「2点差」と「エース不在」は重くのしかかる
「首位通過を逃したリバプールではなくナポリと対戦することとなった」というセリフが持つ意味合いは今季に入ってガラッと変わってしまった。数年前であれば素直に喜べたであろうこのくじ運を2023年に幸運と感じる人はまずいない。今季のナポリはそれだけ分厚い相手であり、リーグでの堅実な戦いとCLグループステージ突破をこなしたフランクフルトをもってしてもこのラウンドは「挑戦」と表現するのが妥当だろう。
立ち上がりはフランクフルトの「挑戦」はうまくいっていた。高い位置からのプレスがガンガンハマっていたとは言わないが、サイドに追い込んで一気にスイッチを入れていくブンデスリーガでも見られる形はナポリ相手にもそれなりに通用していたといえるだろう。
フランクフルトと比べてより前がかりに襲い掛かってくるナポリのプレッシングに対しても、バックラインが横幅を取ってつなぎつつ、やばくなったら蹴るという形で回避する。それでもナポリの分厚さはさすが。ロングカウンターを一手に引き受けるコロムアニを封殺するあたりはフランクフルトに主導権を与えない強さを感じる。
すると、徐々にフランクフルトに対してナポリが牙をむき始める。コロムアニが背中で消していたアンカーのロボツカをIHのポストを使って解放するというポゼッションの仕組みの構築や、右サイドの裏から走り込むオシムヘンというランチャーの存在感も出てくるように。フランクフルトの守備陣はコロムアニに対するナポリの守備陣ほどオシムヘンにスマートに対応することは出来ず、セットプレーなどのチャンスを与えるようになる。
押し込めば即時奪回は効くし、そうなればフランクフルトは陣地回復ができない。試合がナポリの好循環のサイクルに入りかけたタイミングでブタが忍び寄るオシムヘンに気づかない状態で事故的に蹴っ飛ばしてしまいPK判定を与えてしまう。しかし、ここはクワラツヘリアが決められずに先制点はお預けとなる。
その直後にコロムアニがキム・ミンジェに警告を出させるなど、ナポリのPK失敗を皮切りにフランクフルトは波に乗る展開もなかったわけではない。だが、先制点を手にしたのはナポリ。ゲッツェのパスミスから右サイド裏を利用したロングカウンターが発動。裏を取ったロサーノからのダイレクトなクロスを受けたオシムヘンが強烈なシュートをお見舞いし先制。ペースどころか先制点でフランクフルトの勢いをへし折る。
直後もより高い位置からショートカウンターを発動したロサノからリプレイのような形でオシムヘンがネットを揺らす。オフサイドで認められなかったがフランクフルトファンを縮み上がらせるには十分だった。
後半、ナポリはポゼッションから再び試合を支配。押し込まれたフランクフルトはプレス、プレス回避、ロングボールといずれも陣地回復のきっかけに出来ずに苦しむ。反撃どころか、ヤキチのミスからクワラツヘリアに決定機を与えるなど厳しい状況が続く。
そんな展開を決定的なものにしたのはコロムアニの一発退場である。オシムヘンが獲得したアクシデンタルなコンタクトではあるが、プレー自体はきっちり相手を踏んでしまっているので不運ではあるが致し方ないのだろう。
10人へのダウングレードに加えて、推進力の要であるコロムアニを失ったフランクフルトが防戦一方になるのは当然の流れ。中盤3枚の5-3-1でナポリを迎え撃つが、3枚の中盤を左サイドからのパス交換で1枚1枚剥がされてしまい、最後はディ・ロレンツォに押し込まれる。
このゴールにおけるパス交換、右サイドはハーフスペース付近で中央に折り返したクワラツヘリアまでしか横方向には絡んでいないが、大外にロサノが立っているためフランクフルトは狭く守ることは出来なくなっている。直接ボールに絡まなくても幅を取る意味がある好例であり、ディ・ロレンツォはそれによって生まれたスペースにうまく入り込んで見せた。
2点のリードを得たナポリはさすがに終盤は緩んだように見えた。それだけに81分の鎌田の決定機は決めたかったところ。力無く正面に飛んだシュートは機会が少ないだけに残念感が際立つものとなった。
試合はそのまま0-2で終了。エース不在と2点のビハインドという絶体絶命のフランクフルトが逆転突破するにはナポリでのリターンレグで奇跡の一夜を過ごす必要がありそうだ。
ひとこと
前評判通り、ナポリが一回り上の分厚さを見せたといっていいだろう。フランクフルトは序盤以降は得点どころかシュートまでたどり着くことさえ一苦労だった。ダークホースと呼ぶには屈強すぎて失格のナポリが、ノックアウトラウンドでどこまで進めるかは今季のCLにおける大きなトピックの1つになるだろう。
試合結果
2023.2.21
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 1st leg
フランクフルト 0-2 ナポリ
フランクフルト・シュタディオン
【得点者】
NAP:40‘ オシムヘン, 65’ ディ・ロレンツォ
主審:アルトゥール・ディアス