ランパードに引導を渡すボーウェン
第21節に設定されたこのカードが降格圏内での対戦になると想像した人はあまり多くないだろう。抱えている戦力やクラブの規模を考えれば、降格は悪い意味でのサプライズになってしまう両チームの対戦である。
フォーメーションはどちらのチームも3-4-2-1を採用。ミラー型のフォーメーションの組み合わせであり、前からのプレッシングを積極的に行いやすい形ではあるが、どちらのチームもプレッシングは控えながら様子を見る。プレスの開始位置はミドルゾーンでバックラインにはボールを持たせていく格好だ。
ボール保持において比較的前進のルートを見出すことが出来ていたのはアウェイのエバートンの方。彼らの攻撃は結局イウォビとグレイが前にスペースがある状態でフリーでボールを持てればOKという方針である。そのためにはサイドから前進し、相手の陣形を片側サイドに寄せる必要がある。サイドに相手を寄せて、逆サイドの空いたスペースにイウォビかグレイに立ってもらいここまでサイドチェンジでボールを運ぶ。これがエバートンのプランである。
一方のウェストハムはそうしたボール保持での方針はなかなか見えてこない。サイドから縦に進んでアタッカー勝負!と行きたいところだが、ポジション移動を多くするわけでもないので、なかなかフリーの選手を作ることができない。
しかし、ウェストハムにはミドルゾーンからボール奪取という反撃の手段が残っている。自陣からの前進は難しくとも、敵陣での相手のミスに漬け込むカウンターから前進の機会を得るようになる。押し込み返しの手段を手にしたウェストハムはセットプレーの流れから先制点をゲット。一度は跳ね返されたボールを再び放り込み、抜け出したボーウェンが押し込むことに成功した。
そして、2点目はボール奪取から。中盤でイウォビがロストすると、右サイドをアントニオがターコウスキをぶち破って爆走。クロスを再びボーウェンが仕留めて追加点を奪う。
2点のリードを得たウェストハムはここから安全運転をスタート。無理にプレスにはいかずにブロックを組んでエバートンを待ち受ける。これまでのウェストハムであれば、こうなれば必勝パターンであるのだが、今季のウェストハムのブロック守備は残念ながらそこまで信用は出来ない。
パケタの背後、斜めのボールへの対応など、明確な弱点や後手に回る対応をリトリートでも補いきれず。エバートンの保持に対してはそれなりにピンチを迎えていた。それでもロングカウンターという反撃の手段を持っていたことはよかったことかもしれないが。
この日のエバートンは縦に推進力はなかったので、ブロック守備の攻略に打開のポイントを絞る展開になった。3-5-2のWBをイウォビとマクニールという非常に尖った人選でウェストハムのゴールに襲い掛かっていく。
初めは順調に圧をかけていたエバートン。しかし、60分を過ぎるとエバートンの攻撃は急激にトーンダウン。押し込むことは出来ているが、そこから先の攻め手がなくなってしまう。むしろ、得点の匂いはひっかけた後のウェストハムのロングカウンターの方が強いくらいであった。
保持のプランはミスで崩壊。攻撃的なシステムにしても届かずにシックスポインターに敗れたエバートン。ランパードにとってはエバートンを指揮する最後の試合になってしまった。
ひとこと
ビエルサ、マジかよ。やめとけよ。
試合結果
2023.1.21
プレミアリーグ 第21節
ウェストハム 2-0 エバートン
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:34‘ 41’ ボーウェン
主審:スチュアート・アットウェル