取り消しのダメージは甚大
前節、エバートンとのシックスポインターを制したサウサンプトン。依然として順位は最下位だが、14位までの勝ち点は詰まっておりあと1つの勝利で降格圏を脱出できる可能性は十分にある。今節は欧州カップも降格圏も無縁の無風地帯で過ごしているアストンビラとの一戦である。
序盤は比較的テンポが速い試合だった。このテンポを牽引していたのはサウサンプトン。4-2-3-1から4-4-2にシフトし、ビラのバックラインにプレスをかけていくと、中盤もこれに連動するように前がかりに圧力をかけて行く。
サウサンプトンのここ数試合で見られた5-3-2にはどこか後方が連動しきらず、いたずらにラインが高くなっている状況が続いてしまった感があったが、この試合では中盤の連動した押し上げが効いていた。よって、時間を奪われたビラのバックラインは蹴りながらエスケープするシーンが目立った。
サウサンプトンは保持においても比較的縦に速く動くアクションが多く、保持においてもスピード感は失われなかった。前線だけでなく、SBのウォーカー=ピータースも積極的に抜け出す動きを見せており攻撃のアクセントに。ちなみにだが、ビラの方もモレノのオーバーラップからのラインブレイクは攻撃参加の有効打になっていた。
試合は10分もするとだいぶ落ち着くように。それでも両チームの攻略の手段はラインブレイク。裏抜けからゴールに一気に迫る部分で両チームは勝負を仕掛けていく。
この部分で優位に立ったのはアストンビラ。裏抜けという出口は両チームとも変わらないのだが、違いがあるのはその手前の段階である。裏抜けの選手にパスを出す選手がどれだけ余裕を持ってプレーできるかである。
この試合のサウサンプトンのプレスは確かに中盤までは連動していた。だが、DFラインの押し上げは不十分であり、ライン間が空いてしまうこともしばしば。断っておくが、単に押し上げないDFラインが悪いと断罪しているわけではない。中盤や前線が追い回し過ぎてしまっている可能性もあり、そこはチームの約束事に帰属する部分。どこでエラーが出ているのかはチームの内部でなければわからない。
ただ、ライン間が空いてしまっているのは事実ではある。ラムジー、ブエンディアとビラのSHは比較的インサイドでのプレーを好む面々であり、彼らがライン間に侵入する役割を担っていた。カマラが相棒に定着してからよりフリーダムな攻め上がりが目立っているルイスも高い位置に顔を出すことが増えるように。
ライン間に侵入する選手を作ることで前半の途中からビラのワンサイドの展開になっていく。危険な位置でのセットプレーのチャンスもちらほら見られ、サウサンプトンは防戦一方。ドローンが侵入したせいで試合が一時中断してもこの流れは継続し、ビラは攻め続けた。
ドローンで変わらなかった流れはハーフタイムを挟んでも変わらない。ワトキンスに向けて裏に蹴るビラに対して、処理を誤ってピンチを迎えるサウサンプトンという後半頭のプレーは構図が変わらないこと見ている側に突きつけているかのようだった。
しかしながら、サウサンプトンも徐々に反撃。きっかけになったのは右サイド。孤軍奮闘を続けるエドジーに加えて、ウォーカー=ピータースのオーバーラップにより、右の大外から起点ができるように。前節もゴールに結びついているウォーカー=ピータースの攻撃参加とウォード=プラウズの抜け出しを軸にサウサンプトンが60分を目安に巻き返す。
そのウォーカー=ピータースの攻撃参加からネットを揺らすことに成功したサウサンプトン。右サイドの侵入から深さを作り、空いたバイタルからウォード=プラウズがミドルを放ってネットを揺らす。しかし、これは直前のプレーでエルユヌシがファウルを犯しており、得点は取り消されることに。
この取り消し以降は再びペースを握ったアストンビラ。ルーズになっているライン間から起点を作る形を再開すると、セットプレーからワトキンスがゴール。オフサイドが怪しいシーンではあったが、こちらはゴール認定。ピンチの後に迎えたチャンスをきっちりとものにする。
以降はキャッシュを入れて5バックに移行するビラが守備固め。攻めあぐねたサウサンプトンにとっては、後半追加タイムに迎えたジェネポのシュートが貴重な同点のチャンスだったが、これもマルティネスに防がれて終戦。サウサンプトンは前節の勢いを活かしての連勝を成し遂げることはできなかった。
ひとこと
サウサンプトンからすればゴール取り消しは一言物申したくなるだろう。ビラの押し込みに耐えながらの展開の中での得点だったこと、それ以降の主導権の失い方を見るとガックリとしてしまう影響の大きい判定だったように思える。
試合結果
2023.1.21
プレミアリーグ 第21節
サウサンプトン 0-1 アストンビラ
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
AVL:77′ ワトキンス
主審:マイケル・サリスベリー