玉砕覚悟にならない予感
前回の対戦では2点のリードを溶かしてしまい、後半に大量失点での逆転劇を許してしまったトッテナム。熾烈を極める4位争いでこれ以上遅れないためにも、ホームできっちりシティにリベンジを果たしたいところである。
トッテナムのゲームプランで注目が集まるのはどこの時間にプレスを集中的に行うかである。90分間プレスをやるのは難しい彼らが試合の立ち上がりにどこまで前がかりに体力を使って相手を追い回すかは気になる部分だ。
結論から言うと、トッテナムは前半からシティのビルドアップに対してプレッシングをかけていった。当然気になるのは後半のペースダウン。玉砕覚悟での先行逃げ切りベースだとしたらかなりリスクがある。しかしながらこの日はボールを奪った後のポジトラが軒並み好調。今季なかなか鋭さを出すことができないソンすら、ドリブルでスムーズに敵陣にボールを運んでいたことから「もしかしたら90分持ってしまう?」と予感させる動きだった。
シティは左にリコ・ルイスを置く形をテストする。ルイスがインサイドに絞る3-2型の後方の構造は同じで、普段の形が左右対称になっていると考えていいだろう。IHの一角であるベルナルドはかなりビルドアップに関与する意識が高く、低い位置をうろうろしていた。
これまではルイスとロドリで引き寄せた背後のスペースをハーランドが使うトライをしていたシティだが、そこから先の攻撃を構築できないという難点があった。ベルナルドを中央に置くプランは中盤での数的優位をハーランドが降りる動きをなるべく減らした状況で前進を狙う格好だろう。
しかしながらこの日のシティはやたらインサイドを執拗に狙いすぎていた感がある。トッテナムの守備は2列目の横幅がナローに設定されているように中央を固める意識が高いものだった。そこに突っ込んでいくことで進んでボールロストを誘発していた感がある。
先に述べたようにこの日のトッテナムの3トップを軸としたカウンターは非常にキレが良く、シティのバックラインがカウンターを簡単に処理できるレベルではない。加えて、左サイドではグリーリッシュがエメルソンとレベルの高いマッチアップを見せており、大外に起点を望めない状況ではなかった。
相対的に試合をうまく運んでいたトッテナムが先制したのは14分。前回対戦でも見られたような高い位置からのプレスがハマり、最後はケインがプレミア通算200ゴール目を決めてみせた。シティはロドリが中央にまずいパスをつけてしまったのが痛恨だった。
リードで迎えた後半、トッテナムは引き続き高い位置からのプレスでシティを迎撃する。やはり、この日のトッテナムはフィジカルコンディションが良好。後半もクオリティを落とさずにプレッシングを行うことができていた。ポジトラへの前向きな姿勢はリードを得ても変わることはなし。ロリスすら長いキックでロングカウンター一発を狙うなど、常にシティ側のゴールを脅かす姿勢を見せていた。シティにとっては厄介極まりないことだろう。
シティは前半と同じ文脈で勝負をしていたのだが、なかなか打開のきっかけを掴むことができず。デ・ブライネの投入から4-2-3-1にシフトしてゴールを狙う。ベルナルドが位置を下げた分、シティはSBは大外でのプレーが要求される。しかし、ルイスは慣れない左サイドだったこと、ウォーカーはためを作れるマフレズがいなくなったしまったことからなかなか攻め上がりのタイミングを作ることができない。
最終的にはトッテナムは5-3-2に移行して自陣のゴールを固める。後ろに重心を傾けてなおホイビュアが高い位置からプレスに出ていくなどややギャップができやすい状況ができていたが、シティはこのギャップをつくことができず。終了間際にロメロを退場に追い込んだのがグリーリッシュというのはなかなかにこの試合を象徴している感がある。
最後までシティはネットを揺らすことができずトッテナムは逃げ切りに成功。エースのハーランドがシュート0に抑えられてしまったシティは首位アーセナルとの勝ち点を詰める絶好のチャンスを逃す格好になってしまった。
ひとこと
シティにとっては相性の悪いカードではあるが、相性以前にそもそも有効打を打てなかったことがこれまでのトッテナム戦とは異なる部分である。週末には前半戦で勝ち点を落としているビラ、そしてミッドウィークはアーセナルとの一戦。CL前に立て直しを図り、リーグで優位を取りたいところだが。
試合結果
2023.2.5
プレミアリーグ 第22節
トッテナム 1-0 マンチェスター・シティ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:15′ ケイン
主審:アンディ・マドレー