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「どこまで遠くへ行けたのか」~2023.2.21 UEFAチャンピオンズリーグ Round16 1st leg リバプール×レアル・マドリー マッチレビュー~

目次

なんて恐ろしい人たち

 昨シーズンの決勝カードがラウンド16でいきなり実現。リバプールとレアル・マドリーのカードは今年は180分間で決着をつけることとなる。

 8位とはいえ、ここ数試合のリーグ戦は復調気配。立ち上がりのリバプールには前向きな雰囲気が漂っていた。その象徴が前からのエネルギッシュなプレッシングである。サラーはCBにプレッシャーをかけていき、後方はヘンダーソンが積極的なカバーを行っていく立ちあがりとなった。

 ファビーニョまでのスライドの早さを見ると、おそらくリバプールの中盤は早い段階でマドリーの左のスペースを圧縮する形で動いていたのだろう。直近のマドリーは狭くなっても人数をかけてヴィニシウスの左サイドから打開を行っていたのでリバプールがそのシフトを敷くのはとても理解ができる。

 サイドの役割がややアシンメトリーなリバプールは時に4-4-2気味になる。こうなると、前方のプレスのスイッチが入り切らないという難点が出てきそうなものである。だが、リバプールの前線は根性で対応。特に左のWGのヌニェスは後方のケアと前方へのスイッチの両面を行うことになっていたが、ためらいもなくスイッチを入れていたのが印象的。プレスの実効性としてはラインを越された後のガクポのプレスバックが効いており、中盤からやり直しを図るマドリーを阻害していた。

 速いテンポでゲームを牽引したリバプールは早々に先制弾をゲット。右に展開するバイチェティッチのエスコートを受けたサラーが大外からヌニェスへのクロスを合わせてゴール。内側に入ってくるのが得意なヌニェスらしい得点の形だったといえるだろう。

 2点目もリバプールのプレスが活きる形。中盤で足を滑らせた(この日は両軍足を滑らせる選手が多かった)カマヴィンガのところからリバプールがボールにちょっかいをかけると、ボールを取り返し処理しようとしたカルバハルがロブ性のバックパス。この処理をクルトワがミスり、サラーが追加点を奪い取る。

 守備ではシフトを敷いた、ハイプレスも好調。マドリーのバックラインのボール保持の不安定さを見ればリバプールファンが明るい先行きを描くのは何も不思議な話ではない。

 だが、それに待ったをかけたのはシフトを敷かれたヴィニシウスだった。明らかに狭いスペースであるにも関わらずやり切ってしまうのは恐ろしいとしか言いようがない。追撃弾となる1点目はかなりこみいったところに閉じ込め、コースを切ったにも関わらずアリソンのファーを打ち抜いてしまうのだから恐ろしい。

 実際、この得点以外にもマドリーはリバプールが人を多く集めた左サイドから十分に打開することは出来ていた。サイドに流れるファビーニョが圧縮しきれずに入れ替わられてしまえば、マドリーとしてはリバプールの思惑を外すことが出来る。そして、そうした場面は十分に訪れており、ヴィニシウス包囲網としてこの日のリバプールプランが十分でないことを突きつける。

 両軍ともにヴィニシウスに人員を割いているしている結果、攻撃も守備も人数がいないマドリーの右サイド側は非常にシンプル。2人の関係性で崩すことを意識していたし、シンプルながらも鋭いクロスを放り込むことで攻撃はそれなりに機能していた。

 マドリーはブロック守備の破壊でリバプールの思惑を外すと、2点目はGKへのプレッシングという意趣返し。ゴメスのバックパスを受けたアリソンにはショートパスをつなぐコースはなかったかもしれないが、ヴィニシウスが立っていたコースがアリソンの正面でないことを踏まえれば、アリソンに十分回避する余裕はあったといえるだろう。個人的には彼のミスに分類できるシーンである。

 相手のGKにもエラーからの失点という自軍と同等の責任の十字架を背負わせることに成功したマドリー。序盤でうまくいったことを踏まえれば、タイスコアながらリバプールの方がむしろダメージがある展開にあったといえるかもしれない。

 ここからはマドリーのワンサイドな展開だったといえるだろう。セットプレーからミリトンがリバプールのゴールを強襲。後半早々にリードを奪うと、4点目は右サイドのベンゼマの侵入が相手に当たっての幸運なゴールを演出する。前半にリバプールがテンポを掴むきっかけになった高い位置からのプレスがトリガーになっているのも、マドリーの恐ろしさの一端といえるだろう

 マドリーの恐ろしさの象徴といえば衰えしらずのベテランである。もちろん、ベンゼマとモドリッチのコンビのことだ。中盤のトランジッションからモドリッチがスルスルとボールを運ぶと、出口になったのはベンゼマ。アンフィールドでよもやの5得点目を挙げることに成功する。

 大量得点に目が活きがちな展開となったが、後半はアンチェロッティの地味な調整も光った。バルベルデとモドリッチのサイドを入れ替えて、バルベルデを左に置くことでリバプールの右サイドをあっさりと封殺。前半からシュートを積み上げていった攻撃はこのシンプルな位置交換によりいとも簡単に封じられるように。

 リバプールからのすると、左右のサイドの攻撃における機能差はマドリーと比べても大きい。今季のリバプールは左サイドの定点攻撃の使いこなせなさが際立っており、この試合ではこの機能不全がより一層浮き彫りになっていたといえるだろう。

 追加点を積み上げつつ、反撃を修正ひとつで封じたマドリー。5得点でのアンフィールドの制圧はなかなかお目にかかれない偉業だが、ファンに拍手を送りながら落ち着いて感謝の挨拶をマドリーのイレブンからは「ラウンド16の初戦だからという」冷静さも垣間見えた。

ひとこと

 リバプールの復調気配の素材はこの試合でも感じたし、5失点するほどの内容でもない。大差がついたことに関しては不運と片付けてもいいだろう。だからといって運が悪くて負けた!とするのはいささか乱暴な感が否めない。ハイプレスという一の矢の先に対処するにはこのチームは深さがまだ足りていないように思える。CLはある種、そのシーズンでどこまで遠くに行けたかを図るコンペティションだと思うが、怪我人の多さに苦心しながら歩んできたリバプールの今季の足跡はコンディションが上がってもなお色濃く残っているといえるだろう。

試合結果

2023.2.21
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 1st leg
リバプール 2-5 レアル・マドリー
アンフィールド
【得点者】
LIV:4‘ ヌニェス, 14’ サラー
RMA:21‘ 36’ ヴィニシウス, 47‘ ミリトン, 55’ 67‘ ベンゼマ
主審:イシュトバン・コヴァーチ

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