敵陣に人と時間を送り込む手段が欲しい
リーグ戦でなかなか結果が出ないチェルシー。頼みのCLでも敵地で得点を奪えずに敗戦するなどポッターに対する風当たりは増すばかりである。そうした中で迎えるのはネイサン・ジョーンズを解任に踏み切ったサウサンプトン。一向に良くなる兆しが見えないまま最下位をさまよう姿にフロントは今季2回目の監督交代を決断する。この試合では暫定監督のルベン・セベスが指揮を執る。
馴染みがあり、サウサンプトンによく似合う4-4-2でセベスはスタンフォード・ブリッジに挑む。これに対して、チェルシーはサイドに大きくボールを振りながらサイドの高い位置にポイントを作りながら攻撃の糸口を探る。
馬力と縦パスで攻撃を前に押し出していたチェルシー。ただ、裏を返せばなかなかポッター就任以降に人とボールを同時に前に送る手段を持っていない。ここまではエンソ、ムドリクといった縦に早いパスへの依存度が高く、ボールは前に送れても人を前に送るのに苦労している。
この日、推進力を見せたマドゥエケもどこか根性でボールを運んでいる感が否めなかった。右大外レーンはサウサンプトンの4バックがプロテクトしにくい外といえば外だし、構造的に殴っている!と言い張られればそれまでなのだが、マドゥエケのドリブルは味方が追いつく間もなくゴール方向に向かっており、スピードを緩める動きも少ない。よって、ゴールまで行ききれるかどうか?それでも咎められるかの2択に終始している感じが強い。
このマドゥエケの動きは今までのムドリクにより足の長いパスがドリブルに変わっただけという見方もできる。後方の列落ちによる数的優位の確保がボールと人を同時に前進させることにつながらないというのは難点である。
サウサンプトンのボール保持はいきなりロングボールからスレマナがバディアシルが抜け出す形を作るなど、期待感がある立ち上がりだった。チェルシーは前からボールを阻害しに来ていたが、サウサンプトンはバックラインが広がることとCHがズレを作ることで簡単に相手を外すことが出来ていた。チェルシーはハイプレスの機能性に問題があるかもしれない。加入以降苦しんでいたトップのオヌアチュもチルウェルをターゲットにするというぱっと見ズルっぽい作戦でようやく起点になれていた感じである。
チェルシーの守備で気になったのはサウサンプトンの選手の降りていく動きについていかないにも関わらず、後方に余っている陣形で守備がうまく守れている感がないことである。アスピリクエタが犯した自陣でのファウルはその典型例といえるだろう。このファウルからウォード=プラウズのお家芸といえる直接FKでサウサンプトンは先制ゴールを決めることとなる。
後半、チェルシーの保持は外循環を使うことで安定しつつあった。その一方でマドゥエケのところは対面のプローが対応に慣れたことや、マドゥエケ自身の体力の問題からか徐々にトーンダウンしていくこととなった。
そのため、ハイプレスにチャレンジするチェルシーだが詰まるくらいなら捨てるというスタンスがはっきりしているサウサンプトンに対してはカウンターで攻め込むきっかけをつかむことが出来ず。
後半のサウサンプトンで目立っていたのはメイトランド=ナイルズ。左サイドで快足勝負を仕掛けてくる相手に健闘したといえるだろう。今季はなかなか貢献できていないシーズンだが、ここから調子を上げていきたい。
ボール保持における局地的なデュエルを繰り返すチェルシーと、カウンターを繰り出して対抗するサウサンプトンという構図は試合の終盤まで続く。最後の最後で奮闘したのはバズヌ。シュートストップで役目をはたし、チェルシーに立ちはだかる最後の砦となった。
試合はウォード=プラウズのFKで得たリードを守り切ったサウサンプトンの勝利。チェルシーは最下位相手のホームゲームもリーグ戦未勝利の沼を脱出するきっかけにすることが出来なかった。
ひとこと
チェルシーは何よりも確実な陣地回復の手段を考えるところからだと思う。ハイプレスでもビルドアップでもいいので、人とボールが敵陣に多くある状況をより能動的に作りたい。
試合結果
2023.2.18
プレミアリーグ 第24節
チェルシー 0-1 サウサンプトン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
SOU:45+1‘ ウォード=プラウズ
主審:デビッド・クーテ