯の後半にサリバやガブリエウがハーランドに対してアドバンテージを取っていたのは心強い。同数で受けても問題がないのならば、プレッシングにもそれなりにアーセナルは人数をかけることができる。非保持でもリズムをつかむきっかけになりうるポイントだ。
鬱憤を晴らす舞台が整うマルティネッリ
まず、アーセナルのポイントになるのはFA杯からのメンバーの入れ替えでの上積みがどこまで見込めるかである。前回対戦はメンバーを入れ替えた分、きっちりとできることが減った感がある。レギュラーメンバー主体に入れ替わることにより、いくつかのポイントで改善が見込めるかは重要な論点となる。
改善が大いに期待できるのはビルドアップ耐性だろう。FA杯4回戦でのバックラインでは後方からのドリブルでのキャリーや時間を前に送ることができるパスは少し期待しにくい。ここはレギュラーメンバーに入れ替わることで向上が見込める。
高い位置からのプレスでアーセナルを苦しめたチームというと直近ではエバートンだが、彼らはリトリートからのラインを回復しながらのプレッシングが非常によかった。シティがやってくることが想定されるハイプレスとは少し毛色が違うように思う。バックラインから深さを作ってのプレス回避はアーセナルは今季は非常に得意としている。
また長いボールでの解決策も欲しいところ。シティのバックラインの高さを踏まえれば前線にダイレクトプレーに強い選手がいてほしい。シティのネガトラでアキレス腱になるのはCHに移動するSBがいるサイドの守り方である。おそらくシティの右サイド側の選手だろう。
期待したいのはマルティネッリ。ここ数試合の鬱憤を晴らす大きなチャンスになる。大外に張りながらの連携が求められたここ数試合とは異なり、前で長いボールを収めつつ、推進力を持たせて一気に敵陣を攻略するキーマンになるだろう。前節、ゴールを決めたトロサールも悪くはないが、ロングボールのターゲットと馬力の点でここはマルティネッリで勝負できる環境が整っているように思う。
後方でいえばトーマスがフルタイムで出れなかったこともFA杯の敗因である。ミドルゾーンのプロテクトと大きな展開の両面で求められる選手。このポジションは冬の補強で獲得したジョルジーニョが控えているが、速いテンポが想定される展開ではトーマスの貢献は必須だろう。
勝つには長所を前面に押し出すことが重要となる。今季アーセナルがどのように勝ってきたか?を考えると、速いテンポと正確なプレーの両立が出来ていたからである。ここ数試合の対戦相手はロングボールにおける陣地回復により流れを断ち切ってきたり、ローブロックを軸としたプレースピードの減速でテンポを強制的に落としてきたりなど、このサイクルを邪魔するチームが多い。シティは当然強敵だが、こうしたサイクルを邪魔してくることに特化するチームではない。
強いチームというのはビッグマッチを外さない。今の成績を見ると自信が揺らぐ人もいるかもしれないが、自分は今季ここまで大きな試合でやるべきことをきっちりやってきたこのチームを全面的に信頼している。水曜の試合は「やっぱり強いよね」といわれる内容であることを期待するし、勝利を手にしてタフなプレミアリーグの王者としてアーセナルがふさわしいことを証明する舞台になることを今から楽しみにしている。