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「正面衝突は不要」~2023.2.25 プレミアリーグ 第25節 レスター×アーセナル プレビュー

目次

Fixture

プレミアリーグ 第25節
2023.2.25
レスター(14位/7勝3分13敗/勝ち点24/得点36 失点41)
×
アーセナル(1位/17勝3分3敗/勝ち点54/得点51 失点23)
@キング・パワー・スタジアム

戦績

過去の対戦成績

 過去5年の対戦でレスターの4勝、アーセナルの6勝、引き分けが1つ。

レスターホームでの対戦成績

 過去10戦でレスターの3勝、アーセナルの4勝、引き分けが3つ。

Head-to-head from BBC sport

Head-to-head
  • レスターは負ければ91年間で初めてのアーセナル戦5連敗。
  • アーセナルは1925年以来のアウェイのリーグ戦のレスター戦3連勝を狙う。
  • アーセナルは直近3試合の公式戦でのアウェイのレスター戦で全勝。

スカッド情報

Leicester
  • 膝の怪我を負ったジェームズ・マディソンは当日評価。
  • 膝の怪我をしたライアン・バートランドと腿の怪我をしたジョニー・エバンスは欠場。
Arsenal
  • ブカヨ・サカとトーマス・パーティはフィットする見込み。
  • ガブリエル・ジェズスは順調に回復しているが、この試合にはショート。

Match facts from BBC sport

Leicester
  • ホームゲームで獲得できる33ポイントのうち、ここまで12ポイント。これより悪いのは最下位のサウサンプトンおみ。
  • 前半に23得点を挙げているが、後半にリーグワーストの23失点を喫している。
  • ワールドカップ以降、クリーンシートがない唯一のチーム。
  • リードから5回の逆転負けを喫しており、リーグ最多。
  • ジェレミー・ヴァーディはアーセナル戦でキャリアハイの11得点を挙げているが、今季のリーグ戦23試合の出場で1得点のみ。
Arsenal
  • 直近6試合のプレミアのアウェイゲームで5勝。
  • アウェイでの成績でリーグハイ。28ポイントを得ており、2位以下のチームよりも7ポイント以上多い。
  • アウェイでの勝利数は昨季全体に並んだ。
  • 直近5試合のリーグ戦のうち4試合で先制ゴールを献上している。
  • アストンビラ戦の勝利で今季の逆転勝利は4回目。リーグ最多。
  • ブカヨ・サカはプレミアリーグにおいて49ゴールに関与(26G,23A)。2008年のセスク・ファブレガス以来最も若くプレミアでの50ゴール関与に迫っている。

予想スタメン

展望

大幅アップの爆発力に隠れる懸念

 冬を越えて別の顔を見せるチームというのは毎年よく見かけるものである。特に近年のプレミアリーグのように下位チームも他国リーグに対して資金的な優位を持っている場合はそういった例は起こりやすい。上位を見据えるチームだけでなく、残留争いをしているチームも軒並み補強を繰り広げている。むしろ、補強をせずに冬を越したチームの方が少数派と言えるだろう。

 今季のレスターは一変とは言わないまでも、冬の移籍市場を踏まえて変化が見られるチームと言えるだろう。レスターが冬の移籍市場を経て一番向上したのはなんといっても爆発力である。アストンビラ、トッテナムとの2試合は大量得点を挙げての勝利。マンチェスター・ユナイテッド戦は無得点の敗戦ではあるが、特に前半は得点に準ずるチャンスを数多く作り出していた。

 攻撃の中心としてチームを牽引しているのは冬の新戦力であるテテだ。加入して早々に右のWGのポジションに定着したテテはレスターの爆発力向上の着火剤となった張本人である。右サイドを切り裂くドリブルを生かして、カウンターで躍動。特に素晴らしいのはスピードを落としながらのプレーができることである。いいドリブラーは速く正確にプレーするだけでなく、ゆったりとプレーすることで正確性と判断を研ぎ澄ましたプレーを行うこともできる。テテはこの使い分けができるプレイヤーである。

 スピードを落とし、相手と正対しながらボールを持てるテテは味方の攻め上がりを促すことができる。かつ対面した相手を細かいプレーで出し抜くこともできるので、PAにラストパスを送ることも可能だ。よって、テテはスピード感があふれるドリブルでの突破だけでなく、ラストパスからのチャンスメイクにも大いに期待ができる。

 テテのもたらすポジティブな効果は本人のプレーの外にも及んでいる。テテがやってくる前まで2列目で孤軍奮闘をしていたバーンズはマークが分散したことで躍動。徐々に負傷前の段階であるスケールの大きいプレーを見せるようになってきた。同サイドでSBを務めるカスターニュは試合を重ねるごとに思い切った攻め上がりを見せるように。ボールを失わないテテへの信頼の表れだろう。

