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「奇跡は遠い」~2023.3.15 UEFAチャンピオンズリーグ Round16 2nd leg レアル・マドリー×リバプール マッチレビュー~

1st leg

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落ち着きを前に奇跡の余地なし

 リバプールのスターターの並びは「突破を信じている」と試合前の会見で語ったクロップの決意が本物であるかを証明するものだった。いつもの3人にジョッタを加えた4人を前線に置く形でリバプールはベルナベウで奇跡を起こそうとしていた。

 もちろん、実際にピッチに送り出されたリバプールの面々のスタンスもそうしたクロップのコメントを体現するかのような勢い。ボールを高い位置から奪いにいく、ボールを取ったら裏へというスタンスで試合をオープンな方に誘導。得点が起きやすい状況を作ることをまずは目指しているように見えた。

 「どちらのチームに得点が入ってもおかしくない」という状況を作るのがリバプールの最低限のタスクだっただろうが、マドリーの対応力は想像以上だったと言えるだろう。彼らはリバプールの積極的なスタンスを利用し、自分たちだけがその恩恵に預かろうとしているように見えた。

 攻撃に関してはヴィニシウスがいれば自陣からボールは運べるし、周りの選手たちの機を見た攻撃参加のタイミングも絶妙。前残りしたいリバプールに対して、きっちりとカウンターを完結させることで、開始早々からリバプールに脅威を与え続ける。

 アリソンを軸としたバックラインの奮闘がなければ試合は早々にレアル・マドリーが動かせてもおかしくはなさそうな試合運び。特に恐ろしかったのが少しでも空けば弾丸シュートが飛んでくるミドルレンジの一撃。モドリッチ、カマヴィンガとリバプールファンに冷や汗をかかせるミドルを平気な顔でお見舞いしてみせる。

 無理なく相手を崩せていたレアル・マドリーに対して、リバプールは苦戦。攻勢に出ようにも、まずはきっちり撤退してブロックを組むマドリーに手を焼く。こういう試合できっちりと守備から入るバルベルデはさすがだし、クロースやモドリッチのようにどこから始めれば相手を勢いづかせないのかを知っているベテランもまた厄介だった。

 リバプールは4-2-3-1という設計上、サイドでの崩しは枚数もかけられない。よって、抜ききれないクロスを上げるか、もしくは相手を1枚剥がすしか選択肢がない。アタッキングサードに入り込むクロスはマドリーに比べるとアバウトなものになってしまい、マドリーのバックラインは無理なく跳ね返すことができていた。リバプールのチャンスは偶発的に生まれた裏のスペースが空く機会に集約されていたが、マドリーはそれへの対応すら落ち着き払っていた。

 リバプールの攻撃が終わった後もマドリーは落ち着き払っていた。安全第一であれば、とりあえず前線に蹴ってもおかしくはなさそうだが、簡単に蹴らないことでリバプールにボールを渡さないことを徹底していた。ショートパスで繋ぎながらリバプールの守備を諦めさせるか、ヴィニシウスのドリブルのようなより確実な手段で前進をするかのどちらか。相手を食ったような冷静な繋ぎによる回復を行うマドリーに対して、リバプールは徐々にファウルを繰り返すように。ベルナベウで奇跡を引き起こすハードルの高さをリバプールに知らしめた45分だったと言えるだろう。

 後半も同じ文脈の展開が続く。奇跡を起こしたいリバプールを嘲笑うかのようにマドリーの冷静なプレーが光る。リバプールが可能性の低い裏へのパスを選んでは、マドリーがそれをカット。リバプールはボールを取り返すもしくは危険な形でのカウンターを止めるのに多くの労力を使い、振り出しに戻るという流れの繰り返し。

 試合の流れに引っ張られるように、日頃はリスキーなプレーを選択しがちなカマヴィンガあたりもかなり落ち着いた振る舞いを見せる。リバプールからすると崩せるきっかけが見つからない状態が続く。

 60分になるとリバプールのプレスも徐々にトーンダウン。得点というガソリンなしでは厳しい時間になってしまったということだろう。レアル・マドリーが無理なく保持をする展開を続け、リバプールファンにとっては祈りを捧げるしかない時間帯に突入する。

 ベンゼマのシュートはなかなか枠を捉えることができず決着が先延ばしになっていたが、カマヴィンガの縦パスをきっかけにヴィニシウス→ベンゼマと繋いで78分についに決壊。レアル・マドリーがリバプールを完全に諦めさせる先制点を手にする。

 試合が終わったことを悟った両チームは残り時間を落ち着いて過ごしたように見えた。バタバタしていたのは余計な時間に余計なOFRを挟み込んだVARくらいだろう。試合はトータルスコア6-2でマドリーが完勝。ベスト8に駒を進めた。

ひとこと

 アンフィールドとはまた違う怖さを見せたこの日のマドリー。ベテラン勢に牽引される形で冷静にプレーしていたカマヴィンガを見ると、チームとしての強さのDNAはこうやって引き継がれるのだなと感じた。リバプールが奇跡を起こすにはこの日のマドリーのハードルはあまりにも高すぎたと言えるだろう。

試合結果

2023.3.15
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 2nd leg
レアル・マドリー 1-0 リバプール
エスタディオ・サンチャゴ・ベルナベウ
【得点者】
RMA:78′ ベンゼマ
主審:フェリックス・ツバイヤー

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