 イヘアナチョ、マディソンあたりも好機が増えており前線のパフォーマンスは軒並み向上。特にチームとして速い攻撃を完結させるスキルがかなり上昇したと言える。ヴァーディなしで新しい攻撃の形を構築しつつあるのは心強い。

 バックラインではクリスティアンセンの存在感が高まっている。プレミアに冬に上陸してきたとは思えない落ち着きをボール保持と非保持の両面で見せている。特に非保持ではアグレッシブに前に出ていくレスターのバックラインの背後を見事にカバーリングしている。

 ではレスターが攻守において完全にスケールアップした存在になったかといえばそれは疑問が残る。マンチェスター・ユナイテッド戦での試合運びはその懸念が前面に出た形だったと言えるだろう。勢いのあるカウンターはおそらくどんな相手でも通用するだろう。しかし、彼らのスタイルは攻撃はカウンターからの速攻、守備はバックラインのハイラインによる迎撃によって成り立っている。

 つまり、テンポを落ち着かせる瞬間がないのである。そうしたリズムを刻むことができる選手は不足している。強いていえばメンディがそういう存在と位置付けられるだろうが、同格以上の相手に対して場のテンポを支配できるほどの影響力があるかと言われると力不足である感が否めない。

 止まったら負けという今のレスターのようなスタイルは非常に安定感を保つことが難しい。加えて、仮に相手に先行を許してしまうと、バックラインの迎撃はよりリスクをとった強引なものになりやすい。失点を重ねるにつれ、取るリスクが倍々になり、成功率も下がってあっという間にボコボコにされてしまう。ファエスとソウターの迎撃はいいものを持っているとは思うが、全てをチャラにしてもらえるほどではない。レスターが本物の台風の目になるにはこの安定感を手にする必要がある。

土俵をこちらに引き寄せる

 要はアーセナルが狙うべきことは簡単。先制点を奪い取り、レスターが取るリスクを倍々に増やしていく形が理想的であることは火を見るよりも明らかである。そのためにはレスターのカウンターの脅威を取り除く必要がある。

 カウンターを受けないためにはまずはボールの失い方が大事となる。そのためにアーセナルが気をつけたいのはロングボールに安易に逃げないことである。特にエンケティアを目掛けたロングボールには慎重になりたいところ。ファエス、ソウターの両名は迎撃に躊躇がなく、あっさりと跳ね返されることも予想できる。セカンドボールを拾われてしまえば、あっさりと彼らの得意なカウンターに移行される恐れがある。仮にエンケティアへのロングボールを使いたいのであれば、裏をとりながらサイドの深い位置を目掛けたものにしていきたいところである。

 ロングボールに対する迎撃に比べれば、レスターのハイプレスは十分になんとかする余地があると言えるだろう。後方からズレを作り、中盤を1枚ずつ手前に引き出していくことで、レスターのバックラインの迎撃に狙いの的を絞らせないようにしていきたい。

 先手を奪えば無理筋でも追ってきてくれるようになるのでペースはこちら側に転がってくる可能性はある。先制点を奪うために使いたいのはファエスの食いつきの良さである。迎撃の意識が非常に高い分、1人の選手の動きに動かされやすい。ファエスを引きつける選手とファエスが釣り出されたスペースを活用する選手を使って集中的に彼周辺を攻め立てたい。

 これまでのチームの傾向から言えば、ハイプレスがハマらないとなれば自陣に引きこもるような展開もなくはないだろう。だが、レスターに関してはベタ引きしてくれるのならばそれはそれでOKのように思う。理由としては第一に撤退した時のブロック守備の強度が挙げられる。PA内でのブレントフォードはもちろん、アストンビラに比べてもエラーが出やすい印象だ。

 第二に彼らのカウンターの脅威を減らすという部分に力点を置いた場合、きっちりと敵陣に押し下げるということ自体にそれなりに価値があるからだ。レスターと対峙するにおいてはSBと相手WGのマッチアップが重要なのはいうまでもない。だが、正直ここは相手チーム側に勢いが転がりうる部分と考えている。

 よって、アーセナルはその前の段階である土俵選びで勝負すべき。相手が得意な土俵で勝負する頻度を下げるための武器はアーセナルは十分に持っている。正面衝突の力勝負ではなく、自陣からのビルドアップ回避に力点を置くことでレスターの持ち味を殺し、リードを得てレスターが背負うリスクが倍々になる展開を狙っていきたい。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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